1.エアデールテリアの歴史
2.エアデールテリアの特徴
2-1.外見
2-2.被毛(毛色など)
4.エアデールテリアの気を付けたい病気
4-1.進行性網膜委縮(PRA)
4-2.角膜ジストロフィー
4-3.まぶたの異常
4-4.結膜炎
4-5.股関節形成不全・肘関節形成不全
4-6.若年性腎不全
4-7.拡張型心筋症
4-8.僧帽弁閉鎖不全症
4-9.自己免疫性甲状腺機能低下症
エアデールテリアの歴史
エアデールテリアの原産国は、イギリス(イングランド)です。
比較的新しい犬種で、19世紀、ヨークシャ地方のエア川流域で作出されました。
エア川の渓谷(デール)では、17世紀ごろ、オッター・ハウンドと言われる犬を使ってカワウソ猟をする人々がいました。
その犬の飼育を許されない人々は、大きめのテリア系の犬をキツネ狩りに使っており、やがて、この犬とオッター・ハウンドが交配されてさらに大型になりました。
これにアイリッシュ・テリアなどの血が入って、より大型のテリアとなったと考えられています。
エアデールテリアの狩猟能力は素晴らしく、カワウソや水鳥を狙った水猟だけではなく、キツネやウサギなどの小動物からアナグマのような凶暴な動物の猟まで、幅広くその才能を発揮していました。
当時は、「ウォーターサイド・テリア」と呼ばれたり、地名にちなんで「ビングリー・テリア」と呼ばれたりしていました。
1864年ごろに初めてイギリスのドッグショーに出展され、1878年に正式に「エアデール・テリア」と名付けられます。
20世紀に入るころ、アメリカにも輸出され、勇敢かつ愛情深い性質が好まれ、ドラマやディズニー映画のモチーフにもなりました。
飼い主に忠実で賢く、作業能力が非常に優れていたことから、第一次世界大戦の際には、イギリスやドイツで軍用犬として活躍しました。
日本に入ってきたのは昭和初期で、日本軍の軍用犬として採用されました。
戦後は警察犬や盲導犬として活躍し、現在では、災害救助犬や介助犬として活躍の場を広げています。
エアデールテリアの特徴
◆外見
エアデールテリアの体高は、オスで約58~61cm、メスで56~59cmです。
脚が長く、体長と体高がほぼ等しいスクエア型の体型をしていて、筋肉質でスレンダーな体つきをしています。
体重は18~29kgと中~大型犬サイズで、テリア種としては最大のため、「キング・オブ・テリア」と呼ばれています。
肘に届くほどの深い胸、短く真っ直ぐな背中をしていて、手足や尻尾も真っ直ぐです。
頭頂部が平らな頭は長く、色の濃い小さな目、V字型に垂れたボタン耳を持っています。
猟犬や軍用犬として使役されてきたことから、慣習的に断尾が行われてきましたが、近年は動物愛護の観点から断尾は避けられるようになってきました。
◆被毛(毛色など)
被毛は、ワイヤーのような粗く硬いトップコートと、柔らかく密度の高いアンダーコートを持つダブルコートで、ヒゲや眉毛が豊富に密生しています。
水中でも作業をしてきたため、水が皮膚まで届きにくいよう、トップコートがわずかに縮れたりウェーブしたりしているのも特徴です。
毛色は、生まれたばかりの子犬の頃はブラック1色ですが、成長につれてツートンカラーになっていきます。
基調はタン(黄褐色)で、背中には馬の鞍(サドル)のような特徴的なパターンがあります。
サドルの色は、ブラックまたはグリズル(ブラック、グレー、レッドが混じりあった色)だけが認められます。
全体の毛色としては、ブラック・タンまたはグリズル・タンとなります。
耳はダークなタンであることが多く、顎周りと頭のサイドにシェードが入っていることが多いです。
前脚の間に、わずかなホワイトが入ることもあります。
エアデールテリアの性格
エアデールテリアは、テリアらしい性質を持ち、明るく元気で活発、頑固で勇敢で負けず嫌いな性格をしています。
飼い主さんには忠実で従順、忍耐強くて温厚なので、イノシシ猟に使えるほどの豪胆さを持ちながら、優しいセラピードッグにもなるほどです。
家庭犬となれば、他の犬や子供とも仲良くできますが、しつこくされることは嫌がる面もあります。
一方、猟犬としての気質も色濃く残っているため、自己判断能力に優れ、知的で好奇心旺盛です。
エアデールテリアの気を付けたい病気
基本的には丈夫で、他の犬種に比べて遺伝性疾患は少ないと言われていますが、眼の病気になりやすい傾向があります。
テリア種に多いアレルギー性皮膚炎や、耳が垂れているために外耳炎にも注意が必要です。
◆進行性網膜委縮(PRA)
眼球の底にある網膜が、徐々に薄くなり、最終的に失明する病気です。
複数の遺伝子変異部位が見つかっていて、おそらく遺伝性疾患であると考えられています。
徐々に進行する病気ですが、初期は症状が分かりにくいため、突然、目が見えなくなったように感じることも少なくありません。
◆角膜ジストロフィー
片目または両目の角膜に白い斑点が生じる病気で、遺伝的素因が原因と言われています。
角膜にコレステロールやリン脂質、中性脂肪が付着することで白斑が生じますが、痛みやかゆみなどを示すことはなく、進行しても視覚を失うまでに至ることはほとんど無いようです。
◆まぶたの異常
まぶたが目の方向(内側)に反転した状態(内反)、外側に反転した状態(外反)といったまぶたの異常が見られることがあります。
内反の場合、まつげが眼球に当たり、外反の場合、まぶたの縁が眼球に触れません。
ともに目に何かが入っているような異物感や、涙目、目が赤くなるといった症状を引き起こします。
◆結膜炎
まぶたの裏にある結膜が、炎症を起こす病気です。
ウイルスや細菌などによる感染、アレルギー、また外傷や異物が目に入ることなどによって起こります。
他の眼の病気に続発して起こることもあります。
症状は、結膜が赤く腫れて涙が出る、目やにが出る、むくむ(浮腫)などです。
◆股関節形成不全・肘関節形成不全
股関節形成不全は、股関節が発育の段階で形態的な異常を起こして、さまざまな症状を引き起こす病気です。
肘関節(ちゅうかんせつ)形成不全は、肘関節の発育不全により痛みが生じる病気の総称です。
どちらも大型犬や超大型犬に多く見られ、歩き方に異常が出るなどの症状があります。
◆若年性腎不全
尿の生成、体内の老廃物・毒素の尿への排出、ホルモンの分泌などを行っている腎臓が十分に機能しなくなった状態を、腎不全と言います。
老齢期で発症が多く、死亡率の高い病気ですが、エアデールテリアでは若い時期に発症することがあります。
◆拡張型心筋症
心臓の筋肉(心筋)が薄く伸びてしまい、収縮力が弱まって、血液の循環不全を起こす病気です。
犬の心筋症のほとんどが拡張型心筋症で、大型犬、超大型犬種に多く見られます。
スパニエル種でも発症しやすいことが知られており、スパニエル種の血が入っているエアデールテリアもリスクがあります。
遺伝性の要因があると考えられていますが、はっきりとした原因は分かっていません。
元気がなくなったり、運動を嫌がったりするほか、食欲の低下、体重減少などの症状が見られます。
◆僧帽弁閉鎖不全症
僧帽弁とは、心臓の左心房と左心室の間にあり、開いたり閉じたりする機能を持つ弁で、血液を送り出す働きをしています。
僧帽弁閉鎖不全症は、僧帽弁が何らかの原因で変性して閉鎖不全が生じるために起こる病気で、小型犬での発症が多いです。
◆自己免疫性甲状腺機能低下症
甲状腺は、甲状軟骨のすぐ下にある甲状腺ホルモンを分泌する内分泌器官です。
甲状腺ホルモンは、体の代謝を活発にするホルモンで、甲状腺機能低下症では分泌が減少して、元気がなくなり、顔つきもぼんやりとします。
その他、脱毛、肥満、暖かい季節にも寒がるなど、様々な症状が見られます。
主に、機能の異常により自身の免疫システムが自らの甲状腺を破壊してしまう「免疫介在性」または遺伝性による甲状腺の機能不全が原因と考えられています。
エアデールテリアの価格
エアデールテリアの価格相場は、20~40万円ほどです。
日本では飼育頭数が少なく、ブリーダーや扱っているショップも多くありません。
エアデールテリアの飼い方
◆散歩
活発なテリア種の中~大型犬なので、かなりの運動量を必要とします。
子犬時代からシニア期まで、健康であれば1回1時間以上の散歩に毎日2回以上行きましょう。
猟犬としての気質が残っているため、小動物や超小型犬、猫などに対して、本能的に反応することがあるので、放し飼いは厳禁です。
ドッグランに連れて行ったり、アジリティやドッグスポーツで、思い切り走らせてあげたりするとよいでしょう。
◆食事
子犬期、成犬期、シニア期とライフステージに合った、良質なタンパク質を多く含むドッグフードを与えましょう。
成犬には、1日の給餌量を2回に分けて与え、子犬期やシニア期にはふやかしたフードを1日3回に分けて与えます。
エアデールテリアは中~大型犬で胸が深いため、胃捻転や股関節形成不全になりやすい犬種です。
これらの原因となる食べすぎや肥満には気をつけましょう。
◆しつけ
テリア気質が強く、頑固で譲らない面があるため、しつけにくい面があります。
一方で、好奇心が強く、自分で考える知性と判断力もあるので、強引なしつけには反抗的になりますが、褒められると素直に反応します。
自分から学習してみせる向上心もあるため、信頼関係を築き、上手にしつけることができれば、手のかからない子になるでしょう。
しつけは、成功をオーバーに褒めて伸ばす方法が適しています。
子犬期から服従訓練をしっかりとして、リーダーが誰であるかをはっきりと認識させましょう。
中途半端なしつけをしていると、反抗的な態度に出ることがあります。
◆お手入れ
抜け毛は少ないので、家庭犬であれば、週3回以上のコーミングやブラッシング、定期的なシャンプー・カットで十分です。
ショードッグのように立派な剛毛を維持するには、「ブラッキング」が必要です。
ブラッキングとは、トリミングナイフと呼ばれる特殊なクシを使って、古いトップコートを抜いていく技法です。
ブラッキングの頻度は、月に1回が目安です。
安全のために、ブラッキングを行えるトリマーさんのいるトリミングサロンに依頼することをおすすめします。
まとめ
テリア種で最も大きな体を持ち、「テリアの王様」とも呼ばれるエアデールテリアは、明るく活発な性格をした魅力的な犬種です。
猟犬として活躍してきた歴史から、自分で判断する能力にたけ、向上心から学習意欲も高く、きちんとしたしつけをすれば、良き家族となるでしょう。
頑固で気難しい面があり、きちんとしたリーダーシップを取れないと、しつけが難しく、初心者向けの犬種ではないとも言われます。
子犬期に基本的な服従訓練をしっかりと行いましょう。
運動能力が高く、必要とする運動量も多いため、アジリティやドッグスポーツなどを一緒に楽しむとよいでしょう。
元来、水辺の猟に使われていたので、海や川などでの水遊びに連れて行ってあげるのもおすすめです。
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