【獣医師監修】猫の副鼻腔炎はどんな病気?原因や症状を知って対策をしよう!

2023.06.25

【獣医師監修】猫の副鼻腔炎はどんな病気?原因や症状を知って対策をしよう!

私たち人間は何かしらのきっかけによって、病気を発症することがありますが、猫も同じように猫特有の病気を発症することがあります。 猫の場合は自分で体調不良を訴えることができないため、飼い主さんが普段と異なる様子に気付くことにより、病気が発覚することがほとんどです。 人でも多い耳鼻咽喉科関連の疾患は、猫でも発症する可能性の高い病気となりますが、今回は副鼻腔炎にスポットを当てて、ご紹介していきたいと思います。

猫の副鼻腔炎ってどんな病気?

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猫も人間と同じように風邪のようなくしゃみ、鼻水、鼻づまりといった鼻炎症状が見られることがありますが、鼻は猫にとって大切な器官となるため、そのような症状が出てしまえば、相当なストレスとなってしまうことでしょう。

猫の鼻は外気(空気)を取り込む呼吸器となり、ニオイや温度の感知、ウイルス(細菌)などの侵入を防ぐといった、フィルターのような役割を担っています。

この鼻に異常が生じることで不快になることは確実ではありますが、鼻腔に炎症が起きる症状を「鼻炎」、副鼻腔に炎症が起きる症状を「副鼻腔炎」と呼びますが、猫に起こる副鼻腔炎はどのような症状なのか見ていきましょう。

◆副鼻腔炎の症状

副鼻腔炎とは別名「蓄膿症(ちくのうしょう)」とも呼ばれ、猫の場合は鼻(鼻腔)の奥にある空洞となる、副鼻腔に炎症が発生したことを指します。

猫の副鼻腔は鼻腔の上に位置する「前頭洞(ぜんとうどう)」、鼻腔の奥に位置する「蝶形骨洞(ちょうけいこつどう)」の2つに分類されますが、副鼻腔は小さな穴で鼻腔と交通しているため、鼻炎を患った際に副鼻腔の粘膜に波及することにより、副鼻腔炎を発症することがほとんどです。

もともと副鼻腔は鼻汁(鼻水)を作り、顔面の骨の強度を維持しつつ、顔面への衝撃を吸収するといった役割を担っていますが、副鼻腔炎を発症した際には分泌物や異物を排出できなくなるため、鼻炎が悪化した結果により副鼻腔内に膿が溜まった状態となります。

膿が溜まることによって顔が腫れ、強い痛み(頭痛)や呼吸が困難になって開口呼吸をする傾向が見られ、ニオイを感じられないことによって、食欲が落ちるなどの症状が見られるようです。

目に見える鼻水の状態は原因によってさまざまではありますが、透明のものからドロッとしたようなもの、血が混じったようなものなどが見られます。

◆副鼻腔炎の原因

副鼻腔炎の主な原因は、前述してある通り‪鼻炎による炎症が波及することがほとんどではありますが、鼻炎を患う原因として考えられるのは、外傷(異物)や感染症といったものが多いようです。

感染症で多いのは、ヘルペスウイルス、カリシウイルス、真菌(カビ)などによる感染となりますが、ハウスダストや花粉などのアレルギーも見過ごすわけにはいきません。

鼻腔の粘膜に刺激を与えるようなものは、物理的刺激によって鼻炎を起こしやすいため、そこに免疫力や体力の低下によって感染症を併発すれば、症状が悪化していくのは一目瞭然です。

また、歯周病を患うことの多い猫の場合、プラーク(歯垢)が歯石化して炎症を起こし、歯槽骨が解けて歯根部に膿が溜まってしまえば、根尖膿瘍(こんせんのうよう)を発症することもあるため、たかが鼻炎や副鼻腔炎と考えずに、愛猫のちょっとした変化を見逃さないことが重要となってきます。


副鼻腔炎にかかりやすい猫種

さまざまな原因から発症しやすい猫の副鼻腔炎となりますが、猫種によっては発症しやすい純血種がいるのかも気になるところです。

副鼻腔炎というより、慢性鼻炎を発症しやすいのは、やはり短頭種の猫と言われているため、ペルシャやヒマラヤン、エキゾチックショートヘアーなどの血種は、何かしらの兆候が見られなくとも、普段から鼻に対して気を遣ってあげるべきではないでしょうか。

そのほかにも免疫力の低い子猫や高齢の猫、ワクチンを接種していない猫なども発症のリスクは高まりますので、どの猫ちゃんであっても発症する可能性があることを理解しておきましょう。


猫の副鼻腔炎の治療法

愛猫が副鼻腔炎を患った場合、辛い症状が継続すれば元気も消失していくため、早急の治療が必要となってきます。

猫が副鼻腔炎を発症した際には、どのような治療を行っていくのでしょうか。

原因療法

副鼻腔炎の治療法は、根本の原因によって異なってきます。

鼻炎の延長や感染症によって副鼻腔炎を起こしている場合には、抗生物質や抗真菌薬の投与が行われ、慢性化を防ぐために数ヶ月投与が続くこともあるようです。

根尖膿瘍が原因の場合は進行状況により治療法が異なりますが、歯内療法や抜歯といった治療を行い、再発させないような治療を行っていきます。

ほかにも膿が溜まっているようであれば、カテーテルを通して副鼻腔を洗浄する、呼吸が苦しいようであれば吸入器を用いつつ、薬剤を噴霧して炎症を抑えるといった外科的治療が行われることもあります。

対症療法

感染症の原因菌(ウイルス)が判明しない場合や、根本的な原因が判らない場合には、症状に合わせた対症療法を行うことがほとんどです。

副鼻腔炎によって鼻水や痛みがあるようであれば、その症状に合わせた薬の投与をし、食欲不振を起こしている際には水分補給の点滴、高栄養食の使用などが選択されます。

一番辛いのは猫ちゃん自身となるため、対症療法を行う際には獣医師さんの話をよく聞き、飼い主さんが納得できる治療であるかの確認も大切となってきます。


猫の副鼻腔炎の治療費

猫の副鼻腔炎は基本的に内科的治療となるため、症状に合った治療が行われていきますが、治療費は動物病院によって異なることがほとんどです。

主に注射や投薬などの治療で済む場合は、数千円から1万円程度の治療費となりますが、噴霧器や麻酔を使用する外科的治療を行う場合は、治療費も一気に上がり、数万円となることがあります。


猫の副鼻腔炎は自然治癒できる?

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鼻炎の延長となる副鼻腔炎は、症状が軽度であれば自然治癒することもありますが、鼻炎の慢性化が続いて副鼻腔まで症状が進行していくと改善は難しく、何かしらの治療を行っていく必要があると言えるでしょう。

副鼻腔炎の原因は一つではありませんし、猫ちゃんの症状に合った治療が必要になっていくため、飼い主さんの自己判断で治療を行わないことは大変危険です。

また、治療を開始して一時的に症状が改善されたとしても、副鼻腔内に病原体が残っていることもあるため、短期の治療となるのか、長期の治療となるのかを、しっかりと獣医師さんに相談しながら決めていくようにしましょう。


猫の副鼻腔炎の予防方法

猫にとって鼻の病気は煩わしく、できることなら発症させないように、普段から気を付けておくことも大事ですよね。

とくに副鼻腔炎は鼻炎が波及して発症することがほとんどのため、鼻炎を患わないような工夫や、鼻炎を患ったとしても早期の治療を心掛け、悪化させないようにしなくてはいけません。

そのためには以下のような予防法が有効となるため、愛猫の健康を気遣う目的でも、この機会に実行されてみてはいかがでしょうか。

◆ワクチン接種

猫の副鼻腔炎は特定の純血種や高齢の猫だけが発症するわけではなく、どの猫も何かしらのきっかけにより患う危険性の高い病気です。

副鼻腔炎の原因となる感染症には、混合ワクチンの接種によって予防できるものもあるため、ワクチン接種は感染のリスク軽減に一役買ってくれることでしょう。

◆口腔内を清潔に保つ

歯周病も副鼻腔炎の原因となることから、日常的に口腔内を清潔に保っておくことも大切ですよね。

とくに猫の場合は歯垢が歯石化するスピードが速く、虫歯はできなくても歯周病を患うリスクは高いと言われているため、口腔内や歯のケアは怠らないに越したことはありません。

毎日の歯みがきが理想的ではありますが、難しい場合はサプリメントや歯みがきおやつなどを利用してみることもおすすめです。

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◆生活環境の見直し

免疫力が下がるとさまざまな病気を発症しやすくなるため、愛猫の年齢などに合わせたフード選び、ストレスを溜めない生活環境の見直しなども大切です。

猫も人間もよく食べてよく眠れば免疫力が上がりますし、ストレスの発散を心掛けることにより、心も体も健康で居続けることができますよね。

健康的な毎日を送ることにより、猫が猫らしく生きられるのはもちろん、寿命も自然と延びていくはずのため、一緒に暮らす環境が理想的と思ってもらえるように努力していきましょう。


まとめ

猫の副鼻腔炎は鼻炎の波及によって、発症することがほとんどではありますが、そのきっかけとなる原因は一つではないため、患うと厄介な病気であることがうかがえます。

そして猫にとって鼻という器官は、生きていく上で重要な役割を担っていることもあり、呼吸だけでなくニオイや温度を上手く感じ取れなくなってしまえば、日常生活の中でさまざまな支障が生じてしまうはずです。

大切なのは副鼻腔炎を発症させないために鼻炎の予防をすること、鼻炎を発症したとしても軽度のうちに早期治療を心掛けることが重要となります。

猫が猫らしく生きるためにも、飼い主さんは愛猫の健康を第一優先に考え、生活の質を上げながら、快適に暮らしていけるようにサポートしていきましょう。

※こちらの記事は、獣医師監修のもと掲載しております※
●記事監修
drogura__large  コジマ動物病院 獣医師

ペットの専門店コジマに併設する動物病院。全国に15医院を展開。内科、外科、整形外科、外科手術、アニマルドッグ(健康診断)など、幅広くペットの診療を行っている。

動物病院事業本部長である小椋功獣医師は、麻布大学獣医学部獣医学科卒で、現在は株式会社コジマ常務取締役も務める。小児内科、外科に関しては30年以上の経歴を持ち、幼齢動物の予防医療や店舗内での管理も自らの経験で手掛けている。
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たぬ吉

たぬ吉

小学3年生のときから、常に猫と共に暮らす生活をしてきました。現在はメスのキジトラと暮らしています。3度の飯と同じぐらい、猫が大好きです。

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