盲導犬について
私たちが普段、何げなく歩いている道路も、目が不自由な方は一人で街を歩くことが難しいでしょう。歩道には誘導してくれる点字ブロックが街の至るところに存在します。ただ、目が不自由な方たちのための安全を誘導してくれるこのブロックの存在は、健常者たちにとっては常に意識されているものではないという点が問題点とも言えます。
点字ブロックの上に自転車や自動車が停められていることも多々あり、トラブルが発生することもあります。
盲導犬は日本ではどのくらいいる?
盲導犬と聞くと、その姿をイメージできるほど世間の認知度は高まっていますよね。しかし、実際に街で盲導犬を見かけたことがあるかというと、そんなに見かける機会もないような気がします。
実は、日本では盲導犬の普及率が低いです。38万人の視覚障害者の方達に対し、盲導犬と一緒に暮らしている方々の人数はたった1000人ほど(2014年現在)。欧米諸国の盲導犬の普及率と比較すると、だいぶ少ないのです。日本の歩道状況や盲導犬の導入費用の問題が大きく関係していて、盲導犬を育成して運営する資金の収入源の多くを寄付金から賄っているので、多くの皆様の理解が必要ということになるようです。
パピーウォーカーとは
盲導犬として働いている犬は生まれてすぐに盲導犬として仕事をする訳ではありません。盲導犬として働くには「社会に慣れる」ということが大事です。人間や社会に慣れていないと目の不自由な方々の毎日をサポートすることが難しいですよね。
そこで、盲導犬候補の犬たちが将来活躍できるように、まずは人間との信頼関係を築き、人間と生きることの喜びを与えてあげるのがパピーウォーカーの皆さんのお仕事です。約10か月の間、家族の一員として子犬と一緒に暮らすボランティアです。
盲導犬になるためには子犬時代の人間との関係が大事
盲導犬は目が不自由な方の「目」にならなければなりません。人間がたくさんいる場所にも出かけ、さまざまな経験をすることが必要です。パピーウォーカーの家族の方々との暮らしの中、人間に愛情を注いでもらい人間と過ごすことに喜びを覚えた犬たちは、きっと将来目の見えない方々のサポートをスムーズに行える立派な盲導犬になることでしょう。
パピーウォーカーになるために必要な準備
盲導犬候補のワンちゃんたちの大事な時期を一緒に過ごすパピーウォーカーですが、基本的な条件や注意しなければならないこともあります。単に「可愛がる」ということだけでなく、愛情を持ち、そしてワンちゃんの社会性を身につけるということを考えなければなりません。
パピーウォーカーになる条件とは
盲導犬になるためのワンちゃんを約10か月の間育てることは、将来目の見えない方々のサポートにもなります。そこで、パピーウォーカーになりたいと考える方もいるかもしれません。しかし、パピーウォーカーは重要な役割でもあり、誰でもなれるというものではありません。まずは、基本的な条件についてご紹介します。
・室内で飼育ができること
盲導犬になれば、目の不自由な方の目となるために室内で生活します。そのため、パピー時代に「室内で人間と生活する」というマナーを身につけなければなりません。そのため、「室内飼育」が基本的な条件になります。
・家族全員で受け入れること
パピーウォーカーになったら、家族全員で子犬を育てます。そのため、赤ちゃんや高齢者のいるご家庭は負担が大きく適していないとも考えられます。
・ワンちゃんの送迎に車を運転できること
訓練センターで定期的にレクチャーに参加するため、訓練センターまでワンちゃんを車に乗せて送迎することが可能でなければなりません。また、車の乗り降りに慣れるためにも車を所有していることが条件になるようです。
・留守をあまりしないこと
盲導犬候補のワンちゃんにするために、パピー時代の食事や排せつのしつけはとても重要。家族全員が仕事を持っていて留守にすることが多い場合は、しつけが不十分になってしまいますね。
・子犬の育児用の費用の負担ができること
パピーウォーカー中の子犬の育児用品や病院代など月々数千円程度、パピーウォーカーが負担することになります。
子犬を迎えるために必要な準備とは
パピーウォーカーに登録するには上記のような基本的な条件に加えて、ワンちゃんへの愛情が重要です。迎え入れられた子犬が「人間を好き」になるには、パピーウォーカーの家族の温かい愛情がとても大事。人間のことを大好きな盲導犬を育成するための「大事な役割」であることを理解しましょう。
さて、実際にパピーウォーカーへ登録を希望すると、盲導犬予備軍の子犬を育成できるご家庭であるかどうかという面談が行われたり、説明会に参加して詳しい内容の説明を受けたりしなければなりません。
それ以外にも事前に準備が必要です。
・子犬が寝る場所の準備
ワンちゃんが安心して眠ることができる場所を確保しておきましょう。ケージや犬用のベッド、毛布などの準備です。
・トイレの準備
生後2か月の子犬を迎えるので、トイレのしつけも大切。トイレやトイレシーツの準備をしておきましょう。
・食事用の食器
こちらも毎日使う欠かせないものですね。食事用の食器以外にも新鮮な水がいつでも飲めるように、水用の食器も必要です。
・散歩用の引き紐
散歩をする時期(生後4か月)までに準備しておきます。
準備の詳細については、盲導犬協会の方から事前に詳しい説明があるので、スタッフさんの指示のもと準備していくようにすればいいでしょう。また、分からないことがあれば、相談して盲導犬のたまごであるパピー達を育てていきたいものですね。
10か月後にはお別れ
10か月という期間限定とは言え、家族として暮らしてきたパピーと別れるのは辛いですよね。短期間ではありますが、パピーウォーカーの家族にとっても、ワンちゃんにとっても深い絆で結ばれた充実した期間になると思います。また、ワンちゃんとはもう会うことはありません。家族同然だったので、悲しくないと言えばウソになりますよね。
しかし、ワンちゃんにとっては新たな出発。自分達が育てた子犬が、今後訓練を経て「盲導犬」として目の不自由な方のサポートをしていきていきます。どこかで頑張ってくれていると思えば、悲しい別れというよりも「ワンちゃんの新たな出発」と前向きに考えることができそうですね。
パピーウォーカーから盲導犬、そして引退
盲導犬候補のワンちゃんたちは、ラブラドール・レトリーバーやゴールデン・レトリーバーといった大型犬種です。目の不自由な方を誘導するための大きさや可愛らしい優しめの
顔が特徴的です。
生まれてから2か月目までは母親犬や兄弟犬と一緒に生活しています。そして生後2か月から1歳まではパピーウォーカーのもとで人間の優しさに触れあいながらすくすくと育っていきます。
成長段階でパピーウォーカーの家族の方々とたくさんの場所に出かけて、人間と行動する喜びを知っていきます。パピーウォーカーとの暮らしはとても重要で、その後の盲導犬としての暮らしの基礎となるものです。人間と暮らしていく中で「人間と暮らす社会においてのルール」を学びます。
パピーウォーカーの家族のもとを離れる1歳を過ぎれば、いよいよ盲導犬になるための訓練が始まります。街を歩く時には、目の不自由な方の安全を確保するために、障害物を察知する能力が必要です。このような訓練を経て、実際に目の不自由な方たちとの訓練がスタート。訓練が終わってからは晴れて盲導犬デビューです。
しかし、いつまでも盲導犬として生きていく訳ではありません。
だいたい10歳くらいで盲導犬は引退していきます。引退後は引退犬オーナーのボランティアの新しい家族と一緒に幸せに暮らしていきます。
引退犬オーナーになる条件もパピーウォーカーになるための条件とほぼ似ていて、お部屋で飼育することができること、留守が少なくお世話を十分にできる時間があること、責任を持って引退犬のお世話ができること、飼育費用の負担をすることなどがあります。
前述しましたが、盲導犬が必要な人に対して、実際には盲導犬の数が足りていない現状があります。そのひとつにパピー時代を共に過ごす「パピーウォーカー」が不足していることがあげられます。
パピーウォーカーになるきっかけはさまざまですが、愛情を持って一緒に生活していく経験は、ワンちゃんにとっても家族みんなにとってもきっと素晴らしい経験になることでしょう。パピーウォーカーというボランティアを通じて得られるものは大きいものであると言えそうです。
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