【獣医師監修】猫の胃腸炎はどんな病気?発症のきっかけとなる5つの原因とは?

2022.09.07

【獣医師監修】猫の胃腸炎はどんな病気?発症のきっかけとなる5つの原因とは?

私たち人間がよく患う病気として知られている胃腸炎ですが、下痢や腹痛を伴うことが多く、なかなか厄介な病気として認識されていますよね。 地味に辛い病気である胃腸炎は、人だけでなく猫も患うことがある病気のため、猫ちゃんと一緒に暮らすご家庭では、注意が必要な病気として警戒しておかなくてはいけません。 猫が胃腸炎を患った場合にはどんな症状が現れ、どのような治療や予防が必要なのかをご紹介していきたいと思います。

猫の胃腸炎ってどんな病気?

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胃腸炎とは何らかの原因によって胃や腸などに炎症が起こり、それによってさまざまな症状を引き起こす疾患の総称となります。

猫がこの胃腸炎を引き起こした場合には、軽度であれば数日で自然に治まっていき、元気や食欲が落ちないことも多いため、飼い主さんが気付かない間に治癒することも多々あるようです。

しかし、胃腸炎を罹患している猫にとっては、胃腸に何かしらの違和感や煩わしさを覚えているはずのため、症状が軽いうちに気付いてあげられるような配慮が必要と言えるでしょう。


胃腸炎の症状

胃腸炎の症状はさまざまではありますが、胃にのみ炎症が起きる場合や、腸にのみ炎症が起きる場合もあるため、明確な見極めが難しい病気であるとも言えます。

一般的に猫が胃腸炎を患った際には、どのような症状が出やすいのでしょうか。

◆急性胃腸炎

猫の胃腸炎は「急性胃腸炎」と「慢性胃腸炎」の2つに分類されますが、軽度で数日以内のうちに自然治癒することの多い胃腸炎を、「急性胃腸炎」と呼びます。

胃にのみ炎症を起こしているときには嘔吐といった症状が見られ、腸にのみ炎症を起こしているときは下痢といった症状がよく見られます。

嘔吐と下痢の症状が同時に出ているようであれば、胃と腸のどちらにも炎症が起きていると考えて良いでしょう。

急激にこれらの症状が生じることがあり、原因を探るために様子を見る飼い主さんも少なくありませんが、猫によっては元気を消失することなく普通に食事をとる子も多いため、気付いたときには治っていた(嘔吐や下痢の症状が見られなくなった)といったケースも少なくありません。

もちろんすべての急性胃腸炎が軽度とは限りませんし、重度の場合には食欲不振や元気消失、よだれを垂らしたり嘔吐物や排泄物に血が混じったりといった、症状が出る場合もあるため注意が必要です。

◆慢性胃腸炎

胃腸炎が発症から数日で治まる様子がなく、数週間も症状が持続する状態を「慢性胃腸炎」と呼びます。

慢性胃腸炎の場合は間欠的に嘔吐や下痢といった症状が生じるため、猫自身の負担も大きく、次第に食欲低下や体重減少などの症状へと繋がるようです。

心身共に負担がかかることによって、元気をなくしていきますので、早急の対処が必要と言えるでしょう。


胃腸炎になる原因

胃腸炎は健康的な生活を送っている猫ちゃんが患うような病気ではないため、どのような原因によって発症するのかを知っておくと安心です。

一般的に胃腸炎を引き起こす原因と考えられているのは、以下のような問題が挙げられます。

◆食事

猫の一番の楽しみとも言える食事ですが、与えているキャットフードの鮮度が落ちている場合や、腐っている食べ物や冷たい食べ物、苦手な原材料が入っているフードなどを口にした際に、胃腸炎を引き起こしやすいと言われています。

他にも脂肪分の多い人間が口にする食べ物を与えた場合なども、胃腸に負担をかけることから胃腸炎を起こすきっかけとなりやすいようです。

◆ストレス

私たちも日々の生活の中でストレスを抱えることがあるように、猫も一緒でストレスを感じることが多々あります。

強いストレスを受けると胸の辺りがチクチクすることや、お腹を下すこともありますし、猫も同じように胃腸炎を引き起こしたとしても不思議ではありませんよね。

猫は環境の変化に弱い動物としても知られていることからも、些細なことがきっかけでストレスを受けやすいということを覚えておきましょう。

◆感染症

ウイルスによる感染症や、寄生虫による感染症が原因となって、胃腸炎を引き起こしてしまうことはよくあります。

回虫やコクシジウムといった寄生虫には注意が必要ですし、猫パルボウイルスに子猫が感染して重症化した場合には、最悪の場合命を落とす危険性も高いため、たかが胃腸炎という考えを持たない方が安心です。

◆異物誤飲

普段遊んでいるおもちゃや紐などといった長い異物を飲み込んだときにも、胃腸炎を引き起こしやすくなります。

特に紐は消化管で絡まってしまうこともあり、開腹手術といった外科的治療が必要となる可能性も否めません。

他にも化学薬品や中毒を引き起こす植物なども危険なため、異物誤飲については普段から注意しておく必要があると言えるでしょう。

◆毛球症

グルーミングが日課の猫にとって、毛球症といった疾患も見過ごすわけにはいきません。

毛繕いした際に飲み込んだ抜け毛が消化管に溜まり、毛玉となった後に便として問題なく排出されれば良いのですが、排出できない場合は嘔吐を繰り返し体外へと排出させようとします。

嘔吐を繰り返せば胃液が食道を刺激して胸やけのような状態を引き起こしますし、毛玉を排出できないまま蓄積されてしまえば、外科的治療が必要となることもあるそうです。


胃腸炎は人にうつる?

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猫の胃腸炎自体が人にうつることはありませんが、胃腸炎の原因となるウイルスや細菌、寄生虫の種類によっては、「ズーノーシス(人獣共通感染症)」を引き起こすきっかけとなってしまう可能性がないとは言い切れません。

だからこそ猫の胃腸炎が軽度であっても気を抜かず、早めに適切な治療を受けさせてあげることが大切です。

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胃腸炎の治療法

軽度の急性胃腸炎であれば、自然に治っていくことがほとんどではありますが、症状が重い場合や慢性化してきた際には、原因を探りつつその症状に合った治療を行っていかなくてはいけません。

嘔吐や下痢が続いて脱水症状を起こしているようであれば、整腸剤や吐き止め薬、下痢止め剤を用いた対症療法や、症状緩和のための輸液治療を行います。

負担をかけた胃腸を休めるために、必要期間の絶食をさせた後に、消化のしやすい処方食を与えるといった治療が行われることもあるようです。

寄生虫が原因の場合には虫下し薬を使用し、ウイルスなどが原因の場合には二次感染予防として、抗生剤の投与をすることもあります。

異物や毛玉が原因の場合には、外科的手術が必要となる場合もあるため、胃腸炎を引き起こさない環境作りこそが、愛猫に負担をかけない一番の近道と言えるのではないでしょうか。


胃腸炎の予防方法

猫の胃腸炎は身近な病気であることからも、普段の生活の中で発症の原因になり兼ねない要素を、どれぐらい排除できるかが重要となってきます。

毎日食べているキャットフードの見直しも大切ですが、人間の食べ物をむやみやたらに猫に与えないことも大切です。

基本的に猫は人間の食べ物を食べずとも、総合栄養食といったフードから必要な栄養を摂取できますし、年齢やライフステージに合ったフードを選ぶことによって、猫が猫らしく成長するための手助けとなっていきます。

食事は猫の健康な体を作るためにもっとも重要な手段となりますので、できることなら子猫のときから食事に気を配るようにし、新鮮なフードと飲水ができる環境を整えてあげましょう。

そして、身体の小さな猫にとってはストレスも大敵となるため、極力ストレスを与えないような暮らしを心掛けるようにしてください。

ストレスだけでなく誤飲しやすい異物や植物なども、室内では猫の手が届かないような配置を工夫し、飲み込みそうな大きさや長さのおもちゃは、お出かけの際には必ず片付けるようにしましょう。

また、毛玉問題は猫と暮らす以上、しっかりと向き合う必要があるため、日常的にブラッシングを行うなどをして、無駄な抜毛を取り除いてあげることも大切です。

感染症の予防にはワクチン接種を検討し、定期的な健康診断を心掛けて、どんな病気も早期発見できるような生活を心掛けてくださいね。


まとめ

季節の変わり目には体調を崩しやすくなるといった現象は、猫も例外ではないため、飼い主さんがしっかりと管理をしてあげなくてはいけません。

特にフードの鮮度が落ちる春から夏にかけての季節は、湿度や高い気温に体力を奪われていくこともあり、少しでも傷んだものを口にすれば胃腸炎を引き起こす原因になり兼ねませんよね。

もちろん胃腸炎の発症は食事内容だけが原因となるわけではありませんが、猫という動物の生態や性格をしっかりと把握し、どのような環境を好む傾向にあるのかを考えながら対応してあげることが一番です。

猫は飼い主さんに言葉で不満を伝えられませんし、鳴き声や態度から気持ちを汲み取ってあげなくてはいけません。

だからこそ日頃のスキンシップは大切ですし、異変があった際にはすぐに気付いてあげられるような配慮も必要となってきます。

日常的に信頼関係を深めながら、胃腸炎をはじめとした病気を発症しないような環境を整えてあげてくださいね。

●記事監修
drogura__large  コジマ動物病院 獣医師

ペットの専門店コジマに併設する動物病院。全国に15医院を展開。内科、外科、整形外科、外科手術、アニマルドッグ(健康診断)など、幅広くペットの診療を行っている。

動物病院事業本部長である小椋功獣医師は、麻布大学獣医学部獣医学科卒で、現在は株式会社コジマ常務取締役も務める。小児内科、外科に関しては30年以上の経歴を持ち、幼齢動物の予防医療や店舗内での管理も自らの経験で手掛けている。
https://pets-kojima.com/hospital/

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たぬ吉

たぬ吉

小学3年生のときから、常に猫と共に暮らす生活をしてきました。現在はメスのキジトラと暮らしています。3度の飯と同じぐらい、猫が大好きです。

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