【獣医師監修】猫が体を痒がる原因5選!気を付けておくべき病気はあるの?

2023.03.19

【獣医師監修】猫が体を痒がる原因5選!気を付けておくべき病気はあるの?

グルーミングを毎日欠かさない猫ちゃんは多く、ある程度のお手入れが終われば別の行動をとる子がほとんどですが、後ろ足や前足を使って同じ場所を必死に掻いていた場合はどうでしょうか。 痒がるような仕草だけでなく、被毛の一部が脱毛していたり血が出ていたりすれば、愛猫の体調を心配する飼い主さんも多いことでしょう。 猫が体を痒がる場合にはどのような原因があり、日常生活の中でどのような予防法があるのかなどを考えてみました。

猫が体を痒がってる原因は?

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猫が体を痒がる理由はさまざまではありますが、飼い主さん自身がどのような原因が考えられるのかを知っておくことにより、対策もしやすくなりますよね。

原因によって出てくる症状も多少異なりますし、原因別の痒がり方を見逃さないようにしましょう。

◆換毛期

猫が痒がる姿を見せる原因として一番に考えられるのは、やはり年に2回ある換毛期ではないでしょうか。

暑い夏を迎える前と寒い季節を迎える前には、たくさんの被毛が抜けるため、グルーミングの回数も必然的に多くなりますが、そのすべてを上手に舐め取れるわけではありません。

舐めても舐めても上手に取り除けない抜け毛に対して違和感を覚え、手足を使って取り除こうとするため、傍から見ると異常に痒がる姿に映ってしまいますよね。

換毛期が原因で痒がる場合は基本的に、特定の一部だけでなく全身のあちこちが痒くなるといった特徴があります。

◆ノミ・ダニなどの寄生虫

完全室内飼いではない猫ちゃんが注意しておくべきなのが、ノミやダニなどの寄生虫による痒みです。

ノミは猫の体を生活拠点とし、歩き回りながら血を吸うため、ノミの唾液が皮膚に入る際に刺激が生じ、痒がることがよくあります。

ダニも種類によって多少症状が異なりますが、繁殖することによって痒みも増すため、皮膚炎を起こしていないか、耳を執拗に痒がっていないかなどの確認が必要となるでしょう。

もちろんノミやダニなどの寄生虫は、外飼いの猫ちゃんが原因となるだけでなく、人間が外から持ち込んでしまう場合もあるため、完全室内飼いであっても注意が必要となります。

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◆アレルギー

特定の食べ物やハウスダスト、花粉などのアレルゲンによってアレルギーを発症している場合も、皮膚に痒みが生じやすくなります。

特に猫のアレルギーは頭部や顔周辺、首回りなどを痒がることが多く、前足や後ろ足を使って皮膚を必死に掻く姿が見受けられるようです。

また、ノミが寄生することにより、ノミの唾液によってノミアレルギーを発症することもあるため、通常のアレルギーも痒みが強烈なことから、皮膚を強く掻きむしって出血することも少なくありません。

◆ストレス

外的な原因での痒みだけでなく、ストレスといった心因性の原因によって皮膚炎を起こすことがあります。

日常生活の中で強いストレスを感じた場合、それから逃れるために、過剰なグルーミングを行って落ち着きを取り戻そうとしますが、ザラザラとした突起のある舌で強く舐め続けてしまえば、感覚神経を刺激して皮膚を傷付けるだけでなく、さらに痛みが強くなって患部を舐めるといった悪循環に陥るようです。

比較的舐めやすい腹部から腰回りに炎症や脱毛が起きることが多いため、腹部周辺を痒がる場合には心因性皮膚炎を疑ってみましょう。

◆細菌感染・カビ

猫によく見られる感染症として、真菌(カビ)感染症が挙げられますが、被毛に感染するため子猫や長毛種、免役が低下した猫などの発生が多いと言われています。

耳や手足の先端、顔周辺からの発生がほとんどですが、最終的には全身のどこでも発症するため、発症箇所の被毛がごっそりと抜ける、フケがたくさん出るなどの症状が見られるようです。

カビの感染だけでは痒みを伴うことは少ないのですが、そこに細菌感染が併発することにより、痒みが酷くなって体を掻きむしり、症状が悪化する場合があるようです。


観察の仕方

愛猫に痒がる様子が見られる場合、どのような原因によって痒みが生じているかが気になるところですが、どんな症状が出ているかによって治療法も変わってきます。

そのため、飼い主さんは日頃から愛猫のことをよく観察し、どの場所にどのような症状が出ているかを把握した上で、動物病院を受診するべきですよね。

問診の際にもいつから症状が出始めて、どのように痒がっていたのかなどが重要となります。

頭部から尻尾にかけてどのような症状が出ているかをくまなく観察し、どのようなタイミングで痒がる様子が見られていたのかを、明確に覚えておくことも大切です。

そのほかにも、ノミはいないか、野良猫との接触はないかなど、日常生活の中での行動を再確認しておくとともに、目に見えて分かる症状(脱毛や炎症など)がある場合は、気付いた段階で写真に残しておくと良いでしょう。


痒みを引き起こす病気

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猫が痒がる原因はさまざまではありますが、病気が原因となって痒みが引き起こされる場合があることも、知っておかなくてはいけません。

病気によって治療法も異なるため、以下のような病気の症状が出ている場合には、注意が必要となってきます。

◆外耳炎

しきりに耳を掻くことや頭を振って痒がる場合には、「外耳炎(がいじえん)」が疑われます。

湿度が高い季節に発症しやすく、外耳道にダニ(ミミヒゼンダニ)が寄生し、耳垢を食べることによって大繁殖しますが、そこに細菌やカビなどの二次感染を受けることにより、耳垢が黒くなって症状が悪化していきます。

飼い主さんによる耳掃除だけでは症状の軽減はできないため、早急に適切な治療を行うようにしましょう。

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◆皮膚糸状菌症

猫の皮膚病で多いとされている病気が、「皮膚糸状菌症(ひふしじょうきんしょう)」です。

カビ(真菌)による感染症となり、猫の被毛に感染するため、大量のフケや脱毛によって病気に気付く飼い主さんがほとんどだと思います。

この病気は人獣共通感染症でもあるため、人間に移ることがあることからも、早急の治療が必要と言えるでしょう。

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◆膿皮症

皮膚に細菌が感染することによって引き起こされる病気が、「膿皮症(のうひしょう)」となります。

皮膚糸状菌症と同じようにフケや脱毛といった症状が見られますが、赤い発疹や膿を持った発疹が見られることもあり、このような発疹が出ている場合は強烈な痒みを伴うため、炎症のある部分をしきりに掻きむしる姿が見られます。

掻きむしった傷口からばい菌が入ってしまえば、症状はさらに悪化していきますので、軽症のうちに動物病院を受診することが一番です。

◆アレルギー性皮膚炎・アトピー性皮膚炎

アレルギー疾患となる「アレルギー性皮膚炎」や「アトピー性皮膚炎」も、痒みが出やすい疾患となります。

特定の食べ物やアレルゲン(ダニやハウスダストなど)が、皮膚の内部に侵入することによって、痒みや炎症を引き起こしますが、これらの皮膚炎が進行すると、脱毛や小さな発疹などの症状だけでなく、下痢といった消化器症状や外耳炎などの病気を併発することもあるようです。

◆疥癬

ヒゼンダニに寄生されることにより起こる皮膚病を、「疥癬(かいせん)」と呼びます。

疥癬はヒゼンダニが皮膚の下にトンネルを作り、そのトンネル内を動き回るため、激しい痒みが伴う辛い病気となっています。

ほとんどの場合は耳の感染から始まり、その後顔や頭部へと広がりますが、免疫力の低い猫の場合は全身に広がっていくこともあるそうです。

病変部を鋭利な爪で掻いてしまえば、出血して化膿を起こすことがあり、一刻も早い治療が必要と言えるでしょう。

こちらも人獣共通感染症となり、多頭飼育の場合は感染した猫が使用した、タオルやブラシなどを共有することによって簡単に感染するため、注意が必要な病気となっています。

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猫が痒がってる時の対処法

猫が体を痒がる素振りを見せたときには、一時的なものなのか、頻繁に繰り返している様子が見られるのかの確認が大切です。

愛猫を辛い思いから解放するためには、どのような対処法が望ましいのでしょうか。

◆動物病院に連れて行く

猫が痒がる原因はさまざまとなるため、痒みが頻繁にぶり返している様子が見られるようであれば、やはり動物病院を受診して、獣医師さんに診てもらうことをおすすめします。

原因によって症状も異なりますし、使用する薬なども変わってくるため、痒みを和らげてあげるためにも、早急に動物病院へ連れていってあげましょう。


予防法と気を付けるべきことは

できることならば普段から愛猫を気遣い、痒くならないような生活環境を整えておくことも大切ですが、コミュニケーションの一環として全身に触れ、皮膚や被毛に何かしらの異常がないかの確認も必要ですよね。

そして、定期的なブラッシングやシャンプーなども予防へと繋がりますが、皮膚に何かしらの炎症が生じている場合、ブラシの先端やシャンプーの刺激によって、症状を悪化させてしまう危険性もあります。

ブラッシングやシャンプーを行う際は必ず、皮膚に異常がないかの確認をしてから行うようにしてください。


まとめ

猫は全身を被毛で覆われているため、なかなか皮膚の異常に気付き難いとも言えますが、痒がる様子を見せている場合には、どのような原因によって痒くなっているかが気になるところですよね。

しかし、痒みにはたくさんの原因がある通り、素人目では判断が難しいため、頻繁に痒がる様子を見せている場合には、早急に動物病院を受診することが一番です。

痒みがあるとゆっくり落ち着いて眠ることもできなくなるため、愛猫の安息のためにも、様子を見るようなことはせず、動物病院で適切な治療をしてもらうようにしましょう。

※こちらの記事は、獣医師監修のもと掲載しております※
●記事監修
drogura__large  コジマ動物病院 獣医師

ペットの専門店コジマに併設する動物病院。全国に15医院を展開。内科、外科、整形外科、外科手術、アニマルドッグ(健康診断)など、幅広くペットの診療を行っている。

動物病院事業本部長である小椋功獣医師は、麻布大学獣医学部獣医学科卒で、現在は株式会社コジマ常務取締役も務める。小児内科、外科に関しては30年以上の経歴を持ち、幼齢動物の予防医療や店舗内での管理も自らの経験で手掛けている。
https://pets-kojima.com/hospital/

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たぬ吉

たぬ吉

小学3年生のときから、常に猫と共に暮らす生活をしてきました。現在はメスのキジトラと暮らしています。3度の飯と同じぐらい、猫が大好きです。

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