猫は嗅覚が優れている?生活空間の中で気になるニオイはあるの?

2025.03.23

猫は嗅覚が優れている?生活空間の中で気になるニオイはあるの?

猫は嗅覚がとても優れていると言われていますが、どれぐらいニオイに対して敏感に反応をするのかも気になったことはありませんか。 視力があまり良くない猫にとって嗅覚はとても重要な感覚となるため、どのような仕組みによってさまざまなニオイを感じ取っているのかも気になるところです。 猫の生活の中で嗅覚はどのような働きをしているのか、ニオイに好き嫌いはあるのかなどをご紹介させていただきます。


猫の嗅覚とは

フレーメン反応

「嗅覚(きゅうかく)」は五感の中でも重要な感覚となりますが、猫はこの嗅覚が非常に優れていると言われています。

猫はさまざまなニオイを嗅ぐことによって、情報を得る必要があるため、進化の過程で嗅覚が発達していったと考えられているようです。

まだ目の見えていない赤ちゃんのころから嗅覚が発達しており、ニオイを元に母猫のおっぱいや居場所を把握できるといった能力が長けています。

◆猫の嗅覚の仕組み

基本的に鼻の役割自体は人間も猫も大きな変わりはありませんが、猫にはニオイを感じ取る細胞が人間と比べると2倍以上あり、嗅ぎ分ける能力はニオイによって異なりはしますが、数万から数十万倍以上あると言われています。

そのため猫はニオイを感じ取る能力が圧倒的に優れており、空気中を漂うニオイ分子の濃度が数万分の1であったとしても、わずかなニオイを嗅ぎ取ることが可能となるようです。

なぜここまで圧倒的に猫の嗅覚が優れているのかというと、鼻腔の奥にある「嗅上皮(きゅうじょうひ)」と呼ばれる粘膜の広さが人間よりも広く、そこに存在している嗅細胞の数が2倍以上あることから、感度も敏感になっているといった仕組みです。

この数字を見るだけでも、猫は優れた嗅覚の持ち主であることがうかがえます。

◆猫の嗅覚とフェロモン

主にニオイを感じ取るといった役割を担っている猫の鼻ではありますが、人には感じ取れない「フェロモン」といった、コミュニケーションに欠かせない揮発性の嗅覚物質を嗅ぎ分けることも可能です。

口の天井部(鼻腔と上顎との間)には左右一対の「鋤鼻器(じょびき)=」といった器官があり、別名「ヤコブソン器官」とも呼ばれ、猫にしか感じ取れないフェロモンをキャッチします。

猫のフェロモンは発情期を迎えたメス猫が発する性フェロモンだけでなく、頭や顔をこすりつける際に出る分泌物もフェロモンの一種となっているようです。

また、反応するかしないかは個体差がありますが、マタタビやキャットニップなどを嗅いで、酔ったような反応を起こさせるのもヤコブソン器官の働きとなり、よりたくさんの情報を送るために、猫がしてしまう独特の表情を「フレーメン反応」と呼んでいます。

猫のフレーメン反応の秘密!変な臭いで変な顔をしてるってホント!? 猫のフレーメン反応の秘密!変な臭いで変な顔をしてるってホント!?


猫の嗅覚と生活

猫の嗅覚は生活をする上でも必要不可欠となりますが、ニオイを感じ取る以外にはどのような力を発揮するのかも気になるところですよね。

また、ニオイを嗅ぎ分けるといった能力が長けていることによって、以下のような効果も得られると考えられています。

◆匂いによる安心とテリトリーの確立

猫は縄張り意識の強い動物となるため、自分の匂いがついている物や場所に安心感を覚える傾向があるようです。

頭や顔をこすりつけてフェロモンをつけるといった行為もテリトリーの主張となり、「ここは自分の場所だ」「自分の物だ」と示していると考えられています。

このようなことからも、愛猫が愛用しているアイテムを汚れたからといって洗濯をしたり、香りの強い柔軟剤や芳香剤を使用したりすれば、匂いによって安心を得られなくなってしまうため、愛猫のテリトリー内は香りの強い洗剤などは使用しない方が無難と言えるでしょう。

◆食欲と嗅覚の関係

猫の食欲にも嗅覚は大きく関係しており、お腹が空いてくると嗅覚が強まって、食べ物への興味を強く示すようになります。

猫の味覚は人間ほど優れていないため、食べ物の匂いを嗅いで食べても平気な物なのか、美味しい物なのかを判断しているようです。

それぐらい猫にとって食欲と嗅覚は密接な関係にあるため、風邪を引いて鼻が詰まったり病気によって腫瘍ができたりすると、急激に食欲が低下することもあるため注意が必要です。

◆飼い主と猫の関係における匂いの影響

自分のニオイで猫が安心感を得るように、信頼関係が築かれた飼い主のニオイを好む傾向も強いと言われています。

飼い主さんにスリスリするといった行動が見られるときは、飼い主さんを独り占めしたいといった愛情表現でもあるとともに、自分のニオイを飼い主につけて更なる安心感を得ようとしているとも言えるでしょう。

外から帰宅した飼い主さんに対して、執拗に自分の身体の一部をこすりつけてくる場合は、知らないニオイを自分のニオイで上書きしようとしているのかもしれません。


猫の嗅覚と他の感覚とのバランス

とても優れている猫の嗅覚となりますが、嗅覚が優れているだけでは生活をする中で不便さを感じてしまうため、不自由に思ってしまうことが多くなってしまうはずです。

猫は嗅覚だけでなく、ほかの感覚器官をどのように使ってバランスを保っているのでしょうか。

◆猫の聴覚や視覚との役割分担

十分優れている猫の嗅覚ではありますが、猫の感覚器官でもっとも優れていると言われているのが聴覚です。

人間の4倍、犬の2倍とも言われていて可聴域が広く、私たちには聞こえないような超音波も聞き取れますし、音の方向を正確に聞き分けられるといった特徴があります。

一方で猫は目で物を見るといった視覚が劣っており、動かない物や遠くの物を見ることが苦手です。

動体視力や暗闇で物を見分ける能力は長けてはいますが、劣っている視覚を補うためにも聴力で場所を特定し、嗅覚を使って情報を得ながらうまくバランスを取って生活をしています。

◆猫と犬の嗅覚の違い

猫と犬の嗅覚を比較してみると、犬は嗅ぎ分ける力が人間の100万倍以上
とも言われているため、猫よりも嗅覚が4倍ほど鋭敏と言われています。

この能力を生かして警察犬や災害救助犬として活躍しているワンちゃんも多く居るぐらいですから、動物の中でもっとも嗅覚が優れていると思われがちですが、動物の中で一番鼻が利くのは「ゾウ」となります。


猫が好む匂い・嫌う匂いとは?

匂いを嗅ぐ猫

嗅覚によってさまざまな情報を得ながら生活をしている猫ではありますが、生活環境の中でどのようなニオイを好み、どのようなニオイを嫌っているのかも気になるところですよね。

好きなニオイを知っておくことにより、生活環境をより良い環境にできるはずのため、改めて猫が好む傾向の強いニオイを理解しておきましょう。

◆猫が好きな匂い

猫の個体差にもよりますが、やはり何といっても食べ物(ご飯やおやつ、人間の食べ物)のニオイが好きな子は多いですよね。

袋を開ける音、お皿に入れる音を耳で感じつつ、香りも同時にキャッチした瞬間に、「早くちょうだい!」とおねだりしてくる子も少なくないはずです。

猫はとてもキレイ好きなことから、時間があれば自らを毛づくろいし毛並みを整えていますが、自分自身のニオイに安心感を得るように自分のニオイが大好きです。

仲の良い相手(飼い主さんや一緒に住んでいるほかの猫など)のニオイも好む傾向が強くその相手が使っている衣類、寝具、タオルなどにも興味を示す子は多くいます。

そのほかにはマタタビのニオイ、キャットニップのニオイ、お日様のニオイ、新聞紙のニオイなどが好きな子も多いですよ。

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◆猫が嫌いな匂い

自然に馴染む香りとは別に、人工的に作られたようなニオイを嫌う傾向にあります。

とくに香水やアロマ、タバコなどの強いニオイに嫌悪感を示す子は多く、身体だけでなく心にも悪影響をもたらすため、猫ちゃんの居るご家庭では使用しないに越したことはありません。

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また、柑橘系の香りを嫌う猫ちゃんも多く、その理由として含有されている「リモネン」といった成分に反応していることが考えられます。

リモネンは猫の身体で解毒できないだけでなく、肉や魚が腐った臭いを連想させるため、野生時代の本能が食中毒へのリスクを避けているようです。

ほかにも、縄張り意識の強いオス猫は男性の汗に反応し、強いストレスを感じる場合もあるため、一緒に暮らす中で飼い主側もニオイ対策をしておく必要があると言えるでしょう。

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まとめ

私たち人間と同じように鼻を使ってさまざまなニオイを感じ取る猫ではありますが、その構造や機能性を知っていくと、人間とは比べ物にならないほどの嗅覚の持ち主であることが分かりましたよね。

五感といった感覚機能が備わっていたとしても、すべてが平等に機能しているわけではなく、優劣がある中でバランスを取りながら上手に機能しているため、猫にとって嗅覚がどれほど重要な感覚であるかも知ることができました。

とても繊細で敏感な感覚だからこそ、一緒に暮らす飼い主さんは日常生活の中で猫が嫌うニオイを遠ざけるようにし、好きなニオイで安心できるような空間を提供してあげたいものですよね。

個体によってはニオイへの反応もさまざまとなりますので、愛猫の様子をよく観察しながら、どのようなニオイに反応しているのかをしっかりと見極めていきましょう。



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たぬ吉

たぬ吉

小学3年生のときから、常に猫と共に暮らす生活をしてきました。現在はメスのキジトラと暮らしています。3度の飯と同じぐらい、猫が大好きです。


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