【獣医師監修】犬のリンパ腫とは?原因・治療・予防法について

2018.11.13

【獣医師監修】犬のリンパ腫とは?原因・治療・予防法について

犬のリンパ腫は、完治が難しい病気ですが、余命を延ばし、元気に過ごすための治療法はあります。犬のリンパ腫とは、どのような病気なのでしょうか。そもそもリンパとはどのような働きをする器官なのでしょう。 犬のリンパ腫の原因や治療法、予防法と合わせてご紹介します。

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犬のリンパ腫とは?

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◆そもそもリンパとは?

毛細血管から周囲の組織に染み出た液体を「組織液」と言い、その中でも全身に分布する脈管系(リンパ系)に回収された組織液を「リンパ液」と呼びます。リンパ毛細管から始まるリンパ系は、リンパ循環流路を形成し、次第に太いリンパ管に集合し、最終的に体循環の静脈系に流入します。

リンパ系の働きは、過剰な組織液を体循環に戻すことです。リンパ液中の細菌や有害物質をリンパ節で濾過します。また、リンパ節でリンパ球を産生し、栄養物(脂肪)を運搬したりもします。

・リンパ毛細管

動物の組織内に起こり、組織液をリンパ液として管内に取り込み、毛細管網を形成してリンパ管に合流します。

・リンパ管

静脈血管と類似の構造で、逆流を防止する弁も見られます。リンパ管はリンパ本幹との合流までに一つ以上のリンパ節を通過します。

・リンパ節

通常球形または卵円形の小体で、皮質と髄質に区別されます。皮質は小結節状の細胞が集まり、その中心部ではリンパ球の産生が盛んです。リンパ液中の細菌などの異物は、食作用によってリンパ節内に取り込められます。

リンパ節は、健康な状態でも体表から触れるものと、感染症による肥厚や腫瘤細胞の貯留によって肥大した場合にのみ触れるものがあります。

犬の体表には、首のあたりに下顎リンパ節、肩甲骨のあたりに浅頚リンパ節、脇の下に腋窩リンパ節、内股部付け根あたりに鼠経リンパ節、膝の裏あたりに膝窩リンパ節などがあります。

◆犬のリンパ腫の種類

犬のリンパ腫は、「悪性リンパ腫」もしくは「リンパ肉腫」とも呼ばれる、悪性の腫瘍です。

リンパ球が骨髄以外の様々な場所で腫瘍性に増殖します。これが骨髄内で発生した場合には、リンパ球性白血病と呼ばれ、別の腫瘍として分類されます。

リンパ球は全身に存在するため、リンパ腫も体のほぼ全ての組織に発症する可能性があります。発生する場所により、治療法や予後が異なる場合があるため、発生場所によっていくつかの方に分類されます。

①多中心型リンパ腫

多中心型リンパ腫は、基本的には身体の表面にあるリンパ腫が腫れる腫瘍で、犬のリンパ腫の中で最も多いリンパ腫です。

症状が進むと、体重減少、食欲消失、元気がない、発熱などが見られます。

②消化器型リンパ腫

消化器型リンパ腫は、猫で最も多いリンパ腫で、胃や小腸、大腸に発生します。メスよりもオスに多いと報告されています。

③前縦隔型リンパ腫

胸の中や胸のリンパ節に発生するリンパ腫です。犬よりも猫に多く、呼吸が苦しくなったり、咳や胸水などの症状が見られます。

④鼻腔内型リンパ腫

鼻の中にできるリンパ腫です。鼻水やくしゃみ、鼻血、顔の変形などで発見されることが多いです。

⑤皮膚型リンパ腫

皮膚に発生するリンパ腫です。皮膚が赤くなったり、出血やただれが見られたりします。口内炎の様に口の中の粘膜に症状がでることもあります。

⑥その他

眼や中枢神経、睾丸など様々な部位から発生する可能性があります。

◆犬のリンパ腫のステージ

犬のリンパ腫は、症状の進み具合によってステージ分類されます。

ステージ 進行度合い
ステージ1 リンパ腫が、1か所のリンパ節もしくは単一機関のリンパ系組織に限られている場合
ステージ2 複数のリンパ節で発症してはいるが、限局性病変の場合
ステージ3 病変が全身のリンパ節に及んでいる場合
ステージ4 肝臓、脾臓にリンパ腫が浸食している場合
ステージ5 血液、骨髄、その他の臓器に病変がある場合

犬のリンパ腫の原因は?

犬のリンパ腫に限らず、様々な腫瘤に明らかな一つの原因はありません。ただし、一定の犬種に発症が多く見られる傾向があるので、遺伝的な関与が指摘されます。
また、その犬の遺伝子や年齢、飼育環境や栄養状態なども要因となります。

犬種でいえば、ゴールデンレトリーバーやシェルティ、シーズー、マルチーズ、ボクサー、バセットハウンド、セントバーナード、エアデールテリア、ブルドッグなどが腫瘤の好発犬種です。

中年と呼ばれる6~9歳ごろの犬に発症が多く、犬の腫瘤全体の7~24パーセントがリンパ腫であると言われています。


犬のリンパ腫の治療法は?

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犬のリンパ腫の治療法は、発症部位などリンパ腫の種類によって異なります。

◆抗がん剤による治療

リンパ腫は全身性疾患であるため、犬では化学療法が治療のメインとなります。

癌細胞は抗がん剤に対して耐性をつけるのが早く、科学的に正しく計画された間隔で薬剤を投与することが必要となり、この計画のことを「プロトコール」と呼びます。

犬のリンパ腫に使われる抗がん剤は、プレドニゾロン(ステロイド)、Ⅼ-アスパラギナーゼ、ドキソルビシンなど様々な種類があり、複数の薬剤を組み合わせて使用することによって、いろいろな角度からリンパ腫を攻撃することが出来ます。

どのプロトコールにもメリットやデメリットがあり、薬剤の種類、副作用、治療効果、通院頻度、費用などは異なります。

◆リンパ腫の再燃の確認

抗がん剤による治療を始めると、多くの場合腫大したリンパ節が縮小し、一見すると完治したかの様に見えます。この状態を「寛解」と呼びますが、完治したのではなく、目に見えないレベルでがん細胞は残っている状態です。

リンパ腫の再燃を抑えるため、寛解状態であっても治療は続ける必要があります。

一つのプロトコールを終えたら、リンパ節の腫れをチェックしながら経過観察をし、リンパ腫が再燃する度に治療を繰り返していきますが、再燃を繰り返すことによって使用した薬剤が効かなくなっていくこともあります。

そのため、初回とは違うプロトコールを選択することもできます。

◆外科手術

リンパ腫が1か所にとどまっている場合には、腫瘍を外科的に切除してから抗がん剤による治療を行うこともあります。
病変部位を切除することによって、食欲や元気の回復につながる場合があり、治療が有利になることがあります。

また、外科的切除や抗がん剤の他に、放射線治療が実施されるケースもあります。

◆諦めず適切な治療法を試すことが大切

犬に多い多中心型リンパ腫では、抗がん剤治療をした場合、1年生存率は50~68%、2年生存率は20~33%、3年生存率は10~33%という成績があがっています。

一方、リンパ腫と診断されてしまった犬が治療せずに過ごすと、その犬の生存期間の平均は約4~6週間であるとされています。

犬のリンパ腫では、治療のコストや大変さに比べ、生存期間が短いと感じる飼い主さんもいらっしゃるかもしれません。ただ、無治療で症状の進行していく1か月とは違い、寛解状態で通常通りの生活が出来る期間が長くなります。

犬にとっての1年は、人間でいう4~5年に相当しますので、なるべく一緒に過ごすことでお互いに有意義な時間を持つことができるかもしれません。


犬のリンパ腫の予防法は?

現在、犬のリンパ腫を確実に予防する方法はありません。他の病気と同じように、早期発見・早期治療を行うことが大切になります。

◆普段から愛犬をよく観察する

犬のリンパ腫の初期段階では、ほとんど症状が見られない場合が多いので、普段から愛犬の体表のリンパ節を触ってチェックすることが必要です。

また、犬に食欲不振や元気消失など、何らかの症状がでてから治療を開始した場合、初期で発見されたリンパ腫よりも予後が悪くなります。

◆免疫力を上げる

犬のリンパ節やリンパ系の細胞は、身体の免疫を担う器官ですので、犬の免疫力をアップすることによって予防につながるかもしれません。

犬の生活環境、食事内容、運動、サプリメントなど、生活習慣を少しずつ改善していくことによって、リンパ腫だけではなく他の病気を防ぐこともでき、健康寿命を延ばすことができるでしょう。

<犬のサプリメントに含まれる成分>

犬の癌に効くと言われている代表的なサプリメントの成分です。ただし、科学的には癌の治療効果は証明されていません。

・アガリクス
人間用のサプリメントでも知られているアガリクス茸には、ビタミン・ミネラル・酵素など奥の栄養成分が含まれています。βグルカンを多く含み、免疫力アップや体内の老廃物の排出作用が期待できます。

・サメ軟骨
サメ軟骨の加工食品で、タンパク質・カルシウム・コンドロイチンなどが含まれます。新生血管の造成・成長を阻害すると言われており、これによって癌に栄養が運ばれるのを阻害するのではないかと期待されています。

<犬の免疫力を上げる栄養素>

・オメガ3脂肪酸
脂肪酸は、多価不飽和脂肪酸の特定の種類です。犬に重要なのは、オメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸と言われており、オメガ3脂肪酸は、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、αリノレン酸(ALA)から構成され、魚や貝類、甲殻類などに多く含まれます。

犬はこれらを体内で生成することができないため、食事やサプリメントで摂取する必要があり、免疫力アップが期待されます。

抗がん剤治療中の摂取は、獣医師とよく相談してください。

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犬のリンパ腫まとめ

犬にサプリメントを与えるだけではなく、普段から犬の健康状態に気を配りましょう。良質なドッグフードを適切に与え、毎日よく運動させることも大切です。

朝は早くから活動させ、夜はしっかり休ませるようにしましょう。歯みがきや、スキンシップをかねた健康チェックを行うことで、犬のリンパ腫だけではなく色々な病気を早期に発見することが出来ます。

※こちらの記事は、獣医師監修のもと掲載しております※
●記事監修
drogura__large  コジマ動物病院 獣医師

ペットの専門店コジマに併設する動物病院。全国に15医院を展開。内科、外科、整形外科、外科手術、アニマルドッグ(健康診断)など、幅広くペットの診療を行っている。

動物病院事業本部長である小椋功獣医師は、麻布大学獣医学部獣医学科卒で、現在は株式会社コジマ常務取締役も務める。小児内科、外科に関しては30年以上の経歴を持ち、幼齢動物の予防医療や店舗内での管理も自らの経験で手掛けている。
https://pets-kojima.com/hospital/

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harunyan

動物の専門学校で看護の資格を取得後、6年間動物病院に勤務しました。5歳のシェルティと4歳の猫、0歳の息子と毎日楽しく過ごしています。ペットと過ごすうえで役に立つ情報をお届けできるよう、日々勉強しております。よろしくお願いします。

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