【獣医師監修】猫に必要なビタミンにはどんな種類があるの?

2024.01.24

【獣医師監修】猫に必要なビタミンにはどんな種類があるの?

健康な身体を維持するためには猫も人間と同様に、身体に重要な栄養素を摂取する必要があると言われています。 とくに猫は必須栄養素の中では、タンパク質や脂肪の必要量が高くなりますが、それらの栄養素を摂っていれば健康を維持できるというわけではありません。 これらの栄養素の効果を最大限に活かすためにも、ビタミンなどの栄養素の摂取が必要不可欠となりますが、猫にとってビタミンはどのような役割を担っているのでしょうか。

ビタミンとはどんな栄養素?

5大栄養素

「ビタミン」はレモンなどの柑橘類に多く含まれていて、「酸っぱい」といったイメージを持っている方も多くいらっしゃるはずです。

しかし、ビタミンは総称となり、13種類も存在しているため、それぞれの効果などを明確に知っている方は少ないのではないでしょうか。

知っているようで知らないビタミンについて、理解を深めていきましょう。

◆五大栄養素の内のひとつ

栄養素にはさまざまな種類がありますが、健康な身体をつくるために必要な栄養素が「タンパク質」、身体や脳を動かすエネルギー源となるのが「炭水化物(糖質)」「脂肪(脂質)」と言われ、この3種類の栄養素をまとめて「三大栄養素」と呼びます。

この三大栄養素に身体の調子を整える「ミネラル(無機質)」や「ビタミン」を追加した際には「五大栄養素」として呼ばれることが多いようです。

猫も人間と同じくこの五大栄養素を必要としますが、肉や魚といった食事が主食となる肉食動物の猫の場合、雑食動物である人間と比べて栄養素の割合が大きく異なります。

五大栄養素が必要だからといって、人間の感覚で栄養バランスを考えてしまうと、猫にとっては十分な栄養が摂取できない可能性もあるため、猫がどのように栄養素を変換しているのかを知っておきたいものです。

このような栄養素の中でもビタミンの1種となる「ビタミンC」や「ビタミンK」を猫は体内で合成できるといった特性を持っているため、猫の身体にどのような影響をもたらしているのか、という点も見ていきましょう。


猫の体でビタミンはどんな役割がある?

寝ている猫

13種類もあるビタミンではありますが、「脂溶性ビタミン」「水溶性ビタミン」の2種類に分けられます。

脂溶性ビタミン:ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK
水溶性ビタミン:ビタミンC、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ナイアシン、パントテン酸、葉酸、ビオチン

水溶性ビタミンに関しては、ビタミンC以外をまとめて「ビタミンB群」と呼ぶことがありますが、これだけ種類の多いビタミンですから、猫に対してどのような働きをしているのかも気になるところですよね。

主にビタミン類は猫の身体に対して、以下のような効果をもたらしてくれます。

◆体の機能維持のために必要

ビタミンはタンパク質、脂肪、炭水化物といった、エネルギー産生三大栄養素の代謝を円滑に進めながら、潤滑油のような働きをしてくれます。

猫の場合炭水化物をそれほど必要としませんが、人間の5~6倍ほどのタンパク質が必要となるため、ビタミンの活躍が必要不可欠とも言えるでしょう。

ミネラルと並んで必要摂取量が微量であっても、ビタミンが不足してしまえば身体に不調を起こし、病気になる、成長に障害が出ることもあるため、猫にも重要な栄養素となっています。

主にビタミン類は野菜や果物などの植物性食品に多く含まれていますが、ビタミンの種類によっては動物性食品に含まれているものなどさまざまです。

肉食の猫にとって必要なビタミンを、野生時代からどのように摂取してきたかというと、ネズミや鳥といった小動物、虫などを丸ごと主食にすることにより、それらが餌として摂取してきた栄養素まで得られるといった仕組みとなっています。

◆過剰でも欠乏でも影響がある

肉食動物の猫にもビタミンが必要不可欠であることが分かりましたが、さらに健康になってもらうためにも、野菜や果物を与えてたくさんビタミンを摂取してほしいと考える飼い主さんは多いはずです。

もちろんビタミンが不足してしまえば、身体の健康維持に支障をきたしますが、過剰に摂取しても猫の身体に影響が出てしまうため、いかに栄養バランスが重要であるかがうかがえます。

ビタミンB1となるチアミンが不足すると「チアミン欠乏症」を引き起こしかねませんし、ビタミンDといった脂溶性ビタミンを過剰に摂取してしまえば、「ビタミンD中毒(過剰症)」を引き起こす可能性も否めません。

ビタミンにはさまざまな種類があるからこそ、猫にどのような影響を与えるか考慮しつつ、猫にとってどのビタミンが必要不可欠なのか知っておくと安心です。


猫の必須ビタミン

たくさんの種類のあるビタミンではありますが、猫が食事から摂るべきビタミンは以下の通りです。

◆ビタミンA

植物性食品と動物性食品の両方から摂取できるビタミンAは、猫にとっても重要な役割を担っています。

鼻や喉などの粘膜、皮膚を細菌から守って健やかに保ち、視覚の暗順応をつかさどる視細胞を合成させるためにも、必須の栄養素と言われているようです。

このビタミンが不足してしまうと、被毛はパサついて皮膚にかゆみが出ることもあるため、バリア機能を促すためにも、しっかりと摂取させたい栄養素と言えるでしょう。

ビタミンAの前駆体(ぜんくたい)である「プロビタミンA」には、「βカロテン」が含まれておりビタミンAへと変換されていきますが、猫はこの過程に必要な酵素を持ち合わせていないため、食事からでしかビタミンAの摂取しなくてはいけないといった仕組みです。

◆ビタミンD

カルシウムやリンの代謝を肝臓および腎臓などで吸収し、促進させるといった重要な役割を果たしているのがビタミンDです。

骨や歯を丈夫にしてくれるだけでなく、血液中のカルシウム濃度を正常に保ちます。

肉類や野菜類にはほとんど含まれていない栄養素となり、脂肪分の多い魚(イワシ・マグロなど)およびレバーに多く含まれているため、猫でも摂取しやすい栄養素と言えるでしょう。

私たち人間は紫外線を浴びることで、ビタミンDを体内合成できますが、猫はこのプロセスを欠くため、食事から補給しなくてはいけません。

◆ビタミンB群

ビタミンB群は前述してある通り、ビタミンC以外の水溶性ビタミンを指すため種類が豊富です。

数が多い分それぞれの働きぶりは微妙に異なりますが、主にビタミンB群は身体の細胞が活発に機能するためにも重要な役割を担い、神経系の健康維持のためにも欠かすことができません。

水溶性ビタミンは体内に蓄積しておくことが難しいため、毎日の食事から摂取する必要があると言われています。

◆ビタミンE

抗酸化作用の強いビタミンEは体内の脂質にアプローチし、酸化を防ぐことによって身体の健康を維持してくれます。

この働きによって体内の細胞膜を酸化させないだけでなく、老化や動脈硬化といった生活習慣病を予防してくれる効果が期待できます。

猫はストレスを溜めやすい動物となりますので、体内で増えた活性酸素の力により細胞へのダメージを軽くし、心身ともに健康な状態へと導いてくれる栄養素と言えるでしょう。

とくに猫の場合はビタミンE不足で発症する、「黄色脂肪症(イエローファット)」といった病気にも注意が必要なため、抗酸化効果が高まるビタミンAとの同時摂取をおすすめします。


猫も食事で適切な量のビタミンを摂ろう

見上げる子猫

種類豊富なビタミンは、猫にとっても必要不可欠であることが分かりましたが、どのように摂取させるべきか悩まれる飼い主さんも多いのではないでしょうか。

しかし、それぞれのビタミンを効率よく摂取させようとすれば、野菜などの植物性食品や、魚や肉などの動物性食品を与える必要があるため、現実的に考えて難しい問題ですよね。

猫に適切なビタミン量を与えたい場合には、以下のような食事選びを徹底してみてください。

◆毎日の食事は必ず総合栄養食を選ぶ

愛猫のキャットフードを選ぶ際には必ず、「総合栄養食」と記載がある商品を選びましょう。

総合栄養食は猫に必要な栄養素がバランスよく含まれているため、新鮮な水と一緒に与えることにより、猫ちゃんの健康的な日常をサポートしてくれます。

キャットフードや猫用おやつの中には、「一般食」「間食」などと記載されている商品もありますが、これらは嗜好品的な位置づけが高いため、毎日の食事として与える際には注意が必要です。

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◆専門店や病院で相談してフードを決めるのもおすすめ

猫の食事は栄養面だけでなく、ライフステージ(成長段階)に合わせたフード選びも重要なため、どのようなフードを選べば良いのか決めかねるときには、専門店や動物病院などで相談してみてはいかがでしょうか。

専門の方に相談することにより、愛猫に対して的確な商品を選んでくれるはずです。

食事は猫にとって毎日の楽しみとなるため、美味しく食べながら栄養バランスのとれた食事を提供してあげましょう。


まとめ

猫

ビタミンは猫が必要とする栄養の中でも必要量が少ないながらも、健やかに生きるためには必要不可欠な栄養素であることが分かりました。

さまざまな食材からビタミンを摂取させるのは難しいですが、基本の食事となる総合栄養食と、新鮮な飲み水を与えることにより、猫の健康は保たれていきます。

毎日口にする食事だからこそ、愛猫に合ったフード選びを怠らないようにしたいものですよね。

ライフステージによって必要な摂取カロリーや栄養素も変化していくため、フードの切り替え時には専門家に相談し、適切なフードを選ぶようにしましょう。

※こちらの記事は、獣医師監修のもと掲載しております※
●記事監修
drogura  コジマ動物病院 獣医師

ペットの専門店コジマに併設する動物病院。全国に14医院を展開。内科、外科、整形外科、外科手術、アニマルドッグ(健康診断)など、幅広くペットの診療を行っている。
動物病院事業本部長である小椋功獣医師は、麻布大学獣医学部獣医学科卒で、現在は株式会社コジマ常務取締役も務める。小児内科、外科に関しては30年以上の経歴を持ち、幼齢動物の予防医療や店舗内での管理も自らの経験で手掛けている。
https://pets-kojima.com/hospital/

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たぬ吉

たぬ吉

小学3年生のときから、常に猫と共に暮らす生活をしてきました。現在はメスのキジトラと暮らしています。3度の飯と同じぐらい、猫が大好きです。

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