【獣医師監修】気をつけたい猫の椎間板ヘルニア!原因・症状から治療・予防法まで

2021.07.24

【獣医師監修】気をつけたい猫の椎間板ヘルニア!原因・症状から治療・予防法まで

猫も、椎間板ヘルニアになることがあります。犬に比べて発症頻度は低いですが、重症化すると動けなくなることもある病気です。椎間板とは、背骨と背骨の間にあり、クッションの役割を果たしている軟骨で、何らかの原因で変形して中の髄核が飛び出すと、近くの神経や脊髄を圧迫し、痛みや麻痺が出ます。今回は、猫の椎間板ヘルニアについて、原因・症状や治療・予防法などをご紹介します。

猫のヘルニアとは

長毛の猫

◆そもそもヘルニアとは

ヘルニアとは、体内の組織や臓器が本来あるべき場所からずれてしまった状態を指します。
よく知られている椎間板ヘルニアのほかにも、横隔膜ヘルニアや臍ヘルニア、鼠径ヘルニアなどがあります。

◆猫のヘルニア

猫のヘルニアには、発症部位によって以下のようなものがあります。

・椎間板ヘルニア

椎間板は、脊椎の間にあり、クッションの役割を果たしています。
椎間板ヘルニアは、椎間板が飛び出してしまった状態で、犬に比べて、猫では発症率が低いです。

・横隔膜ヘルニア

横隔膜は、胸部と腹部を隔てている膜です。
横隔膜が何らかの原因で破れ、そこから腹部の臓器が胸部に入り込んだ状態が、横隔膜ヘルニアです。
あまり馴染みがないかもしれませんが、猫では意外に多い病気です。

・鼠径(そけい)ヘルニア

お腹の中にある腸や膀胱、子宮などの一部が、後ろ足の付け根(鼠径部)の隙間から、皮膚の下にはみ出してしまった状態です。
腸管がはみ出した場合が、「脱腸」です。

・臍(さい)ヘルニア

お臍(へそ)の周りにある「臍帯輪」(さいたいりん)の内側の腹膜が欠損して、お腹の中の脂肪や血管を含む組織がはみ出している状態です。
いわゆる「でべそ」の状態で、問題を起こすことが少ないヘルニアです。

椎間板ヘルニア

猫の脊柱(背骨)は、体の軸となるメインの骨格です。頸椎、胸椎、腰椎、仙椎、尾骨が連なって構成されています。
椎骨には、大きな穴があり、脳からしっぽの付け根までトンネルを作っており、この中を脊髄が通っています。
これらの骨の間でクッションの役割を果たしているのが、椎間板です。椎間板は、クッションの中身に当たる「髄核」(ずいかく)と呼ばれるゼラチン状の組織と、クッションの外側に当たる「繊維輪」(せんいりん)からなります。
背骨全体がつぶれることによって形が変わり、椎間板が飛び出る、または押し出されている症状が、椎間板ヘルニアです。髄核が外に飛び出してしまう「髄核脱出型」(ハンセンI型)と、髄核は飛び出ず椎間板が変形しただけの「繊維輪突出型」(ハンセンII型)があります。
椎間板は、首から腰に至るまでのすべての背骨に挟まっているため、基本的には、どの部位でも発生します。しかし、猫は体がしなやかなので、発症頻度は低いです。また、よほどの重症でなければ、症状として現れないこともしばしばあります。I型の場合は、それまで元気だった子が急に動かなくなりますが、II型の場合は、病変があっても普通に生活していることも少なくありません。


猫のヘルニアの原因

犬を対象とした研究では、「肥満」「小型」「胴長」が、発症確率を高める要因であるという結果が出ています。猫を対象とした研究はありませんが、同じような要因が危険因子であると考えられます。

◆肥満

肥満の猫

太っていると背骨への負担が大きくなり、椎間板に対しても強いストレスとなります。近年は、肥満から椎間板ヘルニアを発症する例が多くなっているそうです。
また、大型猫など体重の重い猫の方が、小型の猫に比べて発症しやすいと言われています。

◆事故

猫の交通事故

繊維輪は、コラーゲン繊維からできており、基本的には頑丈です。
しかし、瞬発的に強い衝撃が加わると、破れて、中の髄核が飛び出してしまうことがあります。強い衝撃が加わる原因としては、交通事故や高い場所からの落下、壁への衝突などがあります。

◆加齢

老猫

老化によりコラーゲン繊維が弱くなったり、髄核の水分量が減少したりすると、それまで支えられた圧力を支えきれなくなって、繊維輪が破れてしまうことがあります。

◆先天性

小型や短足になるように育種されてきた品種の猫は、先天的に軟骨の形成に異常がある場合が少なくありません。このような猫種の繊維輪は通常に比べて脆く、ヘルニアになりやすいとされています。
猫種としては、胴長短足のマンチカンなどがリスクが高いと言われ、またイギリスでの調査では、「純血種」「ブリティッシュショートヘア」「ペルシャ」がリスク要因ではないかと推測されているそうです。


猫のヘルニアの症状

猫や犬のヘルニアの重症度は、

(1) 痛みだけ
(2) 痛みと軽度の運動障害
(3) 反射の消失と運動の中等度障害
(4) 完全に動かないが痛みは感じる
(5) 完全に動かず痛みも感じない

の順番で高まります。

◆触ったり抱っこしたりすると痛がる

背中や腰を撫でようとすると、腰を落として触られるのを嫌がったり、痛がったりする様子が見られます。
また、抱っこしようとすると嫌がるようになることもあります。

◆上を向けない

頸部に発症した場合、上を向けない、頸に触れると痛がるといった症状が見られます。

◆歩くのを嫌がる

痛みのため、歩くときに患部をかばった歩き方をするようになる、歩いたり動いたりすることを嫌がる、動作が緩慢になるなどの症状が見られます。
猫の場合、高いところへ登らなくなったり、ジャンプをしなくなったりすることもあります。

◆歩き方が不自然

歩くときに、ふらつきや、後ろ足の跛行(はこう;片足を引きずるようにして歩くこと)が見られます。

◆立てなくなる

麻痺のために、立ち上がることができなくなり、横になったままになります。

◆自力で排せつができなくなる

触ると痛がりますが、四肢が麻痺して動くことができなくなり、神経症状が膀胱や直腸にまで及ぶと、自力で排せつができなくなります。

◆動けなくなり、痛みも感じない

麻痺が進むと、発症部位より後ろの一切の感覚が消失して、痛みさえ感じなくなり、完全に動けなくなります。


猫のヘルニアの治療法

治療方法は、症状や動物病院によって異なりますが、およその流れは以下のようになります。

◆診断

ヘルニアの診断には、神経学的検査、レントゲン検査、脊髄造影(造影検査)を行います。

1.神経学的検査

見た目の検査として、

・足先をつねって痛みを感じるか?
・皮膚をつついて痛みを感じるか?
・足先をグーで着地させて通常の着地に戻るか?

などをチェックして、ある程度の目星をつけます。

2.レントゲン検査

脊髄も椎間板も、通常のレントゲンでは写りません。
レントゲン検査では、背骨の変形、椎間板の石灰化、背骨と背骨の空間などを見ます。ヘルニアが起こっていると背骨と背骨の間が狭くなることが多いです。
しかし、中には全く異常が見られない場合もあり、造影検査が必要なこともあります。

3.脊髄造影

レントゲン検査ではヘルニア部位が特定できない場合に行う検査です。
造影剤を脊髄の周りに入れて、形が見えるようにします。脊髄が入っている骨のトンネルの中に造影剤を注入して、脊髄の圧迫部位を検査します。
背骨の小さな猫の場合、針を入れる脊髄の間は約1mmで、きっちり造影剤を入れるのは非常に難しく、どこの動物病院でもできる検査ではありません。

◆投薬治療

症状が軽い場合には、炎症や痛みを軽減するために抗炎症剤やステロイド剤などを投与する投薬治療を行います。痛みが強い場合には鎮痛剤を使用しますが、痛みが軽減されると動き回ってしまって症状が悪化することもあるので、注意が必要です。
治療中は安静にさせ、症状が改善したら、肥満解消のための食餌療法や適度な運動を行います。

◆外科手術

症状が重い場合、飛び出した髄核を除去する外科手術を行います。
全身麻酔が必要なので、手術に伴うリスクや再発についての説明を獣医師さんから受けることになります。
術後、神経が回復するには時間がかかるので、歩行能力の回復のためリハビリテーションが必要になります。マッサージやストレッチ、温熱療法、レーザー治療、超音波療法などを行います。猫が嫌がらなければ、自宅でも積極的に行うとよいですが、自己流のリハビリは症状を悪化させることもあるので、必ず動物病院で指導を受けて行いましょう。
手術費用は、動物病院によって大きく異なりますが、目安は10万~50万円程度です。他に、血液検査、レントゲン検査などの検査費用、術後の入院費などがかかります。

◆排せつ補助

症状が進行し、自力での排せつができなくなっている場合には、尿道にカテーテルを挿入して人為的に排尿させたり、お腹を押したり浣腸をしたりして排便を促したりといった排せつ補助が必要となります。

◆歩行の補助

近年、犬や猫のための車いすも徐々に普及してきています。
運動機能の回復が見込めない場合には、このような補助用具を用いて猫のQOL(生活の質)を高めることも検討します。


猫のヘルニアの予防法

◆適正な体型を保つ

食事の管理を適切に行い、運動不足にならないようにして、愛猫が肥満にならないようにしましょう。

◆危険がないような部屋作りをする

高い場所からの転落で発症するリスクがあるので、キャットタワーや家具の配置に気をつけて、高い場所から一気に飛び降りるようなことがないような部屋作りをしておきましょう。
また、マンチカンなど胴長短足の猫や、メインクーンなどの大型猫を飼っている場合には、キャットタワーをあまり高くないものにするなど、高所への上り下りで腰への負担がかからないようにしてあげましょう。

◆完全室内飼いにする

猫の場合、交通事故での発症が多いです。
室内外を行き来する猫は交通事故に遭うリスクが高まるので、完全室内飼育にしましょう。猫が外へ出られないよう、戸締りの徹底や柵の設置、網戸にストッパーをつけるなどの脱走防止策も大切です。
また、高層階で飼育する場合には、転落事故に注意が必要です。ベランダに出さないようにするか、ベランダに転落防止のネットなどを設置しておきましょう。

◆サプリメントの活用

シニアになったら、加齢による発症を防ぐため、猫用のサプリメントを活用してもよいでしょう。
軟骨を構成するグルコサミンやコンドロイチン、ビタミンなどの成分を含むサプリメントが有効です。また、「ミドリイガイ」も、関節痛の緩和や老化防止に効果が期待できます。
かかりつけの獣医師さんと相談のうえ、与えてください。

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まとめ

ヘルニアとは、体内の組織や器官が本来あるべき場所からずれてしまった状態を指します。椎間板ヘルニアは、背骨と背骨の間でクッションの役割を果たしている椎間板が飛び出してしまって、神経や脊髄を圧迫して痛みや麻痺が生じた状態です。
猫では、椎間板ヘルニアの発症率は低いですが、重症化すると動けなくなり、排せつ補助なども必要になる場合があります。
原因は、肥満や事故、老化のほか、猫種による先天的なものがあります。軽症であれば投薬治療を行い、重度になれば外科手術が必要になります。手術後はリハビリも必要で、治療費用は高額です。ペット保険に入ることも検討しておくとよいでしょう。
肥満や事故は、適切な体重管理や完全室内飼育などで、飼い主さんが防ぐことができます。また、早期発見・早期治療で症状の進行を抑えることができるので、日頃から愛猫の様子をよく見ておくようにしましょう。



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SHINO

SHINO

保護犬1頭と保護猫3匹が「同居人」。一番の関心事は、犬猫のことという「わんにゃんバカ」。健康に長生きしてもらって、一緒に楽しく暮らしたいと思っています。

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