優秀な猟犬!スモール・ミュンスターレンダーって知ってる?

2021.09.11

優秀な猟犬!スモール・ミュンスターレンダーって知ってる?

スモール・ミュンスターレンダーという犬種をご存知ですか?日本では稀少犬種と呼べる種類のワンちゃんなので、飼育頭数も少なく見掛けたことがあるという方も多くはないかもしれません。このスモール・ミュンスターレンダー、家庭犬としてはもちろんですが、猟犬としてもとても優秀な犬種なのです。今回はこの犬種の、歴史や特徴、性格などを紹介していきます。あなたの犬知識に新たに仲間入りさせてくださいね!

スモールミュンスターレンダーの歴史

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この犬種の発展は、19世紀中頃だといわれています。
ドイツ北西部の田園地帯である、ミュンスター地方で作出されたことが、スモール・ミュンスターレンダー(Small Munsterlander)の歴史の始まりだと考えられているのです。
1870年頃のミュンスターランド地方では、長毛のジャーマン・スパニエルが良く知られていました。この犬種は、優秀なポインティング能力、優れた嗅覚を持ち、併せて回収能力も兼ね備えていたそうです。
ドイツの狩猟法改正以降、ハンター・狩猟愛好家たちの増加、獲物を体系的に繁殖させる方法の誕生に伴って、新しいジャーマン・ポインティング・ドッグの繁殖が始まります。
20世紀に入るとミュンスターランド地方とは別の地域でもブリーディングが進められ、いくつかの血統が作りだされました。
1912年3月17日、スモール・ミュンスターレンダー・ポインティング・ドッグ・クラブがついに設立されます。
設立目的は「ミュンスターランドで何十年もの間、繁殖されてきた長毛の小型のポインティング・ドッグの、純粋性の追求と正しい繁殖の普及」とされ、当時ジャーマン・スパニエルと同一犬種として扱われていたスモール・ミュンスターレンダーの、正式な犬種スタンダードの適用や犬種登録への道が、徐々に開けていきました。
ただし、この犬種の真の起源は、未だ明確とはなっていないようです。

◆優れた能力をもつ猟犬としての歴史

JKC(ジャパンケネルクラブ)によると、スモール・ミュンスターレンダーはドイツ原産の猟犬で、別名「クライナー・ミュンスターレンダー」とも呼ばれています。
JKCではポインター・セターに分類されているのですが、獲物をみつけて合図する「ポイント」に限らず、狩り(ハント)、獲物の回収(リトリーブ)までもをこなす多才な猟犬・鳥猟犬です。
このように、多目的に用いることができる猟犬をHPR犬種といいます。他のHPR犬種としては、ジャーマン・ショートヘアード・ポインター、ジャーマン・ワイアーヘアード・ポインター、ワイマラナー、ラージ・ミュンスターレンダーなどが挙げられます。ラージ・ミュンスターレンダーとは名前が似ていますが、大きさに違いがあるだけの同一の犬種というわけではなく、スモールとラージでは作出に使われた品種が異なるのです。世界的にはホワイトにブラックの斑をもつラージ・ミュンスターレンダーの方が、大型犬で優美だということから人気があるようですが、日本ではどちらも稀少犬種に変わりはありません。
HPR犬種として活躍をしてきた歴史をもつスモール・ミュンスターレンダー。現在でもヨーロッパ地方では、その活躍を垣間見ることができるようです。実猟犬としての才能を後世に引き継ぐため、猟犬能力試験などを行っている「狩猟犬協会(JGHV)」という団体があり、このテストに合格していない子犬は、ドイツのケネルクラブでは血統書が発行されないそうです。ドイツの猟犬に対する情熱・意識の高さが感じられますね。


スモールミュンスターレンダーの特徴・性格

優れた猟犬としての歴史を持つ国内では希少な犬種、スモール・ミュンスターレンダー。外見的な特徴と、その性格について紹介していきましょう。

◆スモール・ミュンスターレンダーの特徴は?

スモール・ミュンスターレンダーの平均体重は、約18~27kgとされています。この範囲内が理想体重といえるでしょう。一般的に、オスの方が大型になるそうです。
体高は、オスが54cm,メスは52cm程が標準とされており、上下2cmまでの違いが許容範囲です。
力強く調和のとれた体格の中型犬で、犬質が高く優雅、バランスの取れた体つきをしています。
特徴的な頭部をしており、直立時は流れるようなアウトラインで、尾は水平を保持します。前脚には十分な飾り毛があり、後脚にはブリーチングが生えています。尾は目立つフラッグになっているのもポイントですね。
被毛は光沢があり、ストレートあるいは僅かなウェーブで、密生してはいますが長過ぎることはありません。リーチが長いので、歩様からは調和が感じられます。

◆スモール・ミュンスターレンダーはどんな性格?

賢く学習能力があり、感情表現が豊かで温厚。飼い主に忠実な性格をしている、スモール・ミュンスターレンダー。理解力が高く、周囲の状況を観察して行動する性格は、正に優秀な猟犬である証です。
主人と定めた人にはとても忠実であり、子供に対しても優しく、基本的に人に対しては用心深いものの、友好的な面があります。健全な環境で飼育できれば、素晴らしい家庭犬ともなり得ます。
ただし、運動量はかなり多くとてもタフです。体力のない人や、長時間の散歩や運動の時間を取れない家庭・飼い主さんにおいては、飼うのに向いていない種類だといえるでしょう。


スモールミュンスターレンダーの寿命・病気

スモール・ミュンスターレンダーの平均寿命は約12~14年程といわれており、中型犬としては平均的です。
かかりやすい病気は特にリストアップされていないようで、総合的に見ても健康的な犬種だといえるでしょう。
遺伝性のものとしては、念のため股関節形成不全に注意しておくとよいですね。また、寒冷地であるドイツ原産の犬なので、日本で飼育する場合には熱中症に気を付ける必要があります。気温が22~23度、湿度が60%を超えてくる日には要注意です。飼い主さんがしっかりと環境を整えて、予防に徹しましょう。
暑い季節は日中の散歩を避けて、早朝・日没などの涼しい時間帯を選択してください。散歩中も保冷剤・水分補給用ボトルを携帯し、室内ではエアコンなどでしっかり室温を管理しましょう。
体調や様子に異変を感じた場合は、早めに動物病院を受診してください。


スモールミュンスターレンダーの毛色

スモール・ミュンスターレンダーの被毛は、短くも長くもないダブルコートで、尾・耳などの毛が部分的に長いのが特徴です。
毛色には、ブラウン&ホワイト、ブラウンローンの二種類があり、大きめの斑(ブラウンのパッチ)やマントを羽織ったような大きい柄(マントル)、または小さな斑(ティッキング)が模様としてあります。
ブレーズやマズル・目・肛門の周囲にはタン色のマーキングが見られる場合があり、これは許容されています。


スモールミュンスターレンダーの飼い方

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基本的に穏やかかつ友好的で、飼い主さんと過ごすことも大好きな犬種であるスモール・ミュンスターレンダー。前述したように、運動が相当な犬種であり、夏場などは熱中症などに注意が必要です。
その他、スモール・ミュンスターレンダーを飼う上で最低限必要な知識を紹介していきますので、しっかりチェックしていきましょう。

◆食事

基本的には、成長に合わせたドッグフード(総合栄養食)を、パッケージの記載量通りに与えましょう。
成長期の子犬のうちは、丈夫な体作りのためにカルシウム・タンパク質が多くとれるように配慮するとよいですね。エネルギーを効率的に吸収できるもので、消化のよい子犬専用フードをあたえるのがおすすめです。フードの種類によって給餌量は異なりますが、基本的には1日の摂取量を3~4回に分けてふやかして与えてください。
成犬となった場合には、成犬用フードに切り替え、1日2回の食事で問題ないでしょう。
個体によっては肥満になりやすい傾向もあります。食事量と運動量に気を配り、しっかり体調管理を行いましょう。

◆散歩

運動量が重視されるスモール・ミュンスターレンダー。散歩は1日2回、1回1時間程度連れていくことが理想です。ただ歩くだけではなく、ジョギングをしたりして移動距離を長くしたり、積極的に身体を動かす必要があるでしょう。
定期的にドッグランなどで自由に走らせたり、飼い主さんと一緒にドッグスポーツに打ち込むなどして、肉体的・精神的に十分満足させてあげてください。
運動不足や退屈はストレスの原因となります。これにより無駄吠え・噛み癖・いたずらなどの問題行動が起こる可能性があるので、毎日身体を動かす時間、一緒に思い切り遊ぶ時間を作ってあげましょう。
中型犬とはいえ狩猟犬であり、大型犬並みの運動量が必要な犬種です。単に運動するだけでなく、仕事を与えて好奇心・探求心を満たしてあげることを念頭に置いて、毎日の運動時間を過ごしてくださいね。

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◆しつけ

高い理解力・学習能力が備わっている犬種なので、比較的しつけはしやすいでしょう。ただし、猟犬としての性質が問題行動に繋がらないように、性格を見極めながらしつけを進めることが重要です。
飼い主さんがしっかりと信頼関係を築くことが何よりも大切ですよ。
しつけの際は感情的にならず、毅然とした態度で接すること、叩いたり頭ごなしに叱ったりしない、うまくできた時は愛情を込めて大袈裟なくらい褒めてあげる、というのがうまくしつけを行うポイントです。

◆お手入れ方法

スモール・ミュンスターレンダーは抜け毛がさほど多くなく、手入れは難しくありません。ただし換毛期(春・秋)には抜け毛が増えるので、アンダーコート用のブラシで死毛を取り除きましょう。
普段は週に2,3回程度はブラッシングして被毛を整えてください。トリミングは必要ありませんが、抜け毛の量に応じてブラッシング回数や時間を調整してケアしてあげましょう。
外遊びやアウトドア、野山で過ごすなどして汚れた場合は、お風呂に入れるなどして被毛を清潔に保つ必要があります。シャンプーは抜け毛のケアとしても有効なので、定期的に洗ってあげてくださいね。被毛は手入れしやすい長さなので、自宅での洗う・乾かす、といった作業も大きな手間とはならないでしょう。お風呂の前にブラッシングンをしておくと、ある程度汚れを落としつつ毛並みも整えられますよ。
また、スモール・ミュンスターレンダーは垂れ耳の犬種です。耳の臭いや病気を防止するためにも、日頃から耳の状態を確認してケアしてあげましょう。


スモールミュンスターレンダーの値段

スモール・ミュンスターレンダーは、稀少犬種のために価格相場は不明です。JKCの犬籍登録でも、何年かおきに数頭が登録されているのみ、といった状況の様です。
子犬を迎え入れたい場合は、輸入を視野に入れる必要があるといえるでしょう。
ただし、ドイツのクライナー・ミュンスターレンダー協会は、狩猟のために飼われるべきだという姿勢を示しているようで、家庭でペットして飼うためにドイツから輸入することは困難かもしれません。
主にブリーダーからの輸入が有力な方法ではありますが、ドイツやアメリカのブリーダーさんが譲ってくれるのは難しいというのが現状です。


まとめ

スモール・ミュンスターレンダーは、国内では中々目にすることが叶わない稀少犬種です。しかし、魅力溢れる猟犬の代表であることに間違いはありません。
飼育する機会に恵まれる可能性は低いかもしれませんが、ネット記事で情報を集めたり、犬図鑑などを開いて探してみてください。犬図鑑によっては記載されていない場合もありますので、本の解説や目次を事前に確認してくださいね。
参考文献として以下の本を紹介しておきましょう。

●デズモンド・モリスの犬種辞典 (デズモンド・モリス著書、福山英也、大木卓訳)
●犬のカタログ2004 (中島眞理 監督・写真)
●日本と世界の愛犬図鑑2007(佐草一優 監修)
●日本と世界の愛犬図鑑2009 / 日本と世界の愛犬図鑑2010 (藤原尚太郎 編・著)

外見的にも能力的にも、またその性格的にも素晴らしい犬種であるスモール・ミュンスターレンダー。猟犬としての性質はもちろんですが、温厚な性格をも持ち合わせているので家族として、パートナーとしてももってこいのワンちゃんなのです。
私自身も直接目にしたことが残念ながらないのですが、いつか会ってみたい犬種の一種です。



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壱子

壱子

子供の頃から犬が大好きです。現在はキャバリア4匹と賑やかな生活をしています。愛犬家の皆さんに役立つ情報を紹介しつつ、私自身も更に知識を深めていけたら思っています。よろしくお願いいたします!

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