1.猫の巨大結腸症とは
1-1.巨大結腸症の症状
1-2.巨大結腸症の原因
2.猫の巨大結腸症の治療・予防
2-1.巨大結腸症の治療
2-2.巨大結腸症の予防法
3.愛猫が巨大結腸症かもと思ったら
4.まとめ
猫の巨大結腸症とは
巨大結腸症とはある特定の病気の名前ではありません。便秘が慢性的に続いてしまった結果、結腸の動きが悪くなっていき、大量の便によって拡張されている病態を巨大結腸症といいます。
様々な原因で便秘となり、便秘が悪化していくと巨大結腸症となってしまいます。
巨大結腸症となった結腸は、腸の筋肉の収縮ができなくなり、その結果、便がさらに貯留して便秘が悪化するという悪循環に陥ります。便が出ない状況は猫自身にとって非常に辛いものです。
重症化した場合は手術などが必要になるケースもありますが、早期であれば食事やサプリメントや環境整備で改善することもできるので、できるだけ早めに対応してあげたいものです。
以下で、巨大結腸症の症状や原因を解説します。
巨大結腸症の一番の症状は便秘です。結腸の動きが悪くなり、便がさらに溜まるという悪循環に陥っているために、便が異常に溜まってしまいます。
猫自身は排便を試みますが、便が出にくいため、何度も排便ポーズをとる「しぶり」がみられます。また、固い便が結腸内にあり、腸の粘膜を傷つけたり、しぶりによって腸に無理が掛かったりするため、血便がみられることもあります。
また、巨大結腸症では便の貯留に伴って、食欲不振や腹痛、嘔吐がみられ、元気がなくなります。場合によって、固くなった便の脇を通って下痢便を排泄することもあります。
巨大結腸症は便秘が長時間続くことによって起こります。何らかの原因で便が結腸内に長い間停留することで、便の水分が結腸により吸収されます。便が水分を失って硬くなってしまい、さらに便が出づらくなります。
排便が行われないと、より便が溜まってしまい、その結果さらに便が出づらくなるという悪循環に陥ります。大量の便によって結腸が拡張されてしまい、結腸の蠕動運動を行っている結腸平滑筋や神経に異常が起こります。
その結果、結腸の収縮が上手く行われなくなってしまい、結腸は大量の便によって拡張したままとなってしまいます。
巨大結腸症は長期間の便秘によって起こりますが、猫が便秘になる主な原因には以下のようなものがあります。
・ストレス
過度のストレスは消化管の動きを悪くしてしまい、この結果便秘が起こってしまいます。
・加齢に伴う筋力の低下や関節炎などによる痛み
猫も高齢になると筋力の低下や、関節炎が見られることが多いです。この結果、排せつをスムーズに行えなくなり、便秘となってしまいます。
・肥満
肥満は便秘のリスクを高めることがわかっています。
・トイレが汚い
トイレが汚いと、猫がトイレに行きたがらなくなり、便秘気味となってしまいます。
・脱水
腎臓病などで脱水がちとなると、消化管内の水分も失われ、便秘になりやすくなります。
・交通事故などによる骨盤骨折
外猫に多い便秘の原因です。歪んでしまった骨盤が腸を狭くして便が通過できなくなります。
・腫瘍
腫瘍によって便の通り道が狭くなってしまい、便秘を起こすことがあります。
このように、猫は様々な理由で便秘を起こし、便秘が悪化し、結腸が拡張することで巨大結腸症となってしまいます。
猫の巨大結腸症の治療・予防
巨大結腸症の治療で大事なことは、便秘の原因となっている問題を改善することです。
例えば交通事故などで骨盤が歪んでいて、腸が物理的に狭くなっている場合には、骨盤を整復する外科手術が必要です。加齢に伴う関節炎などの痛みがあり、排せつが滞っている場合には適切な鎮痛薬を使用すると改善が見られます。
巨大結腸症の原因となる大きな病気が無い場合は、トイレを複数箇所設置したり、トイレを常に清潔に保ってあげたりと、とにかくトイレに行きやすいように工夫してあげることが重要です。また、日々の生活の中でストレスを感じないように環境を整えてあげることも大切です。
猫の巨大結腸症では、便秘改善効果のあるキャットフードが有効なので、食事療法も大切な治療法のひとつです。
また、便の排泄を促すために、消化管運動改善薬や下剤などのお薬による治療も行われます。
便が結腸内に大量にあって、お薬や食事、環境整備だけでは不十分な場合は、獣医師の手によって便を取り除いたり、浣腸によって排せつを促したりする必要があります。
治療を行っても、繰り返し便秘を起こし、巨大結腸症のコントロールができない場合は、結腸の一部を切除する手術が行われる場合もあります。
巨大結腸症の予防で普段からできる対策は食事の内容に気をつけることと、飲水量を増やすように工夫することです。
現在、いくつかのフードメーカーから便秘対策用の療法食が発売されています。これらのフードは、可溶性繊維という食物繊維が豊富に含まれています。可溶性繊維は水分を含むとゲル状になり、便を軟らかくしてくれる効果があります。こういったフードを利用すると便秘になりにくくなり、巨大結腸症の予防となります。
また、フードによっては腸内細菌を整えるタイプのフードもあります。腸内細菌が整うことで腸の動きが良くなり、便秘を起こしにくくなります。
猫にお薬を毎日飲ませることは飼い主さんにとっても大変です。フードで予防や改善が見込めれば、猫にとっても飼い主さんにとっても、一番負担なく継続できる手段となるので、まずはフードを意識しましょう。
好き嫌いの問題や、他の内臓疾患の問題でフードの変更ができない場合は、可溶性繊維のサプリメントを使用することもオススメです。こういったサプリメントは、ウェットフードをお湯でふやかして混ぜることで投与がしやすくなります。
飲水量を増やすことも巨大結腸症の予防や改善に効果的です。飲水量を増やすためには、生活環境の中で水を飲める場所を複数用意してあげると良いです。また、容器を小まめに掃除してあげることも必要です。
また、噴水型の水飲み容器を使用すると猫の飲水量を増やすことができます。好き嫌いはありますが、多くの猫は噴水型や流水型の容器を好んで飲水します。
他には飲み水をお湯にすると飲水が増えるケースや、鶏肉の茹で汁などの香りのついた水に変えると飲水が増えるケースがあります。
愛猫の好みに合わせて工夫してみましょう。
愛猫が巨大結腸症かもと思ったら
愛猫が巨大結腸症かもと心配になった場合、ご自宅で気を付けることは、食事や排せつ、活動の様子などをしっかりチェックすることです。
食事がいつも通りできているかを気にかけましょう。巨大結腸症になると食欲が減退します。普段と同じ量をしっかり食べられているか、飲水量が変わっていないか、などという点に注意してください。食欲が減退し始めている時には、普段のフードを食べる量が減り、好きなおやつや食べやすいものしか食べなくなることもあります。
食事に変化が表れていないかは体調変化の重要なサインとなります。
巨大結腸症では、慢性的な便秘が続いているものです。排泄の様子を気にかけることもとても大切です。「硬すぎないか」、「大きさはいつも通りか」など、トイレ掃除の度にチェックしましょう。
また、排せつ時に猫自身が、苦しそうにしていないか、スムーズに排便が行えているかという点も気をつけてください。
巨大結腸症の場合、便の塊が排せつできなくなり、便塊の脇を通って下痢便だけ排せつするケースもあります。下痢をしている場合も便秘が原因であることもあるので注意が必要です。
また、巨大結腸症の場合に良く起こることとして、便を排せつしようとした際に、いきんで吐き気に繋がるケースがあります。便をしようとした時に吐くようであれば、排せつがスムーズに行えない状態が考えられます。
巨大結腸症になり、排せつ物が体内に滞っていると、食欲だけでなく、元気もなくなってきます。いつもに比べて活動性が低下している場合も早めに動物病院で診察を受けるなどして対処しましょう。
まとめ
今回は猫の巨大結腸症について解説しました。
猫は様々な理由で便秘を起こし、巨大結腸症となってしますことがあります。
排せつは毎日のことなので、巨大結腸症になると日々の生活が快適に送れなくなり、重症例では猫が弱っていってしまいます。
食欲や元気がいつも通りあるか、排せつがスムーズに行えているか、などという点に気をつけて生活してください。巨大結腸症には、有効な食事やサプリメントなどもあるので、便が硬くて出にくい場合は早めに動物病院を受診して相談することをおすすめします。
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