【獣医師監修】猫ににぼしをあげてもいい?与える時の量や注意点は?

2019.09.10

【獣医師監修】猫ににぼしをあげてもいい?与える時の量や注意点は?

小魚をカラカラに乾燥させ、頭から尻尾まで食べることの出来るにぼしは、猫ちゃんのおやつの定番商品であるとも言えますよね。芳ばしい香りのするにぼしは、嗅覚の高い猫にとって、とっておきのおやつになることでしょう。しかし、このにぼしを猫に与えることを推奨していない獣医師さんもいるようです。 「猫=にぼし」といった結びつきが一般化している中で、なぜ猫ににぼしを与える際に注意が必要なのでしょうか。

猫ににぼしを与えてもいいの?

にぼし

ペットショップやホームセンターのペットコーナーに行けば、ペット用のフードやおやつとして、当たり前のようににぼしが売られていますよね。スーパーなどにも沢山の種類の煮干しが売られていますので、日常的に目にする機会があるのではないでしょうか。

猫は魚が好きというイメージも強いため、おやつとしてにぼしをあげたことのある飼い主さんは多いことだと思います。

もちろんペット用のにぼしが販売されている時点で、猫に絶対あげてはいけない食べ物ということはありません。

にぼし自体に含まれている成分には、体を作るのに必要な栄養素が沢山含まれています。にぼしを食べることによって、骨の強化や貧血予防になることも。

しかし、中には猫ににぼしを与えることを推奨していない獣医師さんもいるようです。

その理由の一つに、にぼしは塩分が多いことが挙げられます。にぼし一匹のサイズは小さくても、含まれている塩分の量が多いことにより、食べすぎてしまうと病気になってしまう可能性が高くなってしまいます。

そしてもう一つの理由は、にぼしに含まれている豊富なミネラルです。このミネラルが原因となる猫の病気もあるので、注意が必要と言えるでしょう。


にぼしの食べすぎで注意したい猫の病気

注意する指

では、猫はにぼしを食べると、どんな病気を発症しやすくなってしまうのでしょうか?

にぼしの食べすぎで注意したい、猫の病気はこちらです。

◆結石

猫の病気でよく耳にする「結石」ですが、にぼしの食べすぎによって発症することがあります。

にぼしにはリンやマグネシウムなどのミネラル、そしてシュウ酸やカルシウムが豊富に含まれていますよね。これらの栄養成分は過剰に摂取してしまうと、オシッコのアルカリ性と酸性のバランスが崩れてしまいます。それによって結晶化したものを、「結石」と呼びます。

この結石は体の外から入り込む石ではなく、体の中で作られてしまうものなので、オシッコとして排出されなければ、尿管や尿道に詰まってしまったり、粘膜を傷つけたりしてしまうのです。

特にオスの猫はメスの猫よりも尿道の先端が狭く、結石が出来ると尿道の入り口を塞がれてしまい、老廃物が排出されなくなってしまうことも。

そうなってしまうと痛みを伴い、オシッコの回数が減り、血尿が出たり排泄の際に大きな声で鳴いたりするようになります。

たとえ料理の際に出汁をとったにぼしが余ったとしても、与えないようにしましょう。無塩に近い状態にはなっていますが、リンやマグネシウムの量は変わりませんので、注意が必要です。

◆黄色脂肪症

あまり聞き慣れない病名かもしれませんが、「黄色脂肪症」と呼ばれる病気をご存知でしょうか?

黄色脂肪症とは、別名「イエローファット」とも呼ばれており、猫のお腹や胸の部分などに溜まった皮下脂肪が酸化して性質を変え、炎症や硬いしこりを発生させてしまう病気です。

主にマグロやカツオ、アジやサバなどの青魚に含まれている不飽和脂肪酸の過剰摂取が原因とされており、青魚が原料となるにぼしにももちろん、不飽和脂肪酸が含まれています。

少ない量であれば不飽和脂肪酸は血液をサラサラにして、ガンを抑制する働きをしてくれるのですが、やはり食べすぎには要注意ということが言えますよね。

酸化して性質を変えた猫の脂肪は、白色から黄色へと変色していきます。性質が変わってしまった脂肪は痛みを伴うこともあり、歩行困難や食欲不振に陥ってしまうことも。

黄色脂肪症を発症した場合は、たとえ愛猫がにぼし好きであったとしても、治療のために与えることをやめ、毎日の食事はバランスのとれたフードに切り替える必要があります。

そして脂肪の酸化を抑えるために、ビタミンEの投与も行わないといけないので、辛い思いをさせてしまうぐらいなら、最初からにぼしを与えない方が得策と言えるでしょう。

◆腎臓病

猫の病気で普段から気を付けておきたい腎臓病も、にぼしが原因で引き起こされてしまうことがあります。

人間が出汁をとるぐらいの商品であるにぼしは、やはり塩分がとても強いですよね。そして豊富に含まれているミネラルなども、どうしても猫の腎臓に負担をかけてしまう要因であると言えるでしょう。

そのミネラル分が腎臓で結晶化して結石が出来ることもあるので、にぼしを毎日のように食べすぎてしまえば、腎臓は疲れてしまいますよね。

元々猫はあまり水をたくさんの量を飲まないですし、とても濃いオシッコをします。この活動を生まれたときから毎日毎日、ひたすら繰り返している訳ですから、やはり飼い主さんはどれだけ愛猫の腎臓に負担をかけないかが、一緒に暮らす中での課題になってくると思うのです。

腎臓病は不治の病とも言われているので、普段から予防をしておくに越したことはありませんよね。

腎臓病の症状が悪化して尿毒症にならないためにも、少しでもリスクがあると考えられるにぼしは、与えるべきではないと言えるのではないでしょうか。

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猫ににぼしを与える時の注意点

にぼしを食べる猫

にぼしを猫に与えるべきではないと分かっていつつも、愛猫がにぼしのおいしさを既に知っているとしたら、あげないという選択肢は飼い主さんにとって酷なことでしょう。にぼしを大好きな猫ちゃんは、とても多いですもんね!

病気のリスクはあるものの、絶対に猫にあげてはいけないという食べ物でもないので、大切なのは与える際の注意点と言えるでしょう。

どんなことに注意して、猫ににぼしを与えればいいのでしょうか?

◆猫用のにぼしを与える

人間用のにぼしは出汁を取る商品だと、かなり大きい物が多いので、猫には不向きですよね。

猫ににぼしをどうしても与えたいときは、ペット用の商品を購入するようにしましょう。ペット用のにぼしであれば無塩や減塩の商品も多く、飼い主さんもストレスフリーで与えることが出来ます。

おやつとしてあげる程度の量なら、健康体な猫であれば普段飲んでいる飲み水によって、余分な塩分は体外へと排出されていきます。

そのため、にぼしを与える際は、新鮮なお水がいつでも飲めるようにしておいてあげてくださいね。

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◆量を与えすぎない

一番に言えるのは、やはりたくさんの量を与えすぎないということでしょう。

にぼしは体に良いからといって毎日のように与えてしまうと、塩分やミネラルの過剰摂取となってしまいます。様々な病気を発症させてしまうリスクを考えると、猫がにぼしを大好きだからといって、与えることを躊躇してしまいますよね。

大好物でどうしても与えたいという場合には、小さめ(3cm以下)のものを、1~2本程度あげるぐらいにとどめておきましょう。

そして特に塩分の高い箇所がにぼしの頭と言われているので、頭の部分はあらかじめ取り除いて与えると良いかもしれません。

◆病気や高齢の猫には与えない

何かしらの病気を患っていてあまり水を飲まない猫や、高齢の猫には、にぼしを敢えておやつとして与えることはおすすめできません。

病気を患っている場合、その病気が結石や腎臓病などの病気でなかったとしても、にぼしが引き金となって、リスクの高い病気を併発する可能性がないとは言い切れないからです。

病気の場合は病気に適したフードを毎日与え、どうしてもおやつを与えたい場合には獣医師さんと相談するようにしましょう。

そして高齢の猫はすでに腎機能が低下していますし、歯なども弱っていることが多いので、硬いにぼしはフードとしてもおやつとしても向いていません。


猫のにぼしの与え方まとめ

にぼしが好きな猫ちゃんはとても多いので、欲しがったらついついあげてしまう飼い主さんも少なくないことでしょう。

その反面、猫ににぼしは与えてもいいのか、与えてはいけないのか、色々な意見が出ているのも事実です。

どうしてもにぼしは栄養価が高い分、猫にとって過剰摂取してしまうと、結石などの病気のリスクも高くなってしまうので、当然注意は必要となってきますよね。

人間用の出汁を取ったあとのにぼしは与えない、フードの代わりとして与えない、毎日たくさんの量を与えない…など、色々と気を付けなくてはけません。

そう考えると与えない方が楽な気もしますが、にぼしを食べる愛猫が喜んでくれるなら、あげたいと思ってしまう飼い主さんも多いことでしょう。

猫ににぼしを与える際には、必ずペット用の商品で無塩か減塩の物を選ぶようにしてください。そして塩分の強いにぼしの頭の部分は取り除き、小さ目の物を1~2本あげるようにしてくださいね。

これらの注意点を守り、しっかりとお水を飲んでくれれば、それほど神経質になることもないので、上手ににぼしと付き合っていくと良いでしょう。

●記事監修
drogura__large  コジマ動物病院 獣医師

ペットの専門店コジマに併設する動物病院。全国に14医院を展開。内科、外科、整形外科、外科手術、アニマルドッグ(健康診断)など、幅広くペットの診療を行っている。

動物病院事業本部長である小椋功獣医師は、麻布大学獣医学部獣医学科卒で、現在は株式会社コジマ常務取締役も務める。小児内科、外科に関しては30年以上の経歴を持ち、幼齢動物の予防医療や店舗内での管理も自らの経験で手掛けている。
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たぬ吉

たぬ吉

小学3年生のときから、常に猫と共に暮らす生活をしてきました。現在はメスのキジトラと暮らしています。3度の飯と同じぐらい、猫が大好きです。

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