1.猫のマズルとは
1-1.マズルの構造
2.マズルの役割
2-1.嗅覚の中心
2-2.温度センサー
2-3.コミュニケーションツール
2-4.食事と狩猟
3.マズルに関する健康問題
3-1.炎症や感染症
3-2.腫瘍やしこり
3-3.外傷やケガ
猫のマズルとは
マズルとは動物の口先のことで、鼻先や顎といった口周りの出っ張っている部分を指します。
日本語では「口吻(こうふん)」と呼ばれています。
◆マズルの構造
マズルの中心部となるウィスカーパッドには、長いヒゲが環状洞(筋肉や血液で満たされた袋状の部分)の中に集中して生えており、1本1本が個別に根本で支えられながら周囲には血管や神経が豊富に存在しているため、わずかな振動だけでなく刺激を受けるとヒゲが左右上下に反応します。
また、豊富な神経が存在していることからも、猫は興奮状態のときにウィスカーパッドを膨らませ、より詳細に周囲の状況を感知できるようです。
ウィスカーパッドの上部には猫の鼻を構成する「鼻鏡(びきょう)=鼻の表面」「外鼻孔(がいびこう)=鼻の穴」「上唇溝(じょうしんこう)=鼻の下の溝」と続き、「口唇(こうしん)」から「あご」までがマズルの構造となっています。
マズルの役割
猫のマズルはウィスカーパッドが中心になっている通り、敏感に周囲の反応を感知することに長けていますが、実際には以下のような役割を担っていると考えられています。
◆嗅覚の中心
マズルの中には鼻も構成されているため、もっとも重要な役割と言われれば、やはり嗅覚と言わざるを得ません。
ニオイを感じ取る細胞の量が人間の2倍以上となる猫の嗅覚は、人と比べて数万から数十万倍以上といった嗅ぎ分ける能力を持ち合わせています。
基本的に猫の鼻は鼻腔内の腺から出る分泌物により湿っているため、嗅細胞にニオイ分子が吸着しやすくなるといった効果が期待できます。
視力が優れていない猫にとって、嗅覚はとても大事な感覚のひとつと言えるでしょう。
◆温度センサー
猫の鼻には人間の皮膚と同じように温点と冷点があるため、マズルを何かに近づけている際には、温度を感じ取っている場合があります。
「猫は猫舌」と言われることがありますが、実際に舌が触れた際に熱いと感じているわけではなく、鼻から吸い込んだ空気の温度が高いと感じ取ったために、口をつけない場合が多いのです。
もちろんこのような温冷の感覚点は鼻だけに存在するわけではなく、身体の皮膚にも存在してはいますが、猫は人間と違って全身を被毛で覆われているため、被毛の生えていない鼻が一番温度を感じやすいのかもしれません。
◆コミュニケーションツール
猫の嗅覚は赤ちゃんのころから発達しているため、目が開いていない幼猫期であっても母猫のいる場所を把握し、ニオイでおっぱいがどこにあるかまで判別が可能です。
このように親子間でのコミュニケーションの一環として、嗅覚が重要であることが分かりますが、血縁関係のない猫同士や猫と人間とのコミュニケーションツールとしても役立ちます。
猫のマズルには臭腺(あごの下と口の両側)があるため、猫同士の挨拶やマーキングの際に用いられますが、飼い主さんに臭腺をこすりつけている場合は、相手に付着したニオイを消す、自分のニオイをつけて安心するといった意味合いがあるため、愛猫がスリスリしてきたときは臭腺付近を撫でるようにし、気の済むまでニオイをつけさせてあげましょう。
◆食事と狩猟
猫にとって食事は健康を維持する上でもっとも重要となりますが、野生時代に自ら単独で狩猟していたころから、ニオイを嗅いで安全に食べられるか、食べられないかの判断をしてきました。
鼻が利くからこそ獲物や敵のニオイをいち早く察知することによって、スムーズに狩りを行えますし、捕獲した獲物を保管した際にも腐っているかいないかの判断をニオイで確かめ、安全に食事をとるといった仕組みです。
このような能力が現代の猫たちにもしっかりと受け継がれているため、ニオイを感知する機能を備えたマズルは、猫にとってとても大事な部位と言えるのではないでしょうか。
マズルに関する健康問題
マズルは猫の身体の中でも愛するべき部位ではありますが、このぷっくりとしたかわいらしい愛猫の口元を守るためにも、飼い主さんは日常的に以下のような症状に注意しておくと安心です。
◆炎症や感染症
マズルに含まれるあごや口元は汚れが付着しやすく、そのまま汚れを放置したままにしておくと、炎症を起こして皮膚病を引き起こす、細菌や真菌などが原因となれば感染症を患う危険性も少なくありません。
猫の場合はこのような症状を「あごニキビ」と呼ぶことが多く、皮脂腺から出る分泌物のつまりや、食器に繁殖した雑菌が原因となって、炎症を起こした部位に黒いブツブツが見られるようになります。
症状が悪化していくと毛が抜け落ちて赤い斑点ができるようになり、さらに症状が進行していくと出血や細菌感染を起こして化膿といった症状が出るため、早急に動物病院での治療が必要と言えるでしょう。
◆腫瘍やしこり
猫も人間と同じように高齢になればなるほど免疫力が落ちますし、さまざまな機能が低下して腫瘍やしこりができやすくなってきます。
もちろん年齢に関係なく、何かしらの原因によってそのような症状が出てしまう若い猫ちゃんもいますが、表面的にそのようなできものが出現した場合には、比較的飼い主さんも気付きやすいと言えますが、鼻腔内などにできた場合には、なかなか気づいてあげられない可能性が高くなりますよね。
猫の鼻はとても小さいですから、普段からよく観察をするようにし、呼吸音が乱れていないか、変形した箇所はないか、出血をしていないかなどの確認を怠らないようにしてください。
◆外傷やケガ
猫は鼻を使って温度を感知する通り、高温の空気を勢いよく吸い込んでしまえば、火傷をしてしまう危険性も否めません。
また、猫には捕食本能が備わっているため、安全かどうかを確認するときにも噛んで確かめようとすることがあります。
対象物が尖っていたり、危険な生物だったりした場合には、外傷やケガを負ってしまう危険性があるため注意が必要です。
マズルのケア方法
愛猫の大切なマズルを守るためにも、日常的なケアは欠かすことができません。
以下のようなケア方法が健康的なマズル維持に役立ちますので、スキンシップと兼ねてマズルのケアを心掛けていきましょう。
◆定期的なチェック
猫のマズルはたくさんのひげがある通り、とても繊細な部位となるため、手で触れるときは優しく触れることを絶対とし、何かしらの異変がないかは目視で確認するようにしてください。
あまり触れすぎてしまうと機嫌を損ねてしまう場合もあるため、少しでも嫌な素振りを見せた際には、触れることをすぐに止めてあげましょう。
◆口内ケア
猫は歯周病を患いやすいため、口内のケアも日常的に行っていきたいものです。
万が一歯周病を患ってしまった際によだれがたくさん出てしまえば、口元が汚れてしまいますし、それが原因となってあごニキビや感染症を誘発する可能性も否めません。
歯みがきやサプリメント、歯みがき効果のあるおやつなどを用いて、口腔内を清潔に保ってあげてください。
◆毛とひげのケア
口周りにある毛とひげには食事後の汚れが付着しやすいため、猫ちゃん自身のセルフグルーミングでは汚れが取り切れない場合も多々あります。
食後にスキンシップを図る際には必ず、目視で汚れが付着していないかの確認をし、汚れが付着していた場合にはコットンやガーゼなどを用いて、ぬるま湯で濡らして優しく拭き取ってあげましょう。
まとめ
猫のマズルはなんともいえない愛らしさがあり、その部分を見つめているだけで幸せを感じるといった飼い主さんは多いはずです。
そんなマズルにはたくさんのヒゲが生えている通り、さまざまな役割を担っているため、触れる際には細心の注意を払って触れなくてはいけません。
敏感な部位であるからこそ日常的に異常がないかの確認を目視で行うようにし、かわいらしさ全開のマズルを守っていきましょう。
– おすすめ記事 –
・猫の抜け毛対策には何が有効?お手入れにはどんなグッズを使うべき? |
・メインクーンの値段相場はどれぐらい?どこからお迎えする? |
・老猫と遊びたい!体に負担をかけずに無理なく運動させるには? |
・猫の一日はどんな一日?時間帯によって過ごし方が変わるって本当? |