【獣医師監修】犬の精神疾患4つについて症状や対処法を紹介|問題行動との違いも

2022.01.27

【獣医師監修】犬の精神疾患4つについて症状や対処法を紹介|問題行動との違いも

犬はとても頭が良く私たち人間に対して情が深い動物ですが、賢いがゆえに生活や周囲にストレスを感じ、精神疾患にかかる場合もあります。 今回は犬の精神疾患である常同行動、うつ病、分離不安、恐怖症について解説します。 問題行動との違いや、愛犬がより生きやすくなるために対策も紹介していますので、ぜひ最後まで読んでみてくださいね。

犬の精神疾患について

ワイマラナー

数多くのペットの中でも賢い犬は人間と同じようにストレスを感じ、精神疾患を発症することがあります。
遺伝によりセロトニンなどの神経伝達物質がうまく脳に伝わらないことで異常行動を起こす場合もありますが、精神疾患の原因として多く考えられているのはストレスです。
ストレスにより脳の働きが変化し、行動や感情などに偏りが見られさまざまな行動を起こします。
飼い主さんは直接愛犬からストレスの原因を聞くことはできないため、普段の行動や体調の変化などから察することが大切です。
精神疾患を知り、具体的な症状や対策を見ていきましょう。


犬の問題行動と精神疾患の違い

具体的に精神疾患を見ていく前に、問題行動との違いはどこにあるのでしょうか。
犬の問題行動とは吠えてうるさいと感じたり噛みついてケガをさせてしまったりと、人間が問題だと感じることが定義です。
また問題行動は犬自身がこの行動をしたいと思って行うものですが、精神疾患はストレスなどによりどうすることもできない行動のため、自分では止められません。
どちらも原因を突き止めて対処が必要ですが、特に精神疾患の場合は心にダメージを負っているぶん慎重になる必要があります。
犬の精神疾患について代表的な常同行動、うつ病、分離不安、恐怖症について見ていきましょう。


犬の精神疾患①常同行動(強迫性障害)

常同行動とは強迫性障害とも呼ばれる精神疾患で、文字のごとく同じ行動を常に繰り返してしまう疾患です。
原因や具体的な症状、対処法を見ていきましょう。

◆原因

常同症状の原因としては以下のものがあります。

・不満や不快感がある
・精神的に不安定である
・刺激を求めている

一例ですが、上記の具体的な原因として飼い主さんとのコミュニケーション不足による不満や部屋の温度が暑いなどの不快感、引っ越しや家族が増えたなどの環境の変化による不安、遊びや運動が足りないなどが挙げられます。
原因をしっかりと言葉にして伝えることのできない犬は、欲求を昇華できずに同じ行動を繰り返し、自らを落ち着かせようとしているのです。

◆症状

具体的な常同行動の症状としては、以下のものがあります。

・自分の体の一部を舐める、噛む
・自分の尻尾を追いかけ回す
・口をパクパクさせる
・何もないのに何度も後ろを確認する

人間もストレスによる行動は頭を掻く、瞬きが多くなるなど違いがあるように、犬も常同行動に個体差が見られます。
たかがこれだけの症状ならば心配ないと思う飼い主さんもいますが、酷くなると脱毛して血が滲んでいるのに舐め続けていたり、尻尾を噛んで先端がちぎれているのに追いかけ回していたりする場合もあるのです。
痛みを感じて止めたくても止められないことが、強迫性障害の名前にも繋がっているのでしょう。
行動をしている愛犬だけでなく、見ている飼い主さんも辛いため、常同行動が確認できたらなるべく早く対処することが大切です。

◆対処法

情動行動の対処法は、ストレスの解消や好きなことをさせてあげることが効果的です。
常同行動を確認する前に、ストレスの原因となるような変わったことがなかったか確認しましょう。
また散歩が好きな犬にはドッグランに連れて行き思い切り走らせてあげたり、オヤツが好きな犬には普段のオヤツに特別な物を加えたり、喜びを感じる環境を整えることでストレスを感じにくい精神状態へと持っていくことも大切です。


犬の精神疾患②うつ病

うつ病とは脳のエネルギーが不足して、肉体や精神にさまざまな影響を及ぼす病気です。
ひと言で説明するのは大変難しい疾患ですが、時間が経っても症状の改善が見られない、または悪化する場合はうつ病と考えられます。
うつ病の原因や症状、対処法を見ていきましょう。

◆原因

人間においても同じように、うつ病の原因はひとつではなく、環境や性格、遺伝などさまざまな要因が重なっている場合が多いといえます。
まず考えられるのは環境的要因で、例としては飼い主さんの死や離別、間違ったしつけにより叱られ続けている、犬にとって怖い思いをしたなどの経験です。
他の原因としては飼い主さんの機嫌を伺い関係を保とうとする優しい性格が知らずに心を圧迫していることや、感情に関係するセロトニンなどの神経伝達物がうまく脳に行き渡っていないことが考えられます。
こうしたさまざまな要因が複雑に重なり合い、うつ病の原因を作り出しているのです。

◆症状

うつ病の症状として、以下のものがあります。

・食欲の低下
・睡眠時間の増加
・呼びかけに対する反応が鈍い
・落ち着かずうろうろと歩き回る
・性格の変化
・人や犬に対し目を合わせず隠れる、触れ合いを嫌がるなど

上記の症状の前に今まで好きだったことに対して喜びを感じない、全力で楽しめないなどの前兆と見られる行動や、自信がなくなりストレスによる過剰な抜け毛が現れる場合もあります。
愛犬をよく観察し、以前と比べて行動の変化がないかを確認しましょう。

◆対処法

うつ病の対処法としては常同行動と同じく、ストレスを感じている場合は原因を取り除いたり、自律神経を整えるために優しく触れてマッサージをするように体を撫でたりすることも効果的です。
ただしうつ病は原因を取り除いたところですぐに治るものではありません。
うつ病は愛犬の行動を否定せず褒めて安心させることで、良くなったり悪くなったりと小さな波を繰り返しながら、徐々に改善へと向かっていく病気です。
飼い主さんはうつ病について理解して、愛犬をひとりにさせず一緒に過ごす時間を増やして寄り添っていきましょう。


犬の精神疾患③分離不安

分離不安とは飼い主さんや愛着を持っているものが離れる(分離する)ことにより不安を感じ、精神的や肉体的にさまざまな症状が出てしまう疾患です。
原因と症状、対処法について見ていきましょう。

◆原因

犬が分離不安をおこす原因として、常に飼い主さんと一緒に居すぎている場合と、飼い主さんがいないところで恐怖体験をした場合の2つが考えられます。
飼い主さんと一緒に居すぎている犬は常に自分の隣に飼い主さんがいる状況に慣れすぎて、少し離れただけで不安を感じてしまうのです。
また飼い主さんの留守中に以下のように恐怖体験をした場合も分離不安の原因となります。

・飼い主さんの留守中に大きな物音や地震、雷などが起こった
・遺棄された経験がある
・出かけた飼い主さんが帰ってこないのではないかという不安

他にも加齢などで目や耳の機能が落ちていく不安や認知症なども分離不安の原因と考えられています。

◆症状

分離不安の症状としては以下のものがあります。

・下痢や嘔吐
・吠え続ける
・破壊行動
・粗相
・自分の体を噛み続けるなどの自傷行為
・パニック

分離不安の犬は吠え続ける場合も可愛い声で少し泣くのではなく悲鳴のように叫びますし、破壊行動もイタズラのレベルではなく一心不乱に行います。
自傷行為も危険ですし、パニックで部屋中走り回る際にケガをする恐れもあるため、分離不安を確認したら対処法を実践していくことが大切です。

◆対処法

飼い主さんと一緒に居すぎている場合も離れることにより不安を感じる場合も、飼い主さんに依存させすぎないことが分離不安の対処法です。
愛犬が飼い主さんと離れても大丈夫な時間を一日数分つくるようにするだけで依存を和らげられるので、まずは短い間留守番させてみましょう。
留守番といってもいきなり何時間もさせるわけではなく、数十秒から1分程度ドアを閉めて犬をひとりにさせることから始め、徐々に時間を長くしていきましょう。
留守番が成功しても留守番できたことに対しては褒めず、あくまで留守番が当たり前だと認識させることが大切です。
ただし対処法を行う最中で少しでも症状が悪化するようであれば止め、無理せず行ってください。
最終的には飼い主さんがいなくても絶対に帰ってくるし置いて行かれないから大丈夫という安心感を定着させることが目的ですが、根気が必要です。
症状が酷い場合は精神安定剤を飲ませて落ち着かせるなど動物病院で治療を行う必要もあるため、かかりつけ医への相談してくださいね。


犬の精神疾患④恐怖症

恐怖症とは特定の対象や状況に対して恐怖を抱き、過剰な反応を示す病気です。
原因や症状、対処法を見ていきましょう。

◆原因

恐怖症の原因としては3~12齢の社会化期にいろいろな体験をさせられなかったり、雷や車、子供、動物病院などで強い恐怖体験をしたりすることにより起こることが考えられます。
恐怖心を感じているときになだめられる、怒られるなど恐怖を増幅させる刺激によって強化されていくのです。

◆症状

恐怖症の症状としては以下のものがあります。

・呼吸が荒くなる
・落ち着きなくそわそわして震える
・体を硬直させる
・隠れる
・粗相する

症状が酷くなればパニックを起こして思わぬケガを招く危険も考えられるため、対処法を実践して少しずつ恐怖症の改善を目指しましょう。

◆対処法

恐怖症の対処法としては以下のものがあります。

・原因となる恐怖の対象や状況を避ける
・症状が出ているときになだめたり怒ったりしない
・基本服従訓練をしっかりと行う
・症状が出なかったらしっかりと褒める

あえて恐怖を覚える対象や状況に愛犬を晒すのではなく、避けられるものならなるべく避けましょう。
回避できず症状が出てしまった場合はなだめたり怒ったりすると更に恐怖を煽ってしまうので、見つめすぎず構わず、症状が落ち着くのを待つことも大切です。
また指示をして飼い主に注目させることで恐怖をやり過ごせるように基本的なオスワリ、マテなどの服従訓練を行っておきましょう。
恐怖の対象に直面したときに症状が出なければ思い切り褒めることもポイントです。

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まとめ

今回は犬の精神疾患について問題行動との違いや代表的な4つの疾患に関しての原因や症状、対処法について紹介しました。
精神疾患ときくと気持ちの問題だと軽く考えてしまう飼い主さんもいますが、多くの原因や要因が絡まって自分では抑えられない症状を起こしてしまうため、適切な対処が必要です。
治療をしたからすぐ治るものではないと理解して、徐々に改善へと向かっていくよう寄り添って克服を目指していきましょう!

※こちらの記事は、獣医師監修のもと掲載しております※
●記事監修
drogura__large  コジマ動物病院 獣医師

ペットの専門店コジマに併設する動物病院。全国に15医院を展開。内科、外科、整形外科、外科手術、アニマルドッグ(健康診断)など、幅広くペットの診療を行っている。

動物病院事業本部長である小椋功獣医師は、麻布大学獣医学部獣医学科卒で、現在は株式会社コジマ常務取締役も務める。小児内科、外科に関しては30年以上の経歴を持ち、幼齢動物の予防医療や店舗内での管理も自らの経験で手掛けている。
https://pets-kojima.com/hospital/

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●執筆者情報
ライター情報
里中しほ

犬猫をはじめ動物が大好き。認定動物看護士資格も持ち、動物病院での7年間の勤務経験があります。これから、ペットと飼い主さんが素敵な関係を作れるお手伝いがしたいと考えています。



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