【獣医師監修】犬の脱臼の原因や治療法、対処法は?脱臼しやすい犬種もいる?

2019.10.12

【獣医師監修】犬の脱臼の原因や治療法、対処法は?脱臼しやすい犬種もいる?

愛犬との日常生活を送る上で、直面する可能性が低いとはいえない病気の一つに「脱臼」があります。今回はこの犬の脱臼について、原因や治療法などを紹介します。脱臼の原因としては様々な要因が挙げられますが、脱臼をしやすいといわれる犬種がいるのも事実。その犬種も併せて紹介しますので、是非、チェックしてみてください。愛犬の万が一に備えて、知識を備えておきましょう!

【目次】
1.部位別 犬の脱臼の原因・症状
 1-1.顎関節
 1-2.肩関節
 1-3.肘関節
 1-4.手根関節
 1-5.膝関節
 1-6.股関節
 1-7.足根関節
 1-8.尾椎関節

2.脱臼になりやすい犬種
 2-1.顎関節を脱臼しやすい犬種
 2-2.肩関節を脱臼しやすい犬種
 2-3.肘関節を脱臼しやすい犬種
 2-4.膝関節(膝蓋骨脱臼)を脱臼しやすい犬種

3-1.脱臼の治療法
 3-2.脱臼の整復
 3-3.患部の固定
 3-4.外科手術

4.犬が脱臼した時の看病方法
 4-1.ケージ内にクッションやマットなどを置く
 4-2.サークルやマットレスを活用する

5-1.犬の脱臼に対する予防対策法
 5-2.健康管理
 5-3.環境整備
 5-4.食事管理

6.犬の脱臼に関するまとめ

部位別 犬の脱臼の原因・症状

脱臼

犬が脱臼する原因として主に、転倒・衝突・事故・落下・急な方向転換など、強い衝撃を受けることで脱臼してしまう後天性のものと、生まれつきの関節形成異常(関節の緩みや変形)である先天性のものが考えられます。

脱臼は、関節のある箇所であれば、発生する可能性のある病気といえるでしょう。

犬の場合に考えられる主な脱臼部位ごとに、原因・症状例を詳しくみていきましょう。

◆顎関節

顎関節の脱臼は、正に顎が外れた状態を指します。交通事故や衝突など、外傷が原因で発症することがほとんどです。原因が外傷以外である場合は、先天的な顎関節異常が疑われます。

両側の顎関節が同時に外れた場合、口を開けた状態や、ややしゃくれた状態となります。片側の顎関節だけが外れた場合は、どちらか一方に偏った状態となるでしょう。

先天性の場合、1歳未満の内に発症し、あくびや顎を擦りつける行動など、少し圧力がかかったことが原因で顎が外れてしまうようになるといわれています。多くは両側性であり、中型犬から大型犬に多くみられるようです。

◆肩関節

高い場所からの飛び降りや着地、急な方向転換などの行動により、腕の付け根に大きな力が加わったことが原因で肩関節が脱臼することがあります。

腕の骨が外側に脱臼した場合は、前足を内側に寄せるような行動がみられ、逆に内側に脱臼した場合は、前足を外側に寄せるような行動をとるでしょう。
これは、犬が脱臼の痛みを軽減しようとするためです。肘を曲げた状態のまま、前足が地面につかないように、ヒョコヒョコと歩く様子がみられます。

外傷以外の原因としては、腕の骨の先端が十分に発育しない病気、先天的な肩関節異常であることが疑われます。
この場合、早い時期(3~10カ月齢)から前足を引きずるようになり、腕の骨は100%内側にずれこむでしょう。小型犬に多くみられる病気です。

◆肘関節

犬が前足を突っ張って立っている際に、肘部分に横からの圧力が加わることで肘関節の脱臼を発症します。更に肘を曲げている状態でも、ねじり圧力が加わることで脱臼の原因となりえます。

肩関節の脱臼と同様に、肘を曲げた状態のまま、前足を地面につけないように歩く様子がみられるでしょう。

こちらも外傷が原因でない場合はと、先天的な肘関節異常が疑われます。
中でも小型犬に多いのは上腕尺骨脱臼で、生後3か月以内に、両方・または片方の肘が外側に折れ曲がったまま戻らない状態がみられます。

また、中型犬・大型犬に多いのは橈骨頭脱臼で、4~5カ月齢くらいから、前腕の骨である橈骨と尺骨のうち、橈骨だけが外側に亜脱臼した状態がみられるようになるでしょう。尺骨脱臼よりは症状は軽めだといわれています。

◆手根関節

高い場所からの飛び降りや着地、急な方向転換によって、手首に大きな力がかかることが原因で発症します。

こちらも肘を曲げた状態のまま、前足が地面につかないようにかばいながら歩く様子がみられるでしょう。

レース犬・猟犬・アジリティ犬など、特に激しい運動が要求される犬は、この種の脱臼をする可能性が高いので注意しましょう。

◆膝関節

膝関節の脱臼は、脛骨脱臼と膝蓋骨脱臼の大きく2種類に分けられます。いずれも、足を引きずったり、歩くリズムがおかしいといった症状がみられるでしょう。

脛骨脱臼は、太腿の骨と脛の骨が脱臼してしまうことです。関節の中にある、前十字靭帯・後十字靭帯・半月板の損傷を伴うことが多いです。
脛骨脱臼が起こった場合、膝によほど大きな力が加わったことが想定されます。

膝蓋骨脱臼とは、膝のお皿が本来ある位置からずれた状態のことをいいます。外側より内側に脱臼する場合が、圧倒的に多いようです。
小型犬に多くみられますが、中型犬や大型犬にも症状が散見されています。膝蓋骨脱臼の場合、外傷が原因となる場合が少ないといわれています。

◆股関節

足の付け根に、瞬間的に大きな力が加わることで発症します。落下・転倒など、あらゆる外傷が原因として考えられますが、最も多いとされる原因は交通事故だそうです。

子犬の場合は、完全に成長していないために、太腿の骨が折れて、成犬より重症化する傾向にあるので要注意です。

全体の90%が頭背側方向での脱臼であることが確認されています。後ろ足が地面につかないよう、スキップに似たおかしなリズムで歩く様子がみられるでしょう。

こちらも外傷以外の原因としては、先天的な股関節の異常が疑われます。
中でも最も多いといわれているのが股関節形成不全で、遺伝性・進行性の病気となります。股関節の緩み・関節の変形が、時間と共に進行していくのです。

基本的には両側性で、大型犬から超大型犬に発症することが多いといわれています。

◆足根関節

足の先に、大きな力が加わることで発症します。中足骨という足裏を構成している長い骨が、テコの原理の要領で力を増幅して伝えてしまうために、重症化する傾向があるといわれています。

骨折や捻挫を伴うことがほとんどで、後ろ足を地面につけないようにかばいながら、ケンケン歩きをする様子がみられるでしょう。

◆尾椎関節

他の部位の脱臼と比べると、比較的小さな力でも起こりうる可能性の高い脱臼です。

例えば、尻尾をドアなどに挟む、尻尾を踏んでしまう、着地の失敗などで尻餅をつく、尻尾を引っ張られるなど、日常生活の中で身近にある危険が原因で発症する場合が多いでしょう。

尻尾が途中で折れ曲がっている状態であったり、垂れたまま動かないといった症状がみられます。

尻尾の神経である尾骨神経は、馬尾という神経の束と接続しています。このため、時に排尿・排便困難などの馬尾症候群を併発する場合もあるようです。


脱臼になりやすい犬種

主に先天的な理由から、脱臼をしやすいとされる犬種がいます。愛犬が該当しないかチェックしてみましょう。

顎関節を脱臼しやすい犬種

バセットハウンド、ゴールデンレトリバー、アイリッシュセッター、ラブラドールレトリバー、バーニーズマウンテンドッグなど。

◆肩関節を脱臼しやすい犬種

トイプードル、シェットランドシープドッグなど。

◆肘関節を脱臼しやすい犬種

・上腕尺骨脱臼
ヨークシャーテリア、ミニチュアピンシャー、チワワなど

・橈骨頭脱臼 
ボクサー、ラブラドールレトリバー、オールドイングリッシュシープドッグ、ブルマスティフなど。

◆膝関節(膝蓋骨脱臼)を脱臼しやすい犬種

トイプードル、ポメラニアン、ヨークシャーテリア、チワワ。

※ただしラブラドールレトリバーなど、中~大型犬にも発症の様子がみられる。


脱臼の治療法

犬の脱臼の治療法には、主に以下のような方法があります。

◆脱臼の整復

整復とは、脱臼した関節を元の状態に戻すことです。基本的には動物病院で獣医さんに処置してもらうことをお勧めします。

軽度の状態であればその場で整復する場合もありますが、痛みが強いので犬が暴れてしまうため、通常全身麻酔をかけて行われるようです。

股関節の脱臼の場合は、90%近くの確率で上前方への脱臼であるため、脱臼した側を上にして寝かせ、太い紐などを太腿の内側に引っ掛ける形で整復します。

◆患部の固定

脱臼した箇所に再び力が加わるのを防ぐため、サポーターやスリングで固定することで使用を制限する方法です。

固定期間は脱臼箇所や重症度によって異なります。

◆外科手術

骨折・靭帯の断裂や、膝蓋骨が脱臼した場合には、外科手術が必要となります。手術によって損傷部の治療が施されます。

癖になりやすい膝蓋骨の脱臼には、再発を予防するための処置がなされます。


犬が脱臼した時の看病方法

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病院での治療後は、症状によっては薬で炎症を抑え、患部を固定します。そして自宅では安静を保つことが大切です。

獣医さんからも「安静」の指示が出ると思いますが、犬に安静を保たせるというのは個体によっては難しい場合もあるでしょう。

治療後安静を保つためにはどうしたらいいのでしょうか?

◆ケージ内にクッションやマットなどを置く

ケージを利用して行動範囲を狭めたとしても、ケージ内で激しい動きをみせる子も中にはいますよね。またストレスから、噛み付きなどの問題行動を起こしてしまうケースもあります。

飼い主さんができる対策として、まずケージの頭上や側面にクッションやマットなどを置く方法があります。これによって暴れた際にケガをするのを防げますし、患部に当たった場合の衝撃も和らげることができるでしょう。

あまりに興奮が収まらない場合は、一度抱っこして落ち着かせてあげるなど、愛犬にとっての最善策を模索することが大切ですね。

◆サークルやマットレスを活用する

ケージ内に入れておくのが難しいという場合は、滑らない環境を作った後に自由に過ごせるスペースを与えてあげましょう。

サークルやマットレスなどを用意して、ケージ内に限らずある程度行動範囲を広げてあげる方法もあります。ただし、必ず獣医さんに相談してから行ってくださいね。

犬は脱臼の症状から、精神的なダメージも感じているはずです。安静を保つ方法を工夫して、可能な限り快適に過ごすことができるよう努めてあげましょう。

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犬の脱臼に対する予防対策法

激しい痛みを伴う脱臼。できれば愛犬からそんな危険を取り除いてあげたいですよね。そこで脱臼の予防対策として一例を紹介していきます。

◆健康管理

日頃から適度な運動をすることで、関節周りの筋肉を強化することができます。

ただし、愛犬にとって過度となる運動をさせてしまえば、逆に負担をかけることになるので、適切量をしっかりと見極めましょう。

◆環境整備

室内の環境を整えることも、立派な脱臼の予防策となります。

例えば床がフローリングの場合、犬にとっては滑りやすく危険な状態となります。愛犬の行動範囲内にはマットや絨毯を敷くなどして対応しましょう。

また、大きな段差などをなくすことも有効です。ソファや高い場所への移動にはステップを配置しましょう。

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◆食事管理

食事内容の見直しによって、肥満対策や関節強化を目指すのもおすすめです。肥満は関節炎や脱臼の原因にもなりますので、愛犬が肥満傾向にあると感じている場合はすぐに取り組んでください。

また、グルコサミンやコンドロイチンなど、関節に良いとされる栄養素にも注目してみましょう。筋肉をつけるためには、動物性たんぱく質を積極的に摂るのも効果的です。

これらの栄養素に注目しつつ、愛犬のドッグフードを選びなおしてみたり、ペット用サプリメントを利用して効率的に足りない栄養素を補う方法をとるのも良いでしょう。

ちなみに関節に良いとされる代表的な栄養素には、コンドロイチン・グルコサミン・コラーゲン・緑イ貝、などがあります。

サプリメントには様々な種類がありますので、愛犬にぴったりの商品を一度探しみてください。

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犬の脱臼に関するまとめ

外傷が原因であったり、先天的な要因によって発症する可能性もある犬の脱臼。愛犬に普段と違う行動がみられた場合は、できるだけ早く病院を受診するようにしてください。

脱臼箇所や症状のグレードによっては、放置することで悪化するケースも十分あります。ペット保険に入っている方は、事前に保険適応内容を確認しておき、万が一に備えてくださいね。

愛犬が痛みを抱える姿はできれば見たくないですよね。普段から危険の少ない環境作りを心掛け、ケガや脱臼、関節炎などを予防することを頭に入れておきましょう。

強い体作りのためには、必要な栄養素を積極的に摂り入れる食生活を送れるよう一度見直してみてください。

※こちらの記事は、獣医師監修のもと掲載しております※
●記事監修
drogura__large  コジマ動物病院 獣医師

ペットの専門店コジマに併設する動物病院。全国に15医院を展開。内科、外科、整形外科、外科手術、アニマルドッグ(健康診断)など、幅広くペットの診療を行っている。

動物病院事業本部長である小椋功獣医師は、麻布大学獣医学部獣医学科卒で、現在は株式会社コジマ常務取締役も務める。小児内科、外科に関しては30年以上の経歴を持ち、幼齢動物の予防医療や店舗内での管理も自らの経験で手掛けている。
https://pets-kojima.com/hospital/

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壱子

壱子

子供の頃から犬が大好きです。現在はキャバリア4匹と賑やかな生活をしています。愛犬家の皆さんに役立つ情報を紹介しつつ、私自身も更に知識を深めていけたら思っています。よろしくお願いいたします!

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