狂犬病ワクチンは飼い主の義務!狂犬病の恐ろしさとワクチンの必要性を解説

2025.04.15

狂犬病ワクチンは飼い主の義務!狂犬病の恐ろしさとワクチンの必要性を解説

狂犬病とは、すべての哺乳類に感染の可能性がある感染症です。 発病した場合、精神錯乱や麻痺、呼吸困難などの症状が認められ、更にはほとんどの場合死に至ります。 日本では犬を飼育する際に、狂犬病ワクチンの接種が義務付けられています。 この記事では、狂犬病やワクチンの重要性について、詳しく解説いたします。

【掲載:2017.10.13  更新:2025.04.15】

狂犬病とは

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狂犬病とは、人獣共通感染症のひとつで、狂犬病ウイルス (Rabies vius) を病原体とする感染症のことです。
ヒトを含むすべての哺乳類が感染する可能性のある病気ですが、有効な治療法はなく、致死率はほぼ100%となっています。

主な感染経路は、狂犬病にかかった動物に咬まれ、唾液に含まれたウイルスが体内に侵入するというものです。
狂犬病感染の多くが、犬から人などの哺乳類へ感染するパターンです。
コウモリ、マングース、キツネなどの野生動物も感染源となりますが、人への感染源と限定した場合は、99%が犬が占めています。

通常、ヒトからヒトに感染することはありません。

現在の日本は狂犬病洗浄国であり、国内での発生はありませんが、毎年世界中では約5万人もの死者を出している恐ろしい感染症です。

◆狂犬病の症状:ヒトの場合

潜伏期間は1-3ヶ月間程度

前駆期 発熱や食欲不振など風邪に似た症状、咬傷部分の痛みや痒み
急性神経症状期 水を怖がるなどの不安感が強くなり、麻痺、幻覚などの精神錯乱などの神経症状、興奮性し攻撃性が高くなる、瞳孔が開く、よだれが止まらなくなるなど
昏睡期 昏睡、呼吸障害

◆狂犬病の症状:犬の場合

潜伏期間は2週間-2か月間程度

前駆期 性格が変化し、行動が異常化
(全ての犬が凶暴になる訳ではなく、荒々しい犬が従順に、従順な犬が荒々しく、など普段の性格と異なる性格に変化すると言われています。)
狂躁期 興奮状態が続く(目的鳴く徘徊、無作為に噛みつく、光や音に過敏に反応するなど)
麻痺期 全身麻痺による歩行不能、よだれが止まらなくなる、嚥下が難しくなる、やがて昏睡状態になる


世界における狂犬病の発生状況

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日本、イギリス、オーストラリアなどの一部の国を除いた全世界で狂犬病は発生しています。
しかしながら、年間5万人以上いる死亡者数のうちの約90%以上がアジアとアフリカです。
最も多いのはインドで、死亡者数も多いですが、狂犬病ワクチン治療を受ける人も年間100万人以上ととても多いです。

狂犬病は、潜伏期が数日~数年と長い事が特徴です。
噛まれた場所が脳から遠ければ遠いほど、発症は遅いと言われています。

狂犬病への感染が疑われる地域で、犬や野生動物に噛まれた場合は咬傷治療として狂犬病ワクチンの暴露後予防接種(PEP)を受ける必要があります。
適切に狂犬病ワクチンの暴露後予防接種(PEP)を行う事で、狂犬病の発病は起こらないと言われています。
ですが、世界での狂犬病ワクチンの暴露後予防接種(PEP)率はとても低いです。

それは、狂犬病ワクチンの暴露後予防接種(PEP)の平均費用がアフリカで40USドル、アジアで49USドルと高額な為です。
貧困地域に暮らす人々には、高額な狂犬病ワクチンの接種はほぼ不可能です。

◆なぜ日本では狂犬病が発生していないのか

前述の通り、日本は現在狂犬病浄化国として知られています。
しかし、そんな日本でも1950年の狂犬病予防法が制定されるまでは、狂犬病の発生がありました。

そんな中、狂犬病の対策として狂犬病予防法が施行され、飼育状況の明確化を目的とした犬の登録や、狂犬病の予防接種、野犬の抑留など管理の徹底を行いました。
それから7年間で日本での狂犬病発病はゼロになったと言われています。

ただし、これは「日本での」感染がゼロということであり、海外旅行中に犬などに噛まれ、帰国後に発病し死亡した、というケースは稀にあります。

「今」は国内の発生はゼロですが、危険はゼロでは無いという危機感を持つ事は大切です。


狂犬病予防のためには予防接種は必須!

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狂犬病の感染源は限られており、アジアでは殆どが犬が占めています。
そのため、犬の狂犬病発生を抑える事が一番の狂犬病予防と言えます。

狂犬病予防法により犬への狂犬病ワクチンの予防接種は飼い主の義務だと定められています。

狂犬病ワクチンの予防接種は、春に接種のお知らせが来る事から春にしなくてはいけないと思っている方が多いです。
ですが実際には、予防法では毎年一回の狂犬病ワクチンの予防接種が義務付けられているだけで時期については、必ず春に接種しなければならないわけではありません。愛犬の体調が悪い時には無理をせず、獣医師とよく相談の上ワクチンを接種するようにしましょう。
ですので、体調を考慮し時期を選ぶことは可能ですので、犬の健康チェックを欠かさない事が大事です。

持病がある、高齢など健康不安がある犬の場合は、獣医師により「狂犬病予防接種の猶予証明」が発行されます。

◆狂犬病ワクチン接種をしなかった場合

狂犬病予防法により、自治体への犬の登録と狂犬病ワクチンの予防接種は飼い主の義務となっています。
違反した場合には、飼い主には20万以下の罰金があります。
過去には狂犬病予防法違反容疑で書類送検や、逮捕された例もあります。

また、飼い犬に対しても都道府県知事が指定した捕獲人を使用し、その犬を捕獲、抑留することができる、という処置が適応される。

その犬が狂犬病を発生した場合は、けい留、隔離の義務があります。
人命に危険があり、緊急かつやむを得ない場合には殺処分する事も法で妨げないと定められています。

◆ワクチンに副作用はあるのか

どのワクチンにも言えることですが、ワクチンを打つことで副作用が見られることもあります。
狂犬病ワクチンの副作用の例としては下記の通りです。

・元気、食欲の消失
・消化器官の不調(下痢、嘔吐)
・アナフィラキシーショック
・アレルギー反応

ただし、平成27年度に獣医師より報告された狂犬病ワクチンによる副作用の件数は18件となっており、混合ワクチンによる副作用よりも発症率が低いというレポートもあります。
ワクチンによる副作用には愛犬の体調も影響しますので、まずは獣医師に相談してみましょう。


まとめ

狂犬病は、現在の日本での発生率はゼロです。
ですが、海外渡航中の罹患で国内で発症した人はゼロではありません。
爆発的に感染が拡大する恐れもゼロでは無いです。
狂犬病ワクチンの予防接種は、法で定められた義務でもありますが、何よりも愛犬を守るための方法のひとつです。
必ず毎年接種するようにしましょう。



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St.Elmos

St.Elmos

動物看護士、トリマー、愛玩飼養管理士などの資格を持っています。 家族の一員としてのワンちゃんネコちゃんにまつわる情報をお伝えできればと思います。


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