【掲載:2019.06.02 更新:2021.04.19】
江戸時代の人の夢!伊勢神宮へおかげ参り
江戸時代の多くの人にとって、伊勢神宮にお参りに行くのは夢でした。「一生に一度でいいから、伊勢神宮に行ってみたい」そんな強い思いから、仕事を無断で休んでお参りに行ってしまう人もいたそうです。
そんな中、多くの人が一斉に伊勢神宮に参拝する「おかげ参り」という現象が起きました。参拝者が300万人~500万人という年もあったそうです。陰にかくれてお参りに行くので「お蔭参り」と言われるようになったとのことです。
江戸時代にはもちろん電車や車はないので、皆ひたすら歩いて伊勢神宮を目指します。江戸に住んでいれば、その距離は片道だけでも400kmを超え、1カ月ほどかかる大変な旅になります。お金も時間もかかるし、体力も必要になりますから、行きたくても行けない人が大勢いました。
代理で伊勢神宮参りをするおかげ犬
そんな時、愛犬に代理でお参りに行ってもらう人が現れました。これが、「おかげ犬」です。伊勢神宮に向かう人に愛犬を託し、自分の代わりにお参りをしてもらうのです。最初は、知り合いの人に同行する形で主人の代わりにお参りをする、というスタイルでした。そのうち、犬だけで伊勢神宮まで無事に行って帰ってくるケースも出てきたというから驚きです。
主人は、犬の首にしめ縄などでお金を入れた袋をぶら下げて送り出します。この姿を見た人は、おかげ犬だと分かりますから、エサを与えたり宿泊させてあげたり、大切にお世話をしたそうです。賢い犬は主人のため、まだ見たこともない伊勢神宮を目指し、旅をします。そしてお参りをして、無事に帰宅。首には、お参りの証としてお札がついている、という奇跡のようなお話です。
おかげ犬は本当にいたの?
あまりにもいい話過ぎて、にわかには信じられませんが、証拠が残っています。たとえば、江戸時代の浮世絵師である歌川広重は、いくつかの作品におかげ犬を描いています。伊勢市にある「神宮の博物館」に展示されている「伊勢参宮宮川渡しの図」には、首にお札を携えた真っ白な犬がはっきり見えます。
また、福島県須賀川市の「十念寺」には、芭蕉の句碑などと一緒に犬塚があり、この犬塚は、おかげ犬のお墓だとされています。利口な犬として知られた「シロ」は、主人の代わりに2カ月かけて伊勢神宮へのお参りを果たしたそうです。
三重県津市にある「三重県総合博物館」の展示する「御陰参宮文政神異記」という本にも、おかげ犬の記述があります。徳島県の「おさん」という犬が、伊勢神宮にお参りしたとのこと。四国と本州が陸続きではなかった江戸時代に、よくぞ無事に行って来られたと拍手をおくりたくなります。
HP:神宮の博物館
おかげ犬はどんな犬?
お土産品のおかげ犬の置物などは、ほとんど被毛が白色です。実際のところは、たくさんのおかげ犬がいたので、犬種を1つに決めることはできませんが、だいたいどんな犬だったのでしょうか。
日本犬の中で、毛色が白いのは紀州犬・秋田犬・北海道犬。紀州犬は、主人に従順で頭が良いので、主人の気持ちをくみ取って、伊勢神宮に行こうとしてくれるかもしれません。イノシシを倒す強さをもち、運動量が多く体力があるので、長い旅をするのにも向いていますね。先ほどの徳島県の「おさん」は、紀州犬だったとされています。
秋田犬は「忠犬ハチ公」に代表される主人思いの犬種です。主人の指示をよく理解し、優れた運動能力をもつので、難しいおつかいを頼むのにぴったり。均整のとれた美しい姿は、おかげ犬のモデルとして最適で、首にしめ縄を巻くファッションもバッチリきまります。福島県の「シロ」は、純白の秋田犬でした。
北海道から伊勢神宮に行くというのは、当時現実的ではないせいか、北海道犬は、逸話が見つかりませんでした。主人に忠実という点では申し分ないのですが、あまり社交的でなく暑さに弱いところが、おかげ犬向きではないかもしれません。
伊勢神宮へ愛犬と一緒にお参り
江戸時代の人にとって一大行事だった伊勢神宮参りですが、今は手軽になりました。東京都庁あたりから伊勢神宮まで、新幹線を使うと10時間あればお参りに行って帰れます。北海道からだって、1泊あれば往復できます。
おかげ犬の出番はなくなりましたが、愛犬を連れて伊勢神宮に行くことはできます。近くにペットOKの宿もあるし、伊勢神宮も途中までなら犬を連れて入れます。ただし、伊勢神宮の本殿で一緒にお参りをすることはできません。愛犬は警備員さんのいる「衛士見張所(えしみはりじょ)」で、無料で預かってもらい、そこにお留守番になります。
伊勢神宮参りのお土産品のおかげ犬
実際のおかげ犬に出会うことはできませんが、代わりにお土産品を手に入れて、おかげ犬を身近に感じてみてはいかがでしょうか。おかげ犬グッズは、伊勢神宮の近くにある「おかげ横丁」の「おみやげや」に行けば「おかげ犬御守木札」など、たくさん販売されています。ネットショップもあるので、手軽に手に入れられます。
「おかげ横丁」は、「伊勢神宮のおかげ」という感謝の意味をこめた名前だそうです。おかげ犬グッズを見たら江戸時代のおかげ犬に思いをはせ、「愛犬のおかげ」という、感謝の気持ちを忘れずに過ごしたいですね。
HP:おかげ横丁
伊勢の梅わんカップ
おかげ犬サブレ
おかげ犬みくじ
おかげ犬おまもり
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