1.オールドイングリッシュシープドッグの歴史
2.オールドイングリッシュシープドッグの特徴
2-1.外見
2-2.被毛(毛色など)
オールドイングリッシュシープドッグの歴史
頭文字を取って『OES』と呼ばれることも多い、「オールド・イングリッシュ・シープドッグ」。
原産国がイングランド(イギリス)で、名前にオールドイングリッシュと付いてはいますが、その歴史は実は比較的新しいのです。18世紀後半から19世紀の文献に、初めてそれらしい犬が登場しているそうですよ。
オールドイングリッシュシープドッグと外見が似ていて小型バージョンとも思えるビアッデッド・コリーと、イギリス土着の犬、あるいはヨーロッパ大陸・ロシア由来の犬など、複数の犬種との交雑によって生まれた犬だと推測されているのですが、明確化はされていません。
オールドイングリッシュシープドッグには、「しっぽが短い」を意味する『ボブテイル』という別名があります。しかし、生まれつき尾の短い個体は大変少なく、多くは断尾されてきたのです。
断尾は通常、猟犬・作業犬などが仕事中に怪我をしないように、闘犬が相手に尾を食いちぎられないように、といった目的からされてきたものですが、オールドイングリッシュシープドッグの場合、少々事情が違います。
オールドイングリッシュシープドッグは、牧羊犬・牧畜犬として働いてきました。家畜を追って移動させたり、護送するための使役犬だったのです。19世紀のイギリスでは、作業犬を所有することに税金がかからないとされていました。そのため、ペットとの違いを分かりやすくするための目印として、尻尾が短くカットされていたのです。そこからボブテイルというあだ名が付いたといわれています。
1873年のイギリスのドッグショーに、オールドイングリッシュシープドッグは初めて出展されました。そして19世紀末にはアメリカへ輸出されて、20世紀始めの頃には人気犬種への仲間入りを果たします。
ミュージカル映画「アニー」への登場や、日本や海外の企業CMでの起用、マスコットキャラクターに採用されるなど、各メディアで取り上げられたことから、安定した人気を現代でも保っている犬種だといえるでしょう。
オールドイングリッシュシープドッグの特徴
大きなぬいぐるみのようにも見える、愛らしい姿をもつオールドイングリッシュシープドッグ。
成犬となっても子犬の頃の面影をもつその見た目が、最も特徴的な犬種だといえます。
その魅力的な姿を形作る、外見や被毛について詳しく紹介していきましょう。
◆外見
オールドイングリッシュシープドッグは、スクエア体型で体長と体高がほぼ同じ長さ、そして胴体では肩よりも腰の方が高い、足長タイプのプロポーションをしている大型犬です。
体高は約56~61cm、体重は約25~40kg程度が標準だといわれています。ちなみにJKC(ジャパンケネルクラブ)では、オスの体高は61cm、メスは56cmを理想としているようですよ。
肩よりもお尻の方が張っているのでシルエットが、ウエストを中心に洋ナシのような形をしているのも特徴的なポイントの一つですね。
右手と右足、左手と左足など同じ側の手足を同時にあげて歩く「側対歩」という歩き方をするので、歩く様子が独特で身体を揺らすように前進する個体が多いでしょう。
頭部は大きくてストップがあり、目の色は濃い方が好ましいとされているそうです。
尻尾は歴史的に断尾されてきた犬種なのですが、近年では動物愛護意識の高まりと、毛量から尻尾が見えずらいという点から、家庭犬として断尾されないケースも増加しています。
太く響くような声で吠えるので、その吠え声からも独特さを感じるでしょう。
◆被毛(毛色など)
被毛は、上毛と下毛をもつダブルコートで、長毛です。大型犬のダブルコート犬種なので、抜け毛が多く、しっかりと被毛の手入れをすることが飼育条件の一つとなるでしょう。
可能であれば毎日、少なくとも週に3~4回以上のブラッシングやコーミング、定期的なシャンプーが必要不可欠です。
顔にかかる被毛は伸ばされる傾向にありますが、日常生活に支障をきたすようであれば、リボンやゴムなどで留めたり、分け目をつけてあげるなどして、視界を確保してあげるとよいでしょう。
毛色は、胴体がグレー・グリズル・ブルーを基調とし、さらに胸部・頭部・首・手足・下腹部にホワイトが広がっていることが基本となります。
オールドイングリッシュシープドッグの性格
陽気さと穏やかさをバランスよくもっているオールドイングリッシュシープドッグ。番犬には向いていないほど、人懐こい性格をしている個体が多いといわれており、子どもや他の動物などとも仲良くできる犬種としても挙げられます。
さらに、飼い主さんをよく見て行動する、飼い主さんの求めていることを理解できる、といった賢い犬ともいわれていますよ。
しかし、祖先は家畜を追い込む仕事をしていたことから、攻撃的な本能がみられる場合もあるでしょう。子犬の頃からしっかりとしつけをすることで、きちんとコントロールできるように備えてくださいね。
顔が被毛で覆われていて表情が見えにくく、尻尾がない場合もありますので、感情を察するのが初めの内は難しいかもしれません。犬が防衛本能を露わにしないように、ファーストコンタクトには十分気を付けて接触することを心掛けてくださいね。
オールドイングリッシュシープドッグの気を付けたい病気
被毛の特徴としても紹介した通り、オールドイングリッシュシープドッグは長毛のダブルコートをもつ犬種です。特にアンダーコート(下毛)には水をはじく性質があるため、メンテナンス不足によって皮膚疾患が引き起こされる可能性があります。
特に高温多湿の季節には、注意深く配慮することが必要です。こまめにブラッシングを行い、しっかりと皮膚まで通気させることが重要ですよ。皮膚病を見逃さないように、毎日チェックしてあげてくださいね。
耳も長毛によって隠れているため、外耳炎にもなりやすい傾向にあります。こちらもあわせて定期的なケアを行いましょう。
皮膚病以外にも、遺伝的な疾患の傾向として心臓疾患が挙げられます。子犬~高齢犬まで、広い世代でかかるもので、特に「三尖弁閉鎖不全症」「拡張型心筋症」の報告が多いそうです。
さらに遺伝的なものとしては、「進行性網膜萎縮症」「白内障」などの目の病気を発症しやすいともいわれています。
また、大型犬が発症しやすいとされる「股関節形成不全症」「胃捻転」などにも注意が必要です。
そして、高齢化が原因となる元気消失や脱毛、肥満を招く「甲状腺機能低下症」にもかかりやすい犬種としてもオールドイングリッシュシープドッグは該当します。
何らかの身体的異常や症状、普段と変わった気になる様子がみられた場合は、早めに動物病院を受診し、獣医師に相談してみましょう。
オールドイングリッシュシープドッグの価格
オールドイングリッシュシープドッグは人気犬種ではありますが、珍しい部類にも入るので中々目にすることは少ないでしょう。ペットショップで見掛けたり、里親として迎え入れることができる可能性も低いのが現状だといっても過言ではありません。
ブリーダー自体も多くはないですが、やはり確実なのはブリーダーから購入する方法だといえます。
価格相場は約25~45万円程といわれていますが、血統や年齢などによって大きな差があります。
まずはオールドイングリッシュシープドッグのブリーダーを探し、問い合わせることが近道です
オールドイングリッシュシープドッグの飼い方
適応能力に優れているオールドイングリッシュシープドッグ。前述したように、子どもや他の動物とも仲良くできる可能性の高い犬種だといえます。
孤独が嫌いで、家族の中で生活することを好む犬であるため、室内飼育がすすめられます。毎日運動の時間をしっかりとることができるのであれば、そこまで広い家でなくても飼うことはできるでしょう。
被毛の手入れには、十分な時間が必要です。長く絡まりやすい毛質なので、こまめなブラッシングやグルーミングを行わなければ、部屋中の汚れを被毛が吸着してしまうでしょう。室内をキレイに保つことはもちろんですが、併せて被毛の手入れにも力を入れてあげましょう。
その他、オールドイングリッシュシープドッグを飼育する上では、散歩・食事・しつけも大切です。それぞれどのような注意点があるかみていきましょう。
◆散歩
大型犬でやや太りやすい傾向のあるオールドイングリッシュシープドッグには、毎日の散歩が必要です。
1日2回以上、合計1~2時間以上の散歩が最も望ましいといわれています。年齢が若い頃には、ボール遊びや引っ張りっこ遊びなどを沢山取り入れて、運動させながら遊ぶ習慣をつけるとよいですね。
元々は牧羊犬として活躍していた犬種です。多くの運動を必要とする活発な犬種であるということを忘れないようにしてください。定期的にドッグランや広い公園など、思い切り走れる場所へ連れて行ってあげるのもおすすめです。
運動不足はストレスの原因ともなり、家具の破壊などの問題行動を起こすことにも繋がりますよ。
ただし、暑さには弱い犬種です。特に夏などの季節は屋外での運動を制限するなどして、熱中症に注意する必要もあるでしょう。エアコンをきかせた室内で身体を動かすなど、室内環境にも十分配慮してあげましょう。
気温の高い日は、涼しい早朝や夕方などを、散歩時間として選択することも大切ですね。
さらにもう一つ注意したいのは、関節が完全に形成される(2歳頃)までは、可能な限り芝生などの上で遊ばせたり、運動させるということです。硬いアスファルトの上で、激しい運動などをさせるのは避けてください。
◆食事
オールドイングリッシュシープドッグは、最初の1年で約27kgも体重が増える犬種です。特に4~7ヶ月の間は成長速度が非常に速いため、おやつを与えすぎて太らせないように注意することが大切です。
成犬となると体重は45kgを超える場合もあります。肥満に注意しつつ、成長に必要な栄養を与えることを念頭に置きましょう。
ドッグフードには、穀物や添加物の少ない良質で高タンパク、低カロリーなものを選ぶことがおすすめです。犬の寿命が近年では大幅に伸びてきているのですが、この大きな要因として食事内容の変化が挙げれています。高品質なドッグフードを毎日食べることで、犬の健康が維持されているといっても過言ではないのです。
現在では豊富な種類のペットフードが販売されていますよね。年齢に合わせたものや、特化した栄養素がとれるもの、そのサイズ感など、愛犬にとって適切なものを選択して与えてあげましょう。
◆しつけ
オールドイングリッシュシープドッグは、かつては気性の激しい系統があった犬種ともいわれています。しかし、近年では育種家の努力によって、落ち着いた犬が増えているのです。
人懐こい性格の子が多いですが、頑固な面も持ち合わせています。そのため、しつけがやや難しいと感じる個体も少なくないようです。
大型犬のため、しつけやトレーニング不足では、日常生活に大変な思いをしてしまう可能性が大いにあります。子犬の頃から基本的なしつけはもちろん、生活のルールや社会性を身に付けることにも、きちんと取り組む必要があるでしょう。
まとめ
イギリス原産でモコモコの可愛らしい外見をもつ、オールドイングリッシュシープドッグ。
しっかりとしつけをすれば、子どもとの相性も良い家族の一員として、生活に幸せと心の潤いを感じさせてくれるパートナーともなり得る犬種です。
運動や被毛のケアには十分な時間をかける必要があります。家族として迎え入れる場合は、しっかり飼育できる環境を用意したり、時間を作るための準備を進めてくださいね。かかりやすい病気についても、事前にじっくりと調べておきましょう。
とっても魅力的なオールドイングリッシュシープドッグ。興味のある方は是非、愛犬として迎え入れることを考えてみてください!
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