1.犬に食物繊維は必要?
1-1.犬にとっての食物繊維とは?
1-2.期待できる効果
1-3.腸内環境を整える
犬に食物繊維は必要?
食物繊維は三大栄養素の一つである炭水化物に含まれるもので、犬にとっても大切な栄養素だといえます。
人間にとっての食物繊維には、腸内環境を整えてダイエットにも効果的!というイメージがあるでしょう。実は犬にも同様の効果を期待できるのです。特に便秘や軟便など、便通や胃腸に悩みを抱える子にはもってこいの栄養素だといえます。
ただし摂取しすぎると下痢などの体調不良を招く原因ともなるため、適量を知ることが重要ですよ。
◆犬にとっての食物繊維とは?
炭水化物には食物繊維と糖質が含まれますが、他に三大栄養素と呼ばれる栄養素はたんぱく質と脂質です。
この、たんぱく質・脂質・糖質は、消化管から出る酵素によって消化される成分なのですが、食物繊維は消化されずに腸内生菌の発酵を受けることで短鎖脂肪酸となります。
ちなみに短鎖脂肪酸とは、脂肪の材料やエネルギー源になったり、pHを低下させて病原性細菌の増殖を抑える、といった働きをもつものです。ただし消化管が短い犬の場合エネルギー源となるのは5%以下で、草食動物にとっての重要なエネルギー源だといわれています。
犬の腸は動物性たんぱく質が豊富な食べ物の吸収が得意で、草食動物の様に腸が長く、微生物による発酵を利用して消化吸収する仕組みをもっていません。そのため、食物繊維自体は犬にとっては消化しにくい存在であるといえるでしょう。
しかし摂取方法に注意することで、体のコンディションを整えることに効果を発揮してくれる栄養素でもあるのです。
それでは実際に、食物繊維によってどのような効果が期待できるのかを詳しく紹介していきましょう。
◆期待できる効果
食物繊維には、水に溶けやすい「水溶性」と、水に溶けにくい「不溶性」、二つの種類があります。水溶性は水に溶けてゲル状になることで胃腸に溜まる特性が、不溶性は保水してフードや糞便をかさ増しする特性を持っています。それぞれ、また共通してもたらされる効果は以下の通りです。
◎水溶性食物繊維に期待できる効果
・胃に溜まることで満腹感を持続させる。
・過剰な水分を吸水することで下痢を改善する。
・LDLコレステロールの低下。
・増粘安定剤、ゲル化剤など、食品添加物として利用できる。
◎不溶性食物繊維に期待できる効果
・フードのかさ増しでダイエットに活用できる。
・糞便の保水や腸の動きを活発化することで、便秘を改善する。
◎期待できる効果の共通項目
・腸内細菌のエサとなって、腸内環境を改善する。
・食後の血統上昇を緩やかにすることで、糖尿病を予防する。
・腸内の病原性細菌を減らし、腸疾患やがんなどの病気を予防する。
・短鎖脂肪酸が、ナトリウムや塩素、水の吸収を促進する。
ちなみに繊維質にも種類があり、水溶性食物繊維に分類されるペクチンやグアーアムは腸内細菌による発酵を受けやすい食物繊維であり、不溶性食物繊維に分類されるセルロースには保水力が高いといった特徴があります。
◆腸内環境を整える
食物繊維がもつ最も嬉しいポイントは、腸内環境を整えてくれるというメリットでしょう。
腸内には様々な細菌がいて、「腸内細菌叢」や「腸内フローラ」と呼ばれています。この腸内細菌が身体に与える影響は大きいので、バランスが崩れてしまうとアレルギーや炎症性腸疾患、下痢などに繋がってしまうのです。
腸内環境を整えるために重要なのは、腸内細菌であるプロバイオティクスと、腸内細菌の増殖を促進するプレバイオティクスで、食物繊維は
プレバイオティクスとして腸内環境の改善に役立ってくれます。
ちなみに、乳酸菌・ビフィズス菌・納豆菌などはプロバイオティクス、食物繊維やオリゴ糖などがプレバイオティクスです。
食物繊維が不足するとどうなる?
規則的で質の良い便通を促すために、食物繊維は欠かせない栄養素です。食物繊維が不足することは、便秘や腸内環境悪化の原因となり得るでしょう。元々お腹が弱い子や、便秘気味の子には、食物繊維などの必要な成分が足りていない可能性も考えられます。
とはいえ、多くのドッグフードには基本的に十分な量の食物繊維(ビートパルプなど)が含まれているため、愛犬の様子をみながら、トッピングや手作り食、サプリメントなどで食物繊維をプラスするかを判断する必要があるのです。
もちろん病気が原因の場合もありますので、もし排泄面以外にも気になる症状や様子が思い当たる時は、獣医師に一度相談することをおすすめします。
犬に与える食物繊維は1日にどのくらい必要なの?
食物繊維は、犬にとっても大切な栄養素ですが必須成分ではないのです。そのため、総合栄養食の栄養基準を策定しているAAFCO(米国飼料検査官協会)では、必要量の基準値を設けていないそうです。
しかし必須ではないにしろ、健康な体作りのためには、乾物中5%未満の繊維量が目安だといわれています。
過剰摂取は避けるべきなのでダイエットや肥満対策をしている場合は、減量時でも12~25%、肥満再発予防でも10~20%程度が推奨されているようです。
野菜や果物などを毎日の食事にトッピングしたり、おやつとして与えるなど、食物繊維を摂取させる方法には何通りもあります。栄養バランスを考えながら、大体1日の最適カロリー量の10%を超えないように注意して与えてくださいね。
栄養学は苦手、適切量が分かりにくいという飼い主さんは、サプリメントを利用するとよいでしょう。パッケージなどに与えた方や量が記載されているものがほとんどなので、不安な方でも大丈夫です。
動物病院で獣医師に相談するのも一つの手です。例えばサイリウムというオオバコが原料のものや整腸剤など、病院で取り扱っているものもあります。愛犬に下痢や便秘、嘔吐などの気になる状態が見受けられる場合は、気軽に受診してみましょう。
犬に食物繊維を与える際のオススメの食材
食物繊維を含む食材はたくさんあります。ただし、与えすぎや誤った与え方をすると、消化不良を起こしたり、体内の余分な成分まで排出してしまったりと、効率よく健康維持をサポートする役割を得られない可能性もあるでしょう。
それぞれの食材に、少量を与えること、加熱して与えることなど、一工夫が必要なので、愛犬に与える前にはしっかり確認してくださいね。
それでは、食物繊維を豊富に含む食材の一部を紹介していきましょう。愛犬の元気を支えるためにも、チェックしてみてください。
◆野菜
●さつまいも
●枝豆
●モロヘイヤ
●かぼちゃ
●オクラ
●ブロッコリー
●とうもろこし
●キャベツ
●ごぼう
野菜の中でもおすすめなのはキャベツです。キャベツは胃粘膜の保護に優れたビタミンU(キャベジン)や、強い抗酸化作用で免疫力アップに効果的なビタミンCも豊富な野菜なのです。ドライフードだけでは不足しがちな食物繊維の摂取や、フードのかさ増しとして利用できるでしょう。
◆果物
●桃
●洋梨
●りんご
●柿
●びわ
●いちご
●さくらんぼ
果物の中からはりんごをおすすめします。りんごに含まれるペクチンは、腸内の善玉菌を活性化して、悪玉菌の繁殖を抑えてくれます。腸内環境が整うと栄養の吸収率がアップするので、免疫力向上にも役立ちます。乳酸菌が豊富なヨーグルトと一緒に与えるとさらに良いでしょう。
◆その他食べ物
●海苔
●小麦
●蕎麦
●納豆
●栗
●きのこ
●ひじき
ここでは納豆と海藻をピックアップして紹介しましょう。
納豆を始めとする発酵性食品には、善玉菌が多く含まれています。特に納豆に含まれる納豆菌は、腸内の善玉菌を元気にする作用が強いといわれており、乳酸菌よりも長くその効果を発揮するそうです。また、たんぱく質分解酵素が豊富なナットウキナーゼによって消化のサポートが期待できるでしょう。
そして、水溶性食物繊維やビタミン、ミネラルが豊富な海藻類は、腸内環境の改善や手作り食の栄養補助として活用できます。ただし海藻類にはヨウ素(ヨード)が多く含まれるため、愛犬が甲状腺にトラブルを抱える場合には獣医師への相談が必要です。
犬に食物繊維を与える時の注意点
紹介してきたように、身体に良い影響を与えてくれる食物繊維とはいえ取り過ぎれば逆効果です。
例えば食物繊維には、たんぱく質・脂質・糖質のエネルギー利用効率を低下させるので、ダイエットが不要の子にとってはエネルギー不足を招く可能性があります。
便秘改善に役立つという不溶性食物繊維にも、摂りすぎることで便秘を悪化させるリスクが潜んでいます。特に、けいれん性便秘という腸の動きが強すぎることで起こる症状の場合、かさ増しによって余計な刺激を与えることとなります。同様に水溶性食物繊維の摂りすぎも、下痢を悪化させる可能性があるでしょう。
ダイエットのためと、高繊維食の手作りご飯、国産生まれの質のよいサプリメント利用などと与えるものにこだわっても、与え方を誤っては元も子も有りません。
腸内環境は酸性であれば善玉菌が多く、アルカリ性となると悪玉菌が増殖します。この点から考えると、黄色っぽいウンチの方が腸内環境は良いと考えられますが、肉食寄りの犬は必然的に茶色となりますよね。黄色っぽい排便が見られた場合は繊維質の与えすぎの可能性があるので、ウンチの色も食物繊維量を測る尺度として利用できることを頭に入れておくと良いでしょう。
まとめ
愛犬の健康維持のために、食生活に注目することはとても良いことです。個体差があるので、それぞれに不足している栄養素は違ってきます。健康のために愛犬に必要なものがなんなのかをこの機会に考えてみてはいかがでしょうか。
普段の様子や排便の状態を日々チェックすることで、体の異常にいち早く気付くこともできるようになります。体調不良を感じた時は適切な対処法をとり、早めに獣医師に相談してくださいね。
ペットの健康を守るのは飼い主さんの努めです。食物繊維を効率的に摂取するためのレシピ解説記事などを参考にしながら、食生活のケアに尽力していきましょう。
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