1.猫の背骨がゴツゴツしているのは痩せすぎ?
1-1.通常猫の背骨は触って感じられる
1-2.極度に背骨が出ているのは痩せすぎ
2.猫の体型評価に使えるBCS(ボディコンディションスコア)
2-1.猫種や個体差で適正体重は変わる
2-2.BCSで体型チェック
3.猫の背骨が急にゴツゴツしてきたら
3-1.病気の可能性
3-2.老化の可能性
3-3.他に変わった様子がないかチェック
4.まとめ
猫の背骨がゴツゴツしているのは痩せすぎ?
猫の背骨をなでるとなんとなく背骨のゴツゴツとした感触があり、「もしかして痩せてしまっているの?」「病気になっていたりしないの?」と心配になってしまうこともあるでしょう。
そんな時には、まずは猫の体型が適正なのか異常なのかを、冷静にチェックしてみるのがおすすめです。
◆通常猫の背骨は触って感じられる
猫の体を首の後ろから背中、腰へと、手のひらで優しく圧をかけながらなでてみると、ゴツゴツとした背骨の感触を軽く感じることができます。
これは猫が痩せているからというわけではなく、健康的な体型の猫であってもありうる一般的な状態です。
体に脂肪がつきすぎている猫では、なでた時に背骨の感触をまったく感じることができない場合もあるので、むしろ「肥満ではない」ことを示す1つのサインと言えます。
◆極度に背骨が出ているのは痩せすぎ
一方で背中を触るまでもなく、背骨のゴツゴツとした様子が外からパッと見てわかるほどであれば、猫が痩せ過ぎている可能性が高まります。
また、背中をなでた時になんの圧もかけていないにも関わらず、背骨のゴツゴツとした隆起を手のひらに感じるのであれば、猫が痩せていることを疑った方が良いでしょう。
このように、背骨がゴツゴツと極度に出ている場合は猫が痩せていることを飼い主さんも理解しやすいものです。しかし、猫の背骨が極端に出ているわけではない時には、「痩せているのか」「適性体型なのか」のどちらか判断しづらいことも少なくありません。
そういった時には、家庭でも行うことができる「体型チェック」をしてみることをおすすめします。
猫の体型評価に使えるBCS(ボディコンディションスコア)
猫の適正体重は、猫種や個体差によってばらつきがあり、理想的な体型を維持できているか判断するのが難しいことも多いです。そんな時に使える猫の体型チェックの基準の1つに「BCS(ボディコンディションスコア)」があります。
聞き慣れない言葉かもしれませんが、愛猫の背骨がゴツゴツと触れる感触があり、「痩せてきたかも?」と気になった時にぜひ活用してみてください。
◆猫種や個体差で適正体重は変わる
猫の体型チェックをする前に注意しておくべきことは、猫の品種や個体ごとの骨格差などによって、適正な(理想的な)体重や体型が異なるということです。
例えば、シンガプーラやアビシニアン、シャムなどの猫種は、元から細身でスレンダーな体型の子が多いため、触った時に背骨がゴツゴツとしているように感じる人がより多いかもしれません。
特に、これまでに筋肉質でずんぐりとした体型を特徴とする猫種としか触れ合ったことがなければ、その差に驚く人は多いでしょう。
また、猫種や体重が同じであっても、骨格のサイズなどに違いがあれば、猫1匹ごとに適正な体型かどうかの判断はがらりと変わります。
正常な範囲で骨の感触が感じられる程度の適正体型の猫がいる一方で、本来あるべき体重よりも痩せてしまっていて、骨がゴツゴツと触れる猫もいるので、体型をチェックする時には注意してあげましょう。
◆BCSで体型チェック
猫のBCS(ボディコンディションスコア)をチェックする時には、「①肋骨の触り心地」「②腰周りのくびれの有無」「③お腹の脂肪のつき具合」を見てみましょう。
これを1~5の5段階「①痩せすぎ(削痩)」「②やや痩せ気味」「③理想的」「④やや太り気味」「⑤太りすぎ(肥満)」で評価します。(場合によっては10段階で評価することもあります)
まずは①の肋骨(あばら骨)の触り心地です。猫の後ろ側に回り、背骨を中心として胸周りを両手で挟むように触ってみてください。指先に軽く圧をかけてみて、肋骨が1本1本数えられる程度の脂肪のつき具合であれば、BCS「3」の適正範囲です。
しかし、触るまでもなく肋骨がゴツゴツと浮き出ている場合はBCS「1」、圧を込めなくても肋骨の感触が簡単に得られる場合はBCS「2」、圧をかけても肋骨の感触がわからない(わかりにくい)場合はBCS「4~5」と太っている可能性があります。
続いて、手のひらを胸からお尻に向けてスライドさせて腰周りに触れ、②のくびれの有無を確認してみましょう。腰周りがきゅっとくびれていればBCS「3」の範囲ですが、同時に背骨や腰骨もゴツゴツと感じやすい状況であれば、BCS「2」以下かもしれません。
③のお腹の脂肪のつき具合は、猫の体を横から見て、お腹がお尻の方にいくにつれて上向きに上がっているかどうかで確認します。ただし、猫のお腹のへこみが激しい場合は、肋骨や背骨、腰骨のゴツゴツとした触り心地と併せて、痩せていると判断すべきです。
また、猫のお腹には「ルーズスキン」と呼ばれる皮膚のたるみがあることも多く、脂肪かどうか判断がつかないことがあります。その場合は、①②の指標から体型を確認すると良いでしょう。
猫の背骨が急にゴツゴツしてきたら
猫の背骨が急にゴツゴツと感じられるようになってきたら、必ず健康診断を受けましょう。動物病院では、本当に痩せているのか、痩せている原因には何が考えられるのか、どのように対処すれば良いのかのアドバイスが得られるはずです。
飼い主さん家族だけで心配ごとを抱え続けるよりも、客観的に健康状態を判断してもらうことで、安心感や不安の解消につながるでしょう。
◆病気の可能性
猫の背骨のゴツゴツとした感触が増してくるのは、やはり体重が減少していることを示す場合が多いです。
特に、病気の発症に伴って、摂取したエネルギーを体が過剰に消費したり、食べたものを上手に消化・吸収できない異常事態に陥っている危険があります。
高齢猫でよくある腫瘍疾患や慢性腎臓病、甲状腺機能亢進症や糖尿病などはもちろん、若い猫でもウイルスを保持している場合は白血病や猫エイズなどを発症してしまった可能性が考えられ、注意が必要です。
お家に迎え入れたばかりの幼い子猫や元野良猫なら、寄生虫による影響も考えてあげなければいけません。
猫がご飯を毎日きちんと食べているのに背骨がゴツゴツと触ることができる時には、必要に応じて血液検査、レントゲン・超音波エコーを用いた画像検査、尿検査や便検査なども組み合わせつつ、しっかりと体の中の状態を確認してみてください。
また、定期的に体重測定をしているお家であっても、体重は同じなのに腹水などが溜まっていたせいで猫が痩せていたことに気づかないケースもあるため、早期発見のための健康診断は早めに行いましょう。
◆老化の可能性
高齢猫では、筋肉量の減少や、栄養素の消化・吸収機能の低下によって、背骨がゴツゴツと触ることができるようになるほど、徐々に痩せたような体つきになることがあります。人間でも高齢期に起こりやすい「サルコペニア」という状態です。
体が必要とする量のタンパク質を摂取できていなかったり、体力が減少して運動量が減ることによって、体内で作られる筋肉よりも、分解される筋肉の方が上回ってしまうことで発生します。
背骨のゴツゴツ感のほか、お尻がひとまわり小さくなったように見えたり(お尻周りや後ろ足の筋肉量の減少)、頭が骨ばって見えるのも特徴です。
無理のない範囲で猫が楽しめる遊びを一緒に行って体を動かしたり、栄養バランスに優れたご飯を与えることが大切な予防策になりますが、腎臓が悪い猫ではタンパク質をはじめとした一部の栄養素の摂取制限が必要になる場合もあるので、獣医師と相談しながら高齢期の健康維持をしてあげましょう。
◆他に変わった様子がないかチェック
背骨がゴツゴツと浮き出てくるほど猫の体重が減っている時には、普段から他にも気になる症状やサインが出ていないかチェックしておきましょう。
・元気さ(眠っている時間の長さの変化)
・嘔吐や下痢の有無
・咳やくしゃみの有無
・呼吸の速さの変化
・皮膚のハリや被毛のツヤ
などの健康チェックは大切な指標になります。
例えば、これまではすぐに食べきっていたご飯を食べるのがゆっくりになったり、遊びに誘ってものってこない、高い所に上らなくなったといったちょっとした行動の変化も、猫が体の慢性的な痛みや気持ち悪さなどを表現している可能性が考えられます。
こういった体の不調があれば、飼い主さんが気づきにくいレベルで食事量が減ってしまっていることも少なくありません。
日頃から健康チェックをして、気になることがあった時には、「いつ」「どんなことが」あったのかをメモしておくと、その後の変化と比較できたり、診察時に正確な情報を伝えられるのでおすすめです。
また、猫の体を「正面から」「真横から」「上から」「真後ろから」の4パターンで定期的に写真を撮っておき、背骨のゴツゴツとした感じが増してきたらその写真を見比べて、現在の体型と比較てみるのも良いですよ。
まとめ
猫の背骨がゴツゴツと目立ってくるのは、猫の体型が理想的な範囲から外れてきている可能性を示すサインです。
日頃から一緒にいると体つきの変化に気づけないこともあるので、愛猫の健康管理のためにも、体重と同時に体型も定期的にチェックしてみましょう。
老化や病気に伴い猫の体型に変化が現れた時には、早めにケアしてあげることで、寿命の延びにつながっていきます。
気になることがあったり、家庭での体型チェックが難しい時には、遠慮なくかかりつけの動物病院で相談してみてくださいね。
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