【獣医師執筆】愛犬・愛猫をリスクから守ろう。飼い主さんの不注意トラブル

2020.11.23

【獣医師執筆】愛犬・愛猫をリスクから守ろう。飼い主さんの不注意トラブル

犬・猫の病気や健康についてコジマの獣医師が教えてくれる「教えて獣医さん!」今回はコジマ動物病院にて年間300件もの来院理由にもなっている「誤飲・誤食によるトラブル」です。誤飲や誤食は子犬・子猫だけでなく癖がついてしまうと大人になっても中々やめることができないだけでなく、場合によっては命に関わることもあります。実際に来院された犬猫の例をいくつかご紹介していきたいと思います。

誤食は命に係わる危険なトラブルです

飼い主さんの不注意によって起きてしまうトラブルで圧倒的に多いのが誤食によるものです。
誤食とは食べ物ではない物や、犬・猫が食べると中毒を起こすようなものを食べてしまうことです。
誤食による症状は食べてしまった物によってさまざまですが1番多い症状は嘔吐です。吐かせて危険がない物であれば、吐かせる処置を行いますが、吐いてくれない場合は全身麻酔をかけて内視鏡を使って除去したり、開腹して胃や腸を切開して直接取り除く必要があります。
コジマ動物病院では年間約300件も誤食が原因で来院しており、そのうち約2割で内視鏡や胃切開、腸切開が必要となっています。その中で実際に起こった事例をいくつかご紹介いたします。

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▲10円玉を飲み込んでしまったワンちゃんのレントゲン写真

与えたままにして放置(目を離した)結果の誤食

◆あるワンちゃんの誤食事例

愛犬が前日の夜から何度も吐いているということで来院されました。血液検査やレントゲン検査では明らかな異常は見つかりませんでしたが超音波検査と造影レントゲン検査で胃と腸に異物がありそうだということがわかりました。内視鏡では取り除くことができず、最終的に開腹して胃を1ヶ所、腸を2ヶ所切開して異物を取り除きました。異物は沢山の小さなプラスチック片にひもが絡んで巨大化した物で、胃から小腸にかけて巻きついて腸を閉塞させていました。
飼い主さんによると、その異物はプラスチックのおもちゃとケージに入れていた毛布かもしれないとのことでした。腸や胃を切ると手術後に腹膜炎などの合併症の恐れがあり、入院中も油断はできません。順調に回復すれば少しずつおかゆなどから食事をはじめます。
この犬は無事退院できましたが、誤食の癖はなかなか直らないものです。今回のケースは愛犬がおもちゃを少しずつ誤食していたのを認識していたにも関わらず、小さな物なら便で出るだろうと油断していた結果起こりました。目を離す時はおもちゃを与えない、食べてしまうような物はケージに入れっぱなしにしないなど、普段から誤食の癖がある場合はより一層注意しなくてはなりません。

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◆ある猫ちゃんの誤食事例

猫ちゃんで注意したいのは、おもちゃや毛糸などの異物です。以前、誤食とは別の件で来院した猫ちゃんが偶然レントゲンで胃の中に2cmから3cm程度の影が見つかりました。症状はなかったものの内視鏡で胃内を確認したところ、プラスチックのネズミのおもちゃがまるまる見つかりました。
この猫の場合は内視鏡で摘出することができたので大事には至りませんでしたが、飼い主さんに確認したところ、数日前にそのおもちゃを買い与えいつの間にか行方不明になっていたとのことでした。今現在症状がなくても、時間が経ち異物が腸に詰まってしまうことではじめて症状が出ることもあるので注意が必要です。猫ちゃんは毛糸などの細い物体で遊んでいる時にずるずると全部食べてしまうことがあります。前述のワンちゃんのようにひも状の異物は場合によっては腸に絡みついて重篤な症状を示すこともあり特に気をつけないといけません。

◆誤食が原因で起こる症状

・繰り返す嘔吐
・下痢または便がでない
・元気がない
・食欲の低下

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※中には症状を隠す犬・猫もいるので、誤食をした全ての犬・猫がこのような症状が起こるとはかぎりません。また、別の原因で症状が起きている場合もあります。

体のサイズに合わない物を与えた結果の誤食

誤食の中には、食べることができる物でもカラダのサイズに合わない物を与えてしまい起こる事故も少なくありません。

◆あるワンちゃんの誤食事例

飼い主さんが大きなサイズのおやつを与えてしまい、それを急いで丸呑みして気管に詰まらせてしまった犬がいました。来院時には心肺停止状態で、助けてあげることができませんでした。同じようにガムをかまずに丸呑みして詰まらせてしまった犬・猫もいます。愛犬・愛猫が好きなおやつがふとした瞬間に事故を招くこともあるのです。

踏んでしまったことによって起きたケガ

誤食と並んで多いトラブルとして、飼い主さん自身が犬・猫を踏んづけてしまったり、落下させてしまうことでケガをさせてしまう事例です。

◆あるワンちゃんの事例

飼い主さんに後ろ足を踏まれてしまい、その後足をつけなくなったという犬が来院されました。レントゲンを撮ってみると踏んでしまった足先は何ともなかったのですが、踏まれた瞬間に犬が痛みで飛び上がってしまったのが原因で股関節が脱臼していました。股関節脱臼の場合、まずは外れてしまった関節を再度はめ直すのですが、この処置はとても痛いので基本的には全身麻酔をかけて行うことになります。
しかし、残念ながら麻酔をかけてはめ直してもまたすぐに脱臼してしまったり、そもそもはめ直すこと自体が困難であったりすることも多いのです。この犬も一度ははめ直すことができたのですが、すぐに再脱臼してしまいました。このままでは痛みが続いてしまうので、手術で脱臼してしまった大腿骨の一部を除去しました。人は人工関節が用いられるのですが体重の軽い犬・猫は人工関節を入れずにリハビリを頑張ることで通常通り歩行が可能になるケースが多いのです。この犬も現在はとても元気に走り回っています。

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脱走によるさまざまなリスク

◆ある猫ちゃんの事例

飼い主さんがお出かけされる時に愛猫が扉の隙間から外に脱走してしまい数日見つからず、ようやく発見した時には傷だらけでした。幸いにも交通事故などではなく他の猫と喧嘩をしたために負った傷であろうことがわかりましたが、車に轢かれてしまうことも十分考えられますし、喧嘩などで他の野良猫などから感染する感染症などもあります。さまざまなリスクを考えて脱走しない環境を作り、注意をすることが大切です。

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ペットの命を守る環境づくりを

犬・猫は会話でコミュニケ―ションを取ることもできませんし、人がすべての動きをコントロールするのは不可能です。だからこそ、飼い主さんはそれぞれのペットの特徴を把握しそれぞれの性格を考え、誤食や脱走をさせないような工夫や気配りが必要です。
今回ご紹介した症例はどれも飼い主さんがちょっと気をつければ、回避することができたものばかりです。痛い思いや苦しい思いをするペットが少しでも減るようにペットと暮らす住環境を見直してみてはいかがでしょうか。

●記事執筆
drogura__large  コジマ動物病院 獣医師

ペットの専門店コジマに併設する動物病院。全国に14医院を展開。内科、外科、整形外科、外科手術、アニマルドッグ(健康診断)など、幅広くペットの診療を行っている。

動物病院事業本部長である小椋功獣医師は、麻布大学獣医学部獣医学科卒で、現在は株式会社コジマ常務取締役も務める。小児内科、外科に関しては30年以上の経歴を持ち、幼齢動物の予防医療や店舗内での管理も自らの経験で手掛けている。
https://pets-kojima.com/hospital/

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コジマ動物病院 Dr.小椋

コジマ動物病院 Dr.小椋

動物病院事業本部長である小椋功獣医師は、麻布大学獣医学部獣医学科卒で、現在は株式会社コジマ常務取締役も務める。小児内科、外科に関しては30年以上の経歴を持ち、幼齢動物の予防医療や店舗内での管理も自らの経験で手掛けている。 https://pets-kojima.com/hospital/


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