1.秋の味覚の代表格「銀杏(ぎんなん)」ってなに?
1-1.銀杏(ぎんなん)に栄養はあるの?
1-2.イチョウの葉エキスは犬の認知症に役立つ?
2.銀杏(ぎんなん)で中毒症状を起こすこともあるの?
2-1.メチルビリドキシン
2-2.ギンコライド
3.犬は銀杏(ぎんなん)を食べてもいいの?
3-1.犬に銀杏(ぎんなん)を与えるのはNG
3-2.犬が銀杏(ぎんなん)を食べたらどうなる?
3-3.犬は銀杏(ぎんなん)が嫌い?
【掲載:2018.11.3 更新:2022.10.17】
秋の味覚の代表格「銀杏(ぎんなん)」ってなに?
茶わん蒸しなどに入っている秋の味覚の代表格である銀杏(ぎんなん)は、イチョウの種子のことを指します。
イチョウは、秋になると黄色い葉がとても美しく、また剪定に強いため、街路樹として採用している自治体が多く、有名なイチョウ並木が多く存在します。
秋にはイチョウ並木を犬とお散歩する家庭も多いのではないでしょうか。
しかし、銀杏(ぎんなん)は異臭の原因にもなるため、最近では銀杏(ぎんなん)のならない雄株のみを植えることも多いようです。
◆銀杏(ぎんなん)に栄養はあるの?
銀杏(ぎんなん)は殻に包まれているため、殻を割って中の実を取りだして食します。銀杏(ぎんなん)のみで料理することは無く、茶わん蒸しやおこわなどの具や彩りのために少量使われることが一般的です。
銀杏(ぎんなん)は、でんぷんやカロテン、ビタミンCに加えてカリウムやマグネシウムなどのミネラルも豊富な栄養満点の食材です。
中国では、古来より銀杏(ギンキョウ)と呼ばれ、民間人が主に生薬として、夜尿症や咳、痰などの風邪治療などに利用していました。
◆イチョウの葉エキスは犬の認知症に役立つ?
犬のサプリメントで、イチョウの葉エキスを使ったものが市販されています。人間の臨床試験では、国内外でイチョウが認知症の改善や脳機能障害の改善などに効果があったと報告されているものもあります。
特にヨーロッパではイチョウの葉エキスをハーブとして扱い、管理・研究が進んでおり、脳機能疾患などに効果があることが報告されています。
その一方で、アメリカ国立補完統合衛生センター(National Center for Complementary and Integrative Health)での3000人対象の研究では、イチョウに認知症の予防や緩和の効果はないという結果が出ています。
犬に対してのイチョウの葉エキスを使った研究は、特に大きなニュースになるほどの論文などはありません。
そのため、犬に対しての有効性については完全に肯定的な獣医師は多くはありません。
イチョウの葉エキスを犬に与える場合には、用法容量をしっかり守って、商品説明のとおり与えましょう。
銀杏(ぎんなん)で中毒症状を起こすこともあるの?
薬として利用される一方で、銀杏(ぎんなん)には毒性があることが知られています。
◆メチルビリドキシン
銀杏(ぎんなん)に含まれるメチルビリドキシンは神経毒の一つで、ビタミンB6の抑制作用があります。
メチルビリドキシンを摂取すると、痙攣やてんかん発作を引き起こしたり、嘔吐や意識不明に陥ったり、最悪の場合は死に至ることもあります。
銀杏(ぎんなん)の中毒量は、成人で40個から300個と言われていますが、解毒機能などには個人差があるため、数個食べただけでも中毒症状を起こすこともあり注意が必要です。
また、銀杏(ぎんなん)に含まれているメチルビリドキシンは加熱しても消えることは無いため、生食も加熱食どちらも中毒量に変わりはありません。
◆ギンコライド
銀杏(ぎんなん)で最も知られている毒は、ご紹介したメチルビリドキシンによる神経毒ですが、他にも皮膚炎を引き起こすギンコール酸を含むギンコライドも含まれています。
ギンコール酸は、銀杏(ぎんなん)の殻に付着していて、触れると皮膚炎や頭痛、吐き気、発疹などを起こすことがあります。
そのため、殻から外した状態で真空パック販売されているものは、この心配はありません。
また、ギンコライドという成分は血が固まることを防ぐ凝血抑制作用があります。
そのため、ワーファリンなどの抗凝血剤を内服している場合には血が止まらなくなってしまう可能性があるため、銀杏(ぎんなん)を食べる時は注意が必要です。
イチョウの葉にもギンコール酸は含まれていますが、銀杏(ぎんなん)の実には含まれていませんので、食べる際に皮膚炎の注意は不要です。
犬は銀杏(ぎんなん)を食べてもいいの?
人間にとっては中毒を起こす事もある銀杏(ぎんなん)ですが、犬は食べても良いのでしょうか?
◆犬に銀杏(ぎんなん)を与えるのはNG
答えはノーです。
犬にとっても毒性があることは変わりないため、犬が食べてはいけないものとして認知されています。
銀杏(ぎんなん)による中毒が出る摂取量は犬の個体差もありますが、特に小型犬などのサイズの小さい犬にとっては1個食べただけでも危険なことがあります。
◆犬が銀杏(ぎんなん)を食べたらどうなる?
犬が銀杏(ぎんなん)を食べた場合、食べた量が少なかったり、解毒機能が強い犬など個体によっては、特に何も起きません。
中毒症状が出る場合は、食してから半日以内に犬に異変が起こることが多いです。
犬に起こる中毒症状は以下のとおりです。
・嘔吐
・下痢、消化不良(腹痛含む)
・元気消失
・呼吸困難
・意識混濁
・死亡
また、イチョウ並木の下を犬と散歩している際などに落ちている銀杏(ぎんなん)の殻に含まれるギンコール酸によって皮膚炎が起こることがあります。
食べる時に殻と接した口周りや、クンクンと匂いを嗅いだ犬の鼻先などに反応が出ることが多いです。
また、食べることはなくても、落ちた時の殻のカケラや殻自体を犬が踏むことでも、足の裏や肉球に皮膚炎が出ることもあります。
殻ごと犬が食べてしまった際には、喉への詰まりや、割れた殻が鋭利な角を持ち食道などを傷つけてしまうなどのトラブルが考えられます。
◆犬は銀杏(ぎんなん)が嫌い?
イチョウ並木の散歩中に、殻ごとの銀杏(ぎんなん)を食べてしまう犬もいますが、実は多くの犬は落ちていても避けることが多いです。
それは、熟した殻が放つ異臭が関係しています。
銀杏(ぎんなん)は熟すと、殻が酢酸とヘプタン酸により腐敗物のような腐った油の様な匂いを発します。そのため、避ける犬が多いのです。
黄金色のイチョウ並木はとても綺麗で、秋の散歩の定番ですが、嗅覚の優れている犬と歩くには匂いや中毒性のある実が落ちている可能性などがあるため、あまり適してはいません。
積極的にイチョウ並木を犬と散歩することは、あまりおすすめはできないといえるでしょう。
気を付けるべきシーンって?
銀杏(ぎんなん)の毒性を理解したうえで、気をつけなければいけないシーンとはどういった時なのでしょうか。
それは毒性を知っているため、犬に積極的に与えることはなくても、偶然、突発的に食べてしまうことが有り得るシーンです。
・人間の食事の支度中に落としてしまい、犬が拾い食いをする
・イチョウ並木の下を散歩していて、落ちている実を犬が拾い食いする
・毒性を知らない来客や家族が、犬に与えてしまう
・食卓に置いてある銀杏(ぎんなん)入りの皿を、犬が盗み食いする
ほとんどは飼い主が盗み食いや拾い食いに注意することで防ぐことができます。銀杏(ぎんなん)が落ちている秋の季節は、散歩などに気を遣うようにしましょう。
犬が銀杏を食べたときの対処法は?
では、犬が銀杏を食べたときにはどう対処すれば良いのでしょうか。確認してみましょう。
口から出す
犬が銀杏(ぎんなん)を食べてしまった直後で、まだ口の中でモグモグしている時には、口の中に手を入れ、残っている実を取りだしましょう。
毒性は摂取量と関係が深いため、食べてしまう量は少なければ少ないほど良いです。
◆吐きださせる
銀杏(ぎんなん)を飲み込んでしまい口の中に無い場合でも、食べてから時間が経っていなければ吐かせることが可能です。
吐きださせるには、3%濃度程度の塩水(水100ミリに塩3グラム)を飲ませる方法と、オキシドールを小さじ1飲ませる方法があります。
どちらも、犬が積極的に飲んでくれるわけではないので口を開けて流し込みます。
液体を口の中に全量入れた後には、口をしっかりと抑えて犬がゴクンと飲み込むまで待ちます。
注射のシリンジがある場合には、犬の口を閉じた状態で、横から少しずつ押し入れる様にして流し込むこともできます。
しかし、犬に吐きださせる方法は食道や胃腸に負担がかかりますし、中毒症状を起こしてしまった際には体内の塩分濃度が高いことはあまり好ましくありません。
そのため、状況を見ながら行うことをおすすめします。
◆動物病院へ行く
食べた量や、犬自身の解毒機能によっては、何ら問題無い場合もありますが、嘔吐や痙攣、元気の消失など「何か変だな?」と思う点がある場合には、動物病院を受診しましょう。
筆者の勤務していた動物病院でも、中毒性のあるものを食べた心配から、「半日ほど動物病院で預かってほしい」という飼い主さんは多かったです。
動物病院を受診する際には、どのくらいの量を食べたのか、いつ(何時間前)食べたのか、などをしっかり伝えることが大切です。
まとめ
この記事では、銀杏(ぎんなん)を犬に食べさせてはいけない理由についてご紹介しました。
銀杏(ぎんなん)は栄養満点ですが、犬に与えなければいけない訳ではありません。銀杏(ぎんなん)に含まれる栄養素は別の食材で摂取することも可能ですし、何よりも毒性のある実や殻に犬を近づけさせることは避けた方が良いです。
秋のイチョウ並木や、銀杏(ぎんなん)には注意して生活するようにしましょう。
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