1.年齢と関節の劣化
出典:http://e-mr.sanofi.co.jp/useful/pet/dog/age7/index7.html#
犬の変形性関節症の原因の中で最も多いのは、加齢によって関節の機能が弱まっていることです。関節にはクッションの役割をしている軟骨がありますが、加齢によって軟骨がすり減ることで間接が変形してしまい、炎症を起こします。そのため、犬が老犬であればあるほど関節症を発症していないか注意深く観察する必要があります。
特にゴールデンレトリバーは関節症を起こしやすい犬種で、股関節形成不全など他の疾患の合併症として関節症が現れることがよくあります。加齢によって関節症を発症した場合、歩きづらそうな様子や発症部位の動作量の低下など、顕著な症状が現れることが多いです。歩行など脚を積極的に使う動作に違和感が見られれば関節症を疑うことが必要です。
また、関節に起こった炎症は慢性的な痛みに繋がることが多く、エサを食べる量が減ることや睡眠の途中で頻繁に目が覚めるなどの症状が現れることがあります。小さな変化に気をつけながら、早急な処置が必要となった場合にすぐに受診できるクリニックを決めておくことも欠かせません。
加齢による関節症に対しては、まず既に出ている炎症による痛みを抑えることから始め、その後軟骨を回復するために注射治療などが行われます。老犬は活動量がそれほど多くないため、安静にしている時間が確保しやすいので治療がスムーズに進む傾向にあります。また、近年では犬の介護施設や入院設備を整えたクリニックが増えているため、自宅で運動量の管理が難しくてもそのような施設を活用することでしっかりと改善が見込めます。
軟骨の多くが擦り減っている場合は完治が難しいことがありますが、その場合は服薬やレーザー治療などを用いて定期的に痛みのコントロールを行う治療法が採られます。しかし、関節症が進行すると歩行困難が起こって、軟骨の役割を補うために手術によって器具を取り付ける場合もあります。他の疾患と同じように関節症は早期発見と早期治療が欠かせない治療であり、犬にとって歩行ができないことは全体の筋肉の低下や精神的なストレスにも繋がります。上記のように、老犬は関節症のリスクを少なからず抱えているので、普段の散歩の様子や家での歩行量をしっかりと記録しておくなどして、関節動作の滑らかさに注意しておくことが大切です。
また、犬の食事や睡眠の量、吠える頻度など痛みによって起こる変化にもしっかりと対処することが必要です。老犬の場合は専用のサプリメントを利用することで関節症の予防ができるため、エサと一緒に毎日摂取させる工夫も役立ちます。
2.運動の頻度や量
人と同じように犬も運動不足で慢性的な肥満になることがあり、過度の体重が足腰に負担を与えて変形性関節症に繋がることがあります。特に最近では犬用のエサの種類が増え、犬の好みに合うエサを大量に挙げてしまうことも多いため、肥満が原因の関節症が増えています。
また、老犬は食べる量自体がそれほど多くないため肥満になりにくいですが、若い犬は食事量が多く与えた分を全て食べてしまことがあります。肥満の解消や予防のためには、飼い主がしっかりとエサの量をコントロールしておくことが大切です。もともと食べる量が多い場合は、カロリーが少なく栄養バランスに優れているエサを選ぶことも肥満の改善に繋がります。食事量と合わせて、運動の頻度や量にも気をつけることが大切です。
日常的にエサを多く食べている場合でも、十分な運動量で消費カロリーが多ければ肥満になることはありません。定期的な運動ができるように1週間単位で散歩の計画を立てておいたり、歩数計を使うなどして運動量もしっかりと確認しておきましょう。また、肥満が重度の場合は運動の方法によっては逆に体に大きな負担がかかることもあるため、事前に獣医のアドバイスを受けた上で運動の習慣をつけることも覚えておきましょう。
運動不足によって起こった肥満が関節症に繋がるのはイメージがしやすいですが、見落とされがちなのが逆に運動のし過ぎによる関節症の発症です。適度な運動は犬の肥満の防止だけでなく、脚の筋肉の強化によって関節がしっかり支えられるようになり、関節症の予防に繋がります。しかし、運動を頻繁に行っていたり毎回ハードな運動を行っていたりする場合は、むしろ関節に負担をかけて炎症が起こる可能性が高くなります。
炎症が長期的に起こると関節の軟骨がさらに傷ついて擦り減っていきます。スポーツ競技などのイベントに参加しているペットや、飼い主のウォーキングやランニングについていっているペットの場合、運動による関節への負担で炎症が起こることが多いため注意しましょう。水中での運動は関節への負担が非常に少ないため、毎日活発に運動したがる犬のために小さなプールなど水中で運動ができる環境を整えておくことも予防に繋がります。以上のように、運動不足は肥満による関節の機能低下を、過度の運動は関節への負担を引き起こすため、日頃から少なすぎず多すぎない適度な運動量となるように飼い主が気をつけておく必要があります。
3.未治療のケガ
他の関節や骨格に関する疾患が原因となって犬の変形性関節症が発症するケースもあります。特に関連する疾患には、股関節形成不全や膝蓋骨脱臼といったものが挙げられます。しかし、関節症に繋がる恐れのあるこれらの疾患は、いずれも適切な治療を受けることで改善できるものです。そのため、関節症を引き起こすのは関連する疾患が未治療のまま進行してしまっている場合であると言えます。
また、一度治療しても関節や骨の病気は日頃の動作によって再発することが多いため、再発の場合も適切な治療をすぐに受けることが必要です。未治療のケガによる関節症の特徴としては、他のケースに比べて軟骨が擦り減っていることが少ないということが挙げられます。関節症による痛みや炎症を抑えながら、発症につながった他の疾患に対して治療を行うことでほとんどの場合問題なく日常生活に戻れます。歩行の際に異常が見られたり、関節や骨格の疾患の既往歴がある場合は関節症の発症に注意しておくことが大切です。
関節症に繋がりやすいのは他の関節に関する疾患だけではなく、ウイルスや免疫異常による疾患である場合も多いです。ウイルスによって身体のいたるところに炎症が起こり、長期化すると関節症に繋がります。この場合は抗生物質の投与によってウイルスの活動を抑える治療が行われます。
そして、ウイルスによる炎症よりは稀ですが、自己免疫力の低下や異常によって自らの細胞によって関節が攻撃されることがあります。免疫力の疾患が関わっている場合は関節症以外にも多くの病気を発症しやすくなるため、早めの治療が不可欠です。免疫の病気は遺伝性のものもあるため、犬を飼う際には親の体質や病気についてペットショップにしっかりと尋ねておくことが大切です。ウイルス性や免疫が関連している関節症は、すぐには関節の異常が分かりづらいこともあります。しかし、高熱やだるそうな様子などの異常が見られるケースが多いため、ペットの体調の変化に気づいたら様々な疾患を考慮してすぐに医療機関で検査・治療を受けるようにしましょう。
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