【獣医師監修】鼻水や目やにの原因は猫風邪かも!症状・原因から治療法や予防法まで

2020.10.19

【獣医師監修】鼻水や目やにの原因は猫風邪かも!症状・原因から治療法や予防法まで

猫の飼い主さんの多くは、「猫風邪」という病気を聞いたことがあるのではないでしょうか。猫風邪は、「風邪」と言われるだけあり、くしゃみや目やになどの症状や、原因がウイルスや細菌であることなど、人間の風邪と似ています。しかし、人間と猫は異なる動物種なので、同じような症状だからと人間用の風邪薬を猫に使うことは厳禁です。そこで、猫風邪について、症状や原因、治療法や予防法についてまとめました。

猫風邪とは

つらそうな猫

「猫風邪」とは、実は病名ではありません。
猫の上部気道感染症が原因で、鼻水やくしゃみ、目やにや咳が出るなど、人間の風邪に似た症状が出ている状態を言います。
猫の上部気道感染症には、「猫鼻気管炎」「気管炎」「鼻炎」「咽頭炎」などが含まれます。

◆猫風邪の症状

症状は原因となる病原体の種類によって様々ですが、くしゃみ・鼻水、発熱などは共通しています。

くしゃみ・鼻水

くしゃみや鼻水は、よく見られる症状です。
くしゃみが連続して止まらなかったり、鼻水が出たりします。
鼻水は、病気でなくても出ることがありますが、その場合は無色透明でさらさらしています。
一方、病気が原因の場合は、色がついていたりネバネバしていたりします。
猫風邪で見られる鼻水は、緑がかった黄色でドロドロしています。
猫は、味覚より嗅覚で食べ物を「味わって」いるため、鼻水や鼻づまりが続くと、食欲不振になることもあります。

涙・目やに

角膜炎や結膜炎などにより、涙や目やにが増えます。
大量の目やにが目元にこびりつき、目が開けない状態になることもあります。
初期には、涙が多い程度に見えるかもしれません。
しかし、悪化すると目がショボショボしたり、黄色い目やにが出てきたりします。

発熱と食欲不振

猫の平熱は、直腸温度でおよそ37~39℃です。
いつもより呼吸が速い場合や、耳が熱くなっている場合は、発熱しているかもしれません。
発熱すると体がだるくなり、食欲不振になる場合があります。

口内炎・舌の炎症
原因がカリシウイルスの場合、口の中に水泡や潰瘍ができる「口内炎」や舌の炎症が起きることも多いです。
痛みからよだれが多くなり、口臭がするようになります。

肺炎や多発性関節炎
クラミジアが原因の場合、軽い肺炎や多発性の関節炎を起こすこともあります。

◆どんなウイルスによって発症する?

原因となる病原体は、猫ヘルペスウイルス猫カリシウイルスといったウイルス、クラミジアやマイコプラズマなどの細菌です。
主な原因は、ヘルペスウイルスとカリシウイルスです。

ヘルペスウイルス
ヘルペスウイルスが原因の場合は、「猫ウイルス性鼻気管炎」という病名になります。
症状としては、鼻水やくしゃみ、食欲不振、発熱のほか、角膜炎や結膜炎が見られます。
一度感染すると「キャリア」(病原体を持つ猫)となる可能性があり、ストレスがかかったり免疫力が低下したりした場合などに再発することがあります。
また、キャリアは他の猫に対する感染源になる可能性もあります。

カリシウイルス
病原体がカリシウイルスの場合は、「猫カリシウイルス感染症」という病名となります。
くしゃみなどのほか、口内炎や舌の炎症などの症状が見られます。

クラミジア
クラミジアが原因の場合は、くしゃみなどのほか、角膜炎や結膜炎、口内炎が見られ、肺炎、多発性関節炎を起こすこともあります。

◆かかりやすい猫は?

猫風邪は、生後2~3ヶ月の子猫が特にかかりやすい病気です。
子猫は免疫力が低いので、重症化しやすく、失明する場合や命にかかわる場合もあります。
老猫の場合も免疫力が低下しているため、重症化することがあるので、気をつけてあげましょう。
また、猫エイズ猫白血病にかかっている子は、免疫力が非常に低下しているため、発症・再発したり、長引いたり、さらには重症化することもあります。

◆どこから感染する?

外で暮らす野良猫や地域猫は、症状の有無にかかわらず、ほとんどの子が感染していると言われています。
このため、外と室内を自由に行き来している子や、飼い主さんとお散歩をする子は、感染するリスクが高くなります。
また、庭に野良猫などが現れる場合には、網戸越しに感染することがあるので、窓やドアを開けないようにしましょう。
飼い主さんが外の猫と触れ合った後、十分に手を洗わずに愛猫と接することで感染する場合もあります。
また、飼い主さんの服や靴に付着して、ウイルスが持ち込まれることもあります。

◆どうやって感染する?

鼻水やくしゃみなどからの飛沫感染や、接触感染でうつります。
逆に、外で暮らす猫や感染した飼い猫と接触しなければ、風邪をひくことはほとんどありません。
免疫力が十分にある場合には感染しても発症しないことも多いですが、一般的にはおよそ2~10日の潜伏期間を経て、症状が現れます。
多頭飼育をしている場合には、風邪をひいた子は他の子と隔離しましょう。


猫風邪の治療方法

◆少しでもおかしな症状があれば動物病院へ

ウイルスが体内に入ると、そのウイルスに対する抗体が体内にできますが、それにはある程度の時間がかかります。
その間に体が弱ってしまい、子猫やシニア猫の場合は重症化してしまうリスクがあります。
また、体が弱ると細菌などの二次感染を起こし、肺炎や気管支炎になることもあります。
鼻水やくしゃみ、目ヤニなどの症状は、健康であれば目立つほどにはなりません。
飼い主さんが気づくほどの症状であれば、病気がある程度進行していると考えた方がよいでしょう。
気になる症状があれば、早めに動物病院を受診しましょう。
様子を見るのは、症状に気づいてから長くても1日程度までにした方がよいでしょう。
また、風邪と似た症状がある病気もあるので、その判断をつけるためにも早めの受診が重要になります。

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◆病院ではどんな治療をするの?

人間の風邪と同じく、特効薬はありません。
病院での治療は、対症療法となります。
ウイルスの活性を抑える抗ウイルス剤や、二次感染を防ぐための抗生剤が投与されます。
重症でなければ、抗生剤のみの場合が多いようです。
また、結膜炎や鼻水の症状があれば、目薬や点鼻薬が処方されることもあります。
食欲不振が見られる場合には、食欲増進剤が処方されたり、栄養補給や輸液のための点滴をしたりすることもあります。
免疫力を高めるインターフェロンの注射をすることも多いです。
1週間後に再診を受け、症状が治まってきていれば経過観察をして、通常は2週間程度で回復します。

◆治療費はどれくらい?

治療費は、病原体の種類や症状の重さによって、また動物病院によっても異なります。
目安としては、初診料が1,000円~2,000円程度、再診であれば500円~1,000円程度、1週間分の薬代が5,000円~10,000円程度です。
また、注射は1回で1,000円~3,000円程度、輸液には2,000円~5,000円程度かかります。
このほか、エックス線検査や血液検査を行う場合もあり、その場合、さらに10,000円前後かかることがあります。

◆人間用の風邪薬を与えることは厳禁

人間用の風邪薬に含まれる成分には、猫に与えると少量でも死に至るものがあります。
決して与えないでください。


猫風邪にかからないためには

◆ワクチンを接種しよう

猫風邪は、ワクチン接種で予防することができます。
一般的な三種混合以上のワクチンであれば、ヘルペスウイルスとカリシウイルスが含まれています。
ウイルスには型の違いなどがあるため、ワクチンを接種しているからといって、絶対に風邪をひかないとは言えません。
しかし、風邪をひく確率は下がり、ひいたとしても軽症で済むことが多いと言われています。
ただし、持病があったり高齢であったりするとワクチンが接種できない場合があり、また副作用が出る場合もあります。
獣医師さんとよく相談の上で、接種するかどうかを判断してください。
また、まれにアレルギー反応を示すことがあるので、ワクチン接種は午後の診療がある日の午前中に受けると安心です。
料金は、ワクチンの種類や動物病院によって異なりますが、およそ3,000円~8,000円です。

◆完全室内飼いをしよう

ほとんどが感染していると言われている外で暮らす猫と接触すると、感染するリスクが高まります。
室内外を自由に行き来させたり、お散歩をさせたりすると、感染した猫と接触する可能性があるので、完全室内飼いをすることが重要な予防策の一つです。

◆冬は暖をとれる工夫を

寒くなると、免疫力が低下しやすくなります。
猫風邪は、免疫力が低下すると発症しやすいので、冬には保温をしてあげましょう。
暖房器具を利用するほか、日の当たる場所に寝床を用意してあげるなど、暖を取れる工夫をするとよいでしょう。

◆子猫を拾った時には要注意!

上述のとおり、外で暮らす猫のほとんどは、猫風邪に感染していると考えられます。
そのため、外で拾った子猫はすでに感染している可能性が高いです。
重症化すると、失明することもあり、死に至ることもあります。
なるべく早く動物病院を受診して、予防と治療について相談しましょう。
先住の子がいる場合は、隔離してください。


猫の風邪は人にうつる?

猫風邪と人間の風邪は、症状が似ており、ウイルスや細菌が原因である点も似ています。
しかし、原因となるウイルスが異なるため、猫風邪が人間にうつることはありません。
また、人間の風邪が猫にうつることもありません。
ただし、クラミジアの場合は、人間にうつることがあると言われています。
猫風邪に罹った子のお世話をした手で、目や口、傷口には絶対触れないようにしてください。
お世話をした後は、十分に手洗いをして清潔にすることで、感染を予防することができます。
ちなみに、猫風邪は通常、犬にうつることもないので、一緒に飼っていても心配ありません。


まとめ

こちらを見つめる子猫

猫風邪は、咳やくしゃみ、鼻水、目やになどの症状が出ている状態を言います。
ヘルペスウイルス、カリシウイルスが主な原因ですが、クラミジアやマイコプラズマが原因の場合もあります。
一度ヘルペスウイルスに感染すると、ウイルスが体内に残り、ストレスがかかったり免疫力が低下したりした時に、再発することがあります。
免疫力が低い子猫やシニア猫は、かかりやすく、また重症化しやすいので、気をつけてあげてください。
ヘルペスウイルスとカリシウイルスは、三種混合以上のワクチンで予防できます。
子猫には適切な時期に接種し、成猫になってからも定期的に接種しましょう。
外で暮らす猫はほとんどが感染していると言われているので、完全室内飼いをすることも重要な予防策です。

※こちらの記事は、獣医師監修のもと掲載しております※
●記事監修
drogura__large  コジマ動物病院 獣医師

ペットの専門店コジマに併設する動物病院。全国に15医院を展開。内科、外科、整形外科、外科手術、アニマルドッグ(健康診断)など、幅広くペットの診療を行っている。

動物病院事業本部長である小椋功獣医師は、麻布大学獣医学部獣医学科卒で、現在は株式会社コジマ常務取締役も務める。小児内科、外科に関しては30年以上の経歴を持ち、幼齢動物の予防医療や店舗内での管理も自らの経験で手掛けている。
https://pets-kojima.com/hospital/

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SHINO

SHINO

保護犬1頭と保護猫3匹が「同居人」。一番の関心事は、犬猫のことという「わんにゃんバカ」。健康に長生きしてもらって、一緒に楽しく暮らしたいと思っています。

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