犬にまつわる日本のことわざ
まずは、日本に伝わることわざや慣用句の中から、犬にまつわるものをご紹介します。
– 「犬も歩けば棒に当たる」 –
江戸かるたの第一句として有名なこちらのことわざは、「犬もうろつくと災難にあう、余計なことをするな」というのが元々の意味でした。
しかし、のちに「じっとしていないで何かをすれば、思わぬ幸運に出会う」ということで、災難のシンボルだった棒は、幸運のシンボルの意味も持つようになりました。
◆英語の類義のことわざ
The dog that trots about finds a bone.
駆け回る犬は骨をみつける
– 「犬は人につき猫は家につく」 –
引っ越しのとき犬は飼い主についていくが、猫は家に残ってついていかないということ。
主人に忠義を尽くそうとする犬と、自分の縄張りを守ろうとする猫の違いをあらわしています。
◆英語の類義のことわざ
この英語のことわざは、faces/places で脚韻を踏んでいるのがポイントです。
Dogs remember faces, cats places.
犬は顔を、猫は場所を忘れない
– 「犬骨折って鷹の餌食」 –
苦労して得た物を他の者に奪われてしまい、無駄骨折になることのたとえ。
鷹狩の際に、犬が一生懸命追い出した獲物を、上空で待ち構えていた鷹に横取りされてしまう光景からうまれたことわざです。
◆英語の類義のことわざ
英語では鷹ではなくオオカミが登場します。
While the dogs growl, the wolf devours the sheep.
犬たちが争う間に、オオカミが羊を食う
– 「犬に肴の番」 –
番をさせるものの選び方が不適当なたとえ。犬や猫に、大好物である肴の番をさせるのは無理というもの。
◆英語の類義のことわざ
英語ではオオカミや猫にかわることわざがあります。
To set the wolf to keep the sheep.
羊の番をオオカミに頼む
Send not a cat for lard.
猫にラードを取りに行かせるな
– 「犬が西むきゃ尾は東」 –
犬が西を向けば、当然しっぽが東を向くことから、当たり前すぎるほど当たり前であることのたとえ。
◆英語の類義のことわざ
英語では犬がカラスに変わります。
When the crow flies her tail follows.
カラスが飛ぶとき後ろには必ず尻尾がある
犬にまつわる日本の慣用句
– 「犬猿の仲」 –
仲の悪い者同士のたとえ。昔から犬と猿は仲が悪い動物として知られ、それが始まりで生まれた慣用句といわれています。
◆英語の類義の慣用句
英語では、猿ではなく猫に相手が変わります。
To agree likes cats and dogs.
猫と犬のような仲
– 「犬の論語」/「犬に念仏 猫に経」 –
犬に論語や念仏、猫に経を説いても、少しも分からない。例えどんなに良い教えであっても、分からない者には結局そのありがたみは理解できないから、説いても無意味というたとえ。
「犬に論語」「犬に念仏 猫に経」のふたつのことわざは、どちらもほとんど同じ意味でつかわれる慣用句です。
英語の類義の慣用
英語では、犬が馬に変わり、念仏が賛美歌に変わります。
Sing psalms to a dead horse.
死んだ馬に賛美歌を歌ってきかせる
– 「犬の遠吠え」 –
臆病な者が陰で虚勢を張り、陰口をたたくこと。弱い犬ほど、遠くから吠えることによる。
「負け犬の遠吠え」も似たような意味を持ちます。
英語の類義の慣用句
英語では、負け犬の遠吠えを次のように表現します。
loser’s whining
負け犬の遠吠え
ちなみに、under dogにも「負け犬」という意味がありますが、スラング的な表現になります。
top dogには勝者、最高権力者という意味があり、時に勝ち犬の意味でも用いられることがあります。
世界の犬にまつわることわざ
世界のことわざ・慣用句には、その国々の文化や習慣を感じられるものが多くあります。
犬にまつわることわざ・慣用句から、世界の犬事情が見えてくるかもしれません。
– 「犬が吠えてもキャラバンは進む」 –
(中東アジア)
砂漠や荒地の多い中東アジアのことわざで、「犬がいくら吠えてもキャラバンの列はまったく気にせず、目的地まで進んでいく」ということを表しています。
これにはふたつの意味があります。
ひとつは、困難があっても前進しなければならない。
もうひとつは、下々の声は無視せよ。
下賤の物が騒ごうが喚こうが、いちいち相手にしなくてもよいというたとえで、「自ら恥じることがないなら、人が何を言おうが世間がどう騒ごうが気にすることはない」という意味でも使われます。
スケールが大きくいかにも中東で生まれたことわざですが、ここに出てくる「犬」は庶民を表し、「キャラバン」は国家を意味しています。
◆世界の類義のことわざ
・「犬が吠えても月はきにかけない」(ヨーロッパ)
・「犬が吠えても月はなんの影響もない」(チェコ)
・「どんなに犬が月に向かって吠えても月は輝いている」(ペルシャ)
– 「犬を飼っているのになぜ吠えるのか」 –
(イギリス)
せっかく犬を飼っているのに、なぜ自分が吠えなくてはならいのか?ということで、「自分でその仕事することはないこと」を意味します。
犬は何かあった時に吠えるようになっているのだから、何も自分で吠えることはないという考えがあるようです。
◆世界の類義のことわざ
・「人を疑うなら使うな、使うなら疑うな」(中国)
– 「老犬は徒ら(いたずら)に吠えない」 –
(エチオピア/イタリア/フランス/イギリス他)
犬も年齢を重ね経験を積むと、意味もなく吠えるようなことはしなくなるという考えから、「老犬が吠えた時には何かあると思って注意した方がいい」というたとえ。
経験豊かな老人が何か意見をいうときには傾聴すべき、という意味合いでも使われます。
◆世界の類義のことわざ
・「老犬虚に吠えず」(日本)
– 「吠える犬は噛まぬ」 –
(ドイツ/イギリス/フランス/オランダ他)
大言壮語する者は本当の勇気がない、口やかましい人に悪意はないなどのたとえ。
吠える犬はどういうわけか噛みつかず、吠えているうちは驚いて興奮していたり、警戒しているだけかもしれないということからきています。
◆世界の類義のことわざ
「犬」ばかりでなく、他の動物にたとえている国は多くあります。
・「おとなしい馬の蹴りはきつい」(アルメニア)
・「吠えるライオンは獲物を殺さない」(ウガンダ ランゴ族)
– 「主人を大切に思う者は犬も大切に思う」 –
(イエメン)
大切に思う人、愛するものがあれば、その人の家族やその人に関わるものすべてが大切なもの、いとおしいものに感じられるという意味。
主人を尊敬するものは、主人の飼っている犬まで大切にするという考えからきています。
◆世界の類義のことわざ
・「私を愛する者は私の犬も愛す」(イギリス/ドイツ/フランス/イタリア)
・「猟師を愛するなら彼の犬も愛せ」(ウガンダ ランゴ族)
比喩を「犬」以外にしたことわざも世界にはあります。
・「バラを愛する者はトゲも愛す」(アルメニア)
・「娘を愛する者は母親も好きになる」(ロシア ダルギン族)
– 「眠っている犬を起こすな」 –
(イタリア/フランス/イギリス/ドイツオ/オランダ/ロシア)
ぐっすり眠っている犬を用もないのにわざわざ起こす必要はない。そんな余計なことをして万が一怒って噛みつかれてはたまらないことから、「わざわざ好んで危険を招くようなことはするな」という意味。
「すっかり忘れかけていたことや何とか収まっていることを、いまさらほじくり返さないようにしなさい」と説く場合にも使われます。
問題を「犬」で例えていますが、「トラ」や「ライオン」などの猛獣を例えに使う国もあり、棚上げした案件の大きさを表しています。
日本では「さわらぬ神に祟りなし」「藪をつついて蛇を出すな」が同じような意味合いです。
◆世界の類義のことわざ
「犬」以外の言葉で比喩している国もあり、フランスでは「犬」を「猫」に、イギリスやドイツは「ライオン」にたとえることもあります。対象の物のスケールによって使い方は様々なようです。
・「眠っているトラの鼻に釘を打つ」(朝鮮)
・「痒くないところを掻くな、眠っている犬の尻尾を引っ張るな」(チェコ)
– 「犬に噛みつかれても犬を噛むな」 –
(タイ)
犬に噛みつかれたからといって誰も犬を噛もうとしないように、馬鹿な相手に攻撃をしかけられてもいちいち相手にすることはないという意味。
相手より一段高い立場に立って、愚劣な争いを断ち切ろうとする知恵です。相手が悪意で攻撃してきても、善意をもって応えようとすることわざです。
◆世界の類義のことわざ
・「石を投げてきたものにはパンを投げよ」(フィリピン)
– 「犬と寝る者は蚤と起きなければならない」 –
(イギリス/フランス/ドイツ/スペイン/イタリア/オランダ他)
このことわざの犬は、狩猟や番犬のように屋外で人間とともに生活している犬のことを指します。
「犬」は下賤の物(身分が低い、いやしい)を、「蚤」は不快なことを指しています。
つまり、よからぬものと付き合えば、自らも悪影響は免れないという意味あいの言葉で、付き合う相手は慎重に選びなさいという教えです。
ちなみに日本でいわれる「朱に交われば赤くなる」と似たようことわざですが、日本の「朱」の場合には、必ずしも悪い相手を指しているわけではありません。
◆世界の類義のことわざ
・「池の中で夜を過ごせばカエルのいとこになって目覚める」(アラブ)
・「ワタリガラスとともに行けば糞の山に触れないわけにはいかない」(アルメニア)
・「タールにさわる者は必ず汚れる」(イギリス)
世界の犬にまつわる慣用句
– “dog year” –
コンピュータやインターネットなどの変化が激しく、時間が経つのが極めて速い情報世界の1年のことを表す慣用句。
俗に、IT業界の技術進化の早さを、犬の成長が人と比べて速いことに例えた俗語です。
1990代後半頃から用いられ、犬は歳をとるのが人間より早いことからそういう表現が生まれました。
– “doggy bag [doggie bag]” –
レストランなどで食べ残した食べ物の「持ち帰り用の袋」のことで、本当は自分が家で食べるものだけれども、「犬にあげるため」という名目で袋をもらうことから生まれた慣用句です。
現在では、この表現を使うことはほとんどなく、「May I take this home?」などで大抵専用のボックスや袋をもらうことができます。
– “like a dog with two tails” –
「大喜びで」という意味の慣用句。
犬の尻尾は一本ですが、喜んでいるときには尻尾を盛んに振り、まるで二本あるようにみえることから、この表現が生まれたとされています。
– “It rains cats and dogs” –
「ひどい土砂降りだ」という意味の慣用句。
この成句の起源には2つの説があるといわれています。
ひとつは、土砂降りは「犬猿の仲」である「猫」と「犬」のケンカを連想させることから生まれた説です。
もう一つは、北欧の神話では猫は天気を左右し、犬は強風のシンボルを表すため、共に嵐の神、オーディンの従者だったという説です。
まとめ
今回は、日本と世界にまつわることわざ・慣用句をご紹介しました。
「犬」にまつわることわざや慣用句は世界各地にありましたが、どこの国の表現も、どちらかというとネガティブな要素を含んだものが多いようです。
その時の心情を表すのに一番例えやすい動物が犬だったのでしょう。それだけ、人間にはなくてはならない存在だったということかもしれませんね。
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