【獣医師監修】猫の大腸炎ってどんな病気?原因を追究して適切な治療をしよう!

2024.01.20

【獣医師監修】猫の大腸炎ってどんな病気?原因を追究して適切な治療をしよう!

猫も人間と同じように消化器官に病気を患うことが多く、「大腸炎」もその一つとなります。 健康を維持し続けるためにも、愛猫の排尿や排便のチェックを怠らない飼い主さんは多いと思いますが、猫が大腸炎を患っているときには、どのような症状が出ているのかも気になるところですよね。 猫の大腸炎はどのような原因によって発症し、どのような治療法や予防法があるのか見ていきましょう。

猫の大腸炎の症状

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食べ物を摂取して排出する際に利用する器官を消化官(しょうかかん)と呼び、口→食道→胃→小腸→大腸→肛門といった順番で食べ物が運ばれていきます。

この消化管の中で大腸に炎症が起きる病気を「大腸炎(だいちょうえん)」と呼びますが、猫ではよく見られる病気となり、猫種や年齢に関係なく発症することから、すべての猫ちゃんが気を付けておくべき病気と言えるでしょう。

猫の大腸炎は急性大腸炎と慢性大腸炎に分類されますが、大腸が常に炎症を起こしている状態の慢性大腸炎の場合は原因の特定が難しく、慢性腸症(CE)と診断されることも少なくありません。

大腸炎の基本的な症状は、痛みを伴なう下痢症状を引き起こします。

下痢症状と併せて、以下のような症状が見られることもあるため、大腸に起きる異変を見逃さないようにしましょう。

●血便(鮮血)
●粘液便
●便秘
●トイレの回数が増える
●少量の排便を繰り返す
●しぶり(排便姿勢を繰り返す行為)
●食欲不振
●体重減少
●元気喪失

大腸炎の場合、排便に血液が混ざるときは鮮やかな血(鮮血)が混じりますが、小腸で問題が起きている場合には大腸炎と異なり、混ざる血の色が黒っぽく(濃く)なって嘔吐などの症状が見られるようです。


猫の大腸炎の原因

猫が発症する大腸炎はさまざまな原因によって引き起こされるため、原因が分からず慢性化してしまうことも少なくありません。

原因が明らかな場合はその要因を取り除くことにより、早期改善へと繋がるため、大腸炎のような症状が愛猫に見られた際には、日常生活の中で以下のような原因が潜んでいないか、しっかりと確認するようにしましょう。

◆ストレス

「ストレス」は身体にさまざまな影響を与えますが、大腸炎の原因となる最大の危険因子とも言えるでしょう。

ストレスは精神的なものだけでなく、身体的なものまで幅広いため、ストレスの要因となっている問題を解決しないかぎり、一度大腸炎が治ったとしても繰り返して慢性大腸炎を患ってしまう可能性も否めません。

ストレスを感じると自律神経のバランスが乱れるようになり、その症状に伴って腸が知覚過敏になるため、下痢や腹痛といった大腸炎特有の症状が引き起こされます。

そもそも脳と腸は自律神経だけでなく、ホルモンを介してお互いに情報交換をしており、緊張や不安などのストレスを脳が受けることによって、それらの情報は腸にも伝えられていき、結果的に腸内環境が悪化していきます。

猫の場合は引っ越しや家族が増えるなどの環境の変化、お留守番の時間が長い、飼い主さんに構ってもらえる時間が少ない、人の出入りが激しい(家族以外の来客が多い)、トイレの清潔が保たれていない、落ち着いて眠れる場所がないなどは、ストレスの原因になりやすいようです。

強いストレスを感じるようになると、腸内環境の問題が生じるだけでなく、そのほかにもさまざまな症状が見られるため、愛猫のことを普段からよく観察するようにし、少しの異変にも気付けるように努めておきましょう。

◆食物アレルギー

猫も「食物アレルギー」を発症するケースがありますが、皮膚が痒くなったり発疹ができたりするだけでなく、下痢や嘔吐などの症状が出ることもあります。

初めて食べる食材を与えた際に発症した場合には、原因のアレルゲンを特定しやすくなりますが、猫の主食となるキャットフードは複数の食材を組み合わせて作られているため、アレルゲンの特定が非常に難しく根気のいる作業になりますよね。

猫の食物アレルギーが起こってしまう仕組みは人間とほぼ一緒となるため、体内に取り込んでしまった特定のタンパク質(アレルゲン)を免疫機能が敵と認識し、攻撃することによってさまざまな体調の変化が起こるようになります。

免疫細胞は身体を守るために必要となり、細菌やウイルスなどの異物が体内に入ってきたときに戦ってくれるものですが、アレルギー反応が起こっているときには、本来は攻撃する必要のないタンパク質を攻撃してしまうため、普段与えている食事に含まれるタンパク質(牛肉・乳製品・穀類・鶏肉・卵など)にも注意しておきましょう。

◆感染症

猫の病気の中でも発症確率が高いとされている「感染症」ですが、感染症が引き金となって大腸炎を併発することがあります。

中でも多いと言われている感染症が、パルボウイルスが原因となる「猫汎白血球減少症(ねこはんはっけっきゅうげんしょうしょう)」です。

激しい下痢や嘔吐といった症状が見られ、病気に対抗する白血球が減少することから、急激に体力が低下していくといった特徴が見られます。

子猫が発症した際には、急激な脱水症状により命を落としてしまうこともあるため、油断できない感染症と言えるでしょう。

そのほかにも、寄生虫やカビなどによる感染症でも、大腸炎を併発することがあるため、何かしらの初期症状が見られた際には、早急に治療を開始するようにしてください。


猫の大腸炎の治療法

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猫の大腸炎はさまざまな原因によって発症することから、発症原因に合った治療を行っていかなくてはいけません。

原因の特定は便検査や血液検査を行うことが一般的ですが、経過の状況によっては画像検査(CT・MRIなど)・超音波検査・全身麻酔下での内視鏡検査が用いられるケースもあります。

今回ご紹介している大腸炎の原因別に、それぞれの有効的な治療法を見ていきましょう。

◆ストレスによる大腸炎の治療法

ストレスによって愛猫が大腸炎を発症した場合には、ストレスの原因を取り除くとともに、高消化性のキャットフードを用いた食事療法を行っていきます。

食事療法によって快方に向かう場合が多いですが、飼い主さん個人の判断でフードを選び治療を進めていくことはお勧めできません。

ストレスだけでなく別の問題が隠れていた場合に発見が遅れてしまうだけでなく、適切ではないフードを選んでしまえば、フードによってさらなるストレスを与えてしまう危険性もあるため、必ず獣医師さんと相談の上でストレス緩和の治療を行っていきましょう。

◆食物アレルギーによる大腸炎の治療法

食物アレルギーによって大腸炎を引き起こした場合には、原因となるアレルゲンが取り除かれたフードを与えたいところですが、キャットフードにはたくさんのタンパク質が含まれているため特定が難しく、低アレルギーフードを与えることが一般的となります。

食物アレルギーは完治が難しく、生涯に渡って付き合っていかなくてはいけません。

そのため、アレルギー反応を起こさないフードを食べ続けなくてはいけなくなり、根気の要る治療とも言えるでしょう。

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◆感染症による大腸炎の治療法

感染症から大腸炎を引き起こした際には、病原体が何だったのかは検査を用いて調べ、その病原体に合った治療を進めていきます。

細菌性の大腸炎であれば抗生剤や整腸剤での治療を行い、ウイルス性の大腸炎の場合は輸液療法、細菌による二次感染を防ぐために抗生物質などを用いて治療を行います。

寄生虫が原因となっている場合は、虫下し(寄生虫駆除薬)を使用することが一般的です。


猫の大腸炎の予防方法はある?

猫の病気は大腸炎に限らず、日頃から飼い主さんが意識して予防をしておくことが大切です。

完全室内飼いを徹底していたとしても、定期的なワクチン接種や駆除薬の使用を検討し、最低でも年に1回の健康診断を行って、健康状態を維持しておきたいものですよね。

日常生活の中でも誤飲や誤食をしない環境作りも大切ですし、快適な生活ができるようにストレスを溜めないような生活環境を整えておかなくてはいけません。

また、もともと胃腸が弱い子の場合は、フードの切り替えをあまりしないようにし、切り替える際には時間をかけながら様子を見つつ、負担をかけない切り替えを心掛けてあげましょう。

腸内環境を良くするペット用サプリメントなども販売されていますので、そのような商品の利用もおすすめですよ。


まとめ

猫の排せつは健康のバロメーターとなるため、常日頃からしっかりと観察をし、健康に異常がないかの確認は怠らないでいたいものです。

愛猫が血の混ざった下痢をしていた際には、突然のことに驚いてしまう飼い主さんも多いと思いますが、そんな状態だからこそ冷静な行動を心掛けて、猫ちゃんを安心させてあげたいものですよね。

大腸に異変が起きる大腸炎を患っている場合には、さまざまな原因の可能性が考えられるため、長期の様子を見るようなことはせず、早急に動物病院を受診するようにしてください。

原因を追究し適切な治療が行えれば、その分猫ちゃんが苦痛を感じる時間も短くなるため、早期治療を心掛けておくようにしましょう。

※こちらの記事は、獣医師監修のもと掲載しております※
●記事監修
drogura__large  コジマ動物病院 獣医師

ペットの専門店コジマに併設する動物病院。全国に16医院を展開。内科、外科、整形外科、外科手術、アニマルドッグ(健康診断)など、幅広くペットの診療を行っている。

動物病院事業本部長である小椋功獣医師は、麻布大学獣医学部獣医学科卒で、現在は株式会社コジマ常務取締役も務める。小児内科、外科に関しては30年以上の経歴を持ち、幼齢動物の予防医療や店舗内での管理も自らの経験で手掛けている。
https://pets-kojima.com/hospital/

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たぬ吉

たぬ吉

小学3年生のときから、常に猫と共に暮らす生活をしてきました。現在はメスのキジトラと暮らしています。3度の飯と同じぐらい、猫が大好きです。

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