犬の検尿から分かる様々な病気
飼い主さんが、犬のおしっこ又は排尿について異変を感じて来院する場合、ほとんどのケースで検尿が必要となります。具体的には、頻尿、多尿、血尿、怒責、頻繁にトイレに行くが排尿していない、排尿できずお腹が膨れているなどです。
※怒責…排便時などに下腹部に力を入れること。いきむこと。
◆おしっこから分かる、犬の膀胱炎
犬の腎臓から尿管、膀胱、尿道に、感染と炎症が起こる病気を総称して「尿路感染症」と言いますが、そのうち最も多いのが膀胱炎です。
犬の膀胱炎は、単純な細菌感染から、結石、腫瘍など、他の疾患が隠れていることもあるので要注意です。
主な症状は頻尿や排尿困難で、一回の排尿量は少なく、排尿時に怒責し、声を出して鳴くこともあります。また、膀胱炎の犬は残尿感があるのでしばしば排尿姿勢をとりますが、おしっこはほとんど出ません。
膀胱炎の犬のおしっこは、白濁したり色が濃くなったりし、出血があれば血液が混じることもあります。
単純な膀胱炎であれば、検尿してその結果から有効な薬を選び、最低2~3週間程度投薬します。慢性膀胱炎の犬なら、5週間以上治療が必要になることもあります。
投薬後、数日経ってからまた検尿を行い、炎症がなくなったことを確認して治療終了です。
◆おしっこから分かる、犬の尿路結石症
犬の尿路とは、尿が生成されてから体外に排出されるまでの一連の経路を指します。腎臓、尿管、膀胱、尿道です。
また、結石とは、食餌や水などから摂取されるカルシウム、マグネシウム、リン、尿酸、ケイ酸などのミネラル成分が、尿中のタンパク質などと結合して結晶化したもののことで、これらが犬の尿路に存在する状態を尿路結石症と言います。
結石の存在部位によって症状は様々ですが、おしっこの出が悪い、一回量が少ない、回数が多い、血尿などの排尿異常がほとんどです。尿路に結石があると粘膜が損傷し、炎症を起こします。
また、尿管や尿道をふさいで排尿障害を招き、膀胱破裂や尿毒症を誘発し、死に至る危険もあるので注意が必要です。
採尿したおしっこを検査した場合、犬のストルバイトとリン酸カルシウム結石ではアルカリ性、シスチン結石では酸性、尿酸アンモニウム結石では酸性~中性、シュウ酸カルシウム結石では酸性~弱アルカリ性を示します。
ただ、冷蔵保存や長期保存した犬のおしっこは結晶が生成されることがあるので、なるべく新鮮な尿で検尿しましょう。
◆おしっこから分かる、犬の糖尿病
犬の糖尿病は、膵臓から分泌されるインスリンの作用不足に基づく代謝性疾患です。
好発犬種は、ダックスフンド、プードル、テリア、ゴールデンレトリーバー、ジャーマン・シェパードなどが挙げられ、7~10歳の成犬から老齢犬に多く見られます。
糖尿病の犬は多飲多尿がみとめられ、食欲の増加に関わらず体重は減少します。血中の糖が増え、腎臓で処理しきれずに尿中へ糖が排出されます。大量の糖を排出するためにおしっこの量が増え、のどが渇き、多量の水を飲みます。
犬の糖尿病で検尿から尿糖を調べる場合、空腹時(食餌から2時間以降)の検尿が望ましいとされています。
尿糖の検査はおおざっぱなものなので、これにより尿糖が発見された場合、血糖の検査も必要です。
◆おしっこから分かる、犬の腎臓病
犬の慢性腎不全は、両側あるいは片側の腎臓の機能的及び/あるいは構造的な異常が3か月以上継続している状態を指します。
症状が進行するにつれて、多飲多尿、体重減少、食欲不振が表れますが、飼い主さんが異常に気が付くころにはかなり腎臓の機能が失われていることがほとんどです。
犬の慢性腎不全の進行は4つのステージに分類され、ステージ1の犬ではやや尿比重が低い程度の症状しか表れません。
ステージ2から多飲多尿が見られ、腎機能の低下からおしっこが濃縮できなくなり、薄いおしっこを大量にするようになります。
ステージ3の犬では尿毒症が進み、食欲低下や嘔吐が見られるようになり、飼い主さんが異変に気付くのはこのあたりです。
ステージ4では、積極的な治療がなければ生命維持が難しくなります。
犬のおしっこの採尿方法は?
自宅での犬の採尿が難しい場合には動物病院で採尿することもできますが、お腹を強く押す、尿道にカテーテルを入れる、お腹に針を刺すなど、多少なりとも苦痛を伴います。
自宅での採尿は犬に一番負担をかけないやり方ですので、いざという時に困らないよう、犬の採尿方法を確認しておきましょう。
自宅で犬の採尿をする場合、方法は色々ありますが、大きく分けて2通りあります。犬の排泄中に直接採尿する方法と、排尿し終わったおしっこを採尿する方法です。
◆直接採尿する方法
犬の排尿中に直接採尿する方法では、犬がおしっこをする体勢になった時を見計らって容器を差し出し、直接おしっこを受け止めます。
容器は清潔であれば何でもOKです。スーパーでお肉が入っているような白いトレーや、紙コップ、深めの紙皿、おたまなど、飼い主さんが使いやすいものを選んで構いません。
くれぐれも、新しいものか、良く洗って乾かした清潔なものを使ってください。
飼い主さんが気負って犬を凝視したり緊張感を出したりすると、犬は異変を感じていつも通りおしっこをしないことがあります。おしっこをし始めた途端に勢いよく容器を差し出したりしても、犬が驚いておしっこを止めてしまうことがありますので、あくまでさりげなく採尿することが重要です。
◆排尿し終わったおしっこを採尿する方法
2つめは、犬が排尿し終わったおしっこを採尿する方法です。
ペットシーツでおしっこをする犬であれば、ペットシーツを裏返して、ツルツルの面を上にしておきます。おしっこは吸収されずにペットシーツの上に溜まりますので、スポイトを使うなどして清潔な容器に移します。
この時、犬が排尿の後におしっこを踏んでしまわないように注意してください。
採尿したおしっこはできるだけすぐに病院に持参し、検尿をしてもらいましょう。採尿から検尿までに時間があいてしまう様であれば、冷蔵庫で保管し、その旨を獣医師に伝えてください。
犬のおしっこの検査方法は?
◆どのくらいの量のおしっこが採取できればいい?
基本的な犬の検尿では、おしっこ10ml程度あれば十分検査ができます。もしそれよりも少ない量しか採尿できなかったとしても、検尿できる場合もあります。
犬のおしっこは、色や透明度、臭いなども重要な検査項目になりますので、少量しか採尿できなかった場合でも、病院に持参しましょう。
◆なるべく新しい状態で持っていく
採尿した犬のおしっこは、量だけでなく鮮度も重要です。古いおしっこでは検査結果が正確に出ない場合もありますので、採尿後すぐに病院に持っていけない場合には冷蔵庫で保管し、その旨を獣医師に伝えましょう。
◆犬の検尿の検査手順
飼い主さんが採尿した犬のおしっこは、まず色や透明度、臭いなどがチェックされます。
尿の色の濃さは尿自体の濃さを示しており、脱水状態であれば色が濃く、多飲多尿であれば色が薄くなります。膀胱や尿道などで出血あれば、色は赤く、もしくは濁って見えることがあります。尿が白濁している場合、結晶や脂肪の増加が考えられます。
次に、専用の試験紙や屈折計を使って、尿の科学的性状を測定していきます。PH、タンパク、潜血、ビリルビン、尿糖、ケトン、尿比重などです。
尿の酸性度を示します。結石や結晶がある犬では、その種類によって酸性度が変わります。
異常値が出た場合、尿路感染症や腎臓病が疑われます。
出血や溶血の指標となり、尿路感染症による膀胱や尿路での出血が疑われます。
胆管道系や溶血性疾患の指標となり、黄疸の有無や肝機能の精査が推奨されます。
尿糖の異常は高血糖や糖尿病の可能性を示唆するため、血液検査による精査が勧められます。高血糖は糖尿病だけではなく、副腎皮質機能亢進症や膵炎、腎不全、肝炎、または発情期、食餌後、ストレス時などにも見られます。
ケトン体の異常値は、糖尿病、飢餓、絶食などが原因となります。
屈折計で測定し、水を基準の1.000として尿の濃縮を示します。犬の尿の基準値より値が高ければ脱水などが考えられ、低ければ腎機能の低下が疑われます。
各項目の測定が終わったら顕微鏡で鏡検していきます。
鏡検では、赤血球、白血球、上皮細胞、結晶などをチェックします。結石は成分によって形が違うため、鏡検によって判別することができます。
炎症や出血の有無や結晶成分の他、稀に悪性細胞が検出され尿路系の腫瘍が見つかることもあります。
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