グラスゴー大学の最新の研究で悪影響が証明されました
クレア・ノッテンベルト教授(イギリス・グラスゴー大学)が、「喫煙家庭のペットは、がん、細胞へのダメージ、体重の増加など、健康問題のリスクが非喫煙家庭のペットよりも高まる」という研究結果を2015年12月29日に公表しました。去勢手術したイヌの睾丸内でがんになり得る細胞損傷の指標となる遺伝子の数を調べたところ、非喫煙家庭より喫煙家庭のイヌのほうが多く、がんになりやすい傾向にあることがわかったのです。その概要は、グラスゴー大学のニュースリリースにも掲載されています(”Quit smoking for the sake of your pets” 『ペットのために、すぐに喫煙をやめてください』)。
クレア教授は、「副流煙に晒されたイヌの体毛のニコチン濃度(予備研究)」(2012年)で、「喫煙家庭で飼われているイヌの体毛におけるニコチン濃度は、非喫煙家庭のイヌよりも高い」ことを発表するなど、タバコがペットにもたらす害を長年研究しています。
タバコは発がん性物質の塊です
タバコの三大有害物質は、ニコチン、タール、一酸化炭素です。
ニコチンはタバコがやめられなくなる「ニコチン依存」を引き起こす原因物質で、中枢神経に作用します。間接的には血管収縮作用をもたらし、その代謝物には発がん性が認められています。タールは、タバコのフィルターや部屋の壁などに茶色く付着するもので、一般的には「ヤニ」などと呼ばれています。タールには、数十種類の発がん物質が含まれ、呼吸系疾患やがんの原因となります。一酸化炭素は、赤血球と結合して、体内に酸素を運ぶヘモグロビンの働きを低下させます。タールは、動脈硬化の原因ともいわれています。
さらに、発がん物質の代表「ニトロソアミン」(タバコ特異的ニトロソアミン・TSNA)もたっぷりと含まれています。
タバコの煙には4000種類の化学物質が含まれ、そのうち200種類以上は有害物質です。
吸う人よりも周りにいる人や動物の健康を害します
喫煙者がタバコを通して直接吸いこむ煙が主流煙で、酸性です。副流煙は、タバコの点火部分から立ち上る煙で、喫煙者だけではなく周りの人や動物も吸い込む煙です。タバコを吸う人のそばにいると目や鼻の粘膜がチクチクした感じがするのは、副流煙がアルカリ性だからです。副流煙の吸入を「受動喫煙」といいます。
厚生労働省の発表によると、主流煙を1とした場合、副流煙にはニコチンが2.8倍、タールが3.4倍、一酸化炭素が4.7倍も多く含まれています。タバコの有害物質は、喫煙者がタバコに口を付けて吸い込んでいるときよりも、口から離して煙を吐きだしているタバコの不完全燃焼時に多く発生するため、主流煙よりも副流煙のほうがより多くの有害物質を含んでいるのです。
ペットはタバコの有害物質に晒される危険性がヒトよりも高い
副流煙が充満した部屋で暮らすワンちゃん、ネコちゃんの健康が害されないはずはありません。クレア教授は論文で、「イヌやネコなどのペットは人間よりも体格が小さいため、家の壁や床などに付着するタバコの有害物質に晒される危険性が高い」ことを指摘しています。また、「体をなめて毛繕いするネコは、イヌよりも多量の有害物質を体内に取り込んでしまうため、より健康を害するリスクが高い」ことも指摘しています。ワンちゃんでも、体をなめるクセがある子は、健康を害するリスクがより高まるといえるでしょう。
「家では吸わないから大丈夫」ではない! 「サードハンドスモーク」(三次喫煙)の怖さ
「自分は外でしか吸わないから大丈夫」というのは間違いです。カリフォルニア大学リバーサイド校を中心とした研究グループが、「タバコの煙にさらされたコットンのクロスから、赤ちゃんや成人が受ける影響」を試算したところ、サードハンドスモークで受けるニコチンは、受動喫煙と比較すると赤ちゃんや子供で6.8倍以上、成人で24倍以上となりました。さらに、発がん性物質のニトロソアミンについては、赤ちゃんや子供で16倍以上、成人で56倍以上にものぼります。
服に残ったタバコの残留物質も、ペットの健康に多大なる悪影響を及ぼすのです。
外でタバコを吸った人がペットの健康を害さないためには、帰宅時に「おかえりなさい!」とうれしそうに寄ってくるペットを絶対に抱っこせず、すぐにシャワーを浴びて髪の毛や体についた残留物質を徹底的に洗い流した後に歯と舌を磨いてうがいをし、洗い立ての洋服に着替えなければならないのです。もちろん、タバコをベランダで1本でも吸おうものなら、ペットに近づく前に同じことを繰り返さなければなりません。
……だったら、禁煙したほうが早いと思いませんか?
誰でも絶対に禁煙できます
筆者は愛犬・キャンディスが生後6カ月のとき禁煙したので、今年で禁煙歴13年目になります。それまでは、キーボードを叩いて原稿を書いているときですらタバコを口から離せない、1日2~3箱吸う超ヘビースモーカーでした。
禁煙のきっかけは、初めてトリミングに出したキャンディスを翌日の朝夜抱っこしたら、ひどくタバコ臭かったことです。「トリミングへ行ったばかりだから、まだいい香りに違いない」と思って抱っこしたので、とてもショックでした。こんなタバコくさい体をなめたら、キャンディスはどうなってしまうのだろうと考え、禁煙を決意したのです。
当時、禁煙治療用のシール(ニコチンパッチ)は保険適応外だったので禁煙にはかなりお金がかかりましたが、今は禁煙治療専門の禁煙外来を設ける病院も多く、要件を満たせば保険適応となります。辛いのは最初の3日間。また、禁煙1~2カ月後の「禁煙に成功した!」と思ったあたりに参加する飲み会で、友人がタバコを吸ったときにはかなりの我慢が必要です。そこさえ乗り越えれば、タバコの匂いに嫌悪感を覚え、二度と吸おうとは思わなくなります。
私は、禁煙するきっかけを作ってくれた愛犬・キャンディスに心から感謝しています。 皆様も、大事なワンちゃん、ネコちゃんの命を守るため、ぜひ今日から禁煙してください。
いかがでしたでしょうか。この記事が、読んでくださった方の禁煙のきっかけとなれば幸いです。
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