1.なぜエリザベスカラーが必要なの?
1-1.①避妊・去勢手術の後
1-2.②皮膚病の治療
1-3.③耳の病気の治療
1-4.④目の病気の治療
2.ごはんの時や寝るときはエリザベスカラーを外していいの?
2-1.ごはんの時にできる工夫
2-2.寝るときにできる工夫
3.エリザベスカラーを嫌がる愛犬のための対処法
3-1.①術後服を着せる
3-2.②エリザベスカラーの材質を変える
3-3.③手作りする
3-4.④慣れてもらう
【掲載:2017.12.18 更新:2020.07.16】
なぜエリザベスカラーが必要なの?
犬につける「エリザベスカラー」という医療器具をご存知ですか?
エリザベスカラーを知らない場合でも、散歩最中に犬の首回りに透明なものが付いているのを見かけたことのあるかたもいらっしゃると思います。
エリザベスカラーは、犬の病気の治療中や、手術の後に利用されるとても一般的な医療器具です。
そのエリザベスカラーの主な役割は「手足や口で身体に傷をつけないようにする」ために使用されます。
具体的にエリザベスカラーの4つの使用場面をあげてみます。
- 避妊・去勢手術の後
- 皮膚病の治療
- 耳の病気の治療
- 耳の病気の治療
この4つ以外にもエリザベスカラーを使用する場面があるかもしれませんが、特に使用することが多いこの4つについて以下に詳しく記載します。
①避妊・去勢手術の後
望まない妊娠や、生殖器が原因となって発症する病気を未然に防ぐために、避妊・去勢手術はとても一般的に行われている手術です。
避妊・去勢手術は、体の中にある生殖器を皮膚にメスを入れて取り出すため、どうしても皮膚に傷跡が残ります。
人間の場合、手術で大きな傷が出来たとしても、「傷口がふさがるまで触らないでください」と言われれば触る事は無いでしょう。
しかし、言葉のわからない犬は、体のどこかに気になる箇所があれば、口で舐めてみたり、足で引っかいてみたりします。
犬が気になった傷口に触れると、まだ塞ぎ切っていない状態の傷跡では、口からばい菌が感染してしまったり、新たに傷口が開いたりしてしまいます。
手術の傷口を完全に防ぎ、細菌感染も防ぐように、エリザベスカラーを使用して口が傷口に届かないようにします。
②皮膚病の治療
犬が皮膚病にかかると、全身にお薬を塗る事があります。
そのお薬は、口の中に入れてはいけない物だとしても、犬は体についた薬が気になって舐めてしまう事もあるでしょう。
そんな時、エリザベスカラーを付けておけば、体に塗られた薬を口で舐めとる事ができません。
また、皮膚病でよくある症状として、指の間や全身がかゆくなってしまうものがあります。
その際にもエリザベスカラーをしておけば、指の間や全身をかき壊して二次感染を起こす心配がなくなります。
③耳の病気の治療
犬の代表的な病気の1つとして、外耳炎や内耳炎などの耳の病気が多くあります。
耳の病気を発症すると、犬は耳がかゆくなって後ろ足や前あしで耳の中を掻きむしってしまいます。
その掻きむしったところから細菌が感染して二次感染を起こしてしまうと、もっとひどい病気へと発展してしまいます。
耳の病気の治療をする際は、犬が耳を掻きむしらないようにエリザベスカラーを装着し、耳の中に入れた薬を後ろ足でかきとらないようにします。
④目の病気の治療
犬の目に傷が出来てしまう、目やにが大量に出てしまったなどの症状が出た場合、犬は目の不快感から前足でこすろうとします。
不快感から犬はよくこする仕草をしますが、目の病気はこすっても治らない事がほとんどで、最悪の場合目に現れた症状がもっと進行してしまいます。
そのため、犬の目の病気の治療には、目をこすらないように前足を目まで届かせないようにするエリザベスカラーが必要なのです。
①~④のように、何か外科的手術をしたときや、顔回りの病気・皮膚病の治療中にはエリザベスカラーが必要なのがお分かりいただけたでしょうか。
ごはんの時や寝るときはエリザベスカラーを外していいの?
エリザベスカラーをしていると、ご飯を食べる時に嫌がるので食べづらそうだな、寝る時も体勢を整えるのが大変そうだなと感じる事がありますね。
では、エリザベスカラーはご飯の時や寝る時は外しても大丈夫なのでしょうか。
答えは「NO」です。
エリザベスカラーはご飯の時や寝る時も外してはいけません。
エリザベスカラーは傷口がひどくならないように装着する治療器具ですので、いったん外してしまうとその一瞬の隙を狙って傷口をなめてしまう可能性がありますし、エリザベスカラーをつける事を嫌がる子には、二度とつけさせてもらえないかもしれません。
このエリザベスカラーを外した一瞬で犬が傷口を触り、せっかく治りかけていた傷口が再度開いて悪化する事になりかねません。
◆ごはんの時にできる工夫
もし、エリザベスカラーをする事で犬がごはんを食べづらそうにしているのなら、ごはんを台の上において高さを出してあげて下さい。
ごはんに高さがあると、顔を下に向けなくてもご飯が食べられますので、嫌がる事なく、ごはんをスムーズに食べてくれると思います。
動物病院では、エリザベスカラーをしている子には、いつもあげているごはんの器を2つ使用し愛犬の顔の高さに合わせて台の高さを変えられる食器台などを利用してみるのもいいでしょう。
1つの器は逆さまにして、ごはんを入れてある器の下に置いて、その重なった部分をガムテープで固定していました。
ただし、ごはんを全く食べなくなってしまった、エリザベスカラーを外している間は常に飼い主が傷口を触らないかチェックできる、エリザベスカラーを再びつけるときに嫌がる様子が無い犬などの条件が整っている場合は、ご飯の最中だけならエリザベスカラーを外しても大丈夫でしょう。
ただし、決して犬から目を離さないであげて下さいね。
◆寝るときにできる工夫
寝る時もエリザベスカラーが邪魔で寝づらいだろうな、と感じられるかもしれません。ですが、エリザベスカラーをいったん外して犬が寝たとしても、飼い主が寝ている間に犬が起きて、傷口をなめたり引っかいたりして、朝起きてみたら傷口を悪化させる状態につながりかねません。
エリザベスカラーをつけた初日は違和感があって横になりづらそうにしているかもしれませんが、使用していくうちに犬もエリザベスカラーの扱いに慣れてきます。
エリザベスカラーを付けた犬の見た目を可哀そうだと思っても、エリザベスカラーを外した方が傷口は悪化してもっと可哀そうな状態になるという事を忘れないでくださいね。
エリザベスカラーを嫌がることなくつけているワンちゃんがいたら「頑張ってるね」と声をかけてあげるてくださいね。治療中の犬も飼い主もとっても嬉しくなりますよ。
エリザベスカラーを嫌がる愛犬のための対処法
エリザベスカラーを初めて装着すると、着け心地を嫌がる、気になって固まってしまう子もいるほど違和感を持つ犬も存在します。
反対にエリザベスカラーを外したくて前足や後ろ足でガンガン引っかいたり何とか抜け出そうと必死になって体をあちこちぶつけてみたり。
犬の治療を行うためにつけるエリザベスカラーですが、犬にとってはなぜエリザベスカラーという邪魔な物体を付けられているのかわかりません。
もし、あなたの愛犬がエリザベスカラーを嫌がるのなら、対処方法を4つお伝えします。
- 術後服を着せる
- エリザベスカラーの材質を変える
- 手作りする
- 慣れてもらう
では、1つずつ見てきましょう。
①術後服を着せる
エリザベスカラーをする理由の1つが、手術などをした後の傷口を触らないようにするという事でしたが、術後服を着せる事でも傷口を舐めないようにする事が出来ます。
具体的には、傷口にガーゼなどを当て、その上から伸縮性のある術後服をかぶせます。
体にぴったりとフィットさせて傷口を保護しますので、普段から洋服を着ている愛犬なら、この方法の方が違和感は少ないかもしれませんね。
エリザベスカラーでは、顔の周りに知らない物体が存在するので、嫌がる子も多いのですが、術後服ならいつも着慣れている服と一緒なので、犬も嫌がる割合が減ります。
動物病院では避妊手術や外科手術を行った後に術後服を販売しているところもあります。
ただ、犬の性格にもよりけりで、犬に術後服を着せると、噛んだり引っ張ったりしてしまい、誤飲や傷口の悪化につながる場合もあります。その際は別の方法を考えてみた方が良いでしょう。
②エリザベスカラーの材質を変える
エリザベスカラーには様々な材質のラインナップがあります。
・透明で周りが見渡しやすい硬い素材
・色がついていて柔らかめの素材
・ふわふわのドーナツ型
愛犬によって好みが違いますし、エリザベスカラーは首に直接つけるものなので、あまり重たいと小型犬には不向きです。
動物病院では様々なラインナップをそろえているはずですから、エリザベスカラーを嫌がる子で暴れたりしてどうしようもない場合は、どんな種類があるのかを相談してみてはいかがでしょうか。
③手作りする
エリザベスカラーは既製品のものでなくても、飼い主のあなた自身で手作りする事も可能です。
傷口を舐めないように保護をする役割が守れれば、後の材料やアイディアはあなた次第です。
クリアファイルを使って愛犬のピッタリサイズを作ってもOKですし、人間用のシャンプーハットを切って首回りに巻いてもOK。
食べ終わったカップ麺の器でも作る事が出来そうですね。
手作りの良い所は、既製品には無い愛犬のピッタリサイズを作れるという点。
材料費も全て100円ショップなどで揃いますので、既製品にはないお手軽さで、犬が嫌がる事ないお気に入りのカラーや材質を選んであげて下さいね。
ただし、やはり既製品に比べて強度で劣る場合もありますので、定期的に作り直したり、点検が必要になるでしょう。
④慣れてもらう
愛犬がエリザベスカラーを嫌がる、暴れるなどの状態になっても、そっと見守って慣れてもらうという事も重要です。
一見愛情がないように思われがちですが、最初は戸惑っていてあちこちにエリザベスカラーをぶつけたりご飯を食べる時にこぼしてしまったりしますが、愛犬も2、3日すれば案外平気になってエリザベスカラーの取り扱いも慣れてくるものです。
飼い主さんもエリザベスカラーを付けたことを大げさにふるまわず、いつもと変わらない様子で愛犬と接すれば、「エリザベスカラーを付けていることは特別じゃないのだ」と犬が理解してくれますよ。
①から④までエリザベスカラーを嫌がる場合の対処法をお伝えしておきましたが、実はもっと簡単な方法があります。
それは、何も病気ではない普段の生活からエリザベスカラーを付けて慣らしておく事です。
初めての手術で初めてのエリザベスカラーを付けてとなると、愛犬も困惑してストレスになってしまいますが、事前にエリザベスカラーを付けて慣らしておくと、そのストレスもぐっと減ります。
避妊手術などを行う予定がある方は、必ずエリザベスカラーを使用しますので、事前に動物病院で購入するのもおすすめですよ。
エリザベスカラーに関するまとめ
何かあった時に犬に使用するエリザベスカラーですが、病気のストレスに加えてエリザベスカラーを装着するストレスも加わってしまうのは愛犬だけでなく飼い主のあなたも辛いものですよね。
愛犬のしつけの1つとして、エリザベスカラーの装着も入れてみると、今後の役に立ちますよ。
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