【獣医師監修】愛犬が癌になってしまったら?適切な対処法の選び方

2021.02.04

【獣医師監修】愛犬が癌になってしまったら?適切な対処法の選び方

愛犬が癌になってしまった。 とても衝撃的な状況です。頭が真っ白になってしまう方もいるかもしれません。 しかし、悲しみに暮れるばかりではワンちゃんも飼い主さんも前に進むことはできません。 大切なのは、ワンちゃんのQOL(生活の質)を向上させてあげることです。 この記事では、犬が癌とはどんな病気なのか、癌になってしまったら飼い主はどうすればいいのかについて書いていきます。ぜひ最後まで読んでくださいね。

犬の癌とはどんな病気

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犬の癌とは、犬の体内に悪性の腫瘍ができ、それにより様々な機能不全が起こる病気です。
また、この腫瘍は血流やリンパ液に乗って体内のあちこちに転移していき、それが進むとやがて死に至ることもあります。


犬の癌の主な症状

犬の癌の主な症状として、以下のようなものが挙げられます。

◆しこりがある

犬の体にコリッとしたしこりがある時は、犬の癌が疑われます。

先ほども述べたように、癌とは悪性の腫瘍、つまりできものです。
それが乳腺など体の表面に近い場所にできると、しこりとして手で触れることが可能になるわけです。

また、腫瘍には良性のものもあります。
触った感じは悪性のものと少し違うのですが、素人では少し判別が難しいです。

ですので、しこりがあるかな?と思ったら動物病院に行き、摘出と組織検査をしてもらうのが良いでしょう。

◆食欲や体重の減少

食欲や体重の減少も癌の兆候として見られます。
厳密に言うと、直接これらの症状が癌と結びつくわけではありません。

癌で様々な臓器の調子が悪くなった結果、食欲や体重の減少につながるわけです。
他の病気の場合でもこれらの症状は見られるので、犬の様子がおかしいなと感じたら癌ではなくとも病院に連れて行った方が良いでしょう。

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◆咳や呼吸困難

気管や肺に腫瘍が生じた場合、咳や呼吸困難などの症状が起こります。
また、気管から「ガーガー、ヒューヒュー」という音がすることもあります。

肺は血液のガス交換に関わっているので、腫瘍が血流にのって全身に広がりやすくなっています。
そのため、早めに受診することをお勧めします。

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◆多飲多尿や血尿

癌や腫瘍が腎臓にできてしまうと、多飲多尿や血尿といった症状が出ることがあります。
また、多飲多尿は他の重い病気『副腎皮質機能亢進症』や『クッシング症候群』などによってホルモンの分泌バランスが崩れることでも起こります。

どの場合でも命につながるような重篤な病気です。
多飲多尿や血尿が続く場合、必ず動物病院へ連れていきましょう。

病院に行く場合『どれくらい症状が続いているのか』『食欲はあるのか』という情報も伝えることで、正確に診断を行うことができます。
 

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◆嘔吐、下痢、便秘

胃腸に悪性の腫瘍ができてしまっている場合、激しい嘔吐や下痢、便秘を起こします。
この症状の厄介なところが、細菌性やウイルス性の胃腸炎との見分けが飼い主からは非常につきにくいということです。

「胃腸炎だと思って連れてきたら癌が発覚した」ということも十分にあり得ます。
症状が出たらなるべく早めに病院へ連れて行くことが大切です。

◆ふらつき、麻痺、痙攣

犬がふらつきや痙攣を起こすのは、大脳皮質に異常が起こったことによるものです。
このような異常の原因には、当然癌のような腫瘍も挙げられます。
いわゆる「脳腫瘍」と呼ばれるものです。

こういった症状が出た場合、非常に心配になってしまうと思います。
病院へ連れていき、しっかりと検査をしてもらいましょう。

また、こういった脳の病気は一般の動物病院では検査のための機材がない、ということも珍しくありません。その場合、紹介状を書いてもらい大学病院で検査をしてもらうことになります。

事前に心の準備をした上で病院に向かうといくらか気持ちも楽になると思います。

◆腹囲膨満

腹囲膨満とは、食べる量が変わっていないのにお腹が膨れてくることです。
これには様々な理由が考えられます。

一つ目に考えられるのは、腹部の臓器に腫瘍ができていることです。
悪性の腫瘍はどんどん大きくなるため、初めは特にいつもと変わりなくても日が経るにつれてお腹が膨らんできます。
二つ目に考えられるのは、腹水が溜まってしまっていることです。

腎臓や肝臓など、腹部にある臓器に不具合が生じると血管や臓器内の浸透圧のバランスが崩れ、体液が染み出してしまうことがあります。これが腹水です。

癌が腹部の臓器にできこれらに機能不全が生じると、だんだんと腹水が溜まっていき、腹囲膨満を引き起こすというわけです。

食べる量は変わらないのに太ったかな?と思った時は、病院へ連れて行ってあげましょう。


犬が癌になる原因

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犬が癌になる理由について、人と同様にあまり詳細は明らかになっていません。
様々な因果関係について研究が進められています。

本来、細胞分裂の際に不具合が生じると体はそれを排除します。
その排除に失敗すると、不具合のある細胞が増殖しそれが癌細胞となると言われています。


癌にかかりやすい犬種

人と同じで、犬にも癌になりやすい遺伝系があります。

ある研究では、犬全体での癌の発症率の2倍近い発症率を記録した犬種があったと報告があります。その犬種がゴールデンレトリバーで、一般の犬種の癌発症率が4.9%のところ、9.6%の発症率であると報告されています。

その後には、フレンチブルドックやラブラドールレトリバー、ミニチュアシュナウザーが続きます。
しかし、犬種と癌の発症とのしっかりとした因果関係は不明であり、研究が進められています。


癌の痛みはどのようなものなのか

癌の痛みは癌性疼痛と呼ばれ、様々な要因によって引き起こされます。

癌が直接原因となる

癌が増殖して広がる過程で痛みが生じます。
これは、癌が臓器や組織の神経を圧迫するためです。

癌による痛みの7〜8割がこれによるものだと考えられています。

癌が間接的に原因となる

癌によって寝たきりになった時などに生じる筋肉や関節への痛みです。
また、皮膚が地面と擦れたり、消化管の働きが悪くなって痛みが生じることもあります。

治療による痛み

抗がん剤によって起こる細胞障害によっても、痛みが生じます。
また、主要の摘出のための外科手術などによっても痛みは生じます。


犬の癌の治療法

癌の治療法は日進月歩の勢いで成長しています。
複数の選択肢の中から、獣医さんと相談して最適なものを選びましょう。

◆外科治療

外科治療では、手術をして腫瘍を摘出します。
腫瘍がまだ小さかったり、他の組織への転移が起こっていない状態であれば、この方法は非常に効果的です。

ワンちゃんの体力が非常に重要なので、しっかりと獣医さんと相談しましょう。

◆化学療法

化学療法は、癌の増殖や転移が進んでおり摘出が難しい場合に取られることが多い方法です。
抗がん剤治療により、癌細胞を攻撃します。それにより腫瘍が小さくなって摘出が可能になったり、癌細胞を殺すことができます。

先述のように、抗がん剤治療には強い痛みが伴います。
ワンちゃんのQOLを考えて選択しましょう。

◆放射線

放射線治療治療では、高エネルギーのX線を照射して癌細胞を殺します。
「放射線」と聞くと怖いイメージがあるかもしれませんが、実に100年以上も研究されている有効な治療法です。

治療方法や部位によって副作用は様々ですので、きちんと獣医師と相談しましょう。

◆緩和ケア

犬が感じている痛みを緩和してあげるのも、立派な治療法の一つです。
QOL(生活の質)を向上させてあげることに繋がるからです。

緩和ケアには、鎮痛薬や放射線治療などが挙げられます。
鎮痛薬にはモルヒネなどの強い薬を使うこともあります。
また、QOLの向上のために安楽死が選ばれる場合もあります。

ワンちゃんのために何が最適なのか、しっかりと考えて選択してあげてください。

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自宅でしてあげられること

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癌の治療中の愛犬に、自宅でどのようなことをしてあげられるでしょうか。
してあげられることはたくさんあります。

病院で息を引き取ることが主流となった人間とは異なり、犬は自宅で看取ることが大半です。
それまでの間に、その子のQOLを最大限高めてあげましょう。

その子の好きだった食べ物を食べさせてあげる、その子の好きなおもちゃで遊んであげる、その子にたくさん言葉をかけてあげるなど、してあげられることはたくさんあります。
一緒に素敵な時間を過ごしてあげましょう。


犬の癌を早期発見する方法

癌を治す、あるいは愛犬へのダメージを最小に抑えるためには癌を早期発見することが非常に大切です。

早期発見をするためには日頃から犬のボディチェックを行い、異変を感じたらすぐに動物病院へ連れて行くことが大切です。チェックする項目を紹介しますので、ぜひ役立ててください。

目ヤニ、周辺に出来物ができていないか

耳垢が出ていないか、きちんと聴こえているか

鼻水の色、周辺に出来物ができていないか

できものがないか、異臭がしないか

皮膚

しこりがないか、炎症を起こしてはいないか

手足

足を引きずってはいないか、関節に腫れ物はないか


まとめ

いかがでしたか?
愛犬が癌になってしまった場合の対処法を決める際の助けになれば幸いです。
今回の内容をまとめると
・癌の治療にはQOLを最優先する。
・治療法には一長一短あるので、よく相談して決める。
・早期発見のためにはボディチェックが大切。

※こちらの記事は、獣医師監修のもと掲載しております※
●記事監修
drogura__large  コジマ動物病院 獣医師

ペットの専門店コジマに併設する動物病院。全国に15医院を展開。内科、外科、整形外科、外科手術、アニマルドッグ(健康診断)など、幅広くペットの診療を行っている。

動物病院事業本部長である小椋功獣医師は、麻布大学獣医学部獣医学科卒で、現在は株式会社コジマ常務取締役も務める。小児内科、外科に関しては30年以上の経歴を持ち、幼齢動物の予防医療や店舗内での管理も自らの経験で手掛けている。
https://pets-kojima.com/hospital/

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