【獣医師監修】猫も認知症を発症する!?愛猫の問題行動をチェックしてみよう!

2023.01.21

【獣医師監修】猫も認知症を発症する!?愛猫の問題行動をチェックしてみよう!

愛猫がシニア期に突入してくると、飼い主さんはさまざまな病気を意識するようになり、1日でも長く愛猫と過ごせることを願うことでしょう。 加齢とともに免疫が落ちて体調を崩しやすくなるのは、猫も人間も一緒ではありますが、そんな中で猫も認知機能が低下する「認知症」を、発症することがあるのかと気になったことはありませんか? 猫が認知症を患った場合どのような症状が出るのか、予防するにはどんなことを心掛けるべきなのかを考えてみました。

猫の認知症ってどんな病気?

cat-g1e6dcfeb1_640

猫も人間と同様、「認知症」を発症することがあります。

もちろんすべての猫が、加齢によって発症するわけではありませんが、ペットフードや獣医療の向上などにより、猫の平均寿命が伸びてきたことからも、少なからずどの猫ちゃんにも発症のリスクがあると言えるでしょう。

猫が認知症を患った場合、以下のような症状が出やすいと言われています。

◆認知症の症状

そもそも認知症は特定の病気ではなく、何かしらの病気や障害によって脳の働きが鈍くなり、さまざまな症状が出て生活に支障を来たす状態のことを指します。

歳を取るにつれて誰しも、もの覚えが悪くなることや、人の名前を思い出せなくなることはよくありますが、猫が認知症を患った場合はどうでしょうか。

猫の場合は基本的に、「今までとは違う状態になる」と言われています。

愛猫が認知症を患っているかの判断は、難しいと感じる飼い主さんは多いかと思いますが、普段から愛猫の様子をよく観察している方であれば、ちょっとした変化に違和感を覚えるはずですので、以下のような行動に注意してみてください。

●食欲異常
●トイレの失敗
●性格の変化
●無駄鳴きや夜鳴き

毎日の食事やトイレは健康のバロメーターともなり、愛猫の健康状態を知る上で大切な目安となりますよね。

突然好きだったフードの好みが変わって食べなくなることや、ご飯を食べ終わったのにも関わらずすぐに催促してくるなどの食欲異常が出ることもあり、トイレの失敗や別の場所での粗相が目立つようになることがよくあります。

抱っこが好きだったのに抱っこをさせてくれない、好きだったおもちゃへの関心がなくなった、怒りっぽくなった、攻撃的になったなど、これまでとはまったく異なる性格になってしまう子も居るようです。

起きている時間帯に大きな声で鳴き続けることや、狭い場所に入ったまま出てこられない、目的なく歩きまわるといった行動をとる個体も存在します。

認知症初期にはこれらの行動のどれか一つぐらいが当てはまる程度ですが、時間の経過とともに段々と新たな症状が増えていくため、日常的に注意深く愛猫を観察し続けることが大切です。

◆認知症の原因

猫の認知症はまだまだ不明な点が多いと言われており、人間と同一のプロセスであるのか、特定の神経障害によって引き起こされるのか、ストレスが直接の原因になるかなど、研究が行われている最中だと言われています。

老化性の脳障害であることは間違いありませんが、加齢によってニューロン(脳を構成する神経細胞)が減少するにつれて脳の萎縮が起きますし、消失したニューロンは元の数に戻ることはないため、その結果、認知機能が低下していくといった仕組みです。

また、高齢の猫が発症しやすい老年性疾患の中には、認知症と臨床兆候が類似しているケースがあるため、病気ばかりに意識がいってしまい、認知症が見逃されてしまう可能性も否めません。

愛猫がシニア期に突入した際には、「甲状腺機能亢進症」「高血圧症」「関節疾患」「脳腫瘍」「神経系疾患」などの病気に注意し、隠れ認知症を患っていないかを意識するようにしましょう。


どんな猫にかかりやすい?

不明な点の多い猫の認知症ではありますが、どんな猫が認知症を発症しやすいのでしょうか。

◆かかりやすい猫

認知症にかかりやすい猫はやはり、シニア期に突入した高齢の猫(7歳以上)ということが挙げられます。

猫は元々警戒心が強くて神経質な一面を持っていることからも、ストレスを抱え込みやすく、ストレスは猫の脳内にある酸化物質を促す働きをし、その結果認知症を促進させるため、日常的にストレスを感じている猫ちゃんは注意が必要です。

◆認知症かなと思う行動

猫の認知症は人間や犬などと比べると典型的な症状が出ることはありませんが、愛猫がシニア期に突入すれば、どの猫ちゃんも脳の機能が低下し始めていることを考慮した上で、愛猫に負担がかからないような生活を心掛けることが大切です。

認知症の症状項目でもどのような行動が出るかを記述しましたが、おさらいの意味を込めて、認知症が疑われる猫の行動をいくつか挙げさせていただきます。

愛猫の行動に一つでも当てはまる項目があるようでしたら、早めにかかりつけの動物病院へ相談してみましょう。

【猫の認知症チェックリスト】

1. 食べ物の好みが変わった
2. ご飯を食べたのにすぐ催促してくる
3. トイレの失敗が増えた
4. 無駄鳴きや夜鳴きが増えた
5. 意味もなくウロウロと歩き回る
6. 狭い場所から出られなくなる
7. 攻撃的になる
8. 同じ箇所を舐めたり噛んだりといった自傷行為
9. 飼い主に甘える様子が見られなくなる
10. 飼い主の呼びかけに対して反応を示さない
11. 遊ぶことに対して興味を示さなくなる


猫の認知症の予防法

cat-g78ce7eaa5_640

認知症は気付き難い病気となるため、できることなら発症させないよう、日常的に予防をしておきたいものですよね。

脳の老化は必然的なものではありますが、毎日の生活の中で認知症を発症させない工夫はある程度可能となるため、以下のような予防を心掛けてみてはいかがでしょうか。

◆運動

眠っている時間の多い猫ではありますが、運動することによって脳が適度に刺激され、さまざまな機能が活性化していきます。

「高齢だから遊ばないでいいや」といった考えを飼い主さん自身が持たないようにし、常に愛猫を刺激できるような環境を整え、愛猫の運動不足を回避して心身ともに、健康で長生きしてもらえるように努めましょう。

◆食事

昨今ではフードの向上が期待できることからも、年齢に合ったフードを選ぶことこそが長寿に繋がることが分かってきました。

認知症の予防としては「オメガ3脂肪酸」「抗酸化物質」を含む、キャットフードを選ぶと良いでしょう。

市販では購入が難しいこともあるため、動物病院で相談をしてみることもおすすめです。

◆コミュニケーション

認知症の予防には、飼い主さんとのコミュニケーションが何よりも大切です。

愛猫が飼い主さんの存在を忘れないためにも、毎日声をかけるようにし、優しく触れるといった行動を心掛けることにより、甘えることや構ってもらうことの喜びを感じ取ってくれることでしょう。

信頼関係がしっかり築けている関係性であれば、コミュニケーションを図ることにより、ストレス軽減にも繋がるため、日常的な触れ合いを欠かさないようにしてください。


猫の認知症の治療法

猫の認知症はまだまだ不明な点がある通り、必ず完治できるといった治療薬は開発されていません。

症状軽減のために、脳内ホルモンの一つとなるドーパミンの量を増やす薬の投与や、脳神経間の情報伝達を滑らかにするEPAやDHAが含有されたペット用のサプリメントを使用することによって、症状が改善に向かうこともあるようです。

認知症の症状が進んだ際には、その症状に合わせて鎮痛剤を使用してみたり、気持ちを落ち着かせるために安定剤や睡眠薬を用いたりといった、対症療法が行われることが一般的となります。

【大切な家族のもしもに備えるムリなくスリムなペット保険】
petfamily_656
>>げんきナンバーワンSlim<< ※一部補償対象外もございます

猫の認知症のためにできることはある?

猫の認知症は症状の判断が難しく、「これって認知症かも?」と飼い主さんが感じたとしても、確信が持てない方がほとんどではないでしょうか。

もちろん自己判断で絶対に認知症だと決めつけるべきではありませんが、猫も認知症といった病気を患う可能性があることを、飼い主さん自身がしっかりと理解をしておかなくてはいけません。

認知症は確実な治療法がないことからも、早期発見が最重要となりますし、日頃からストレスを溜めないためにも生活環境を整えて、穏やかに過ごせるような工夫をしてあげたいものですよね。

そして高齢期に突入した猫ちゃんは、年に数回健康診断を受けるようにし、体の健康チェックだけでなく、日常生活の中で問題行動があるようなら、獣医師さんに相談をして認知症の早期発見に繋げていきましょう。


まとめ

大切な愛猫とは一日でも長く一緒に暮らしたいものですが、加齢が進むにつれてさまざまな機能が低下していくことは、自然の摂理とも言えるため仕方のないことです。

だからこそ飼い主さん自身が後悔しないためにも、愛猫が天寿をまっとうできるように、生活水準を向上(QOL)させつつ、ストレスを溜めないような環境を整えてあげたいものですよね。

私たち人間よりも早いスピードで歳をとっていく猫のために、愛猫の行動をよく観察し、異変にいち早く気付いてあげられるように努めることも大切です。

もし認知症が疑われる症状が出てきた場合には、飼い主さん一人で問題行動を対処していくのではなく、かならずかかりつけの動物病院に相談し、どのような治療や介護を進めていくべきかの相談をしてください。

認知症を発症してしまえば長い付き合いとなっていくため、飼い主さんもあまり気負いしすぎないようにし、上手に愛猫の認知症と付き合っていくようにしましょう。

●記事監修
drogura__large  コジマ動物病院 獣医師

ペットの専門店コジマに併設する動物病院。全国に15医院を展開。内科、外科、整形外科、外科手術、アニマルドッグ(健康診断)など、幅広くペットの診療を行っている。

動物病院事業本部長である小椋功獣医師は、麻布大学獣医学部獣医学科卒で、現在は株式会社コジマ常務取締役も務める。小児内科、外科に関しては30年以上の経歴を持ち、幼齢動物の予防医療や店舗内での管理も自らの経験で手掛けている。
https://pets-kojima.com/hospital/

<<コジマ動物病院 獣医師が監修した記事一覧はコチラ>>



– おすすめ記事 –

・猫が同じ場所をぐるぐる回るのはなぜ?隠された4つの理由とは?
・猫の問題行動を解決!原因や対策方法もご紹介
・猫の要求鳴きがひどい!5つの理由と対応方法をご紹介
・猫のアニマルセラピーの癒し効果がすごすぎる!驚きの癒しパワーとは?


focebookシャア
ツイート

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
たぬ吉

たぬ吉

小学3年生のときから、常に猫と共に暮らす生活をしてきました。現在はメスのキジトラと暮らしています。3度の飯と同じぐらい、猫が大好きです。

関連するキーワード


記事に関するお問い合わせはこちら