【獣医師監修】猫の呼吸が早いけど、大丈夫?早くなる原因と注意点について知りたい!

2023.05.27

【獣医師監修】猫の呼吸が早いけど、大丈夫?早くなる原因と注意点について知りたい!

猫ちゃんの呼吸が早いと感じたとき、何かしらの異変が生じているのでは?と不安になってしまうことがありなせんか?呼吸が早くなんだか苦しそうに見える時、少しでも落ち着いて対処するためには、どのような原因が考えられるのか知りたいものです。 今回は猫の呼吸について、早くなる原因と心配な症状について考えていきましょう。

猫の呼吸が早いけど大丈夫なの?

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いつもとは様子が違う猫の呼吸の様子をみて、主に4つの症状があったら注意が必要です。

●鼻孔を大きく開けて呼吸する(鼻呼吸)
●口呼吸(口を開けて呼吸)
●頻繁な呼吸 (頻呼吸)
●肩で呼吸する(肩呼吸)

いずれも猫の異常呼吸です。

人間や犬とは異なり、猫は「鼻で呼吸する」動物です。口を開けて呼吸することは、非常につらい症状であることが多く、危険なサインと言えます。

口を開けていると何か違和感を覚えるかもしれませんが、口を閉じていても呼吸の早さは早く、肩で息を吐ききっています。

このような呼吸音に気付いた場合は、すぐに獣医師に相談することをお勧めします。

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猫が病気などを患っている場合には、いかにその異常を初期に発見できるかどうかが鍵となってきます。 そのようなことからも、健康的な普段の愛猫の様子は、常に細かく観察しておきたいものですよね。 では、猫の口呼吸はどうでしょうか? もしこの口呼吸が病気のサインだった場合は、どのような病気の可能性があるのかを考えていきましょう。

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◆猫の呼吸が早い原因

それでは、猫の呼吸が早い原因を大まかに5つあげます。

度を超えた運動

人間と同じように、猫も運動中や運動後の呼吸が速くなります。

その場合は、しばらく様子を見て、呼吸が落ち着くのを待っても大丈夫です。

体温調節

呼吸は体温調節の役割を果たしており、犬は体温を下げるために口を開けて舌を出します。

ただし、これは猫ではほとんどありません。また、猫は汗腺が少ないので、体温が上がると体温を下げようと呼吸を早くします。

気温が高くなる季節は熱中症になりやすいので、温度調節を行います。

極度の心的ストレス

猫が恐怖、不安、緊張、または興奮を引き起こすストレスにさらされると、交感神経系が非常に刺激され、不規則で速い呼吸が起こります。

異物の誤飲

誤って異物を飲み込んでしまうと、のどや食道に詰まり、気道が圧迫されたり、食道や消化管が損傷したりして、呼吸が速くなり、呼吸が困難になることがあります。

◆猫の呼吸数

猫の正常な呼吸数は?

猫が1分間に約20〜40回、睡眠中に約15〜25回呼吸しているのは正常です。

特に睡眠中の呼吸数を確認することは特に重要です。安静時の呼吸は起きている時より少なくなるのですが、睡眠中に起きている時のような呼吸数やそれ以上呼吸が早い場合は病気が隠れている可能性があります。

興奮していて、一時的にスピードが上がっているかどうか疑問に思っている場合は、安静時呼吸数を数えてみるとよいでしょう。


猫の呼吸数の測り方は?

猫が休んでいる時(寝ている時など)に、1分間に胸(丸まって寝ているときは、太ももの上のお腹のあたり)が上下に動く回数を測定します。胸が上下するのを一呼吸と数えます。

また、10秒間測定して6を掛けるか、15秒間測定して4を掛けて、1分間あたりの呼吸数を取得することもできます。

例えば、胸が10秒間に4回上下すると、呼吸数は1分間に4×6=24回となります。

猫の毎日の呼吸数を意識すると、異常を見つけやすくなりますね。


猫の呼吸が早い時の考えられる病気

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猫の呼吸が早い時に考えられる代表的な病気をいくつかご紹介します

◆猫カゼ

猫カゼは、猫ウイルス性鼻気管炎、猫インフルエンザなどと言われ、猫の最も一般的な呼吸器疾患です。

ヘルペスウイルスやカリシウイルスが一般的な原因で、鼻水、くしゃみ、目やに、発熱、元気の無さなどの症状がみられます。

猫の鼻孔は小さく、鼻水が鼻道をふさいで呼吸が困難になり、口を開けて呼吸したり、呼吸が早くなったりすることがあります。

悪化すると、肺炎や重度の結膜炎につながる可能性があります。

治療には、インターフェロンなどの抗ウイルス薬、抗炎症薬、および二次感染を防ぐための抗生物質が含まれます。

慢性化した場合や、子猫の頃にかかった場合は、一時的に症状が改善しても、ストレスや免疫力の低下などで必ず再発することがありますので、早めの治療がおすすめです。

◆猫喘息

猫喘息の正確な原因は不明ですが、ダニ、タバコ、花粉などのアレルゲンを吸い込むことによって引き起こされると考えられています。

猫は犬ほど咳をしません。猫の喘息の最も一般的な症状は、突然の咳です。しばらく正常だった猫が突然咳や喘鳴を始めた場合は、猫の喘息を疑い、できるだけ早く獣医に診てもらう必要があります。

アレルゲンを除去することが治療の根本的な解決の鍵となりますが、喘息の原因を環境から特定することは難しいため、多くの場合、ステロイド、鎮咳薬、薬用スプレー(ネブライザー)が咳の治療に使用されます。

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猫の喘息は、気管支が炎症を起こし突然狭くなることで、気道閉塞を引き起こしてしまう呼吸器の病気です。猫が喘息になると、発作的に咳やくしゃみ、嘔吐、呼吸困難などの症状がみられ、呼吸がしにくくなり、とても苦しい状態になります。喘息は「アレルギー性気管支炎」「慢性閉塞性肺疾患」など、様々な病気の名前で呼ばれることもあるようです。 もし、猫が喘息になった場合は、どのような治療方法があるのでしょうか。

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◆慢性気管支炎

慢性気管支炎は、気管支の炎症によって起こります。

【慢性気管支炎の症状】

●咳
●あえぎ
●元気がない、食欲がない

症状には、咳、息切れ、食欲不振などがあります。重症化すると肺炎を起こすこともあるので注意が必要です。

症状は猫の喘息に似ており、咳も似ていますが、突然発症して時間の経過とともに解消する喘息とは異なり、咳は慢性であり、2か月以上続きます。

原因はさまざまで、ウイルス、細菌、真菌、寄生虫、異物の誤飲、歯周炎などによる二次感染が考えられます。

◆心臓疾患

心臓病は二次的に呼吸を損なう可能性があります。

心臓病による血液循環が悪いと、肺水腫と胸水が生じ、呼吸が速くなります。

・肺水腫とは、肺胞に水分がたまり、酸素の交換ができなくなり、呼吸不全を起こす病態です。

・胸水は、胸部に液体がたまり、肺が拡張して呼吸できなくなる状態です。

このような場合は緊急性が非常に高く、できるだけ早く胸水を排出するか、酸素を吸入しながら動物病院に利尿剤を投与する必要があります。

心臓病は、通常の生活の中で早期に発見することは困難です。多くの人は、呼吸が悪化したために病院に行って初めて心臓病と診断されます。

心臓病(特に肥大型心筋症)になりやすい猫(メインクーンやアメリカンショートヘア)だけでなく、中年以上の猫にも健康診断をしてもらい、心臓の病気を見つけてもらいたいですね。

【肥大型心筋症の原因】

●遺伝子異常
●肥満
●遺伝的要素(血縁関係の中にいる)

遺伝的な要素で発症リスクが高まる猫種
◎ブリティッシュショートヘア
◎ノルウェージャンフォレストキャット
◎アメリカンショートヘア
◎スコティッシュフォールド
◎ペルシャ

◆貧血

猫が何らかの理由で貧血になった場合、その原因として考えられる病気は、慢性腎臓病やタマネギ中毒などです。

血中に酸素をうまく取り込めず、少し動くと息切れや呼吸が荒くなってしまうのが特徴です。

貧血を起こしているとあまり運動しなくなります。 代表的な貧血についてご紹介しますね。

失血性貧血
交通事故による失血、腫瘍の破裂などによって起きる貧血です。

鉄欠乏性貧血
ヘモグロビンを作るのに必要な鉄分が不足して起こる貧血。
また、吸血性寄生虫感染症などの慢性貧血でも発生する可能性があります。

溶血性貧血
タマネギ中毒または自己免疫疾患の結果として血液中の赤血球が破壊されることによって引き起こされる貧血。

腎性貧血
腎臓から分泌される赤血球形成ホルモンであるエリスロポエチンのレベルが低いために起こる貧血。腎性貧血は、慢性腎臓病の猫に起こる貧血です。

慢性的な炎症
慢性炎症(感染症、腫瘍など)は、鉄代謝の障害を引き起こし、貧血につながります。

骨髄の病気
白血病などの骨髄の病気は、赤血球だけでなく白血球や血小板の数も減少する貧血を引き起こすことがあります。

軽度の場合、明らかな症状がない場合があります。病気が進行すると、歯ぐきが白くなる、疲れるなどの症状が現れることがあります。

重度の貧血は、酸素の欠乏が呼吸の問題や臓器の損傷を引き起こす可能性があるため、生命を脅かす可能性があります。

◆熱中症

暑い夏だけでなく、暖房の効きすぎる冬も猫は熱中症になります。

また、過労による過興奮による熱中症の事例も報告されています。猫は汗をかかないので、熱をうまく発散できません。
人は高熱のとき、口を開けて舌や気道から水分を蒸発させ、呼吸数を増やし、外気に触れて熱を下げようとします。猫も一緒です。

しかし、呼吸が荒い、ぐったりする、めまいがする、熱を感じる (耳の毛が少ない) 場合は、熱射病の可能性があります。
不安、イライラ、長毛、短毛、黒毛の猫は体に熱がこもりやすく、熱中症になりやすいです。部屋の温度・湿度管理とこまめな水分補給を考えましょう。

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猫の呼吸が早い時は怪我してる時も考えられる?

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特に外に出ている猫は、転倒による外傷や交通事故、他の猫との喧嘩などによる痛みで呼吸が早くなることがよくあります。
外から帰ってきた猫は、一時的に落ち着かず、呼吸が荒くなることがありますが、この場合、1時間以内に通常の状態に戻るか、症状が軽減することがあります。

改善がなければ、実際に重大な事故で負傷し、肺打撲や肺出血を起こす可能性があります。命にかかわることもありますので、早めに獣医師に相談してください。


猫の呼吸が早い時の対処法

猫の呼吸が早い場合、飼い主はどうすればよいでしょう。

猫の呼吸が早い原因にはご紹介したように
・動揺や興奮
・病気やけがのとき

このようなケースがありました。

猫の呼吸が早い場合、どのケースなのか不安に思うかもしれませんね。ここからは、それらの見分け方と対処法について解説していきます。

◆様子見

緊急性が少ないかどうか様子をみても大丈夫なポイントがあります。

●時間がたてば落ち着く
●愛猫の意識がはっきりしている

興奮しているだけなら1時間くらい待てば落ち着きます。ただし、心配な場合は獣医師に相談することが重要です。

猫は自分の痛みや苦しみを隠す動物です。気づかないうちに症状が進行することがありますので、猫の不快感に対処するようにしてください。

◆動物病院に連れて行く

動物病院に連れていく必要があるのは、病気とけがです。

以下のような症状があったら病気やけがをしている疑いがあります。

●鼻水や咳が出る
●鼻水がべたつき、化膿している
●鼻血が出ている
●少し動くと大きく息を吐く
●以前よりも動かなくなった
●舌や口の中(粘膜や歯ぐき)の色が悪い、白っぽい
●チアノーゼ
●安静時、口呼吸をしている。または鼻呼吸している。
●息を吸うときの変な音がする

上記の他、熱中症が疑われる場合
◎嘔吐または下痢
◎歩くときふらつく
◎意識障害


まとめ

猫の呼吸が早い理由はたくさんあります。ゆっくりと治療できる病気もあれば、早急な治療が必要な病気もあります。

呼吸が荒く、気分がすぐれない様子の場合は、できるだけ早く病院に行ってください。

特に猫は普段口を開けて呼吸をすることがないので、口を開けて呼吸する場合は注意が必要です。

また、呼吸が困難で酸素が十分に取り込まれていない場合、チアノーゼが発生します。人間ですと顔の色が紫になるなど皮膚の色で判断できますが、猫は皮膚の露出面が少ないため舌で判断します。

舌は正常な場合はピンク色ですが、チアノーゼなど血中の酸素不足の場合は紫色になります。

このような場合は緊急事態であり、すぐに獣医に連れて行く必要があります。猫の呼吸が早い場合は、あまり様子を見ていないで、できるだけ早く病院に行くのが最善かもしれません。

※こちらの記事は、獣医師監修のもと掲載しております※
●記事監修
drogura__large  コジマ動物病院 獣医師

ペットの専門店コジマに併設する動物病院。全国に15医院を展開。内科、外科、整形外科、外科手術、アニマルドッグ(健康診断)など、幅広くペットの診療を行っている。

動物病院事業本部長である小椋功獣医師は、麻布大学獣医学部獣医学科卒で、現在は株式会社コジマ常務取締役も務める。小児内科、外科に関しては30年以上の経歴を持ち、幼齢動物の予防医療や店舗内での管理も自らの経験で手掛けている。
https://pets-kojima.com/hospital/

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にゃんこ

にゃんこ

長年一緒に暮らした長女猫(17歳)と長男猫(11歳)を看取り、今は脱走癖のある次男猫とちょっとどんくさい次女猫と暮らしています。

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