【獣医師監修】猫が歯ぎしりするのはなぜ?理由と解決法をご紹介!

2022.09.26

【獣医師監修】猫が歯ぎしりするのはなぜ?理由と解決法をご紹介!

猫の歯ぎしりを聞いたことあるでしょうか?猫の歯ぎしりは、人のような「カチカチ」「ギリギリ」という音ではなく、「シャリシャリ」「ジャリジャリ」という砂を噛んでいるような音を立てます。猫が歯ぎしりをしている場合、それは病気やストレスのサインかもしれません。今回は、猫が歯ぎしりをする理由や歯ぎしりをやめさせる方法について詳しく解説していきます。

猫も歯ぎしりをすることがある?

猫も人間のように歯ぎしりをすることがあります。人間の場合は、睡眠中に無意識で歯ぎしりを行うことが多く、ストレスなどによる浅い睡眠が関与しているといわれています。一方で、猫の歯ぎしりは起きている時に、意識的に行われることが多いようです。

◆歯ぎしりの音

猫の歯ぎしりは、「シャリシャリ」「ジャリジャリ」という音がします。人や犬の歯ぎしりとは異なる音がするのですね。これは、人や犬では食べ物をすり潰せるような平たい奥歯を持つのに対して、猫は肉食のためすべての歯が尖っているという構造の違いによるものです。猫の場合は、肉が噛み切りやすいように、上下で互いの歯が重ならないように並んでいます。

歯ぎしりは通常奥歯が擦れ合ったり、当たったりすることで音が出ます。人では「ギリギリ」「カチカチ」というような音がしますが、猫では食べ物がないのに噛み砕こうとするよう「シャリシャリ」「ジャリジャリ」といった音を立てることが多いようです。猫の歯ぎしりを初めて聞いた方は、まるで砂を噛んでいるように感じるかもしれません。

◆歯ぎしりをするタイミング

猫の歯ぎしりは、起きている時、意識的にしている場合が多いようです。人が夜眠っている間に、無意識下で歯ぎしりしているのとは異なるのですね。

実際、猫の歯ぎしりがよく見られるのは、食事中や食後のグルーミング中など、口や舌を動かしているタイミングに見られます。猫が口を動かす時、なにか不快に感じる場合において歯ぎしりをすることが多いのですね。

また、嫌なことをされてストレスを感じたタイミングで歯ぎしりをする猫もいます。ちなみに、歯ぎしりと間違えやすい行動に「クラッキング」というものがあります。猫が鳥や虫などの獲物を見て「ニャッニャッ」と鳴いたり「カチカチ」と歯を鳴らしたりする音を聞いたことがあるでしょうか?これがクラッキングです。このような動作は、獲物を見つけた時の興奮や不安を表す行動といわれ、歯ぎしりとは異なりますので注意しましょう。

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ちなみに、猫は歯の生え変わりの時期に歯ぎしりを起こしやすくなります。猫の場合、生後3週間ほどで乳歯が生え始め、生後3カ月~7カ月ほどには永久歯に生え変わります。猫の歯が生え変わる時期は、乳歯と永久歯が同時に生えているため、歯の噛み合わせが非常に悪くなるのです。そのため、子猫は歯ぎしりが多くなる場合があります。
子猫が頻繁に歯ぎしりをしている場合は、歯の生え変わりを確認してみてください。歯肉炎などの口内トラブルで永久歯が生えないケースもあるため、この時期を過ぎても永久歯30本が生え揃わないなど、歯の状態に心配があれば動物病院で診てもらいましょう。


猫が歯ぎしりをする原因

猫の歯

猫が歯ぎしりをするのは、病気のサインかもしれません。なにか不快感があるときに歯ぎしりをするため、 その原因を取り除いてあげる必要があります。猫が歯ぎしりをする場合に、考えられる原因をご紹介していきます。

◆口腔内に原因がある場合

・歯周病/歯肉炎

歯周病は猫にとても多い病気の一つ。歯周病になると、歯肉や顎の骨に炎症が起きて痛みや違和感を生じます。特に、食事中は食べ物が炎症部位に当たるため、不快感で歯ぎしりをする頻度が増える可能性があります。
猫は、人や犬の口腔内環境とは異なり虫歯にはならないものの、3歳以上の猫でおよそ8割が歯周病であると言われています。
歯周病の原因は、食べかす。歯垢として食べかすなどが歯に付着すると、歯石が作られます。この歯石が歯肉に炎症を引き起こし、歯周病や歯肉炎を引き起こすのです。

・口内炎

口内炎は歯周病よりもさらに広範囲で口腔内の粘膜に炎症が起こっている状態です。口の中を見てみると、粘膜が赤く腫れて、さらには潰瘍や出血が見られる場合もあります。歯周病よりも強い痛みを伴うことが多く、歯ぎしり以外にもヨダレや強い口臭があります。また、食事中に痛がるなどの症状も同時にみられます。

・口腔内異物

突然歯ぎしりをするようになり、同時に口の中をやたらと気にする場合は、口腔内や奥歯に食べ物、髪の毛、もしくは誤飲してしまった異物が挟まっている可能性があります。猫は異物を感じて歯ぎしりをする場合があるので、口の中をチェックしてみましょう。

・歯のぐらつき/生え変わり

歯周病や歯肉炎、口内炎のような歯の疾患によって歯がぐらつき、抜けそうな状況で歯ぎしりは起こります。また、生後半年前後の子猫では、歯が生え変わるタイミングで違和感を覚えて歯ぎしりをすることがあります。生え変わりは生理的なものなので、そのタイミングでの歯ぎしりは心配しなくても大丈夫です。ただ、口のトラブルできちんと永久歯が生え変わらないこともあるので、歯の数をチェックしてあげましょう。

・歯並びや顎のズレ

不正咬合(歯並びのズレ)があると、本来ならば重ならないはずの上下の歯が当たってしまい、歯ぎしりをする可能性があります。この場合、日頃から歯ぎしりをすることがあり、クセだと思っていたら歯並びの問題であったということもあります。また、顎のズレは交通事故や落下事故などによる顔の打撲で起こりやすく、このような事故を経験した猫は注意が必要です。しっかりと動物病院でチェックしてもらいましょう。

・口腔内の腫瘍

高齢になって歯ぎしりが始まり、急に猫が口を気にするようになったら注意が必要です。同時に口臭が気になるようになった場合は、口腔内に腫瘍ができていることが原因の可能性があります。しっかりと猫の口腔内をチェックしてあげましょう。なにか異常を見つけたら、すぐに動物病院で診てもらうことをお勧めします。

◆それ以外に原因がある場合

・慢性腎臓病

猫の歯ぎしりは慢性腎臓病によるものかもしれません。
猫の慢性腎臓病では、尿中に排泄する必要がある「尿毒素」が血液中に溜まることで、口や胃が荒れやすくなります。さらに、慢性腎臓病で起こりやすい脱水症状は、猫の不快感を助長させます。これらが原因となって、進行した慢性腎臓病では、食事中などに歯ぎしりが見られるようになります。
・食道炎や胃腸疾患

猫の歯ぎしりは、食道炎や胃腸疾患においても見られます。
食道炎や胃腸疾患によって食道や胃が荒れ、腸の動きが悪くなり、吐き気や気持ち悪さが強い場合に不快感からヨダレと歯ぎしりが見られるのです。特に、食事を目の前にしたとき、食欲不振と吐き気から歯ぎしりすることがあります。
・神経疾患

脳の異常で起こる猫のてんかん発作では、顔の痙攣が多く見られ、口や顎を咀嚼させるような動作をします。この時、同時に歯ぎしりが見られることもあります。このような場合、脳の発作と関連して歯ぎしりが起きているため、発作が落ち着くとともに歯ぎしりも治まる場合が多いです。

・ストレスや不安などの心理的問題

猫は、何か嫌なことがあってストレスや不安を感じると歯ぎしりをすることがあります。これは、自己ヒーリングとして気持ちを落ち着かせたり、気分転換をしたりするときに起こる心理的なもの。
猫が気持ちよく寝ているときに突然撫でられたり、急に知らない場所へ連れていかれたりしたときに、ストレスや不安を感じて歯ぎしりすることがあるのです。
また、猫が飼い主に甘えてすり寄ってくる時に歯ぎしりすることがあるようですが、これは興奮した気持ちを落ち着かせるために行っているのかもしれません。


猫の歯ぎしりをやめさせるためには

猫が歯ぎしりをしていたら、心配でやめさせたくなりますよね。ただ、猫の歯ぎしりはクセというよりも病気やストレスのサインである場合が多いです。歯ぎしりだけでなく、その他の異常がないかをチェックしながら、原因を解決していきましょう。

◆歯ぎしり以外の症状を見逃さない

猫が歯ぎしりをしている場合、口腔内の病気や腎臓病、消化器系疾患から神経疾患まで多岐にわたる病気のリスクが潜んでいます。また、ストレスや不安などの心理的な問題が原因である可能性もあります。そのため、歯ぎしりだけでなく、その他の異常もしっかりと見逃さずにチェックすることが大切です。

◆かかりつけの病院に相談

猫が歯ぎしりをしていたら、早めにかかりつけの動物病院で獣医師に相談することをお勧めします。猫の歯ぎしりは、さまざまな病気が原因となっている可能性があるのです。ただの歯ぎしりと思って放置してしまうと、いずれの病気でも悪化してしまいます。


まとめ

猫の歯ぎしりには、病気やストレスの危険性が潜んでいます。猫の口から「シャリシャリ」「ジャリジャリ」と聞き慣れない音が聞こえたら、他に気になることがないか確認して、すぐに病院で診察してもらいましょう。
ストレスや不安が原因の可能性もあるため、その場合は猫の気持ちに寄り添って原因を取り除いてあげることが大切ですね。

※こちらの記事は、獣医師監修のもと掲載しております※
●記事監修
drogura__large  コジマ動物病院 獣医師

ペットの専門店コジマに併設する動物病院。全国に15医院を展開。内科、外科、整形外科、外科手術、アニマルドッグ(健康診断)など、幅広くペットの診療を行っている。

動物病院事業本部長である小椋功獣医師は、麻布大学獣医学部獣医学科卒で、現在は株式会社コジマ常務取締役も務める。小児内科、外科に関しては30年以上の経歴を持ち、幼齢動物の予防医療や店舗内での管理も自らの経験で手掛けている。
https://pets-kojima.com/hospital/

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ゆき

ゆき

小さい頃から動物が好きで、特に猫が好きです。 実家の猫とは20年以上一緒に暮らしており、妹のような存在。 大学では獣医学を専攻し、動物行動学に興味をもって勉強しています。

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