ワンちゃんの異食行動のひとつ 「食糞」は治せる?

2017.03.07

ワンちゃんの異食行動のひとつ 「食糞」は治せる?

ワンちゃんがウンチを食べてしまう「食糞」は、自分のウンチを食べてしまう場合と、ほかの動物のウンチを食べてしまう場合に分けられます。今回は、自分のウンチを食べてしまう「食糞」の原因や対処方法につき、ペット栄養学の観点からお話します。

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正常な食糞行動もあります

正常な食糞行動もあります

メスのワンちゃんが出産すると、授乳開始直後から数週間にわたり、子犬のウンチをなめてきれいにします。人間のお母さんが赤ちゃんのオムツを換えてあげるようなもので、そもそも食糞は犬にとって、あまり異常な行為とはいえないと考えられます。
ほかの動物のウンチを食べてしまうと、寄生虫や細菌に感染する危険があるのでやめさせなければいけません。しかし、自分のウンチを食べてしまう場合は、ワンちゃんにとって健康上の問題はさほどないともいえるのです。
食糞の問題点としては、ペットオーナー様がワンちゃんに嫌悪感を抱かれる場合があること、ともに暮らす人間に対する衛生上の問題点があるという、耐人間関係が大きいといえます。


食糞行動にはさまざまな原因があります

食糞行動にはさまざまな原因があります

ワンちゃんの食糞行動の原因として考えられる要素をまとめました。

●行動学・心理学的要因

  1. 留守番などでケージやサークル内にいるのにウンチをしてしまったので、ワンちゃんにとって邪魔だから食べて片付けてしまいたい
  2. 留守番中、退屈なのでウンチを食べて遊んでしまった
  3. フレンチ・ブルドッグなど、興奮しやすい性格の犬種
  4. ペットオーナー様の注意を引きたい
  5. 多頭飼いの場合、ほかの犬よりも自分のほうが優れているとペットオーナー様に見せつける「競争行動」の現れ
  6. トイレトレーニング中にトイレとは違う場所でウンチをしてしまったので、食べて隠してしまいたい、怒られるのを回避したい

●消化器疾患

  1. 消化不良
  2. 寄生虫感染
  3. 糖尿病やクッシング症候群による多食症

●フード

  1. 消化が悪いフードをあげている
  2. フードの添加物や香料がきつい
  3. フードの消化はよくても、あげすぎでワンちゃんが消化不良を起こしている

以上の理由で、ウンチにフードの香りが残ってしまう

(ペット栄養管理学テキストブック 一般社団法人日本ペット栄養学会編 P207を参考にしました)

消化器疾患は、獣医師による加療が必要です。ワンちゃんに食糞行動がみられたら、まずはかかりつけの動物病院に相談してください。フードが原因と考えられる場合は、フードを切り替えれば食糞行動は治まります。ワンちゃんにとっては、「ウンチ」ではなく「食べものの香りがするもの」を食べているだけだからです。
問題は、行動学・心理学的要因がある場合です。


行動学・心理学的要因からの食糞は治りにくい場合がある

以前、一緒に暮らしていたフレンチ・ブルドッグのハナは、ペットオーナー様が犬嫌いの方と結婚されたために里親に出され、私が引き取った子でした。本当にいい子でしたが、サークル暮らしが長かったので、ウンチをした後すぐに食糞する癖がなかなか抜けませんでした。「自分の家をキレイにしておきたい」「飼い主に臭い思いをさせたくない」という意識が強かったのだと思われます。

フレンチ・ブルドッグ
本当にかわいい子でした

ワンちゃんの食糞行動を見るのは初めてだったので、ハナの歯にウンチがついているのを見たときは結構な衝撃を受け、すぐに口の中をごく薄めたイソジンで洗いました。でも、ウンチをするとパクッと食べてしまうので、消毒にはあまり意味がありませんでした。


騒がず放っておくこと、ウンチをしたらすぐに片付けること、留守番の前は散歩をしてウンチをさせておくことが大事

獣医師、トレーナー、様々な方に相談し、ペット栄養管理士の資格を取って栄養学を勉強して達した結論は、

「食べない環境を作るのが一番」

ということでした。

まず、土日にハナをじっくり観察してウンチをした時間をすべて記録したところ、ハナのウンチのタイミングは「食後20分」が最も多いということがわかりました。
そこで、朝は早めに起きてまずハナにご飯をあげ、15分で私の身支度を済ませ、ハナを散歩に連れ出すようにました。ハナにウンチをさせたら素早く拾い、また少し散歩をしてから家に戻り、ハナの足を洗ってサークルへ。留守番させるとき、サークルにおやつを入れてしまうとサークルの中でウンチをして食べてしまうことがあったので、お気に入りのおもちゃしか入れないようにしました。ペットシートは引き出していたずらができないよう、市販されている網付きのトイレトレイを使っていました。
それでもタイミングが合わず、ハナが室内のトイレでウンチをして食べてしまったときは、慌てず、騒がず、顔色ひとつ変えずに散らばったウンチやペットシートを片付けていました。ここで騒いでしまうと、ワンちゃんはかまってほしくて食糞をし、怒ってしまうとペットオーナー様に見つからないよう食糞をします。無表情で淡々と片付けることが大切です。
結果として、食糞はゼロにはなりませんでしたが、大幅に減らすことができました。ハナが亡くなってしまった今となっては、食糞後のおくちでなめられて複雑な思いだったことも、本当にいい思い出です。
食糞に関してはあまり深刻に悩まず、淡々と対処するのが一番なように思われます。また、ペットフードに混ぜると苦みや辛み、ワンちゃんが苦手な香りがウンチに付くシロップなども市販されていますので、上手に取り入れてみてください。

犬の食糞


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石原 美紀子

石原 美紀子

青山学院大学卒業後、出版社勤務を経て独立。犬の訓練をドッグトレーニングサロンで学びながら、愛玩動物飼養管理士1級、ペット栄養管理士の資格を取得。著書に「ドッグ・セレクションベスト200」、「室内犬の気持ちがわかる本」(ともに日本文芸社)、「犬からの素敵な贈りもの」(出版社:インフォレスト) など。愛犬はトイ・プードルとオーストラリアン・ラブラドゥードル。

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