【獣医師監修】股関節形成不全とは?原因や症状・予防法は?大型犬に多いって本当?

2017.09.26

【獣医師監修】股関節形成不全とは?原因や症状・予防法は?大型犬に多いって本当?

犬の病気はいろいろありますが、あまり聞きなれない「股関節形成不全(こかんせつけいせいふぜん)」という病気を知っていますか?遺伝的な病気のイメージがありますが、環境によってもかかる可能性があるそうなので、愛犬の健康維持のためにも、病気の特徴や予防法などを抑えておきましょう。

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股関節形成不全はどんな病気?

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人間と同じように、犬にも股関節(こかんせつ)があります。犬の股関節形成不全は、太ももの骨と骨盤が結合する部分、股関節の形が正常な形とは違い異常な形になっている状態を言います。

股関節形成不全は遺伝的なものが強く、先天性の病気だと言うイメージがありますが、生まれた時は正常でも、環境やさまざまな要因で股関節形成不全になることもあるそうです。

股関節の形が異常ということで、股異形成(こいけいせい)と呼ばれる場合もあります。

股関節形成不全になりやすいのは大型犬

股関節形成不全になりやすい犬種としては、小型犬や中型犬よりも、大型犬に多く発症がみられるそうです。

ジャーマンシェパードやグレートピレニーズ、レトリバー系の大型犬〜超大型犬に多く見られる股関節形成不全ですが、日本国内で人気なゴールデン・レトリバーやラブラドール・レトリバーは好発犬種と言われ、調査した犬の46.7%に発症が見られたそうです。
アメリカの11.7%発症率に比べても日本の股関節形成不全の発症率は高いという研究結果が出ています。

大型犬は、小型犬や中型犬に比べて成長のスピードが数倍も早く、生後60日の間に急激に体重が増加するので、股関節へ過度のストレスがかかりやすいのではないかと考えられています。

愛犬のグレートデーンMIXも、子犬の状態から急激に中型犬〜大型犬へと大きくなったタイプなので、股関節形成不全についても注意して見ていこうと思いました。

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股関節形成不全の症状

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犬が股関節形成不全にかかってしまった場合の主な症状をお伝えします。愛犬に以下の症状が見られるようになったら、早めに獣医師さんの診察を受けることをオススメします。

◆歩行が困難

野生動物にとって歩けなかったり、走れなかったりするのは致命的なことです。人間に保護されて過ごす犬にとっても、股関節形成不全によって歩行が困難になっている状況は、心身ともにダメージが大きく日々ストレスを感じることでしょう。

症状が軽い場合は安静にして様子を見ますが、痛みを感じているような場合はすぐ動物病院へ連れて行きましょう。

◆後ろ足を折たためない

股関節形成不全の犬は、うまく後ろ足を折たためなくなることが多くなります。
スワレができなかったり、足を伸ばした状態から立ち上がる時に痛みを感じているような場合は、すぐに動物病院を受診することをオススメします。

◆バニーホップ(bunny hop)

犬が歩行する時には、左右交互に足を出すものですが、股関節形成不全の犬は、バニー=ウサギのように、両足で飛び跳ねるような仕草をみせたり、スキップするような動作をすることがあります。

◆歩行時の揺れ

股関節形成不全になった犬は、歩行がスムーズにいかないことが増えます。
歩行時の揺れは高齢の犬にも見られますが、幼犬や若い犬に歩く時に腰が左右に揺れるような動作が見られる場合は股関節形成不全が原因かもしれません。

歩行時の揺れを動画で撮るなどして、獣医師さんに確認してもらうといいですね。

◆運動をいやがる

愛犬がいつも喜んで行っていたお散歩や運動を嫌がる様子を見せたら、股関節形成不全が原因になっているかもしれません。
歩行の様子を観察して、おかしいなと感じたらすぐ獣医師さんの診察を受けましょう。


股関節形成不全の原因

◆先天性の原因

股関節形成不全の主な原因としては、その病気の因子を持つ犬同士の交配を行なうことなどが挙げられます。

家庭犬として人気のラブラドール・レトリバーは、ペットからコンパニオンドックと呼ばれるほど、人間にとって身近な犬になっています。一方で、ラブラドール・レトリバーは、身体障害を持つ方々の盲導犬や介助犬として活躍したり、災害救助犬や警察犬としても人気が高く、人間にとって役に立つ犬として交配が過剰気味になった結果、股関節形成不全の犬も増えてしまいました。

犬の股関節形成不全の約70%が遺伝的要因だと言われています。まだ起因となる遺伝子が特定されているわけではないそうですが、股関節形成不全の病気にかかった犬と交配すると、ほとんどの子犬に発生が見られるそうです。

海外では40年前から股関節形成不全などの遺伝的な病気を減らす取り組みが進んでいて、発症も減少傾向にあるそうなので、日本でも研究が進み、股関節形成不全の犬が増えないよう対策が進んでいくといいなと思います。

◆後天性の原因

股関節形成不全の原因として約70%が遺伝的な要因だと言われていますが、残りの30%は環境的な要因だと言われています。

原因のひとつとして、犬の肥満が挙げられます。犬の肥満は人間の肥満と同じように、カロリーの過剰摂取と運動不足気味などINとOUTのバランスが崩れることで起こります。人間も犬も同じように、太り過ぎると足腰に大きな負担を与えますよね。

健康維持のためにも、股関節形成不全の発症予防のためにも、太りすぎないということはとても大切です。
特に0歳〜1歳の間に過度に太らせてしまうと、関節の形成に大きな影響を与えるため、幼犬の時の急激な体重増加には注意が必要です。
また、フローリング等で滑らないように注意して下さい。


股関節形成不全の治療法、予防法

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股関節形成不全の犬の、主な治療方法と予防法についてお伝えします。

◆治療法1・安静療法

股関節形成不全の症状が軽症だと診断された場合は、まず安静にすることを勧められます。

特に成長期の犬の場合は、運動は軽めに行うようにし、肥満にならないように食事の量にも気をつけながら、股関節が正常に成長するのを待つ場合が多いそうです。

◆治療法2・投薬

股関節形成不全の症状がだんだん進行すると、犬が痛みを感じてくる場合があります。犬が痛みを感じている場合は、投薬治療が行われます。

鎮痛薬や抗炎症薬などを投与して痛みをコントロールすることができれば、発症はしていても快適に過ごすことができるでしょう。
痛み止めで有名なアスピリンのお薬が使われることが多いようですが、アスピリンはフィラリアを持っている犬に与えると危険だと言われています。

痛み止めの他、ステロイド剤なども使われることもあるそうですが、効果のあるお薬は副作用もあるものなので、愛犬にお薬を与えるときは、必ず医師の指示を守るようにしましょう。現在は非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)もあります。

また、投薬とともに食事療法と運動制限を行って、症状が悪化しないように防ぐことも大切です。

◆治療法3・外科手術

安静療法でも投薬でも、股関節形成不全の回復が見られない犬の場合、外科手術療法による治療を行うこともあります。

手術の方法としては、骨盤を切り取る方法もあるようですが、股関節形成不全の手術で行われるのは「大腿骨頭切除術」という方法が多いそうです。
この手術は、大腿骨(だいたいこつ)の骨頭を切除して、痛みをやわらげるという方法ですが、体重が20キロを超える犬には向かないということと、手術後、回復して歩けるようになるまで2〜3ヶ月かかるそうなので、犬にとっても飼い主さんにとっても負担が大きな手術です。人工股関節を作成する方法もあります。

手術をする際は、獣医師さんとよく相談して犬の介護の負担なども考えて決定することが大切です。


股関節形成不全の愛犬のためにできる工夫は?

股関節形成不全の犬には、獣医師さんの指導の元に行う投薬などの必要ですが、飼い主さんができることもたくさんあります。体重制限や運動制限に加えて、室内外で過ごす愛犬の環境を整えることも飼い主さんの大切な役割です。
股関節形成不全になった犬ができるだけ快適に過ごせるようになるために、飼い主さんにしてほしいことをお伝えします。

1)滑りやすい場所にはマットを敷くようにしましょう。

股関節形成不全の犬にとって、歩くことが困難だと感じることも多いでしょう。
滑りやすい場所はあらかじめマットなどを敷くようにしましょう。

2)愛犬の行動範囲からは、段差をできるだけなくしましょう。

飼い主さんにとってみたら、ほんのちょっとの段差も股関節形成不全の犬には負担が大きいものです。
愛犬が過ごすスペースには段差はなくすように工夫をして、階段などは抱っこして移動するようにしましょう。

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※こちらの記事は、獣医師監修のもと掲載しております※
●記事監修
drogura__large  コジマ動物病院 獣医師

ペットの専門店コジマに併設する動物病院。全国に15医院を展開。内科、外科、整形外科、外科手術、アニマルドッグ(健康診断)など、幅広くペットの診療を行っている。

動物病院事業本部長である小椋功獣医師は、麻布大学獣医学部獣医学科卒で、現在は株式会社コジマ常務取締役も務める。小児内科、外科に関しては30年以上の経歴を持ち、幼齢動物の予防医療や店舗内での管理も自らの経験で手掛けている。
https://pets-kojima.com/hospital/

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カリーナ

カリーナ

動物好きな親の影響で、子どもの頃からずっと犬がいる生活をしていました。 これまで飼ったペットは、犬5匹・猫3匹・鶏8羽です。 現在は大型犬2匹と人間7人で、にぎやかに暮らしています。

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