【地域と犬】ワンちゃんとともに子どもの安全を見守る「わんわんパトロール」をご存じですか?

2017.06.01

【地域と犬】ワンちゃんとともに子どもの安全を見守る「わんわんパトロール」をご存じですか?

愛犬とのお散歩の時間を利用して、地域のパトロールをしたり、登下校中の子どもたちを見守ったりする「わんわんパトロール」というボランティア活動があります。今回は、地域への貢献が認められて愛知県春日井警察署から表彰された「春日井わんわんパトロール隊」代表の堀由美子さんに、その活動内容についてお話を伺いました。

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「地域社会の関係が希薄になっている」と感じたのが活動のきっかけです

 トイ・プードルのごまめちゃん、もずくくん、メルモちゃん、マリモちゃん、オーストラリアン・ラブラドゥードルの小麦くんやたくさんの動物たちと暮らす、愛知県春日井市乙輪町にお住まいの堀由美子さん。普段は訪問介護のお仕事をしながら、セラピードッグの資格をもつごまめちゃん、もずくくん、メルモちゃん、マリモちゃん、小麦くんと、アニマルセラピストとして病院や施設を訪問する活動をしています。

わんわんパトロール
写真右が堀由美子さんと小麦くん。小麦くんはニチイのセラピーケアホーム(TCH)というプログラムで(http://www.nichiigakkan.co.jp/fch/pdf/07.pdf)、堀さんと暮らしています

子どもの連れ去りなどのニュースや、不審者から子どもへの声かけ事案が増えているのを見るにつけ、「地域の目が子どもに行き届いてないのって、危なくないかなあ」と感じていた堀さん。

「私たちが子どもの頃は知らない大人とも普通に挨拶していたけど、今は普通、見知らぬ人と挨拶なんてしませんよね。でも、犬を連れている同士でお散歩中に出会うと、自然と挨拶をするし、世間話もする。知らないうちに近所に知り合いがすごく増えていたんです。この、犬がもつ“人の間の垣根を取り払う力”みたいなものを、地域社会の関係性を深める方向に使えないかなあ、って漠然と考えていました」(堀さん)

そして、散歩中に近くの小学校に登校中の子どもたちに偶然出会ったとき、犬の散歩の時間を利用して、子どもたちの登下校を見守れるのではと考えたのが3年前。堀さんは、時間があるときに犬を連れて交差点に立ち寄るようになりました。そのうち、地域のお年寄りなどで結成されていた「地域こども応援団」から声をかけられて、子どもたちの登下校中に犬や地域子ども応援団の方たちとともに交差点に立つようになったそうです。

「はじめのうちは、子どもたちにおはよう!と声をかけても『なんだ?このオバサン!』『なんだ?この犬は?』っていうかんじの反応で、言葉も返してくれなかったです(笑)」

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登校中の子どもたちを「地域こども応援団」の方と見守る小麦くん

知らない大人に声をかけられても答えてはいけません!という昨今。それでも、堀さんはめげずに、時間のあるときに交差点にワンちゃんと立ち寄って、おはよう! と声をかける活動を続けていたといいます。そのうち、春日井警察署の署長が見に来て「良い活動ですね」と声を掛けてくださったそうです。

「やっぱり、犬とともに子どもを見守る活動をしたい。はじめはひとりでやろうと思っていたんですが、怪しいものではないという目印が必要だと思いました。そこで、『わんこの幸せバンダナ』(https://peraichi.com/landing_pages/view/happywandana)というショップでワンちゃんのオリジナルバンダナを販売している向井香里さんに、わんわんパトロールのバンダナを作ってほしいと相談したのです。そうしたら向井さんが、私もぜひやりたいと賛同してくれて、バンダナを作ってくれることになりました!」

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バンダナを付けた隊員のワンちゃんたち

もしかしたら、お散歩仲間もみんな賛成してくれるかもしれない。そう思った堀さんは、お散歩仲間や昔からの友人に
「散歩の時間を利用して、子どもたちの登下校を見守る活動をしたいと思っているんだけど、どうかな?」
と声をかけたそうです。そして、その活動は春日井の愛犬家たちに口コミで広がっていきました。

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「春日井わんわんパトロール隊」の皆さん

犬を連れて交差点に立つ活動が注目の的に

「やるからには、地域に根ざした活動をできるだけ長く続けたい。だから、みんなの負担にならないシンプルな活動を」が堀さんのモットー。普段のお散歩を活用し、地域のパトロールや、交差点に立って子どもたちの登下校を見守るわんわんパトロールの活動は、強制も強要も、定期的なミーティングとも無縁です。ただ、「できるときにできる人が犬と一緒に地域のパトロールをしたり、交差点で子どもたちの登下校を見守って声をかけたりする」だけ。この趣旨に賛同した飼い主さんたちが、次第に堀さんのもとに集まり始めました。

そのときに思い出したのが、ひとりで交差点に立っているときに見に来てくれた春日井警察署の署長さんが「犬と一緒の地域活動が形になるなら、応援しますよ」とおっしゃってくださっていたこと。
そこで、堀さんは「飼い主さんが集まってくださったので、犬とその飼い主が地域や、子どもの登下校を見守る“わんわんパトロール”という活動をしたい」と春日井警察署に相談しに行きました。定年退職されていた署長さんに代わって後任の警察署長さんが丁寧に話を聞いてくださり、春日井警察署の生活安全課を窓口として「春日井わんわんパトロール隊」を結成できたのが2016年のことです。

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交通安全の旗をくわえる小麦くんは、子どもたちの人気者

できるときにやれる人がやる。自然体の活動が長続きの秘訣

「春日井わんわんパトロール隊」の活動は、愛犬の散歩の時間を活用した地域のパトロールと子どもたちの登下校に合わせた見守り活動、行政や警察署が主催する各種イベントなどで、防犯、交通安全などの声掛けを行うこと、地域住民との交流を行うことなどです。

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交通安全パレードに参加する「春日井わんわんパトロール隊」の皆さん
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ナンバープレート盗難防止ネジ取付活動に協力する隊員のワンちゃん。2枚目の写真右側は、小麦くんと同じオーストラリアン・ラブラドゥードルでTCHの麦ちゃん
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春日井警察署交通課のイベントのお手伝いに参加した時の写真

「春日井わんわんパトロール隊」のメンバーは、人間108名、犬134頭。犬と暮らしていて、会の趣旨に賛同する住民なら誰でも参加でき、お揃いのバンダナを付けて地域のパトロールをしたり、子どもの登下校を見守ったりします。ルールは、何かあったときのために連絡網に登録すること、活動時にバンダナを付けること、パトロール隊だから散歩に行かなくちゃ!とか、不審者を見かけたときにパトロール隊の私がなんとかしなくちゃ!などと思わず、できるときに参加して、不審者を見かけたら110番か春日井警察署生活安全課に連絡する、ということぐらい。定期的なミーティングなどはありませんが、連絡網にて各々の情報交換をしています。

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雨の日は、雨を気にしないワンちゃんが活動します

見守り活動を通じて犬との正しい接し方を教えたい

また、堀さんは、子どもの安全を守るとともに、犬との接し方を教えていきたいと言います。
「犬に慣れていない子どもたちが間違った接し方をすることで、不慮の事故などに繋がってしまった事件などを目にすることがあります。犬には突然触らない、しゃがんで犬と同じ目線にする、まずは自分の手をグーにして匂いを嗅いでもらってからそっとなでるなどの接し方を教えることで、犬も子どもも不幸になってしまう事故を防ぎたいと考えています。また、触られるのが苦手なワンちゃんもたくさんいるから、よその犬に触りたかったら飼い主さんに“触ってもいいですか?”って聞くんだよ、と繰り返し教えています」。

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犬との正しい接し方を教えるのも大切な活動のひとつです

「活動を通して子どもたちの成長を見守れるのが幸せです」

初めて会った保育園児の頃はとても犬が苦手だったのに、今では元気に
「こむぎ、おはよう!」
と頭をなでながら登校する小学生になったゆりちゃん。
犬との接し方を根気よく教えていたら、新1年生の子に
「犬はこうやって触るんだよ」
と教えてあげられるようになった6年生の男の子。

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ゆりちゃんの入学式も、小麦くんと「春日井わんわんパトロール隊」が見守りました

「子どもたちは日々成長する。春日井わんわんパトロール隊の活動で、地域の子どもたちの成長を見守る幸せを感じています」
と堀さんは語ります。そして、2017年1月には、その地域に根ざした活動が認められ、「春日井わんわんパトロール隊」は愛知県春日井警察署から表彰されました。

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感謝状をいただいたワン!

「無理なく、できるときに自分がやれる範囲の活動をして、行政や警察と協力して細く長く活動する。この趣旨に賛同してくださった方の集まりなので、トラブルなく続けられています。メンバーの皆さん、そして、活動を受け入れてくださっている地域及び行政、警察の皆様には、感謝の気持ちでいっぱいです。これからもずっと、無理なくみんなで楽しく活動を続けていくことが私の願いです」
筆者は長年、動物愛護活動に携わっていますが、何もかも一生懸命やろうとするあまり、疲れ果てて引退していく方を何人も見てきました。「春日井わんわんパトロール隊」のような自然体の活動が、長く活動を続けられる秘訣なのだと思います。「できることを、無理のない範囲で」。筆者も堀さんを見習って、まずは息子が通う小学校の登下校を愛犬と見守りたいと考えています。



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石原 美紀子

石原 美紀子

青山学院大学卒業後、出版社勤務を経て独立。犬の訓練をドッグトレーニングサロンで学びながら、愛玩動物飼養管理士1級、ペット栄養管理士の資格を取得。著書に「ドッグ・セレクションベスト200」、「室内犬の気持ちがわかる本」(ともに日本文芸社)、「犬からの素敵な贈りもの」(出版社:インフォレスト) など。愛犬はトイ・プードルとオーストラリアン・ラブラドゥードル。


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