1.犬に血液型はある?
3.輸血の時に血液型は関係ある?
3-1.輸血が必要な時って?
3-2.適合しなかった場合はどうなる?
3-3.非常事態の時にはどうする?
3-4.血液型を知る事で安心な出産ができるメリットも
4.犬の血液型検査はどうやって行う?
4-1.採血した血を検査センターで検査する
4-2.急を要する事故などのときはどうする?
5.輸血する血液を持つ犬はどうやって探すの?
5-1.動物病院にいる供血犬から輸血する
5-2.独自の輸血バンクを利用する
5-3.最先端の輸血技術である「人工血液」って?
【掲載:2018.11.25 更新:2020.12.14】
犬に血液型はある?
人間にはA型、B型、O型、AB型などの分類分けをするABO式や、Rh因子で分類分けするRh式など、様々な血液型の分類方法があります。最も一般的なABO式では、4つの血液型に分けられます。
犬の血液型は人間の分類分けとは異なり、DEA型(Dog Erythrocyte Antigen/犬赤血球抗原)で分類される方法が一般的です。
DEAは、通常DEA 1.1からDEA8までの8種類があり、それぞれに対して抗原を持っているか否か(陽性か、陰性か)で分類されます。一般的に、犬は2~3個のDEA陽性を持っています。
しかしながら、世界では犬の血液型に対しての研究が進んでおり、一般的に認識されているDEA8以上に13種類の血液型があるとされています。
そのため、犬の血液型は8種類以上の判定項目で判断され、組み合わせはかなりの数になります。
血液型によって性格は違う?
人間では血液型占いなどがあり、A型は几帳面など、それぞれの血液型に対して特徴があると言われています。
では、犬も血液型によって性格が異なるのでしょうか。
残念ながら、犬は血液型によって性格が異なるということはありません。
犬の血液型の分類分けは非常に細かいことと、詳しい血液検査に至る犬が少数であることから、犬の血液型の分類分けする十分なデータが揃っていないという見方もあります。
犬の性格は、血液型よりも成育歴や社会性、しつけなどによるものが大きいです。
輸血の時に血液型は関係ある?
犬が輸血を要する事故や怪我をした際に、血液型は関係あるのでしょうか。
犬の輸血時には、血液が適合することが必要条件です。そのため、適合する血液を知るために血液型は一番解りやすい目安となるのです。
◆輸血が必要な時って?
・血液量が足りないとき(病気、事故など)
・出血量が多い時(事故、手術中など)
・大量出血が予想される時(手術中など)
◆適合しなかった場合はどうなる?
適合検査の結果、輸血される犬の血液に、輸血が適合しなかった場合には、重篤な副作用が起こります。
これは、輸血された血液に入っていた抗体が、輸血される犬の抗原を攻撃してしまうことから起こります。
赤血球が破壊(溶血)され、貧血や意識混濁、血圧低下、腎不全、更には死に至ることもあります。
そのため、適合する血液型の犬の血液を輸血する必要があります。
◆非常事態の時にはどうする?
検査をしている暇が無いほど急を要する場合などには、「万能血液」と呼ばれる血液を輸血に使用します。それは、DEA4の含まれている血液です。
DEA4は、輸血された際に犬赤血球抗原の中で最も反応が薄い抗原のため、副作用や副反応が起き辛いという利点があります。
しかし、本当の意味での「万能」とは違い、DEA4に対しての抗体を持っている犬に対しては副作用が起こる可能性があります。
そのため、自分の犬の血液型を予め知っておくことは、自分の犬の身を守ることにもなるのです。
◆血液型を知る事で安心な出産ができるメリットも
母乳は血液から作られています。そのため、父犬と母犬の血液型が異なる場合、初乳を飲んで血液型不適合の溶血反応が起き、死に至ることがあります。これを「新生児溶血」といいます。
新生児溶血を避けるためには、血液型がDEA1.1(-)と、DEA1.1(+)の組み合わせになる父犬、母犬の組み合わせを避ける、もしくは母犬の母乳を与えず人工乳(ミルク)を与えて育てる、などの方法があります。
交配予定の犬の血液型を知っておくと、産後の不幸な病気を未然に防ぐことができるため安心して出産させることができます。
犬の血液型検査はどうやって行う?
犬の血液型は、どうやって知ることができるのでしょうか。
◆採血した血を検査センターで検査する
犬の血液型を知るには、採血をして検査センターに送ることで判定します。ただし、検査結果が出るまでに一定の時間が必要な点がデメリットとなります。
◆急を要する事故などのときはどうする?
輸血などを必要とする事故が起きた時には、血液を検査センターに送っている時間はありません。
その際には、簡易検査で輸血する血液が犬に適応するかどうかを判定します。
DEA1.1のみの判定ができる血液型判定キットなどを利用します。簡易検査キットでは、およそ2~3分で結果を出すことが可能です。
DEA1.1は、適合しない場合に拒否反応を大きくおこす抗原です。そのため、血液型を判定させるのではなく、DEA1.1に適合するか否かだけを検査し、スピーディーに合う輸血を選択するためのものといえます。
交差試験とは、輸血される犬の血液と、輸血する血液を混ぜてみて固まってしまうかどうかを判定するテストです。
血液を混ぜてみて、何も反応が無ければ輸血が可能です。
一方、血液を混ぜてみて、固まってしまうなどの反応が見られた場合には不適合の血液という判断になるため、輸血には適しません。
輸血する血液を持つ犬はどうやって探すの?
犬には、輸血バンクというものがありません。では、輸血する必要が起きた場合、どうやって輸血する血液を持つ犬を見付けるのでしょうか。
◆動物病院にいる供血犬から輸血する
動物病院には、犬舎で通年を通して飼育されている犬がいることがあります。
輸血のために存在しているというよりは、動物病院の看板犬が輸血に協力してくれる、という状態です。
メリットは、新鮮な血液をスピーディーに提供できることや、予め輸血の血液型が解っているという点です。
◆独自の輸血バンクを利用する
動物病院単位や一部の獣医師会単位で、独自の輸血バンクを作っておき、登録されている犬に献血をお願いすることもあります。
独自の輸血バンクは、基本的にボランティアのため、謝礼などは発生しないことが一般的です。
メリットは、事前に血液型を判定しておけることと、多種の血液型犬を保有することができる点です。
しかしながら、急を要する場合に連絡が取れない、直ぐに駆けつけることができない、などのデメリットもあります。
参考リンク:血液バンク登録制度(南多摩獣医師会)
http://www.mvma.jp/blood-bank/
◆最先端の輸血技術である「人工血液」って?
2016年に中央大学理工学部の小松教授率いる研究グループと、宇宙航空研究開発機構(JAXA)研究開発員である木平さん率いる研究グループが、犬用人工血液の合成、構造解析に成功したと発表しました。
この犬用人工血液は、血液型が無く、長期保存が可能な赤血球の代替物です。
今後、製薬会社と共同開発を行い、5年以内の実用化を目指すこととなっています。
長期保存可能で安全な犬用人工血液製剤が完成すれば、動物医療の更なる発展にも繋がります。
参考リンク:イヌ用人工血液の合成と構造解析に成功
=輸血液不足の解消に期待、世界で需要=(宇宙航空研究開発機構(JAXA)
http://iss.jaxa.jp/kiboexp/news/20161111_pcg.html
輸血の費用は?
動物病院は自由診療のため、病院によって料金が異なります。
そのため、病院により差が大きいですが、料金相場は輸血1回で7000円~1万円ほどが多いです。
しかしながら、輸血のみで終わる処置というものは少なく、手術の際に行うことや、入院の際に行うことが殆どのため、「処置代」として輸血費用が算出されている場合も多いです。
また、輸血の処置代以外にも、血液の適合検査の料金などが別途発生することが多いです。
◆輸血費用が高くなってしまう病気は?
輸血費用が高くなってしまうものは、溶血性貧血などの血液不足に陥る病気です。
免疫不全の病気のため、輸血しても何らかの原因で赤血球が破壊(溶血)され、全身が酸欠になってしまうので、定期的な輸血が必要不可欠です。
輸血をしないと、食欲不振や貧血、黄疸、血尿などの症状が発生します。そのため、輸血料金は定期的な輸血回数に比例して増えていくことなります。
犬の血液型を知っておくことは、安心にも繋がります!
この記事では、犬の血液型と輸血についてご紹介しました。
犬の血液型が重要になる場面は、事故や病気など何らかの血液不足による輸血の際です。
輸血をする際には、輸血する血液とされる犬の血液型が適応しているかどうかを様々な検査をして、判定しなければ副作用で死に至ることも有り得ます。
輸血は事故などの緊急時に行われることも多い為、自分の犬の血液型を検査しておくことは、いざという時に犬の命を救うことにも繋がります。健康管理と予防のためにも、是非犬の血液型を検査してみましょう。
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