【獣医師監修】過酷な環境で暮らしている野良猫が患いやすい6つの病気とは?

2023.11.22

【獣医師監修】過酷な環境で暮らしている野良猫が患いやすい6つの病気とは?

過酷な環境で生活をしている野良猫ですが、病気を患っている様子が見られた場合、いたたまれないといった気持ちになってしまう方も多いことでしょう。 また、野良猫から人間に感染する病気もあるため、知識がなければ気軽に助けてあげることもできません。 野良猫が暮らす外の環境では、どのような病気を患いやすいと言えるのでしょうか。

野良猫は病気になりやすい

野良猫

そもそも猫の種類の中に野良猫と呼ばれる純血種は存在せず、飼い主や決まった家がない猫のことを「野良猫(のらねこ)」と呼びます。

もちろん、自分で獲物(小動物や虫など)を狩り、野生下で自活している「ヤマネコ」や「ノネコ」とは生活のスタイルも異なるため、野良猫は厄介な存在として把握されていることも多いようです。

野良猫が繁殖するきっかけを作ってきたのは、紛れもない人間の存在とも言えるため、一概に野良猫の存在を否定することはできませんが、過酷な環境での生活を送っているため病気や事故に遭いやすく、イエネコよりもはるかに寿命が短いと言われています。

野良猫はどのような環境で、どのような生活を送っているのでしょうか。

◆野良猫の毎日は過酷

実際問題、野良猫の毎日はとっても過酷です。

たまに街で見かけるような野良猫のほとんどは、人間に忖度することなく自由気ままに過ごしている子達が多いため、イエネコよりも優雅で楽しい時間を過ごしていると感じる方も、多くいらっしゃるのではないでしょうか。

しかし、夏場は日射しだけでなく地面の照り返しも強く、猫が快適に過ごせる温度が整った場所はほとんどありませんし、冬は氷点下や雪が積もって体温を保つことが難しく一苦労です。

毎日満足のいく食事にありつけるとも限りませんし、とくに水場の確保も難しく、病気などによって口内環境が悪くなっている場合も多いため、上手に食事や水を飲めない子も少なくありません。

安全な室内とは異なり、熟睡できる時間はほぼなく、食事や寝床を探す時間が多くなるため、無駄に体力を消費して免疫が落ちてしまうといった、悪循環に陥ってしまうようです。

◆野良猫の寿命は短い

野良猫の過酷な生活は、常に事故や病気と隣合わせのため、イエネコよりもはるかに寿命が短いと言われています。

交通事故はもちろん、寒い季節には暖かい車のエンジンルームに入り込んでしまうことも多く、車の持ち主が野良猫の存在に気付かずエンジンを入れてしまえば、猫はパニックを起こして大惨事へとつながってしまうのです。

このような乗り物の脅威や街の騒音、人間への不信感などを抱きつつ生活しているため、常に多大なストレスを抱えており、神経をすり減らしながら野良猫は毎日の生活を送っていると言えるでしょう。

ストレスは病気の元凶にもなりやすく、さまざまな病気を発症しやすいため、このようなことからも野良猫の平均寿命は2~3年程度と言われているようです。


野良猫が持っている可能性のある病気

もちろん野良猫にも比較的恵まれた環境で生活できている子も居ますが、基本的には劣悪な環境で過ごしている子がほとんどです。

病気の発症率も個体差はありますが、一般的に野良猫は以下のような病気を患っている可能性が高いと言われています。

◆猫風邪

猫も人間と同じように、風邪をひく動物です。

とくに野良猫は普段から栄養状態が悪く、ストレスを抱えがちのため、日常的に免疫力が下がりやすくなっています。

猫風邪を引き起こす原因菌はさまざまではありますが、多く見られるのが「猫伝染性鼻気管炎」の原因にもなる猫ヘルペスウイルス(FeHV-1)です。

このウイルスは一度感染すると神経細胞に潜伏し続けるため、ストレスなどを抱えて免疫が下がったタイミングで暴れだし、季節に関係なく猫風邪を発症させることが知られています。

くしゃみや鼻水といった症状だけでなく、目やにからの結膜炎、食欲不振などの症状が見られ、ほかの猫にも移りやすい病気と言えるでしょう。

◆猫エイズ

猫免疫不全ウイルス(FIV)によって引き起こされる病気が、猫エイズとなります。

猫同士間でしか感染はしませんが、ケンカや交尾によって感染するため、野良猫が発症しやすい病気と言われています。

感染したとしても発症するまでに長い年月を費やしますが、主な症状としては口内炎がよく見られ、体重の減少や貧血、悪性腫瘍の発生などさまざまですが、防御機能が低下することにより、さまざまな感染症を引き起こしやすくなるようです。

◆猫白血病ウイルス感染症

猫白血病ウイルス(FeLV)の感染によって引き起こされる病気は、猫白血病ウイルス感染症と呼びます。

猫白血病ウイルス感染症も、猫エイズと同じようにウイルスを保持した猫同士間での感染となり、ケンカによる咬傷感染やグルーミングなどの唾液を介した感染がほとんどです。

初期症状では発熱や元気の消失、リンパ節の腫れ、貧血などが見られます。

猫ちゃんによっては発症したのちに、完全に回復する子や症状が発現することなく天寿を全うする子もいるようです。

◆猫カリシウイルス感染症

猫風邪の中には猫カリシウイルス(FCV)と呼ばれる病原体が原因となることもあり、一般的な風邪の症状が出るようになります。

この感染症を猫カリシウイルス感染症と呼びますが、初期症状では猫風邪と同じく鼻水やくしゃみ、発熱、食欲不振などの症状が見られるようです。

猫カリシウイルス感染症の特徴として、症状が悪化すると口腔内に腫瘍ができ、痛みによってよだれの分泌が増え、口臭が出ることが多くなります。

軽度の肺炎や多発性関節炎を併発することも多く、症状が改善せずに死に至るケースもあるようです。

◆マダニ

日本の各地でも確認が相次いでいるマダニですが、マダニは猫にも感染する寄生虫となります。

マダニは無理やり剥がそうとすると、口器が皮膚に残って化膿することがあり、それが原因によってさまざまな病気を発症させるリスクが高まるため、見つけたら放置はせずに早急に動物病院を受診するようにしましょう。

メスの成ダニの場合、吸血前後で体重が100倍にもなりますが、吸血前はニキビやイボと見間違えてしまうことが多いため、厄介な存在と言えますよね。

貧血や皮膚病を引き起こしますが、さまざまな病原体を媒介する上に、人間にも感染する病気(重症熱性血小板減少症候群)の報告もあるため注意が必要です。

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◆人獣共通感染症

野良猫が患っている病気の中には、猫同士間だけでなく人間にも感染する危険のある、「人獣共通感染症(ズーノーシス)」も多く存在します。

有名な病気では「トキソプラズマ症」「疥癬(かいせん)」「猫ひっかき病」などが挙げられ、寄生虫による感染症では「ノミ」「回虫」「瓜実条虫(うりざねじょうちゅう)」などが挙げられます。

接触感染や経口感染が多いため、野良猫がこれらの病気を患っている可能性を懸念しつつ、むやみやたらに触れ合わないことが大切です。


猫は完全室内飼いを徹底しよう

箱座りしている野良猫

猫好きな方であれば野良猫を見つけた際に、「触ってみたい」「仲良くなりたい」といった気持ちが芽生えてしまうことが多々あり、人懐っこい子であれば簡単に触れ合えるため、一瞬さまざまなリスクを忘れがちになってしまいますよね。

そして、自由奔放に眠っている野良猫の姿を見れば、マイペースで羨ましささえ感じてしまいますが、実際問題野良猫は自由を謳歌しているわけではなく、無駄な体力を使わないために身を潜めて浅い眠りにつき、過酷な環境での毎日を繰り返しているだけとなります。

野良猫は自ら好んでそのような生活をしているわけではなく、このような猫たちを生み出してしまった元凶は、人間であることを忘れてはいけません。

せっかく命を持って生まれてきたのに、生活する環境が異なるだけで病気や事故のリスクが高まるのであれば、野良猫がこの世に1匹も存在しないような国になることを切に願うばかりです。

日本はまだまだ動物愛護(ペット)後進国と言われている通り、動物の命の価値が低い国となりますが、少しずつでも遅れを取り戻していけるように、自分にできることを今一度考えていきたいものですよね。

すべての猫ちゃんが長生きするためにも、猫を飼育する際には完全室内飼いを徹底するようにし、天寿を全うできるためのサポートを惜しまないようにしていきましょう。


まとめ

猫の後ろ姿

野良猫はイエネコよりも病気や事故のリスクが高く、イエネコの寿命よりも圧倒的に生きられないことが分かりました。

人懐っこい子であれば気軽に近づくこともできるため、猫好きの方であればさまざまなリスクを考えずに、気軽に触れ合ってしまうはずです。

過酷な環境で生きている野良猫は栄養不足の子も多く、普段から免疫が落ちている子がほとんどのため、さまざまな病気を患っている可能性が高くなります。

それらの病気の中には人間にもうつる人獣共通感染症も存在するため、どうしても野良猫を保護したい理由があるときには、手袋や長袖の衣服などを用いて、引っ掻かれたり噛まれたりしないような対策をしておきましょう。

野良猫の自由奔放そうな暮らしぶりは決して幸せなのではなく、そうやって生きるしかないということを忘れないようにしてあげてください。

不幸な猫をこれ以上増やさないためにも、自分に何ができるのかを改めて考えてみてはいかがでしょうか。

※こちらの記事は、獣医師監修のもと掲載しております※
●記事監修
drogura__large  コジマ動物病院 獣医師

ペットの専門店コジマに併設する動物病院。全国に14医院を展開。内科、外科、整形外科、外科手術、アニマルドッグ(健康診断)など、幅広くペットの診療を行っている。

動物病院事業本部長である小椋功獣医師は、麻布大学獣医学部獣医学科卒で、現在は株式会社コジマ常務取締役も務める。小児内科、外科に関しては30年以上の経歴を持ち、幼齢動物の予防医療や店舗内での管理も自らの経験で手掛けている。
https://pets-kojima.com/hospital/

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たぬ吉

たぬ吉

小学3年生のときから、常に猫と共に暮らす生活をしてきました。現在はメスのキジトラと暮らしています。3度の飯と同じぐらい、猫が大好きです。

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