犬の妊娠期間は?
犬の妊娠期間は、交配が成立し、受精した日から出産する日までの日数を指します。犬では約63日(58~68日)であり、小型犬、大型犬であっても妊娠期間に違いはありません。
◆犬の妊娠の診断
犬の妊娠の診断については、腹部の触診や超音波検査が行われます。
超音波検査では、胎児の心臓の確認やおよその頭数を知ることができます。一般的に交配後21~30日ほどで確認することが可能ですが、発育に問題がなく、早ければ17~18日で確認することができます。
◆犬の妊娠で見られる行動
妊娠後期(42日以降)になり、床を引っ掻き、そわそわと落ち着きがないような行動が見られると、出産が近くなった前兆です。母犬が安心して出産できるよう産箱(さんばこ)を作り、静かに見守ってあげましょう。
一般的に小型犬では2~3匹、中型犬や大型犬は6~10匹程産みますが、個体差があります。
◆産箱(さんばこ)とは?
産箱は、妊娠した犬が出産時に安心して過ごせるよう準備する箱のことです。
箱のような囲まれた場所を産箱として利用するのは、犬がオオカミであった頃から敵に見つからないよう穴を掘って出産していた名残であり、床を引っ掻く「営巣行動(えいそうこうどう)」が見られたら、産箱が必要となる合図です。
産箱は、家族があまり通らない部屋や静かな場所に設置し、母犬が自分のにおいを感じられるようケージやサークルを近くに置いてあげると安心します。
市販で売られているものもありますが、家庭では段ボール箱で作ることも可能です。産箱の中にはタオルやちぎった新聞紙を引き詰め、冬などの寒い日にはペットヒーターを引いておくと体温が低下し過ぎるのを予防することができます。
犬の出産方法は?
出産は開口期、産出期、後産期の3つに分けられ、産出期では子宮口が全開になり、陣痛が最高に達することで胎児が娩出されます。
◆開口期
開口期は、子宮が開き収縮し始め、子犬が産道を通る準備をする期間です。上記で紹介した営巣行動や、そわそわと落ち着きのない行動が見られます。
また、犬が出産する20~22時間前には、体温が下がり、出産の兆候として大切な基準となります。
通常であれば、犬は38.0℃程の体温がありますが、出産が近づくにつれて37.0℃前後にまで下がるといわれています。
そのため、出産予定日の1週間前から1日に少なくとも3回は体温を測り、体温低下を把握する必要があります。
◆産出期
産出期は、陣痛、破水を経て子犬を出産する期間です。子犬は羊膜に包まれて産まれ、母犬は羊膜を破り、子犬を舐めて呼吸を促します。さい帯(へその緒)は、母犬が上手に噛み切り、子犬に授乳をさせます。
◆後産期
出産後、胎盤が出てくるまでの期間を後産期と呼びます。
母犬は胎盤を食べようとしますが、食べさせると下痢や嘔吐を起こす可能性もあり、体調不良から母乳が出なくなってしまう危険があるため、胎盤は食べさせないようにしましょう。
一般的には子犬が産まれてすぐ上記のような保育行動を取りますが、保育行動を取らない母犬であった場合、飼い主さんが補助をしてあげなければなりません。
◆第2子以降の出産について
第1子の出産後しばらくすると再び陣痛が起こり、出産後に保育行動を取ります。
全胎児を分娩するまで母犬は同じ行動を繰り返しますが、産まれた子犬を母犬の側に置いておくと子犬を踏みつけてしまう可能性も考えられます。
そのため、産まれた子犬は次の陣痛までには取り上げ、体重を測る、雌雄の確認などの記録をしておくと後で慌てることがありません。
犬の出産時の応急処置
母犬は通常であれば自宅での自然分娩となります。しかし、分娩中に母犬が保育行動を取らない場合、飼い主が補助をしてあげる必要があります。
分娩中に慌てることがないよう、以下の道具を事前に用意しておくと安心です。
◆体重計
キッチン用品の測りで十分な大きさです。除菌シートなどで全体を拭いたあとに、清潔なハンカチやタオルを引いておくとすぐに使用することができます。
◆ハサミと糸
母犬が羊膜やさい帯を噛み切らない際に使用します。なるべく小さなハサミだと使いやすく、消毒用アルコールや除菌シートなどで消毒しておきましょう。糸は新品のものが安心です。
さい帯は子犬側から2cm程のところを糸でくくり、少し離れたところをハサミで切ります。
◆清潔なタオル
タオルは柔らかく清潔なタオルを用意します。母犬が保育行動を取らない場合、タオルで優しく身体を拭き取り、溜まった羊水を出すために頭を下に向けて遠心力を利用しながら軽く振ります。
子犬が高い声で鳴き出すと呼吸が始まり、母犬に近づけて母乳を飲ませます。
◆子犬用のミルクと哺乳瓶
母犬が授乳を拒否する際や、母犬の母乳トラブルでは人工哺乳は必須です。
子犬用のミルクと哺乳瓶は、ペットショップやネットで購入することができます。人間が飲む牛乳やミルクでは栄養が足らない上、下痢を起こす可能性があるため、必ず子犬用のミルクを与えましょう。
また、子犬に与えるミルクの分量や回数は小型犬と大型犬で異なり、生後日数や成長速度によっても大きく変化します。
人間と同じく、犬の出産は応急処置が必要となる可能性も十分考えられます。犬の出産が初めての飼い主さんは事前に獣医師と相談し、異変があればすぐに動物病院へ連絡することをおすすめします。
犬の産後について
全胎児が娩出されたあと、異常がなければ母犬は授乳させます。 母犬と子犬が落ち着いた頃には、母犬を10分程度の散歩をさせてあげます。
散歩には、排泄やリラックスさせる他、血行を良くして母乳の出が良くなる効果があるといわれています。あまり子犬と離れてしまうと母犬が気にしてしまい、排泄もしたがらなくなるため、庭や自宅付近での短距離がおすすめです。
また、母犬では出産後に子宮の病気や母乳トラブルが起こる可能性や、まだ出産する予定がある犬の場合は、次回の出産に影響が出てしまう可能性も考えられます。
出産後に母犬の様子がいつもと違う場合や膣からの出血、乳房の腫れなどがみられたら、すぐに動物病院での治療をおすすめします。
難産と帝王切開について
難産とは、上記のような自然分娩が難しい状態を指し、場合によっては帝王切開などの出産方法をとることもあります。
◆難産の原因は?
難産には、母体側の原因として陣痛が弱いこと、胎児側の原因として大きさや奇形、子宮内での位置の異常などが考えられます。
また、難産になりやすい犬種としてはパグ、ペキニーズ、ブルドッグなどの短頭種や、小型犬と大型犬を交配させたことによって産まれるミックス犬であることも関係すると言われています。
◆難産の症状は?
難産の症状として、
・陣痛から30分経っても産まれない
・破水2~3時間経っても産まれない
・片足や尻尾などの一部が引っかかっている
・4時間以上第2子が産まれない
などがみられます。また、初めて出産する犬、肥満犬、鼠径ヘルニアの持病がある犬も難産になりやすい傾向にあります。
難産になってしまった場合、至急動物病院に連絡をして現在どのような状態か、母犬の様子などを伝えた上で動物病院へ行くとすぐに対応してくれます。母犬の体力や子犬の様子を見て、帝王切開を行う可能性もあります。
◆犬の帝王切開
妊娠期間中に自然分娩が難しいと判断された場合や、難産によって自然分娩の継続が危険となった場合などに帝王切開が行われます。
帝王切開前には、血液検査や超音波検査が行われ、レントゲン検査で胎児の位置を確認した上で帝王切開が始まります。
帝王切開は自然分娩で危険となった際に母子共に命を救うことができますが、夜間での帝王切開は病院を探す必要があります。また、母犬に負担がかかり、母性の目覚めが遅れる可能性も考えられます。
残念ながら子宮内の胎児が全員亡くなっている、一部の死亡が確認され、子宮内に取り残されている場合も帝王切開が行われます。
犬の妊娠と出産についてのまとめ
犬の妊娠期間は人間よりも短く、一般的には自宅で出産するため、初めての飼い主さんは焦ってしまう方も多くいらっしゃいます。陣痛中に苦しそうな愛犬を見るのは辛いですが、産まれた子犬はとても可愛く、母性に目覚めた愛犬と元気な子犬は非常に微笑ましい光景で感動します。
「犬の出産は安全」という言葉を聞いたことがある方もいらっしゃるかと思いますが、実際には悲しい結果となる可能性も十分に考えられます。また、愛犬が初めて出産の場合、子犬が自分の子供だと分からずに育児放棄してしまう場合もあります。
飼い主さんは分娩中にトラブルがあっても冷静に判断できるよう獣医師と相談し、事前に必要な道具を揃えた上で出産に備えておくと安心です。
犬にとっても出産は大きなイベントであり、家族が増える喜ばしいことです。全胎児が娩出されるまでは緊張が続きますが、愛犬が安心して出産できるよう家族とも協力してあげましょう。
また、母犬の様子がおかしい、難産の症状がみられるなどの場合はすぐに動物病院へ連絡し、指示に従って行動することが重要です。
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