1.犬にマスカットを与えてはいけない
1-1.ぶどうやレーズンと同じくNG
1-2.ジュースやゼリーは与えてもいいのか
3.犬がマスカットを食べてしまった場合
3-1.中毒となる量
3-2.初期症状
3-3.危険な症状
犬にマスカットを与えてはいけない
◆ぶどうやレーズンと同じくNG
犬にマスカットを与えてはいけません。ぶどうやレーズンが禁忌なのはポピュラーな知識ですが、マスカットも同じく、犬が中毒症状を引き起こす食べ物のひとつです。
そもそもぶどうとは、ブドウ科ブドウ属のつる性落葉樹になる果実(果物)のことを指します。レーズンはそのぶどうを人工的に乾燥させたもので、これらが中毒症状の原因となることはご存知の方も多いのではないでしょうか。
マスカットはぶどうと同じくブドウ科ブドウ属のつる性落葉樹、地中海地方原産のぶどうの種類のひとつで、「ヨーロッパブドウ」と呼ばれる品種です。
つまり、犬に食べさせた場合はぶどうと同様の中毒症状を引き起こしてしまうのです。
◆ジュースやゼリーは与えてもいいのか
ジュースやゼリーなど、食材そのものよりもぶどうの成分の含有量が少ない加工品であっても、犬にとって危険な成分を含んでいる以上、与えるのはやめましょう。
市販のフルーツヨーグルトなどに含まれているぶどうでも注意が必要なので、与える際にはどのような果物が含まれているのか確認することも大事です。
後述しますが、中毒症状を引き起こす摂取量は個体ごとに異なり、わずかな量でも死に至る危険性をはらんでいます。
「少しだけだから大丈夫」「加工品だから大丈夫」という思い込みは、文字通り命取りとなってしまうのです。
甘いフルーツが好きな犬であれば、リンゴやバナナなど、犬にとって安全性が確かめられている食品を与えましょう。
犬のぶどう中毒とは
ぶどう中毒とは、ぶどうを摂取することによって引き起こされる急性中毒疾患です。犬種や雌雄に関わらず、また、生で摂取しても、レーズンのように乾燥させたものを摂取しても同様に中毒を引き起こします。主に腎臓の組織にダメージを与えるケースが多く、急性腎不全により死亡することもあります。腎臓のほかにも、肝臓、脾臓、腸に異常がみられるケースもあります。
犬がぶどうによって中毒症状を引き起こすということが広く知れ渡ったのは2001年ごろです。アメリカの研究者によってぶどうやレーズンを摂取した犬の中毒症状の症例が発表されたことが発端とされています。
ただし、ぶどう中毒については研究段階であり、どういった成分が原因となっているのかは未だ特定されていません。カビ、農薬、あるいはビタミンB類以物質が原因とも言われていますが、近年では個体ごとの特異体質である可能性も出てきています。
まだまだ未知の中毒ということもあり、飼い主はその危険性を認識することが重要です。
犬がマスカットを食べてしまった場合
◆中毒となる量
原因物質が明らかになっていないため、中毒に至る摂取量についても明確には解明されていません。
体重や体質によってさまざまですが、過去の症例から下記の摂取量が危険とされています。
~5㎏(小型犬) | 巨峰やマスカットなら1粒~・レーズンなら20g~) |
---|---|
6~15㎏(中型犬) | 巨峰やマスカットなら2粒~・レーズンなら60g~ |
20~50㎏(大型犬) | 巨峰やマスカットなら5粒~・レーズンなら200g~) |
どちらかと言えば、生よりも乾物(ドライフルーツ)のほうが危険度が高いとされています。
ただし、体重1㎏あたり3gという少量の摂取でも中毒症状を起こした症例もあるため、あくまでも目安としていただき、「ぶどうやマスカットは絶対に食べさせない」ということを念頭においてください。
◆初期症状
ぶどう中毒では、個体差はありますが食後6~24時間程度で元気消失・食欲不振・嘔吐・下痢といった初期症状がみられます。特に、嘔吐はほぼ必ず見られる症状だと言われています。
日頃から嘔吐や下痢をしやすい体質の犬の場合、見過ごしてしまいがちな症状ではありますが、ここですぐに対処ができるかが予後の状態を大きく左右します。
少しでもおかしいと思ったらすぐに対処する必要があります。
◆危険な症状
さらに症状が進行すると、吐血・痙攣(震え)・血尿・無尿などの深刻な症状が見られることもあります。
これはぶどう中毒で多くみられる急性腎不全の症状です。急性腎不全とは、腎臓の機能が急激に低下し、本来尿から排出されるべき毒素が体内に蓄積されることでさまざまな弊害を引き起こす疾患です。
このような状態になると大変危険です。急性腎不全は発症から24時間以内に急速に進行するため、迅速な措置を取らなければ最悪の場合、命に関わる病気です。
このように「ぶどう中毒=急性腎不全」のイメージが強くありますが、脾臓からくる腹膜炎や肝臓からくる黄疸など、腎臓以外の臓器への重篤な疾患も報告されています。
犬がマスカットを食べてしまった際の対処法
◆すぐに動物病院へ連れて行く
すぐに病院へ行きましょう。ぶどうやマスカットを食べてから症状が現れるまでは最低でも6時間程度の時間を要しますが、無症状の期間にもぶどうの有毒物質はどんどん体内に吸収されていきます。
「症状が出ていないから大丈夫」と安心せずに、食べてしまったことがわかった時点で専門家の指示に従い、一刻も早く正しい治療を行うことが大切です。
病院では、有害物質の体内への吸収を防ぐため、催吐剤により嘔吐を促進させたり、活性炭などを用いて解毒をする処置が一般的です。急性腎不全の場合、脱水に陥っていることが多いため輸液をすることもあります。腎臓の機能が著しく低下し、尿が出ない状態が続く場合には、利尿剤や尿道カテーテルにより排尿を促すこともあります。
対処が遅れ、症状が進行すればするほど、治療による犬の体への負担も大きくなってしまうのです。犬に苦しい思いをさせないためにも、誤食に気が付いた時点で早急に動物病院へ向かうことをおすすめします。
◆自己判断で吐かせるのは危険
前項では有害物質が体内に吸収されないような処置が治療法のひとつであると記述しましたが、獣医師免許のない人が無理に吐かせようとするのは大変危険な行為です。
ぶどうを食べたときに自己判断で吐かせてはいけない理由は2点あります。
①塩水の飲ませたり咽喉や腹部をむやみに圧迫することで悪化させてしまう危険性がある
インターネット上で見かける「犬の吐かせ方」には、こういった方法を示唆するものが多くありますが、そのほとんどは間違った知識です。自己判断で間違った対処をしてしまうと、ぶどう中毒以外の苦痛を与えてしまうことになるため、絶対にやめましょう。
②ぶどうの有害物質が食道を通る際に粘膜を傷つける危険性がある
アルカリ性の強い成分や腐食性のある物質については、吐かせることで症状が悪化してしまう危険性があります。ぶどうやマスカットに含まれるどの成分が犬にとって有害なのかが判明されてない以上、吐かせるべきかどうかは専門家の意見を取り入れるべきと言えるでしょう。
また、誤食してしまったぶどうやマスカットを嘔吐させたからといって安心はできません。しかるべき検査や治療を受けるためにも、動物病院の受診をおすすめします。
犬にブルーベリーは与えてもいいのか
ぶどうやマスカットと見た目が似ているフルーツは食べても良いのか気になりますよね。デラウェアととても似た見た目をしているブルーベリーですが、犬にあげても大丈夫なフルーツです。
ブルーベリーはツツジ科スノキ属シアノコカス節に分類される果樹で、ぶどうとはまったく異なる食べ物なのです。
むしろ、ブルーベリーには抗酸化物質と呼ばれるいわゆる「アンチエイジング」の作用をもつ成分が多く含まれており、犬の体には良いものと言われています。
- アントシアニン・・・免疫力アップやアンチエイジングに効果的です
- ルテイン・・・目の健康に効果的で、白内障予防になるという説もあります
- ビタミンE・・・筋肉や皮膚のダメージに効果的です
ただし、どんな食べ物も過剰摂取は逆効果をもたらします。健康に良いからといって与えすぎず、少量ずつ与えることを心がけましょう。
犬にプルーンは与えてもいいいのか
プルーンもまた、ぶどうやマスカットとよく似た形状をしたフルーツです。バラ科の果樹の一種なので、ぶどうやマスカットとは異なる種類ですが、プルーンもまた犬にとっては有害です。
プルーンに含まれる「アミグダリン」は青酸中毒を引き起こす危険な成分である上に、カリウムが豊富に含まれるため高カリウム血症に陥る危険性もあります。
乾燥させることで毒素がより凝縮されているため、ぶどうやマスカットと同様にプルーンもまた犬に与えてはいけない食べ物の一つです。
まとめ
今回は、犬にマスカットを与える危険性を解説しました。
おいしいものを食べているとき、かわいい愛犬がじっと見つめてくると思わず一口差し出してしまいたくなってしまう気持ちも分かりますが、グッとこらえることも大事です。犬と飼う上では、犬にとって安全な食べ物を適量ずつ与えるということが最も重要なのです。
とはいえ、旬のフルーツがたくさん出回るこの季節。与えても安心なものをいろいろ試して、愛犬のお気に入りを一緒に探してみる…なんて楽しみ方はいかがでしょうか。
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