1.犬が首をかしげるのはなぜ?
1-1.なんだろう?と思った時に首をかしげる
1-2.いつもと違う音を聞いた時に首をかしげる
1-3.音の位置を探す時に首をかしげる
2.犬が首をかしげる音を聞かせてみよう!
3.犬の耳の構造とはたらき
3-1.外耳(がいじ)
3-2.中耳(ちゅうじ)
3-3.内耳(ないじ)
5.犬の聴覚には音の距離や方向を感知する役割も
5-1.犬の聴覚:可聴域
5-2.犬の聴覚:距離を感知
5-3.犬の聴覚:方向を感知
6.頻繁に首をかしげるのは病気のサイン?
6-1.中耳炎が原因の首かしげ
6-2.脳腫瘍が原因の首かしげ
6-3.前庭神経炎が原因の首かしげ
【掲載:2017.05.19 更新:2020.07.23】
犬が首をかしげるのはなぜ?
こちらの犬の絵を見たことがありますか?犬好きや音楽好きの間では有名かもしれません。首をかしげる犬がトレードマークになっている、ビクター。こちらの犬の名前はニッパーと言います。
このニッパーの姿は、蓄音機から聞こえてくる亡くなった飼い主さんの声を一生懸命聞こうとして首をかしげている様子だとされています。
その話を知って、ニッパーがもういるはずのない飼い主さんの声の出所を確かめようとしているのか、もっとしっかり聞こうとしているのか…首をかしげる姿が切なく見えました。
それでは犬はどういう時に首をかしげるのでしょうか?愛犬で試してみたことや、調べてみたことをお伝えします。
◆なんだろう?と思った時に首をかしげる
人間が首をかしげる時は「あれ?」などと理由がわからない時が多いですね。
犬も人間と同じように、見かけないものや聞きなれない音を感じた時に、「なんだろう?」と首をかしげることがあります。
「不思議だな」と感じた時に首をかしげる動作が見られるのは、「危険なのかもしれない」という犬の本能が働いているからだそうです。
◆いつもと違う音を聞いた時に首をかしげる
飼い主さんがいつもと違う声で話しかけた時、犬が首をかしげるのを見たことはありますか?
犬は人間とは違う音域で音を聞いていると言われています。
飼い主さんが話しているのはわかるけど、「何かいつもと違う音がするけど何を言っているのだろう?」と思うと、犬は首をかしげるようです。
犬は飼い主さんの話や命令をよく聞きますが、それは危険をいち早く察知するためではないかと考えられています。
「いつもと違う声=危険ではないか?」と感じ、本能で首をかしげる仕草が見られることもあるようです。
◆音の位置を探す時に首をかしげる
犬の聴覚は人間と比べてもとてもすぐれていると言われています。
人間の声はもちろん、近づいてくる車やドアの向こうの足音など、私たちが聞くことのできない音域まで聞きとり、音の位置を把握しています。
我が家の愛犬で実験してみたところ、音の出るおもちゃを後ろに隠して鳴らしてみたら、「どこから聞こえるのかな?」と首をかしげる姿が見られました。
愛犬の様子を見て、犬が音の位置を探す時に首をかしげるのは、本当なのだと分かりました。
犬が首をかしげる音を聞かせてみよう!
犬を音を聞いて首をかしげるときは「この音はなんだろう?」と疑問に思うとき、「いつもと違う音がする!」と警戒する時、「この音はどこから鳴っているのかな?」と音の位置を探すときの3パターンが定説だということがわかりました。
YouTube動画から、犬が首をかしげる音を探してみました。
こちらの音を聞いて犬が首をかしげるかどうか、ぜひおうちのワンちゃんに試してみて下さいね!
どんどん首が傾いていく姿はとても可愛らしいですよ。
また、首をかしげる姿を見たい時に、動画を再生したりおもちゃを鳴らすよりも手軽かつ簡単にできるのが「リップロール」です。
リップロールとは、唇をブルブルさせながら発声することを言います。リップロールをすると、飼い主さんの口元に注目しながらどんどん首をかしげていく様子が見られると思います。
この方法なら、写真や動画を撮りながら実践することができるのでとてもおすすめですよ!
犬の耳の構造とはたらき
人間と比べてもとても優れている犬の聴覚ですが、それは周りの音を可能な限り集めるために、集音器の役割をする耳が発達していたからなのです。
犬の耳の構造とそのはたらきについてお伝えします。
犬の耳は大きく分けて、外耳・中耳・内耳の3つの部分があります。
◆外耳(がいじ)
外耳とは、顔の上や横についている、目に見える部分の耳のことです。
耳介(じかい)という耳の軟骨のあるひらひらした部分や、耳介を動かす耳介筋(じかいきん)、外耳道(がいじどう)と呼ばれる音の通り道の部分をまとめて外耳と呼びます。
◆中耳(ちゅうじ)
中耳炎という病名を聞いたことがある方も多いと思いますが、人間と同じように犬にも中耳があります。
中耳とは、耳の鼓膜から奥の部分のことを指します。
中耳腔(ちゅうじくう)、耳小骨(じしょうこつ)、耳管(じかん)から構成され、鼓膜に伝わった空気の振動を増幅して、さらに奥の内耳に伝える働きをしています。
◆内耳(ないじ)
内耳とは、外耳の奥にある中耳よりさらに奥にある部分で、蝸牛(かぎゅう)と前庭・三半規管(ぜんていさんはんきかん)によって構成されています。
蝸牛などにはリンパ液が流れていて、鼓膜から伝わった振動がこのリンパ液を通じることによって脳内に音の情報が送られます。
犬の耳は集音器の役割をする
犬が周りで発生する音を可能な限り集めるために活躍するのが、集音器の役割をしている耳です。
音が聞こえにくい時に、人間が共通して行う動作があるのをご存知ですか?
人間の耳は自由に動かすことが難しいようになっているので、音が聞こえにくい時には、耳を音のする方に頭や体を回転させるのです。
それでも聞こえない時に、手のひらをカップ状にして耳にあてがうという動作をします。
一方で、犬は人間と違って、集音器である耳を自由に動かすことができます。
犬の耳は、耳介筋と呼ばれる筋肉が発達していて、前後や下方向、左右別々にも動かすことができます。
そのため、顔や体を動かさなくても、聞こえてくる音の方向に耳を動かして、いろいろな音を拾うことができるという訳です。
犬の聴覚には音の距離や方向を感知する役割も
犬の耳は音を集める集音器の役割を持っていることがわかりました。
犬の聴覚は音を聞くことだけではなく、音の距離や方向を感知する能力も含まれますので、ご紹介します。
◆犬の聴覚:可聴域
可聴域とは、音として感知することができる周波数のことで、「何ヘルツ」で表現されます。
犬の可聴域は、15ヘルツ~6万ヘルツと言われていて、人間の12ヘルツ〜約2万ヘルツと比べても音域の幅が広くなっています。
また、犬の反応がよい音域の音があります。例えば消防車やパトカーなどのサイレン音を聴くとワオーンをする犬がいます。
それは「遠吠え」と呼ばれる犬科の独特の習性です。
遠吠えは、遠くにいる仲間に自分の意図を伝えるコミュニケーションのためや、群れからはぐれた際に、群れと自分の位置を把握するために使われてきました。
この遠吠えはちょうどサイレン音と同じくらいの周波数となっているそうです。
他の犬の呼びかけに応えようとする本能から、サイレン音に反応して遠吠えしていたのですね。
◆犬の聴覚:距離を感知
犬の聴覚の役割のひとつに、距離を感知することも含まれます。
犬は人間の約400倍の距離の音を聞き取る事ができるそうです。
人間が3m先の音に気づけるとしたら、犬は約1.2km先の音に気づけるということになります。
◆犬の聴覚:方向を感知
犬は音のする方向を感知する能力も優れています。
人間は平均16方向を感知することができますが、犬は32方向を区別することができるそうです。
犬は寝ている時も聴覚が働いていて、常にいろいろな方向から聞こえる音に囲まれて過ごしています。
頻繁に首をかしげるのは病気のサイン?
犬は音を拾う耳の働きが優れているので、様々な音を拾えることがわかりました。
また、犬が首をかしげるのは、音や飼い主に反応していると同時に、危機管理の意味もあるということもわかりました。
しかし犬に普段とは違う首かしげが見られた場合、病気が隠されている場合があります。
それは、犬が首をかしげる時に、同時に耳を脚で掻いたり、頻繁に首をかしげる場合などです。
ごくまれに、耳の神経系の疾患や耳に炎症を起こしている場合があり、そのため首をかしげていることがあります。
首をかしげる動作のタイミングがおかしい場合、それは病気のサインかもしれません。
愛犬にいつもと違う首をかしげるしぐさが見られる場合は、獣医師さんに相談してみると安心ですね。
早期発見すれば早期治療もできる病気もありますので、おかしいなと感じたら、獣医師さんの診察を受けるようにしましょう。
それでは、病気による首かしげについて解説していきます。
◆中耳炎が原因の首かしげ
犬の聴覚を司る耳の病気で多いのが中耳炎です。
中耳炎は細菌の感染によって起こることが多い病気ですが、中耳炎からさらに内耳に感染症が広がることで、犬が首をかしげることがあります。
炎症が起こっている側へ首をかしげることが多いので、その場合は動物病院を受診するようにしましょう。
◆脳腫瘍が原因の首かしげ
脳は体のいろいろな動きを司る役割を持っていていますが、その役割のひとつに平衡感覚が挙げられます。
脳の平行感覚を司る部分に犬の脳腫瘍が発生すると、首かしげが確認されます。
首かしげは、医学用語では斜頸(しゃけい)と呼ばれています。
斜頸は、中枢神経や末梢神経の病気のひとつの症状として発症する場合があります。
はっきりした原因はまだわかっていませんが、だんだん症状がひどくなっていく場合もありますので、犬の首かしげが頻繁に見られるようになったり、おかしいなと感じたら、すぐに動物病院に行きましょう。
◆前庭神経炎が原因の首かしげ
前庭神経炎(ぜんていしんけいえん)とは、耳の奥にある前庭神経に炎症が起きることで、体の平衡感覚が保てなくなって首をかしげる仕草が見られるようになる病気です。首かしげの症状の他にも、食べ物を吐いたり同じ場所をぐるぐる回ったり、真っ直ぐ歩けなくなったり、眼球が震えたりする症状なども現れる場合があります。
特に老犬に多く見られますが、何らかの病気から併発したり、前触れもなく発症することもありますので、普段とは違う首かしげが見られた場合は、すぐに獣医師さんの診察を受けるようにしましょう。
犬が音を聞いて首をかしげる行動に関するまとめ
犬が首をかしげることと、犬の聴覚についてお伝えしましたが、いかがでしたでしょうか。
人間より優れていると言われている犬の聴覚は、集音器としての耳の筋肉の動きが発達しているからだと知ることができました。
犬のしぐさには、いろいろな気持ちやサインが隠されています。
なんらかの病気で首をかしげている場合もありますが、犬が気持ちを伝えたくて首をかしげている場合もあります。
愛犬が首をかしげている姿を見かけた時は、「かわいい♪」と眺めるだけでなく、「これは何を伝えたいのだろう?」と、犬の気持ちを考えてあげられるといいですね。
愛犬が首をかしげた時は、よく観察して対応していきましょう。
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