1.盲導犬とはどんなワンちゃん?
1-1.盲導犬は、目に障害を持つ人のサポートをする
1-2.盲導犬候補の子犬から盲導犬になるまで
1-3.盲導犬を引退するとき
3.ラブラドールレトリバーが盲導犬に選ばれる理由
3-1.攻撃性がなく、穏やかな性格だから
3-2.人間が好きでコミュニケーション能力が高いから
3-3.大型犬なのにかわいいから
3-4.賢い、集中力がある、順応性が高いから
3-5.体の大きさがちょうどいい
3-6.被毛のお手入れが難しくないから
盲導犬とはどんなワンちゃん?
盲導犬は、目が不自由な人にとっては、毎日を安心して過ごすためには欠かせない大切なパートナーです。
盲導犬は今では広く知られていますが、「盲導犬がどんな働きをするのか」「どんな経緯で盲導犬になるのか」について具体的に分からないという人も多いのではないでしょうか。
まずは、盲導犬について、見ていきましょう。
◆盲導犬は、目に障害を持つ人のサポートをする
盲導犬をパートナーにする人は、視覚に異常があります。
音や気配などを感じ取ることはできるかもしれませんが、「目が見えない」「物がはっきり見えない」「かなりぼやける」など、自分だけでは安心して歩くことが難しいです。
その歩行を助けてくれるのが盲導犬たちです。
盲導犬は「目的地に連れて行ってくれる」のではなく、目的地までの道中において、「危険な箇所を教えてくれる」というサポートが主な仕事です。
段差や障害物、曲がり角、交差点などがあれば、その都度教えてくれます。
盲導犬は、目の不自由な人の歩行が快適で安全に導いてくれているのです。
◆盲導犬候補の子犬から盲導犬になるまで
盲導犬の候補として生まれた子犬は、生後2か月まではお母さんや兄弟たちと家族水入らずで、盲導犬候補達が暮らす施設で生活を共にします。
その後、1歳になるまでは、社会化のためにボランティアの「パピーウォーカー」の一般家庭のうちへ。
「人間からの愛情」や「人間への信頼感」、「人間社会のルール」をたくさんの経験のなかで学習していきます。
1歳になって訓練センターに戻った後にはいよいよ訓練がスタート。
盲導犬になるための本格的な訓練が始まります。
何度かの適正評価において、「盲導犬に適している」と判断されたワンちゃん達が実際に盲導犬になっていきます。
◆盲導犬を引退するとき
パピーウォーカーのもとから離れた1歳の頃からは「訓練センターでの訓練」「目の不自由な人との共同訓練」をします。
それらを経て、2歳頃には盲導犬として活躍することになります。
そして、8年ほど盲導犬として働いた後には、引退の日がやってきます。
引退した後には、新しい家族のもとや、引退犬の仲間達がいる施設などで、ゆったりとした生活を送ることになります。
生涯を盲導犬として過ごすのではなく、最後の何年かは普通のワンちゃんと同じような暮らし方ができるのですね。
盲導犬で多い犬種
盲導犬や介助犬、聴導犬の育成や認定をしている団体「日本補助犬協会」によると、盲導犬および介助犬など補助犬のほとんどがラブラドールレトリバーとのことです。
「盲導犬と言えばラブラドールレトリバー」とイメージする人が多いのは、そもそもたくさんのラブラドールレトリバーが盲導犬として活躍しているからなのですね。
そのほか、ゴールデンレトリバー、ラブラドールレトリバーとゴールデンレトリバーのミックスなどが少数いるようです。
ラブラドールレトリバーが盲導犬に選ばれる理由
動物のなかでも、犬は賢いと言われています。
しかし、「頭が良い」だけでは盲導犬になることはできません。
「人間が好き」「いろんなシーンへの順応性が高い」「集中力がある」「攻撃的にならない」などの条件を満たすことが求められます。
ラブラドールレトリバーが盲導犬に選ばれる理由について、いくつか紹介していきます。
◆その1:攻撃性がなく、穏やかな性格だから
盲導犬は、いろんな物や場所、動物、人間に出会います。
目の不自由な人の目となるため、公共交通機関に乗ることもあれば、さまざまな施設に一緒に入ることもあります。
一般的なペットの犬と比べると、見知らぬ人間に出会う機会は多いため、攻撃性がないことが求められます。
ラブラドールレトリバーはとても温和です。
基本的に穏やかで落ち着いているので、周囲に攻撃的な態度をとることはほぼないでしょう。
◆その2:人間が好きでコミュニケーション能力が高いから
盲導犬には、人間に愛情を持てる犬が向いています。
ラブラドールレトリバーは、警戒心はあまりありません。
大型犬ですが番犬的な役割はあまり期待できない心優しいワンちゃんなのです。
犬や猫、知らない人間ともフレンドリーに接することができるおおらかな性格。
お年寄りや子どもなど、老若男女問わず触れ合うことができるコミュニケーション能力の高さです。
ラブラドールレトリバーが盲導犬として活躍する大きな理由は、誰とでもコミュニケーションを取れる人懐こさからでしょう。
◆その3:大型犬なのにかわいいから
道路、乗り物や建物など、盲導犬はさまざまな場所に出入りすることになります。
周囲の人を怖がらせることなく、盲導犬としてのお仕事ができることが求められます。
しかし、街を歩く人のなかには「犬が苦手…」という人もいますよね。
そのため、見た目の柔らかい印象の盲導犬が向いていると言えるでしょう。
かつては、シェパードのように見た目がワイルドな盲導犬もいました。
細身で筋肉質、立ち耳で凛々しい外見でも、「賢い・主人に忠実」という性格の素敵なワンちゃんです。
ただ、日本では、ラブラドールレトリバーのように温和な顔立ちをした犬種が選ばれる傾向にあるようです。
ラブラドールレトリバーは体が大きいものの、垂れ耳で愛嬌のある顔立ちをしています。
街中に盲導犬として働いているラブラドールレトリバーがいても、怖がられることはないでしょう。
むしろ、その健気で一生懸命な様子に、微笑ましい表情で見守ることができるのではないでしょうか。
◆その4:賢い、集中力がある、順応性が高いから
全ワンちゃんのなかでも、ラブラドールレトリバーの賢さは上位にランクインするほどです。
いろんな状況に順応し、臨機応変に対応できる頭脳の持ち主と言えるでしょう。
盲導犬は、毎日同じ状況を過ごすわけではありません。
いつもと違った状況においても順応性が高いところも、ラブラドールレトリバーが盲導犬として選ばれる理由なのかもしれませんね。
また、訓練を重ねていくための集中力も必要です。
ラブラドールレトリバーは、好奇心旺盛なところもあって、人間との遊びが大好きです。
訓練をするときにも、喜びながら取り組んでくれる傾向にあります。
盲導犬までの道のりは長いです。
さまざまな訓練や厳しい審査をクリアするには、ラブラドールレトリバーの優秀さがぴったり合っているのですね。
◆その5:体の大きさがちょうどいい
盲導犬とは「主人を安全に導く」という役割があります。
しかし、体が小さ過ぎると、人々の目線よりも下になってしまいがち。
周囲から気づかれにくく、事故のリスクが高まってしまいます。
それに、「盲導犬として働いています」と周りに知ってもらわなければいけません。
ラブラドールレトリバーくらいの大きさなら、パッと見た瞬間に気づかれやすく、「盲導犬として働いているのだ」と、周りの人がすぐに察知できますね。
また、盲導犬はハーネスを体につけ、目の見えない人を誘導します。
しかし、小型犬だとハーネスの位置が低くなり過ぎてしまい、ハーネスが持ちにくくなってしまうでしょう。
さらに、目の不自由な人が盲導犬の体を触ることがありますが、小型犬だと立ったまま触れることができません。
ラブラドールレトリバーの大きさなら、手で触れやすいですね。
それに、主人の足元に立っているときや、動いたときにも、ラブラドールレトリバーのように大きな体の場合なら、気配が感じやすいものです。
盲導犬として動くには、ラブラドールレトリバーほどの大きさがぴったりなのです。
◆その6:被毛のお手入れが難しくないから
盲導犬は目の不自由な人と共に暮らすことになります。
そのなかで、被毛のお手入れもしてもらわなければいけません。
ただ、長毛種のように毛が長いと、どうしてもお手入れに手間がかかってしまいます。
長い毛のワンちゃんは、お外に出たときに汚れがつきやすいものですよね。
毎日のブラッシング、頻繁なシャンプーなど、盲導犬のお手入れをする時間が負担になってしまうかもしれません。
そのため、盲導犬に適しているのはラブラドールレトリバーのようにお手入れがしやすい犬種と言われています。
ラブラドールレトリバーはダブルコートで換毛期には抜け毛が気になるものの、短毛ですからブラッシングの時間が短くて済みます。
ふだんのお手入れはしやすいでしょう。
また、水鳥を捕獲するための猟犬として活躍していた歴史もあるので、水に強い被毛です。
適度な油分で覆われ防水性もあり、シャンプーをあまり苦手にしない傾向にあり、お手入れがしやすいワンちゃんと言えるでしょう。
盲導犬になれないラブラドールレトリバーもいる
ラブラドールレトリバーだからといって、必ずしも盲導犬になれるわけではありません。
盲導犬になるには、たくさんの種類の動作を覚える訓練があり、訓練期間も長めです。
さらに、訓練ではスムーズにできたのに、いざ実践に近い環境で試験を受けても、訓練の成果を発揮できないケースもあります。
盲導犬になるためには、3回の評価(試験)をクリアしなければいけませんが、実は、3度の試験に通過して盲導犬になれるのは、わずか3~4割ほど。
訓練を受けたからと言って、盲導犬になれないラブラドールレトリバーもいるのです。
総合的に見てラブラドールレトリバーは盲導犬にぴったりの特徴や性格ですが、個体によって性格には差があります。
盲導犬には向いていないラブラドールレトリバーもたくさんいるのです。
盲導犬はお仕事中~見かけたときには見守ろう
かわいい表情で真剣に盲導犬のお仕事をしているラブラドールレトリバーを見ると、「かわいい」「頑張って」と思わず声をかけてあげたくなるかもしれません。
あまりにも健気な様子に、盲導犬の目をじーっと見つめてしまいそうにもなるでしょう。
しかし、彼らは主人の安全のために一生懸命に任務を果たしている途中。
誰かが声をかけたり触ったりすると、集中力が奪われてしまうかもしれません。
近くでじーっと見つめられると、気が散って、こっちを見てしまうこともあるでしょう。
ちょっとした気の緩みが、盲導犬ユーザーである目の不自由な人の危険に繋がっては大変です。
盲導犬の集中力を途切れさせないように、遠くから見守るスタンスでいたいものです。
まとめ
ラブラドールレトリバーは穏やかで賢いワンちゃん。
一般家庭のペットとしても愛される犬種ですが、順応性や賢さ、社交性などから盲導犬にも選ばれることが多いです。
短毛でお手入れがしやすいのも、理由のひとつのようです。
ラブラドールレトリバーは大型犬でも温和な表情をしています。
盲導犬として歩いているラブラドールレトリバーを見ると思わず駆け寄りたくなるかもしれません。
しかし、彼らは目の不自由な人たちの安全のために動いています。
集中力が切れて任務の邪魔になるかもしれないので、声をかけたり触ったりは止めましょう。
それが原因で事故に繋がるのは避けたいところです。
盲導犬として活躍するラブラドールレトリバーに出会ったら、心のなかで「頑張ってね」と遠目で応援したいものですね。
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