パトラッシュはなんの犬種?フランダースの犬など世界の名作童話に登場する犬たちの秘密

2023.09.07

パトラッシュはなんの犬種?フランダースの犬など世界の名作童話に登場する犬たちの秘密

日本では有名なフランダースの犬。フランダースの犬に登場するパトラッシュは、なんの犬種かご存知ですか?セントバーナードと思われがちなパトラッシュは、実は別の犬種の犬でした。 今回は、フランダースの犬に登場するパトラッシュの犬種や、世界の名作に登場する犬たちをご紹介します。

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フランダースの犬ってどんな話?

◆貧しい生活を送る少年ネロ

パトラッシュが登場する名作「フランダースの犬」は、1870年ごろのベルギー・フランダース地方アントワープのお話です。

少年ネロは、幼いころに両親を亡くし、ネロの祖父であるジェハンに引き取られて暮らしていました。ジェハンは年をとっており、足を痛めて満足に歩けない状態。彼らは貧しい生活を送っていましたが、その暮らしに満足していました。

◆ネロとパトラッシュの出会い

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『フランダースの犬』の挿絵 Wikipediaより引用

フランダースの犬に登場するパトラッシュは、フランダース地方の犬で、大型でとても筋肉が発達している犬。

ネロに出会う前のパトラッシュは、主人にひどくこき使われていました。パトラッシュの前の主人は金物屋で、パトラッシュにろくに食事を与えず、絶えず鞭で打つような人間でした。

パトラッシュはなんとか耐えていましたが、ある日、とうとう倒れてしまいます。早く目的地に着きたかった金物屋の主人は、パトラッシュが動かないことが分かると、そのまま放って行ってしまいました。

そこにネロとジェハンが通りかかり、パトラッシュを連れて帰り、看護し、パトラッシュは元気な身体を取り戻したのです。

ジェハンは、アントワープに牛乳を売りに行って生計を立てていましたが、決してパトラッシュに働かせようとはしませんでした。

ところがある日、パトラッシュは自らジェハンを遮り、荷を引く素振りを見せました。老齢のジェハンを助けようとしたのです。
最初はそれを承知しなかったジェハンもやがて根負けし、パトラッシュに荷を引かせることにしました。

そしてある冬、とうとうジェハンが年と古傷のため歩けなくなると、幼いネロとパトラッシュはジェハンの代わりに牛乳を売りに行くようになったのです。

◆画家になることを夢見るネロ

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『フランダースの犬』の挿絵 Wikipediaより引用

月日は流れ、ネロは丈夫に成長しました。食べるものは依然として満足にありませんでしたが、それでもネロとパトラッシュは幸せでした。

ネロは絵を描くことが大好きで、よくアントワープ大聖堂(聖母大聖堂)に足を運んでいました。ルーベンスの2枚の傑作を見たかったのですが、貧しいネロには見ることはできませんでした。

彼は画家になることを夢見ていましたが、ジェハンには言いませんでした。代わりに、アロアという少女とパトラッシュだけに、自分の夢を語っていました。アロアは風車のある小屋に住んでいて、父親は粉屋をしており、村一番の百姓でした。

アントワープでは、年に一度、200フランが与えられる絵のコンクールがありました。入選者は12月24日に発表されることになっており、ネロはジェハンに内緒でコンクールに出す絵を描いていました。

◆冷たい仕打ちを受けることに…

ある冬の雪の晩、不幸にも粉屋の風車小屋が火事になり、納屋と多量の粉が焼失してしまいました。

粉屋は保険に入っていたので全く損はしませんでしたが、ひどく腹を立て、火事をネロのせいにしました。アロアの父親は、アロアとネロが親しくすることを好んでいなかったからです。

もちろんネロはそんなことはしていませんでしたが、粉屋の主人は、彼がアロアとの交際を反対されたことを恨んでやったのだと村中に言いふらしました。

ネロは村の人たちから冷たい目で見られるようになり、孤立し、牛乳も売れなくなり、生活は苦しくなりました。そんな中でただ、絵が入選したら、と願うのでした。

◆ジェハンとの別れ

キリスト降誕祭の一週間前、寝たきりだったジェハンが亡くなりました。お葬式にはネロとパトラッシュ以外に参列者はいませんでした。金は底をつき、ネロは家賃を払えなくなり、小屋を追い出されました。

ネロはただまっすぐ、アントワープの公会堂に向かいました。高く掲げられたコンクール入選者の絵は、ネロの描いたものではありませんでした。

村への帰路の途中、パトラッシュは小さな袋を見つけて吠えました。その袋にはアロアの父親の名前が書かれており、2000フランもの大金が入っていました。ネロはそれをアロアの家に届け、パトラッシュを預けて養ってくれるよう頼みました。

全財産を無くして失意の内の粉屋が家に帰ると、妻と娘の話を聞き、とうとう改心しました。ネロに償い、息子にすることを決め、翌日の朝に迎えに行こうと約束しました。アロアたちはこの時、ネロが小屋を追い出されたことを知らなかったのです。

◆パトラッシュと共に生涯を過ごしたネロ

A Dog of Flanders
パトラッシュは隙を見て外に飛び出し、ネロのもとに向かいました。

大伽藍の扉は開け放されており、パトラッシュは倒れていたネロに駆け寄りました。ネロはパトラッシュを抱きしめ、死の眠りに落ちかけた瞬間、突然月が闇を照らし、ルーベンスの2枚の絵が浮かび上がりました。ネロはとうとう崇高な絵に描かれたイエスの姿を見ることが出来たのです。

あくる朝、ネロはパトラッシュと共に死んでいました。2人は生涯を共に過ごし、死んだ後も村人たちによって同じ墓に入れられました。


パトラッシュって何の犬種?

フランダースの犬に登場するパトラッシュは、日本ではセントバーナードだと思われがちですが、実は「ブービエ・デ・フランダース」という違う犬種の犬です。

◆ブービエ・デ・フランダースはどんな犬?

パトラッシュのモデル犬であるブービエ・デ・フランダースは、フランス・ベルギーが原産の犬です。

この犬種の平均的な体高は、オスで62~68cm、メスで59~65cm、体重はオスで35~40kg、メスで27~35kgです。全体的に少し厚みのある犬種で、見る人に力強い印象を与えますが、重たい感じはありません。
この犬種は、通常生後一週間ほどで断尾されますが、断尾されていない尾も許容されており、欠点にはなりません。

被毛はとても豊富で、粗く硬い感触です。6cm程の被毛は、長すぎず短すぎず、ウーリー(羊毛状)やカーリー(巻き毛状)ではなく、やや乱れ毛です。眉毛が伸びており、上唇と顎は生えそろったひげに覆われていて特徴的です。

毛色は一般にグレーで、しばしばグレー・ブリンドル、またはグレーにブラック・オーバーレイ。ブラックの単色も認められています。色褪せた明るい色の被毛は認められておらず、胸の小白斑は許容されます。

性格は穏やかで、大胆かつ思慮分別があり、そのまなざしはパトラッシュのモデルにふさわしく、知性、活力、勇気がうかがえます。

ブービエ・デ・フランダースは、日本のアニメで放映されたフランダースの犬の中のパトラッシュとは、似ても似つかない見た目をしていますね。

◆現在のブービエ・デ・フランダース

フランダースの犬のパトラッシュのモデルであるブービエ・デ・フランダースは、犬種名が示す通り、ベルギーとフランスにまたがるフランドル地方の原産の犬です。

もともとこの犬種は、パトラッシュのような運搬犬、牧畜犬として、またはバター製造の撹乳機を動かすために使われていました。
さらに、家畜の群れを誘導するのに優れた犬を作りたいと考えた牛飼いたちが、選択繁殖にあたって特に考慮したのは、行動能力や肉体的クオリティでした。そのため、そのようなクオリティが現在でもこの犬種には受け継がれています。

農業用具が発達したこともあり、牧畜犬や運搬犬としての作業から解放された後、今日では主に大農場や農園の番犬の他、防衛犬、警察犬としても使われており、この犬種の体躯及び行動面の適性、鋭い嗅覚、決断力、および頭の良さから、追跡、連絡並びに猟区を監視する犬としても用いられます。

また、家庭犬としても広く愛育されています。

◆パトラッシュのイメージが違う理由

フランダースの犬のパトラッシュは、原作中でも、ブービエ・デ・フランダースとはかなり違う特徴を持った犬として書かれている部分があります。


しかし、ベルギーのホーボーケンという町に建てられたパトラッシュの銅像は、ブービエ・デ・フランダースの姿をしており、今のところフランダースの犬のパトラッシュのモデルは、この犬種が一番近いという説が有力のようです。

日本のアニメとして放映された「フランダースの犬」の中のパトラッシュは、真っ黒もじゃもじゃの犬では可愛くない、ということで、あえて別犬種をモデルにした結果のようです。より日本の子供たちに好まれるようにと、監督が独断でパトラッシュのデザインを変更したとされています。


世界の名作に登場する犬たち

世界の名作に登場する犬は、パトラッシュだけではありません。パトラッシュ以外にも、たくさんの名犬たちが名作に華を添えています。

◆「アルプスの少女ハイジ」のヨーゼフ

山の牧場でハイジやおじいさんと一緒に暮らすヨーゼフは、セントバーナードです。

ヨーゼフはゆったりとマイペースで、ハイジがぶつかってもびくともしません。とても賢く、おじいさんの言うことをよく聞き、ハイジのことを何度も助けてくれます。

◆「名犬ラッシー」のラッシー

名犬ラッシーは、小説「名犬ラッシー家路」の主人公です。映画やドラマでシリーズ化され、アニメでも放映されました。

頭の良い名犬ラッシーが飼い主のジョーから離れてしまい、それでもジョーと暮らしたいラッシーが故郷を目指す困難の旅を描いており、とても忠実で賢いラッシーに驚かされます。モデルとなった犬種はラフ・コリーです。

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白い犬とワルツをは、アメリカで制作され、日本では1995年からテレビ映画で放送されました。原作本もベストセラーとなっています。

明確にモデルとなった犬種はいませんが、どこからともなく現れる白い犬は、あるときは主人公の周りを飛び回り、またある時は主人公の傍らに寄り添い、物語を優しく美しく彩っていきます。

◆「わんわん物語」のレディ

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動物の専門学校で看護の資格を取得後、6年間動物病院に勤務しました。5歳のシェルティと4歳の猫、0歳の息子と毎日楽しく過ごしています。ペットと過ごすうえで役に立つ情報をお届けできるよう、日々勉強しております。よろしくお願いします。


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