1.猫にワクチンを打つ理由は?
1-1.完全室内飼いだけどワクチンは必要?
1-2.ワクチンを打っていないとどうなる?
1-3.猫のためにもワクチンは接種しよう
2.猫に打てるワクチンの種類
2-1.コアワクチン
2-2.ノンコアワクチン
2-3.単体ワクチン
2-4.狂犬病ワクチン
3.ワクチンはいつ打てばいい?
3-1.子猫の場合
3-2.成猫を迎えた場合
3-3.繁殖を予定している場合
3-4.生活環境が変わるとき
3-5.抗体検査をしてから打つという方法も
4.ワクチンにかかる費用は?
5.猫のワクチン接種前に注意したい事
6.猫のワクチン後に注意したい事
6-1.接種後は安静に過ごす
6-2.副反応が出ることがある
6-3.2~3週間は他の猫との接触を避ける
7.まとめ
猫にワクチンを打つ理由は?
◆完全室内飼いだけどワクチンは必要?
猫の感染症の多くは、病原体(ウイルスや細菌)を持った猫の唾液や血液、排せつ物に触れることで伝染します。
外の猫や室内外を行き来する猫は、病原体に感染している可能性が高くなります。
一方、完全室内飼いをしていると、外の猫と接触することはなく、病原体に触れる可能性も限りなくゼロに近いでしょう。
しかし、病原体は、飼い主さんや来客の靴や衣服に付着したり、一緒に飼っている他のペットに付着したりして、家の中に持ち込まれるかもしれません。
外で、感染している動物に触れたり、排せつ物を踏んだり、気づかずに感染源に接触している可能性があります。
完全室内飼育をしていても、ワクチンは感染症の予防のために有効です。
◆ワクチンを打っていないとどうなる?
ペット保険では、ワクチンの接種で予防できる病気の予防をしていなかった場合、補償の対象外となることが多いです。
ワクチンを打っていない場合に、対象の病気の治療を行った場合、治療費は全額自己負担となります。
また、ペットホテルなどの利用に際しては、接種が必要な場合も多いです。
◆猫のためにもワクチンは接種しよう
感染症は、1度かかってしまうと、ウイルスを体内に持つ「キャリア」となります。
キャリアとなった猫は、シニアになったりストレスを受けたりしたときに再発し、重症化する可能性があります。
また、子猫は免疫力が非常に弱いため、特に重症化しやすく、目や鼻に後遺症が残る場合や死亡するケースもあります。
幸いにして死に至らなくても、感染症にかかれば、愛猫は辛く苦しい思いをすることになりますし、他の子に対する感染源となる場合もあります。
大切な愛猫のためにも、適切にワクチンを打ちましょう。
猫に打てるワクチンの種類
猫のワクチンの種類について、見ていきましょう。
猫用には、複数のワクチンが1つのアンプルに入った「混合ワクチン」と1つの病原体に対する「単体ワクチン」があります。
◆コアワクチン
猫汎白血球減少症ウイルス(パルボウイルス)、猫ウイルス性鼻気管炎(猫ヘルペスウイルスI型)、猫カリシウイルスに対するワクチンです。
「3種混合」とは、一般的に、この3つを指しています。
この3つのウイルスは感染力が非常に強く、蔓延している地域が多いです。
また空気感染の恐れがあるため、室内飼育を含む全ての猫への接種が推奨されています。
◆ノンコアワクチン
感染するリスクが生活環境によって変わってくる病気に対するワクチンです。
「4種混合」は、3種混合に猫白血病ウイルス(FeLV)に対するワクチンを加えたもの、「5種混合」は4種混合に猫クラミジア感染症に対するワクチンを加えたものです。
◆単体ワクチン
猫免疫不全ウイルス(FIV;猫エイズ)に対するワクチンは、混合ワクチンではなく、単体で接種する必要があります。
また、猫白血病ウイルスに対するワクチンも、単体で打つことができます。
猫免疫不全ウイルスと猫白血病ウイルスに対するワクチンは、接種前に感染のチェックを受けなければなりません。
◆狂犬病ワクチン
狂犬病は、人間を含む全ての哺乳類に感染する感染症です。
1956年以降、日本国内での感染例はありませんが、イギリスなど一部の地域を除く全世界で現在も発生しています。
犬と異なり、接種は義務ではありませんが、海外へ行く場合、渡航する国によっては猫も接種が必要なことがあります。
ワクチンはいつ打てばいい?
◆子猫の場合
生後すぐの子猫には、病気に対する免疫力はありません。
母猫の初乳を飲むことで、母猫の抗体を取り入れ、免疫力を獲得します。
初乳とは、子猫を産んでから1~2日間出る母乳です。
母猫からの抗体を「移行抗体」、移行抗体による免疫力を「受動免疫」と言います。
受動免疫は徐々に弱まり、生後56日ごろに自然に消滅します。
初乳を十分に飲んだか否かで免疫力の強さが異なるため、ワクチンを接種する時期も異なってきます。
獣医師さんと接種計画(ワクチネーション・プログラム)を立てて、これに基づき接種を行っていくことになります。
初乳を十分に飲んだ子猫
生後56日(8週齢)ごろに、最初のワクチンを接種します。
この時、移行抗体が残っていると、子猫自身は抗体を作っておらず、移行抗体の働きでワクチンを排出してしまいます。
このため、生後84日(12週齢)ごろに2度目の接種を行います。
最終接種は、生後16週齢以降とし、最終接種から6か月後に免疫強化用接種(ブースター)を行います。
初乳を飲んでいない子猫
感染リスクが高いため、生後4週齢ごろから接種を始めることもあります。
母猫が予防接種を受けていない場合
母猫に免疫力がないため、子猫は抗体を受け取ることができません。
この場合も、早めにワクチンを接種することがあります。
ブースター後
通常、1年~3年の間隔をあけて再接種を行います。
日本では、一般に毎年1回の接種が行われています。
海外では3年に1回の場合も少なくありませんが、日本とは病原体の蔓延状況や使われているワクチンの種類が異なるため、一概に海外同様にすればいいというものでもないと考えられます。
◆成猫を迎えた場合
成猫の場合、健康であればいつでも打つことができます。
免疫力を確実につけるために、1回目の接種から約1ヶ月後に追加接種を行います。
◆繁殖を予定している場合
妊娠している猫には、基本的にワクチン接種はできません。
抗体が完成するのは、接種後1~3週間経ってからです。
このため、繁殖を予定している場合、交尾の3週間以上前には接種しておきます。
◆生活環境が変わるとき
加齢やストレスは、免疫力を低下させます。
猫は、環境の変化に弱く、生活環境が変化することで強いストレスを感じることが多いです。
生活環境の変化には、引っ越しや、新しい猫を迎えること、飼い主さんに赤ちゃんが生まれたり、子供さんが独立したりして家族構成が変わることなどがあります。
大きな環境変化の予定がある時は、ワクチンを受けることを検討するとよいでしょう。
また、幼齢期に病原体に感染していた場合、加齢によって免疫力が低下することで、再び発症する可能性があります。
獣医師さんとよく相談して、接種を検討しましょう。
◆抗体検査をしてから打つという方法も
ワクチンを打つかどうかを、抗体が残っているかどうかを検査してから決めることもできます。
できるだけ接種回数を減らしたい場合や、病気があったり高齢であったりしてワクチンを打つことによる体調変化が気になる場合は、抗体検査をしてみるとよいでしょう。
抗体検査については、獣医師さんとよく相談してみてください。
ワクチンにかかる費用は?
ワクチンは「予防医療」なので、ペット保険の対象外です。
このため、費用は、全額、飼い主さんの自己負担となります。
動物病院やワクチンによって、費用は異なりますが、目安としては以下のとおりです。
・FeLVを含む:5,000円~10,000円
・FeLVワクチン:3,000円~5,000円
・FIVワクチン:3,000円~5,000円
猫のワクチン接種前に注意したい事
ワクチンは、健康で元気な時に受けましょう。
ワクチンを打つことは、弱毒化または無毒化されているとはいえ、病原体を体内に入れることなので、体への負担は小さくありません。
状態によっては期待する免疫がつかない場合や、体調が悪化することもあります。
下痢や食欲がないなど、何らかの体調不良がある場合には、ワクチンは延期しましょう。
飼い主さんが見て特に問題がないようなら、獣医師さんの問診や触診、体温測定、心音聴診などを受けます。
その結果、獣医師さんが打っても問題がないと判断したら、ワクチンを打ちます。
猫のワクチン後に注意したい事
◆接種後は安静に過ごす
ワクチンは、上述のとおり、病原体を体内に入れることなので、何らかの体調変化が起きる可能性があります。
接種した後1日程度は、遊びや運動を控えさせ、安静に過ごさせましょう。
シャンプーも、行わないようにします。
同居するペットなどがいて安静にできない場合には、ケージなどに入れて安静にできるようにします。
◆副反応が出ることがある
ワクチン自体や、ワクチンに含まれる「アジュバント」の影響で、副反応(副作用)が出ることがあります。
アジュバントとは、不活化ワクチンの効果を高めるために混ぜられる添加物のことです。
個体差がありますが、体調が悪くなったり、確率は低いですがアナフィラキシーショックを起こしたりする可能性があります。
このため、接種は午前中にして、午後も様子を見ていましょう。
副反応が出た時のために、動物病院の午後診療がある日を選ぶとよいでしょう。
アナフィラキシーショックは、接種した後15~30分程度で現れるので、接種した後は動物病院の近くで様子を見ましょう。
副反応の症状としては、
・皮膚の痒みや発疹
・嘔吐や下痢
・発熱、元気がない
・呼吸が苦しそう
・注射した場所のしこり
などが見られます。
これらの症状が起きても、24時間以内に収まるようであれば、許容範囲の副反応と考えられます。
気になる場合や、24時間経過しても続く場合には、動物病院に連れて行きましょう。
◆2~3週間は他の猫との接触を避ける
接種後2~3週間は、まだ抗体が完成していません。
他の猫との接触は避け、感染のリスクがある場所に連れていくことも避けます。
まとめ
費用や副反応などの心配から、ワクチン接種を躊躇う飼い主さんも少なくありません。
しかし、完全室内飼育をしていても、飼い主さんの衣服や靴に付着するなどして、病原体が持ち込まれるリスクがあります。
感染症にかかると猫自身がつらい思いをしますし、他の猫に対する感染源になることもあります。
また、ワクチンを接種していない場合に、対象の感染症にかかった場合、ペット保険の補償の対象外となります。
年に1度のワクチン接種で動物病院に行くことで、獣医師さんに愛猫の健康状態を定期的に診てもらうこともできます。
愛猫のために、適切なワクチン接種を受けましょう。
– おすすめ記事 –
・【獣医師監修】子猫のワクチン接種が必要な理由や接種時期を知ろう |
・【獣医師監修】猫パルボウイルス感染症の原因、症状、治療法は?ワクチンで予防できる? |
・猫にシリンジを使うのはどんな場面?知っておきたい強制給餌のこと |
・【獣医師監修】猫の咳の原因は?毎日・連続でする時に注意したい病気7つ |