猫の尿検査をするメリット
猫も人間と同じで、健康に長生きするためには病気の早期発見・早期治療が必要です。
しかし、猫は具合が悪くても表に出さずに隠してしまいます。そのため、気づいた時には手遅れという悲しい結末になることも。
病気の早期発見には、日々の観察はもちろん、定期的な検査をして愛猫の健康状態を知ることが必要です。
特に猫は泌尿器系の病気になりやすく、腎臓疾患が死因の上位に入るので、尿検査は欠かせません。尿検査を受けることで、腎臓のほか肝臓・胆のうなどの内臓機能、糖尿病の状態、結石の有無について調べることができます。
尿検査は猫に負担をかけずに健康状態を知ることができる検査なので、年に1回以上受けることをおすすめします。
猫の尿検査の検査項目
一般的な尿検査の検査項目について、簡単にまとめます。
・pH値
おしっこのpHが、酸性・アルカリ性のどちらかに偏っていないかを確認します。
・尿比重
水に対するおしっこの重さを量ることで、おしっこを濃縮する機能をチェックします。
・尿タンパク
おしっこ中のタンパク質の量を表します。
・尿糖
腎臓での糖の再吸収が追いつかなくなると、おしっこに糖が排出されるようになります。
・尿ビリルビン
ビリルビンとは、赤血球中のヘモグロビンが、肝臓や脾臓などで壊れた時にできる胆汁色素のことです。
病気により赤血球が多量に破壊されたり、肝臓や胆道に障害があり胆汁の流れが妨げられたりすると、おしっこに排出されるようになります。
・尿潜血
炎症や感染により尿路などから出血することで、おしっこに血が混じることがあります。
自宅で猫のおしっこを採尿する方法
自宅で採尿する方法は様々ですが、愛猫の性格や普段使うトイレの種類などによって、適した方法が異なります。
いくつか試してみて、愛猫に合った、できるだけストレスをかけない方法を見つけてあげてください。
◆おたまで採尿する
猫がおしっこの体勢になって腰を落としたところで、おたまを後ろからお尻の下に差し入れます。あまり大きなものや深いものは、お尻の下に入らないかもしれません。
レンゲや紙皿などでも、同様に採尿できます。
◆ペット専用の採尿器を使う
ペット専用の採尿器「ウロキャッチャー」を使用すると、採尿後、入っていた袋に戻すだけでいいので便利です。
ウロキャッチャーは、動物病院によりますが、1本80円~90円程度で購入できます。ネットショップでも1本から購入できますが、送料を考慮すると、動物病院で購入する方が経済的です。
柄の先に採尿用のスポンジがついていて、後ろからお尻の下に差し入れて使います。
固まる猫砂でしかおしっこをしない猫の場合には、猫砂の量をごく少量にしておき、流れ出た尿にウロキャッチャーのスポンジ部分を浸して採尿することもできます。
◆コットンと割り箸を使う
化粧用のコットンを割り箸の先に挟んで、ウロキャッチャーのように使うこともできます。おしっこが染み込んだコットンを、ビニール袋の中で絞って採取します。
◆猫砂の上にラップを敷く
普通のトイレを使用している猫の採尿には、ラップを使うのもおすすめです。
猫砂の上にラップを敷き、その上にしたおしっこをスポイトやウロキャッチャーなどで吸い取ります。ラップの代わりに、ビニールシートや裏返しにしたペットシーツでも同様に採尿できます。
ただし、砂をしっかりかいてからおしっこをする猫の場合、ラップなどがぐしゃぐしゃになって、上手く採れないこともあります。
◆紙コップでひしゃくを作る
紙コップの底を採尿部分として、柄となる部分と合わせて切り取るだけです。強度のある紙が重なった部分を、柄の部分に使いましょう。
おたまなどと同様に、後ろからお尻の下に差し入れます。ひしゃくの深さは、深すぎるとお尻の下に入らず、浅すぎると尿がこぼれてしまうので、2~3cmがおすすめです。
◆システムトイレの底に貯める
システムトイレを使い慣れている猫におすすめの方法です。
システムトイレの引き出し部分にシーツを敷かずにセットします。砂(チップ)を通過して、引き出し部分に溜まった尿を採取します。
普段通りにおしっこをするだけなので、猫にストレスをかけることなく採尿できます。
ただし、雑菌や汚れが混じらないように、トレーを洗浄し、砂(チップ)を新しいものに交換してから行ってください。
おしっこを直接トレーに溜めるのが気になる場合には、ペットシーツを裏返してセットしても大丈夫です。
◆採尿シートを利用する
ペット用品を扱うオンラインショップでは、採尿シートを扱っているところもあります。いつもおしっこをする場所が決まっている猫には、おすすめの方法です。
適当な大きさにカットした採尿シートを猫砂の上に置いておきます。また、猫の後ろから差し入れて採尿することもできます。システムトイレで採尿するときに、引き出し部分に敷くのもおすすめです。
おしっこが染み込んだ採尿シートは、ビニール袋などに入れて絞ります。
犬にも使えるように大きめのシートになっているため、価格はやや高いですが、カットして使えるのでコスパは悪くないでしょう。
ただし、よく砂をかいてからおしっこをする猫の場合、採尿シートをかき出してしまうこともあります。
◆吸収しない猫砂を使う
採尿用の「Kit4Cat」という、おしっこを吸収しない猫砂があります。日本国内では販売されていない商品なので、動物病院やネットから購入します。
また、システムトイレ用の砂は水分をあまり吸収しないので、普通のトイレで使って採尿することもできます。
ただし、猫砂の感触が変わるとおしっこをしない猫には、不向きの方法です。
獣医さんで猫のおしっこを採尿してもらう方法
自宅で採尿したおしっこでは、正確な検査ができないという専門家の意見もあります。
また、自宅で採尿したもので検査をして異常が見つかった場合には、獣医さんに採尿をしてもらい、さらに精密な尿検査を行ってもらうことになります。
そこで、獣医さんで採尿してもらう方法についてご紹介します。
◆カテーテル採尿
カテーテルとは、「体内に挿入して、検査や治療などを行うための柔らかい細い管」のことです。カテーテル採尿は、尿道にカテーテルを挿入して行います。
少量のおしっこが溜まっていれば採尿できますが、挿入時に痛みがあるため、猫が抵抗することもあります。
また、メス猫は尿道が膣の中にあるため、直接見て挿入することができません。麻酔をかけない動くメス猫にカテーテルを挿入するのは、かなり難しいとのことなので、獣医さんとよく相談しましょう。
自然に排尿したおしっこよりはきれいな尿が取れますが、カテーテルを入れる時に細菌などが混入することがあります。
◆膀胱穿刺
膀胱穿刺(ぼうこうせんし)とは、エコーで膀胱を確認しながら細い注射針を刺して、直接膀胱から採尿する方法です。
針を刺すというと、飼い主さんとしては不安になってしまうかもしれません。しかし、最もきれいな尿が採取でき、猫の負担も比較的少ない方法として主流になりつつある方法です。
ある程度の尿が溜まっていれば採尿でき、また無菌的に採取しているので細菌培養の検査もできます。
猫が暴れることも少ない方法ですが、あまりにも暴れる子では難しいこともあります。
猫の採尿についての注意点
◆必要なおしっこの量
10㏄あれば、ほぼすべての動物病院で尿検査ができ、追加で特殊な検査が必要になっても足りるでしょう。
あまり量が取れなかった場合は、1㏄くらいあれば最低限の項目の検査ができるので、獣医師さんに相談してみましょう。
◆清潔な密閉容器を準備する
採集したおしっこは、スポイトやシリンジ(針の無い注射器)、未使用の醤油差しなどで採取し、清潔な密閉容器に移します。
正確な検査結果を得るためには、動物病院で、滅菌された専用容器を入手するのがおすすめです。
◆採尿日時を記録する
おしっこを入れた密閉容器は、さらにポリ袋やジップ袋などに入れて動物病院に持っていきましょう。採尿した日時を必ず記録しておきます。
袋に猫の名前と一緒に書いておくと、スムーズに検査に出すことができます。
◆採尿後はできるだけ早く動物病院へ
尿検査には、できる限り新鮮なおしっこが必要です。猫のおしっこは、時間が経過すると変化してしまうので、採尿後3~6時間以内に動物病院に持っていきましょう。
◆採尿後のおしっこは冷蔵庫で保存
すぐに動物病院に持っていけない場合には、冷蔵庫で保管します。冷蔵庫で保管する際には、衛生面からも、袋を二重にしておくとよいでしょう。
また、間違って口にすることがないように、冷蔵庫内の保管場所には注意しましょう。
◆多頭飼いの場合の注意点
採尿するときに、複数の猫のおしっこが混ざらないように、注意が必要です。また、採取したおしっこがどの子のものか、分かるようにしておきましょう。
採尿する猫とトイレを、一室に隔離するのがおすすめです。
まとめ
猫は、泌尿器系の病気になりやすく、慢性腎臓病で亡くなる猫は毎年、約40万匹というデータもあります。
月に一度、自宅で採尿しておしっこの色や量をチェックすると、体調の変化に気づきやすくなります。
また、獣医師さんの約半数が、3か月に1回の尿検査が必要だと考えています。少なくとも年1回以上は、動物病院での尿検査を受けるようにしましょう。
自宅での採尿は、愛猫に合った方法を見つけるまでは難しいかもしれませんが、ぜひチャレンジしてみてください。
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