【獣医師監修】猫の床ずれの症状、原因、予防法は?介護が必要な老猫のためにできること

2019.10.12

【獣医師監修】猫の床ずれの症状、原因、予防法は?介護が必要な老猫のためにできること

昨今では猫の平均寿命が延びたとも言われており、愛する家族と長く一緒に居られることは、とても嬉しいことですよね。その反面、高齢猫は病気のリスクも高く、介護が必要にもなってきます。愛猫が寝たきりになってしまった場合、それでも飼い主さんは穏やかな毎日を過ごしてほしいと願うことでしょう。 寝たきりの老猫で心配なのは、床ずれですよね。猫の床ずれはどんな症状で、猫の身体にどんな影響を与えてしまうのでしょうか。

猫の床ずれとは?症状は?

ベッドに横たわる猫

床ずれとは、別名「褥瘡(じょくそう)」とも呼ばれ、圧迫することによって皮膚に出来てしまう潰瘍となります。

人間だけに起こる症状のように思われるかもしれませんが、猫も同じように床ずれになってしまうことがもちろんあります。

◆老猫や寝たきりの猫がなりやすい

猫も老猫ともなれば、自然と体力は衰え運動量も減り、眠る時間がどんどん増えていきます。ケガや病気を患っていなかったとしても、ずっと同じ体勢のままで眠っているとすれば、床ずれを起こしてしまう可能性があると言えるでしょう。

猫の平均寿命は15年程とも言われており、9歳を過ぎたころからシニア期に突入するとも言われています。元気そうに見えても体力は落ち、様々な病気のリスクも高まっていくことでしょう。

高齢猫が同じ姿勢のまま眠り続けた場合、骨が出っ張っている部分に体重が常にかかってしまうことになり、その部分が次第に圧迫されていきます。

もし猫が高齢で寝たきりの状態になってしまったのなら、床ずれの介護は必ず必要となってきます。

◆猫の床ずれの症状

床ずれの初期症状は皮膚が赤くなったり薄くなったりする程度ですが、猫は全身が毛に覆われているので初期で気付いてあげられることは稀です。

圧迫された状態が続いてしまうと皮膚が破れ、滲出液(しんしゅつえき)が滲み出ます。

症状が悪化すると破れた箇所が骨まで到達し、その部分が細菌に感染してしまえば化膿して痛みが増しますので、床ずれの範囲が広がるだけでなく、皮下組織や筋肉が機能しなくなってしまうこともあります。


猫の床ずれが起きる原因は?

ベッドでくつろぐ猫

猫の床ずれは、寝たきりの状態が続く場合に起きることがほとんどです。高齢猫であればあるほど、運動量が減り動かなくなってくるので、同じ態勢で過ごす時間が当然増えてくることでしょう。

ご飯も食べられない、トイレも出来ないとなってしまうと、飼い主さんの介護なしでは生きていくことが出来ません。

なぜ猫に床ずれが起きてしまうかなどのメカニズムを知って、愛猫が高齢になったときのために備えておきましょう。

◆身体の一部に圧迫がかかることが原因

人間であればベッドや布団、そして車椅子などを使用する際に、接触し続けた部分にどうしても体重がかかってしまいますよね。

そうなると皮膚が長時間圧迫されたことにより、血流が悪くなり皮膚をはじめ、皮下組織や筋肉などに酸素や栄養が行き渡らず、壊死した状態となってしまうのです。

身体の一部が圧迫されたままになってしまうと、必然的に摩擦が起き、ずれが生じるので皮膚がどんどん弱くなっていきます。

◆寝たきりの老猫は要注意

猫の床ずれは、寝たきりの老猫がもっともなりやすく、自分で寝返りを打てないことが要因となります。

高齢猫ともなると、食事も十分にとることが出来ないので栄養状態が悪く、加齢とともに足腰の関節も硬くなっていくのです。

介護が必要な場合には排泄もままならないので、皮膚が不衛生になり蒸れが生じます。湿った状態が続いてしまえば、猫の体温は高いのですぐに細菌が繁殖し、症状がどんどん悪化してしまうでしょう。

◆猫の床ずれが起きやすい部位

猫の床ずれは骨が地面にあたる箇所ほど出来やすく、頬、肩、腰、後ろ足のかかと部分などは特に注意が必要です。

特に介護が必要なほど動けなくなっているような猫の場合、毛もパサつきやせ細って骨が浮き出ていることも多いので、尚更地面と骨が接触しやすくなっていることでしょう。

どんなに痛くても猫は自ら「痛い」と、飼い主さんに伝えることが出来ないので、飼い主さんの介護が必要不可欠となってきます。


猫の床ずれの予防法は?

撫でられる猫

床ずれを起こして治療が必要になってしまうよりは、しっかりと予防をして床ずれを起こさない対策をしておくことが一番です。

猫の床ずれは介護が必須となり、飼い主さんが愛猫に費やす時間が大幅に増えることになります。愛猫が寝たきりになってしまったのなら、しっかりと床ずれの予防をして、苦痛を和らげてあげるようにしましょう。

◆寝返りを打たせる

床ずれは定期的に寝返りを打たせることによって、予防することが出来ます。

寝たきりの状態になってしまえば、老猫は自分で寝返りを打つことが出来ません。寝返りをしないと身体の下になった部分に体重がかかり、出っ張っている骨が圧迫されてしまいます。

とにかくこの「圧迫された状態」を、持続させないことが一番です。そのため、老猫を一定の姿勢にしたままにせず、飼い主さんの手で寝返りを打たせてあげてください。

寝返りを打たせる際には、必ず背中が上になるように伏せの姿勢をとらせてから、脅かさないように声をかけつつ、優しく向きを変えるようにしてあげましょう。

お腹が上になるような姿勢で寝返りをさせてしまうと、猫の内臓にどうしても負担がかかってしまいます。食後などにすぐ寝返りをさせる場合は、胃捻転(胃のねじれ)を起こしてしまう危険性があるので注意が必要です。

寝返りの介護は2~3時間おきが理想ですが、猫によっては好きな向きなどがはっきりしている場合もあるので、そのようなときはマッサージなどをして、関節や筋肉が固くならないようにしてあげてください。

姿勢を無理に変えなくても、クッションなどを利用することによって、姿勢に変化が生まれ落ち着いてくれることもあるので、まずは色々試しながら様子を見るようにしましょう。

◆床ずれ防止マットを使用する

猫の床ずれには、専用の防止マットも有効です。寝たきりになってしまったら床ずれ防止として、体圧を分散させる働きをしてくれるマットなどで寝かせてあげてください。

ペット専用の商品ももちろん販売されていますが、すぐに用意出来ない場合には、人間用の低反発まくらやマットなども代用可能です。

ただ、形がいびつな商品や、老猫の身体が収まらない商品であれば、使用はしないようにしてください。

また、介護目的でベッドを用意しても、猫にとっては寝心地が悪く、あまり気に入ってくれないこともあります。

猫にはお気に入りの場所が必ずあるので、いつも眠っていた場所に床ずれ防止マットを設置し、猫自身のニオイがついた毛布やタオル、飼い主さんのニオイのついた柔らかい素材の洋服などを一緒に使用すると良いでしょう。

そして老猫は体温調整もうまく出来なくなっているので、人が暖かいと感じても、猫にとっては肌寒く感じているかもしれません。布やタオル、湯たんぽなどを利用して、体温の調整をしてあげてください。

くれぐれも低温やけどにならないように、注意してあげましょう。

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猫の床ずれが起きてしまった時の対処法は?

猫が床ずれを起こしてしまった際には、何をすべきか分からず焦ってしまう飼い主さんも多いことでしょう。初期症状ならまだしも、腫れていたり皮膚に穴が開いていたりすれば、気が動転してしまうかもしれませんよね。

そんなときこそ落ち着きを取り戻し、愛猫の前で不安な姿を見せるべきではありません。冷静に対処して、愛猫を安心させてあげてくださいね。

◆動物病院で治療を受ける

まず異常に気付いたのなら、すぐに動物病院に連れていき、獣医師に診察をしてもらってください。

基本的にすでに炎症を起こしてしまっている場合には、感染を防ぐために患部を水か生理食塩水で洗い流し、周辺の毛をバリカンなどで刈り清潔を保ちます。

すでに感染の兆候が見られれば、薬(抗生物質)の投与も併せて治療を行っていきます。

また、手首や後ろ足のかかとなどの関節に炎症が出来てしまった場合、猫が舐めて症状を悪化させてしまうことがあります。

そのような場合は、患部を一度清潔にしてから包帯を巻くことがありますが、関節以外の箇所が傷になっている場合には、ドレッシング材と呼ばれる絆創膏のような物を貼って治療することもあります。

包帯もドレッシング材も猫にとっては違和感でしかありませんが、剥がそうとする力があるようでしたら、エリザベスカラーも必要となってくるでしょう。

◆患部を清潔にする

飼い主さんが自宅で介護を続けていくには、何よりも患部の清潔を保つことが大切です。使用しているベッドの清潔を保つのはもちろん、猫自身の身体も清潔に保ってあげなくてはいけません。

身体が満足に動かないと、日課だったグルーミングを満足にすることも出来ませんよね。キレイ好きな猫にとって、これ以上のストレスはきっとないはずです。

トイレも自分で出来ない場合には、寝たきりの状態でオシッコやウンチを出す介護も必要となりますので、排泄後も皮膚や毛の清潔を保ってあげてください。

免疫力が低下している高齢猫は、感染症のリスクが高まりますので、衛生管理は手を抜かないようにしてあげてくださいね。

また、多頭飼育のご家庭では、他の猫ちゃんが老猫の患部を舐めないように、ケージなどで隔離して介護を行ってあげると良いでしょう。

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まとめ

体重の軽い猫は、ほかの動物ほど床ずれは起こりにくいとは言われていますが、肥満の猫や不衛生な環境で寝たきりになってしまった猫は注意が必要です。

自分の体重が支えられず寝たきりになってしまった老猫は、きっと不安で辛い思いをしているはずですよね。老猫になってまで傍に居てくれて、無償の愛を与え続けてくれた猫ちゃんを励ましてあげられるのは、神様でも動物病院の獣医師でもなく、飼い主さんだけです。

寝返りを打たせたり清潔を保ったりする介護は、時間と労力を奪われるので、飼い主さんの負担や疲労もたまってしまうことかと思います。

大切な家族を心配して自分のことに手が回らないかもしれませんが、飼い主さんは常に愛猫を応援してあげる側でなくてはいけませんよね。そのため、ご自身を労わることも忘れないでください。

お互いにとってかけがえのない時間になると思いますので、愛猫の負担が少なくなることを心掛けて、介護を続けてあげてくださいね。

●記事監修
drogura__large  コジマ動物病院 獣医師

ペットの専門店コジマに併設する動物病院。全国に14医院を展開。内科、外科、整形外科、外科手術、アニマルドッグ(健康診断)など、幅広くペットの診療を行っている。

動物病院事業本部長である小椋功獣医師は、麻布大学獣医学部獣医学科卒で、現在は株式会社コジマ常務取締役も務める。小児内科、外科に関しては30年以上の経歴を持ち、幼齢動物の予防医療や店舗内での管理も自らの経験で手掛けている。
https://pets-kojima.com/hospital/

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たぬ吉

たぬ吉

小学3年生のときから、常に猫と共に暮らす生活をしてきました。現在はメスのキジトラと暮らしています。3度の飯と同じぐらい、猫が大好きです。

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