ペット保険は治療費への心理的ハードルをぐっと下げてくれます
犬の医療には、人間のような健康保険はありません。動物病院で治療を受けると、「お会計はいくらくらいだろう?」とドキドキするペットオーナー様も多いのではないでしょうか。
ペット保険に入っていれば、動物病院などをペットが受診したときに、その治療費や手術代、入院費用などの一部、保険によっては全部を保険会社に負担してもらうことができます。「保険の適用がある」という安心感は、動物病院にワンちゃんを連れて行くという金銭的なハードルをぐっと下げてくれますから、結果的に通院回数が増えてワンちゃんの不調を見逃さなくなるという利点もあります。
ペット保険市場は毎年20%前後の成長率で伸びています
最近では、ペットショップがペット保険の代理店をしていて、ワンちゃんを迎えるときに保険加入を勧められることもあります。ペット保険に加入する人は年々増えており、ペット保険業界の動向(PEDGE:アイペット損害保険株式会社調べ)というレポートによると、日本のペット保険加入率は7.7%程度とまだ「多い」とはいえない数字ですが、ペット保険の市場規模は毎年20%前後の成長率で伸びているとのことです。
拡大を続けるペット保険業界に対する金融界の視線は熱く、三井住友銀行がペット保険の取り扱いを2018年7月24日から開始することが報道されました。大手銀行が、窓口でペット保険の取り扱いを開始するのは初めてです。
初めてワンちゃんを飼う方は入ったほうがいいです
ペット保険に入る際のチェック事項などについては、筆者が以前書いた「ペット保険の加入を真剣に考えましょう<前編>」を参考にしてください。
では、どのようなペットオーナー様がペット保険に入るべきなのでしょう。
まず、初めてワンちゃんを飼う方は、入るべきだと考えます。特に、お子様がいらっしゃるご家庭で初めてワンちゃんを飼った場合は、マストと言ってもいいでしょう。
初めてワンちゃんと暮らすときは、不慮の事故がつきものです。筆者の知人が飼い始めたチワワが2歳のお子様の声に驚いてソファから飛び降り、前脚を骨折してしまったという事故がありました。治療費は15万円かかったとのことです。
事故は予想もしないところで起こりますし、骨折など外科的治療は全身麻酔が必要になることも多く、治療費は高くなりがちです。このような場合でも、ペット保険に入っていれば、治療費の支出を抑えることができます。
また、初めてワンちゃんと暮らす方からどんな犬種がいいかと相談を受けるとき、筆者はお答えの最後に必ず「ワンちゃんを迎えたら、とにかくまめに動物病院に通ってください。信頼できる獣医師さんとお付き合いして、まめに健康チェックをしていただくことが大事です」とお伝えするようにしています。
健康チェックの結果、投薬などの必要がある疾患が発見されて治療を受けた場合、保険の適応があることもあります。病気の早期発見、早期治療につながりますので、ぜひ検討してみてください。
※どのような傷病にペット保険の適応があるかは保険会社や商品により異なりますので、必ず約款を読んでください。特に「保険金をお支払いできない主な治療費」「補償対象・対象外」などとなっている箇所は必読です。
シニア期の準備として加入を検討してみましょう
では、成犬~シニアのワンちゃんはどうでしょう。
筆者の経験では、ワンちゃんは8歳を超えると、ぐっと通院頻度が高まります。今まで若いと思っていたワンちゃんが、衰えを見せ始めるのが8~9歳です。
支出も多くなりますので、シニア期こそペット保険のありがたみを感じられるといっても過言ではないでしょう。
そこで、まず確認したいのが、保険会社の加入年齢範囲の上限です。一般的には、7歳11カ月を超えると入れなくなるペット保険が多いです。また、当然ですが、子犬の頃よりも月々の保険料が高くなります。シニアになってから慌てる前に、5~6歳頃にペット保険の加入を考えてもいいでしょう。
もっとも、SBIいきいき少額短期保険株式会社が加入年齢範囲の上限を「7歳11か月」から「11歳11か月」まで拡大することをプレスリリースで発表するなど、ペットの高齢化を見据えたプランも出てきています。各プランを見比べて、ワンちゃんに合ったペット保険を見つけましょう。
ミニチュア・ダックスフンドなど椎間板ヘルニアの好発犬種はペット保険加入がオススメ
「ミニチュア・ダックスフンドを飼っています。ペット保険に入ったほうがいいですか?」という質問を以前いただいたことがあります。私は、「ミニチュア・ダックスフンドは椎間板ヘルニアになるケースがとても多いので、約款を調べて、椎間板ヘルニアが補償対象だったら入ったほうがいいです」とお答えしました。たとえば、ペット&ファミリー少額短期保険株式会社は、保険金お支払い事例に椎間板ヘルニアを挙げています。
椎間板ヘルニアとは、背骨の間にある椎間板という軟骨が何らかの原因で変性し、脊髄を圧迫してしまう状態のことです。「背中をさわると痛がる」「ふらふらと歩くようになった」などの症状から始まり、後ろ足が動かせなくなったり、排尿ができなくなったりします。
ミニチュア・ダックスフンド、ウェルシュ・コーギー、フレンチ・ブルドッグ、トイ・プードル、シー・ズー、パピヨン、チワワなどの小型犬から、ジャーマン・シェパード、ラブラドール・レトリーバーなどの中型・大型犬までよくみられる疾患です。
治療費は進行の程度によって様々ですが、外科的治療が必要になった場合はやはり、かなりかかります。
椎間板ヘルニアの好発犬種を飼っている場合は、若いうちから加入を検討したほうがいいでしょう。加入前に椎間板ヘルニアを発症していた場合(既往症や先天性疾患の場合)は補償の対象にならないことがほとんどですので、発症前の若い世代の加入がお勧めです。
ワンちゃんの健康を守れるのはペットオーナー様だけ。ぜひ、ペット保険の加入を検討してみてください。
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