パピーウォーカーって?盲導犬候補を育てるお手伝いをするには?

2021.03.18

パピーウォーカーって?盲導犬候補を育てるお手伝いをするには?

パピーウォーカーというと聞き覚えがあるものの、その役割はよくわからない、ということはないですか? ここでは、未来の盲導犬となる子犬が成長の中でもっとも大切な時期をともに過ごすパピーウォーカーについてご紹介をしていきます。パピーウォーカーになりたい! 盲導犬にも興味がある! そんなあなたのために、ぜひお役だてください。

【掲載:2017.06.06  更新:2021.03.16】


パピーウォーカーとは?


盲導犬の候補として誕生した子犬は、生後60日から約10ヶ月の間生まれた場所とは違う家の家族として生活をします。
この10ヶ月という期間は、子犬にとって特別な時間でもあります。新しい家族との触れ合いだけでなく、楽しく過ごしたり、ときにはいたずらをして叱られたり、車にのって一緒にでかけたりと、様々な人の社会に触れ情報を吸収していく期間になります。
人に寄り添う盲導犬のベースを学ぶために、盲導犬となる子犬を家庭に受け入れるボランティア、それがパピーウォーカーなのです。
パピーウォーカーになるには?(パピーウォーカーの基本条件)
パピーウォーカーになりたいからといって、即座に子犬の受入が決定するわけではありません。
ここでは、盲導犬の候補である子犬の受入れの条件をご紹介していきますので、協会によって若干の基本条件の差はありますがこれらを参考にしてパピーウォーカーとして活動できるよう準備を整えるのもポイントです。 

◆① 訓練センターの近くに住んでいる

時には、訓練センターのイベントに参加することもあります。イベントは盲導犬の役割を知ってもらうための場所であるとともに、パピーウォーカーや未来の盲導犬である子犬が直接見て学ぶ、そして聞いて学べる貴重な空間でもあります。そして何よりも、先輩盲導犬を見ることで、こうなりたいという明確な目標ができる、刺激のある場所なのです。

◆② 車を所有している

盲導犬も移動の際にバスを利用する機会が多くあります。たとえば、買い物や病院、もちろん、パピー自身が動物病院にかかるときも必要な移動手段になるでしょう。
日常的に車に乗る体験をさせることも、パピーウォーカーがしなくてはならない「訓練」のひとつなのです。

◆③ 室内で飼育ができる

盲導犬はパートナーに寄り添う犬ですので、パートナーが室内にいれば同じ場所に必ず存在します。
室内飼育をするために、まず玄関以外の場所、できれば家族が集まるリビングに犬舎を用意しましょう。犬舎のサイズは59cm×90cm×67cmがベストです。
パピーウォーカーは、子犬に無駄吠えだけでなく、家具を噛んだり、私たちが食べているものを欲しがったりしないよう盲導犬として生活するための約束を教えていくことになります。

◆④ 家族で協力しあってマナーを教えられる

小さなお子さんや高齢者がいる場合は、パピーウォーカーの認定は厳しくなることがあります。たとえば、小さなお子さんにはまだまだ家族の注意が必要です。その中でパピーウォーカーとなれば、家族の負担が大きくなることが安易に予想され、子犬の健康管理やしつけにまで心を配ることが難しくなってしまうため、選考から外れてしまいます。
また、高齢な方がいる場合だと、子犬が飛びついたときに受け止めきれず転倒してケガをする、そんなアクシデントの可能性が潜んでいます。まずパピーウォーカーになりたいと考え始めたら、こういった事故や安全面の対策も合わせて話し合う必要があります。

◆⑤ 先住犬がいない家庭

どの犬種であっても同じですが、子犬の飼育には十分な時間が必要です。家族全員がパピーウォーカーとして子犬を育てていくことが前提なので、先住犬がいる家庭ではパピーウォーカーとしては不適合となります。
また、飼育に際して集合住宅などで注意しなければならないのは、子犬の犬種がラブラドール・レトリバーやゴールデン・レトリバーなどで大型犬に属するということです。小型犬や中型犬は飼育可能でも、大型犬の飼育を許可していないこともあるので住宅の管理者に問い合わせて許可を得るようにします。


登録方法および子犬委託までの流れ

プリント

パピーウォーカーの基本条件を自己採点でクリアできたら、さらにパピーウォーカーになりたいという気持ちが高まっているのではないでしょうか?
ここでは、パピーウォーカーの登録方法などの代表的な流れを紹介していきますので参考にしてください。しかし、このフローは一般的なものの抜粋にすぎません。どうしてもわからない疑問は直接お問合せいただくことをおすすめします。

◆① パピーウォーカー申込用紙の郵送

盲導犬協会へメールや電話、または参考とした協会のHPに添付されたパピーウォーカーの申込用紙に必要事項を記載し郵送します。
メールや電話でパピーウォーカーの申込みをした場合は、後日申込用紙が届くので、必要事項を記載して郵送します。申込用紙には、家族の氏名、生年月日、職業などの記載のほか、簡単なアンケートがあります。アンケート内容は身構えてしまうような難しいものではなく、パピーウォーカーの基本条件に沿ったものがほとんどです。

◆② 説明会への参加

書類返送後、協会によってはパピーウォーカーの説明会が開催されますので、参加するようにします。

◆③ 職員による面談

盲導犬協会の職員による面談を受けます。直接職員がパピーウォーカーの申込者の自宅へ伺う場合と、協会内で行われる場合があります。

◆④ パピー委託待機者として登録

各段階で委託条件を満たしているかを盲導犬協会で判断し、クリアとなった場合、はじめてパピーウォーカーとしてのスタートとなります。しかし、パピーウォーカーになりたいのはあなただけではありません。出産状況だけでなく、登録されているパピーウォーカーの数によって子犬がやってくる時期がかわります。
パピーウォーカーとして登録ができてすぐに子犬の引渡しとならないからといって気を落とさず、気長に待つ、くらいの寛大さで過ごしましょう。

◆⑤ 委託準備

パピーウォーカーの委託決定後は契約書をかわし、日程などの詳細の説明を受けます。もちろん、受入側にも準備が必要になりますので、子犬がやってくるまでの期間に訓練センターで子犬との接し方や、不安に感じる点などを教えてもらうとたいへん安心です。


飼育系ボランティアの種類

パピーウォーカー

飼育系のボランティアは、パピーを預かるパピーウォーカーだけではありません。
ここでは、パピーウォーカー以外のボランティアについてご紹介しています。パピーウォーカーのように子犬を預かるのは難しい、そうお考えの場合は、違うボランティアを選択できるということも参考としていただきたいと思います。

◆引退犬の飼育ボランティア

パピーウォーカーの手から離れパートナーと過ごし役目が終わるころ、盲導犬としての務めを終えた犬は10歳前後のシニア犬になっています。盲導犬の犬種はラブラドール・レトリバーやゴールデン・レトリバーが多く、平均寿命は10年から12年と言われています。15年以上を過ごす犬もいますが、引退後の数年を穏やかに最期まで寄り添うことのできる方のみ、飼育ボランティアとして認められています。
もともと人に寄り添って生きてきたので、留守の少ない家庭や単身者でないこと、室内飼育であるなどパピーウォーカーのときと基本条件は同様です。

◆繁殖犬の飼育ボランティア

盲導犬の資質のあるオスやメスを家庭で預かり、交配の時期がきたら繁殖のため協会側と協力しながら出産、子育てをするボランティアです。
オスは交配が終了すると帰宅しますが、メスは交配後帰宅する場合と、協会で出産をして子犬がパピーウォーカーのもとへ預けられる時期に入る生後50日ほど経ってから帰宅する場合があります。自宅で出産可能な環境が整っている場合はそのまま帰宅するケースもあり、その場合でも協会側から定期的な訪問など、犬にも人にも手厚いフォローが入るので安心です。
引退時期はだいたい7歳ごろで、引退後、繁殖犬から引退犬となった犬を引き取ることができる場合があるようです。

◆キャリアチェンジをした犬の飼育ボランティア

パピーウォーカーが出かけた犬のすべてが盲導犬の資質があるわけではありません。何には、どうしても活発な性格が目立ってしまう犬や、人や他の動物、車などに怯えてしまう犬もいるのです。
その場合、訓練でもどうにもならない個々の性格を曲げるのではなく、盲導犬から家庭犬へキャリアチェンジをします。こういったキャリアチェンジをした犬を家族の一員として迎え入れるボランティアも、パピーウォーカーの基本条件と同じような受入条件があり、条件がクリアするとトライアル期間に入り、お互いの相性に問題がなければそのまま譲渡契約となります。
子犬の時期を知らずに受け入れるので思い出は少ないですが、パピーウォーカーに比べると一定期間で離れることがない、しつけがされているなどのメリットがあるようです。 

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まとめ


盲導犬になりたい子犬が社会に溶け込めるお手伝いをするパピーウォーカーについておはなしをしてきましたが、いかがでしたか?
母犬は子犬との別れの日が近づくと落ち着きがなくなります。別れの日は、訓練センターの方もデリケートになっている母犬を刺激しないよう最善を尽くします。あまり知られてはいませんが、中には、別れの日以前から警戒して家族にすら唸る母犬や、子犬を探して鳴きやまない母犬もいるほどなのです。
子犬にとって、私たちは最初に悲しい別れを経験させた存在です。そしてパピーウォーカーは、傷ついた子犬の心をケアしつつ信頼関係を築き、盲導犬の候補として育てあげる大切な役割をもっています。
パピーウォーカーになりたいみなさん。
まずはあなたとあなたの家族が、最初のパートナーとなり母犬の分まで愛情をたくさん注いであげてください。



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犬のいない生活がほとんどないほどの犬好きです。現在は保護犬の里親になり楽しく暮らしています☆

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