1.肛門腺とは?
1-1.肛門腺の役割
1-2.肛門腺が有名な動物について
2.犬の肛門腺絞りは必要?
2-1.肛門腺の分泌液は排便時に自然と出る
2-2.肛門腺絞りが必要な犬
3.肛門腺絞りのやりかたは?
3-1.シャンプーと一緒に肛門腺絞りをするのがおすすめ<
3-2.高齢犬や子犬の肛門腺絞りをする場合
3-3.肛門腺絞りのやりすぎは禁物
3-4.難しい場合はトリミングサロンや動物病院へ
肛門腺とは?
肛門腺は「肛門囊(のう)」とも呼ばれ、肉食類のみに存在する1対の小さな袋のようなものです。肛門よりもやや下の皮膚内にあり、時計の4時と8時の方向にあります。
◆肛門腺の役割
肛門腺には、臭腺や皮脂腺があり、その袋の中ににおいの強い分泌物が溜まります。分泌物は便と共に少しずつ排出され、マーキングの標識となります。
つまり、犬が初対面で会った時にお尻のにおいを嗅ぎ回るのは、この分泌物のにおいを嗅いでいるからなのです。
また、分泌物のにおいは人間の指紋の様に1匹ずつ異なり、犬はにおいを嗅ぎ分け相手の情報を得ることができます。
◆肛門腺が有名な動物について
スカンクは恐怖を感じる、敵に襲われると臭いにおいを出すことで有名ですが、そのにおいは肛門腺からの分泌物です。
また、鳴かないペットとして人気があるフェレットはペットショップで売られていますが、ほとんどの個体が手術によって肛門腺の除去が行われています。
イタチ科の仲間であるフェレットは「イタチの最後っ屁」と言われる程に相当なにおいがするため、家庭で飼育する場合は、性格が左右される去勢手術と肛門腺の除去を推奨されているのです。
犬の肛門腺絞りは必要?
犬の肛門腺を刺激し、中の分泌物を出すことを「肛門腺絞り」と呼びます。この肛門腺絞りは、愛犬にとって必要なのでしょうか。
◆肛門腺の分泌液は排便時に自然と出る
肛門腺から排出される分泌液は、通常であれば便と共に排出されるため、頻繁な肛門腺絞りは必要ありません。だだ、現代のペットでは肛門腺絞りが必要となることがあります。
肛門腺は、元々狩りをして暮らしていた時代に自分のテリトリーを主張するために発達していた器官です。
しかし、犬が人と暮らすようになってからは生きていくためにマーキングする機会が減り、分泌物を押し出す「肛門括約筋」と呼ばれる筋肉が弱ってきていると言われています。
◆肛門腺絞りが必要な場合
チワワやトイプードルなどの小型犬や肥満犬、高齢犬、肛門括約筋が未発達な子犬は、自力での排出が難しいことも多く、飼い主さんが分泌物を出してあげる必要がある場合があります。
中型犬や大型犬は自力で出せる他、興奮した時や驚いた時に出てしまうこともあります。
しかし、肛門括約筋の発達や肛門腺が溜まる量には個体差があり、下痢などの体調不良やストレスによっても異なります。
肛門腺絞りのやりかたは?
肛門腺絞りは1ヶ月に1度行うと溜まりにくく、炎症を起こしにくいと考えられています。
ここでは肛門腺絞りのやりかたをご紹介します。
◆シャンプーと一緒に肛門腺絞りをするのがおすすめ
肛門腺は強いにおいがするため、家庭で肛門腺絞りをする際にはお風呂場やお庭で行い、すぐに洗い流せるようシャンプーと一緒にすることをおすすめします。
シャンプーをする前に肛門腺絞りをすると、身体の汚れと共に流すことができます。
やり方としては、尻尾を上に肛門が縦に伸びるように持ち上げ、時計の4時と8時の位置を肛門に向かって押し上げるようにすると肛門腺の分泌物が出やすくなります。また、肛門腺の分泌物は勢い良く飛び出る可能性が高いため、注意が必要です。
◆高齢犬や子犬の肛門腺絞りをする場合
シャンプーをするのが難しい高齢犬や子犬の場合は、周りに飛び散らないよう床に新聞紙をひき、ティッシュペーパーで優しく拭き取ってあげましょう。事前に使い捨ての手袋やビニール袋、使わないタオルを用意しておくと、スムーズに肛門腺絞りを行うとことができます。
肛門腺を絞った後は、ウェットティッシュやシャンプーシートでお尻を拭いてあげるのもおすすめです。
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◆肛門腺絞りのやりすぎは禁物
においが個体によって異なるように、肛門腺の分泌物の色や形状も様々です。色は茶色や黄色、灰色などがあり、形状はドロドロとした粘土状や液状など個体差があります。
肛門腺絞りのやりすぎは、肛門腺を傷付けて炎症を引き起こす可能性もあります。出た分泌物が血のような赤色や緑色をしている場合は、既に炎症が起きていることも考えられるため、動物病院で受診しましょう。
また、お尻を触られるのを嫌がる犬も多く、やりすぎるとシャンプーをさせてくれなくなり、お尻を触っただけで噛んでしまう犬もいるため、嫌がってしまう場合は中断し、トリミングサロンで相談してみるのも良いでしょう。
◆難しい場合はトリミングサロンや動物病院へ
ご家庭で肛門腺絞りをする場合、初めての飼い主さんはなかなか上手く出来ない方も多くいらっしゃいます。
トリミングサロンでは、トリミングのメニューに肛門腺絞りが取り入れられているところも多く、単品メニューとして行っているトリミングサロンもあります。
愛犬を定期的にトリミングしてもらっているご家庭は比較的安心ですが、家庭での肛門腺絞りが難しく、肛門腺が溜まりやすい犬は、トリミングサロンで定期的に絞ってもらうのもおすすめです。
また、肛門腺が溜まりやすい犬の場合、なるべくお尻周りの被毛は短めにカットしてもらい、お尻周りを清潔に保てるようにしておくことも肛門腺トラブルの予防に繋がります。
動物病院でも肛門腺絞りを行ってくれるところがありますので、健康診断や予防接種のついでに絞ってもらうのも良いでしょう。
肛門腺絞りをしないとどうなる?
肛門周辺は便だけでなく、お座りで土が付きやすいため汚れやすく、病気を起こしやすい環境にあります。肛門腺を絞らないと炎症を起こし、溜まりすぎてしまうと最悪の場合、肛門腺が破裂してしまう可能性があります。
肛門腺に関する病気について知っておきましょう。
◆肛門囊炎
肛門腺の導管が分泌物によって閉塞する、溜まりすぎてしまうなどの原因で細菌感染を起こして発症します。
肛門囊炎は、チワワやトイプードルなどの小型犬、肥満犬の他に、体調不良によって下痢や軟便が続いている犬にも起こりやすいといわれています。また、肛門周辺の病院で最も多く、年齢や性別を問わず発症する傾向にあるといわれています。
症状としては、
- 肛門部分を舐める、噛む
- 肛門部分を地面に擦り付ける
- 尻尾を追いかけてグルグルと回る
などがみられます。また、長時間放置してしまうと発熱や食欲低下などもみられ、重度になると肛門腺からの出血や肛門腺破裂も引き起こす可能性があります。
◆肛門周囲腺炎
肛門囊炎と似ている病気ですが、肛門周辺に存在する肛門周辺腺と呼ばれる細い導管が細菌感染を起こしてしまうことで発症します。
症状としては、
- お尻を気にする、舐める、噛む
- 肛門周辺の腫れ、ただれ、出血
- 発熱
- 排便時の痛み<
- 排便、排尿困難
などが見られます。
肛門周囲腺炎の最大の特徴としては、強い痒みがあります。強い痒みからお尻を地面に擦り付け、症状を更に悪化させてしまう可能性があります。
肛門周辺がただれ、出血してしまうと排便や排尿時に痛がって鳴き、排泄したがらなくなることも考えられます。また、痛みや痒みから触られるのを嫌がり、お尻を触ろうとすると攻撃的になることもあります。
排泄を我慢し続けると便秘や膀胱炎などを併発する恐れもあるため、すぐに動物病院での治療が必要になります。
◆肛門囊腺癌
肛門囊癌は肛門腺の中にある「アポクリン腺」という汗腺が悪性の腫瘍に変化してしまうことで発症する癌です。
肛門にも癌ができるのかと驚かれる方も多くいらっしゃいますが、肛門囊癌は命に関わる癌でもあり、皮膚癌の中で約2%を占めるといわれています。発症する年齢は平均10歳と高齢であり、他の器官へ転移率が高いことで知られています。
肛門囊癌の転移率は約50%以上で、リンパ節に転移すると考えられています。
主な症状としては、
- 肛門周辺の腫れや炎症<
- 尻尾の付け根を気にする、舐める、噛む
- 肛門部分からの出血
- 多飲多尿
- 食欲低下、元気が無くなる
- 排尿困難
- お尻を引きずりながら歩く
- 便意があり排便体勢になっても出ない
などがみられます。
肛門囊癌の半数以上は肛門周辺に見られると考えられているため、進行を防ぐためにも早期発見が重要な病気です。
腫瘍の大きさも生存率に大きく関わり、日々のコミュニケーションを取る中で様子を見るだけでなく、お尻のチェックや排便の姿勢なども見ておくと早期発見に繋がります。また、お尻に腫瘍のようなものが見られたら動物病院で詳しい検査をすることが勧められます。
犬の肛門腺絞りについてのまとめ
肛門腺絞りは難しいと思われがちですが、コツを掴めば飼い主さんでも上手にできます。どうしても難しい場合や、心配な場合は、トリミングサロンや動物病院にお願いするのもひとつの手です。
また、肛門腺は犬にとって大切な情報交換の手段であり、自分のテリトリーを守るための器官でもあります。既に肛門腺が炎症を起こしている場合は必ず動物病院で診察してもらい、治療や投薬などで症状の進行を止めてあげましょう。
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