【獣医師監修】愛犬の目に寄生虫!?東洋眼虫の症状・原因・治療法とは?

2020.05.22

【獣医師監修】愛犬の目に寄生虫!?東洋眼虫の症状・原因・治療法とは?

「東洋眼虫」という寄生虫を知っていますか?実はこの寄生虫、犬の目に寄生して異常をもたらしてしまうのです!今回は、東洋眼虫とはどういうものなのか?そして、寄生される原因はなんなのか?を詳しく紹介していきます。併せて治療法も紹介しますので、万が一に備えて是非チェックしてみてください。 病気の知識は、飼い主さんが愛犬を守る為に役立ちます。愛犬の目に異常を感じたら、注意が必要ですよ!

【目次】
1.犬の目の病気に要注意!

2.犬の目に寄生する「東洋眼虫」とは?
 2-1.犬の目の中を動き回る糸状の虫
 2-2.様々な国で確認される東洋眼虫

3.東洋眼虫に感染された犬の症状は?

4.東洋眼虫の原因は?
 4-1.目にまとわりつく虫「メマトイ」
 4-2.メマトイの発生時期は?
 4-3.メマトイの発生場所は?

5.東洋眼虫の感染経路は?
 5-1.メマトイの口から幼虫が感染する
 5-2.大人しい犬や老犬が感染しやすい

6.東洋眼虫の治療法は?

7.東洋眼虫に寄生されないために
 7-1.野山や山林などへの散歩は控える
 7-2.ペット用の虫よけグッズを使用する
 7-3.フィラリア予防薬を接種する

8.犬の目に寄生する「東洋眼虫」に関するまとめ

【掲載:2018.04.02  更新:2020.05.22】

犬の目の病気に要注意!

東洋眼虫

犬がかかりやすい病気の中でも、目は様々な症状を発症しやすい箇所の一つといえます。
犬の目は細菌などに感染しやすいので、日常的に異常がないか注意したり、愛犬に適切なケアを続けることが大切です。

今回は、そんな犬の目の病気の中で「東洋眼虫」という寄生虫にスポットをあてます。
まず、どのような寄生虫で、どんな症状を犬にもたらすのか、愛犬の為にも知識を得ておきましょう!


犬の目に寄生する「東洋眼虫」とは?

東洋眼虫

東洋眼虫とは、主に犬や猫の目、結膜嚢という場所に寄生する寄生虫です。稀に人の目に寄生する場合もあるので、人獣共通感染症の一つといえるでしょう。

◆犬の目の中を動き回る糸状の虫

東洋眼虫の体長は8mm~16mm程度あり、色は白の半透明で、体は糸状の形をしています。

寄生後3~5週間程で成虫になり、動き回るようになります。ちなみに、1匹だけで寄生しているケースは少なく、大抵10匹以上が目の表面を動き回っているそうです。
話を聞いただけでも鳥肌が立ちそうですが、寄生された犬や動物の目を見ると、結膜の上を動き回る東洋眼虫がしっかりと肉眼で確認できるかもしれません。

◆様々な国で確認される東洋眼虫

名前には「東洋」が付いていますが、東洋限定で生息している寄生虫というわけではありません。

犬の感染例は、中国・韓国・台湾・日本の他にも、ヨーロッパなどの様々な国で確認されています。中でもイタリア・バジリカータ州では、犬の東洋眼虫感染率が40%を超えているそうです。


東洋眼虫に感染された犬の症状は?

この東洋眼虫は、感染当初はほぼ無症状だといわれています。これは、東洋眼虫が幼虫の時期にほとんど動かないためです。

しかし、成虫となり動き回り始めると、目やにや異物感が酷くなり、結膜炎・流涙・瞬膜の炎症などを併発します。そしてこれらの症状(痒み・違和感)から目をこすってしまい、角膜が傷付いてしまう恐れがあるのです。

寄生虫自体が攻撃をしなくとも、不快感から目を強くこすることで結膜炎・角膜炎などの悪化を招き、更に重症化した場合は、角膜潰瘍の発症や、二次感染による失明も考えられるといわれています。

気付くのが遅れて放置してしまうと、視力の減退や目が開かなくなってしまうこともあるので、愛犬がやたらと目を痒がったり、気にする様子がみられた場合は、愛犬の目をよく見てみてください。

寄生虫が目の表面に出ていることは少ないようですが、愛犬の目に糸くずのようなものを見かけることがあれば、それは東洋眼虫である可能性があります。

東洋眼虫の姿を確認したり、気になる状態が続くようで不安な場合は、すぐに動物病院へ連れて行きましょう。


東洋眼虫の原因は?

東洋眼虫

東洋眼虫を媒介するのは、ショウジョウバエの仲間「メマトイ」という小さなハエです。

◆目にまとわりつく虫「メマトイ」

メマトイは、体長3~4mmの羽虫で、全国的に広く分布されているようです。このうち、オオマダラメマトイ・マダラメマトイ・カッパメマトイという種類が日本での媒介動物といわれています。

このメマトイには、動物の目やにや涙液に含まれるタンパク質を摂食する性質があり、メマトイという名前は「目にまとわりつく」というこの性質からつけられたようです。
また、目の他にも、レンズの様に光っているものや、カメラのレンズにも寄ってくるといわれています。

目にまとわりつくメマトイのほとんどがオスだということで、これは性行動に関係あるのではないかという説があるそうです。

◆メマトイの発生時期は?

メマトイは基本的に暖かい時期に発生しますが、3月~10月頃が主な活動時期だとされ、最盛期は7~9月だといわれています。生息期間はかなり長期に渡りますね。

◆メマトイの発生場所は?

全国的に分布していると前述しましたが、東洋眼虫の幼虫を持つメマトイの生息地は、以前は九州・西日本が中心でした。
感染例が関東より西側に集中しており、これはハエの生息域が西日本に集中していることが原因だとされています。

流行地域としては九州の中でも特に大分・宮崎・熊本県だったようですが、温暖化が原因で北上したといわれており、近年は東の方でも発生の報告が増加しています。

実際に犬の症例報告の挙げられている地域は流行地域の他に、香川・愛媛・岡山・山口・大阪・京都・兵庫・愛知・東京・茨城・神奈川だそうです。

温暖化に限らず暖房などの影響で、冬に姿がみられるケースも多くなっているので、活動時期に縛られずに、年中いたる所に生息していると考えておいた方が良いかもしれませんね。


東洋眼虫の感染経路は?

◆メマトイの口から幼虫が感染する

まず東洋眼虫となる幼虫がメマトイの口から侵入し、そのメマトイが動物の目やになどを摂食します。そして摂食時に幼虫が動物の結膜・瞬膜下に移るというのが、目に寄生するまでの経路となります。

このように、感染はメマトイが目に卵を産むわけではありません。メマトイを介さなければ、犬から犬へというように動物同士での直接感染はほとんどないといわれています。

メマトイ自体に触れても問題はありませんが、メマトイが正に食事をしようと口を付けた時、東洋眼虫の幼虫が動物の目に寄生してしまうというわけです。

◆大人しい犬や老犬が感染しやすい

特に大人しい犬だったり老犬などの場合、ハエが目に止まっても反応しない個体がいます。このような個体は寄生されやすいといえるでしょう。
人間においても、感染例が10歳以下・60歳以上と極端な偏りを見せていたという結果が出ています。やはり、目の周りにハエがたかった時に上手に払いのけられないことが、感染率をあげているのでしょう。

また、寄生された犬のほとんどがフィラリア予防をしていなかったり、2ヵ月以上投薬をしていなかったという結果もあるようです。そのため、フィラリア予防薬が東洋眼虫の幼虫をある程度駆除できる可能性が高い、ともいわれています。


東洋眼虫の治療法は?

東洋眼虫

東洋眼虫に寄生された場合の治療には、ピンセットなどを使用して、目から直接、寄生虫を摘出する治療法がとられます。

点眼麻酔を行っての摘出となりますが、まぶた・瞬膜の裏側や奥のチェックが必要となり、ひっくり返したり瞬膜をピンセットなどで挟むという工程が行われます。
このため、ほとんどの場合、犬や猫が暴れて危険なので、全身麻酔をかけるケースが多いそうです。

東洋眼虫は危険を察知してピンセットから逃れようとします。更に奥へ行こうと目の裏側などに逃げてしまったりするので、完全に摘出できたかどうかを確認するのは難しいようです。一回の処置で、全ての東洋眼虫を除去できるとは限らないのです。

除去後はしばらくの間、目薬をさす必要があるとのことです。治療後は期間をおいて、2~3回はチェックをしましょう。

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東洋眼虫に寄生されないために

愛犬への東洋眼虫の寄生を防ぐためには、まずメマトイを目に近付けさせないよう対策をとるのが一番効果的な方法です。

◆野山や山林などへの散歩は控える

メマトイはショウジョウバエの仲間と紹介しましたが、いわゆる羽虫なので野山や山林などに行けばたくさん飛んでいます。

若い犬であればハエが止まった際に、首を振る・手ではたく、などして自力で撃退することがほとんどですが、前述した通り老犬などの場合は、ハエが止まったことに気付かなかったり、反応を示さないことがあります。

愛犬がこのようなタイプであれば、特にハエの発生率の高い場所へのお出掛けは控えた方が良いかもしれません。
また、ハエの駆除薬などを使用して、愛犬を守ってあげることも必要ですね。

◆ペット用の虫よけグッズを使用する

勿論、家の中に入ってくることも珍しくないので、室内での対策も大切です。

発生頻度は地域によっても差はありますが、発生の多い地域であれば、室内にハエ取り紙などを吊るす、ペット用の虫よけを設置するなどで駆除する方法も有効的です。
更に室内環境を衛生的に保つことで、ハエの発生しない環境をつくることも重要となるでしょう。

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◆フィラリア予防薬を接種する

感染リスクを下げる可能性があるとして、フィラリア予防薬も先にあげました。
明確な結果が出ている予防法ではありませんが、東洋眼虫に対する予防薬がない現状では、少しでもリスクを下げる可能性があるのですから、やはり愛犬へのフィラリア予防薬の投与は忘れずに行うべきでしょう。

基本的にフィラリア予防は5月~12月の為、予防していない1月~4月に寄生する可能性も勿論あります。実際に、東洋眼虫の感染報告が多い時期は、12月~2月だそうです。
メマトイの主な活動期間外とはいえ、ショウジョウバエは冬眠するわけではなく、暖かい場所で越冬します。やはり冬から春にかけての期間にも注意が必要といえるでしょう。

フィラリア症自体も、犬にとって注意が必要な恐ろしい病気です。フィラリア症と併せて、東洋眼虫の予防にも力を発揮する可能性があるのであれば、一石二鳥ですよね。

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まとめ

虫の中でも身近に存在するショウジョウバエが、愛犬に寄生虫を媒介する可能性があるという事実は、愛犬家にとっては恐ろしいものですよね。特に愛犬が老犬であったり、主な生息域とされる西日本在中の飼い主さん達は要注意です。

また、人獣共通感染症ということで、飼い主さん自身も注意しなければいけません。

できれば目の当たりにしたくない、東洋眼虫。完全な予防は難しくとも、対策をとるのに越したことはありませんね。

※こちらの記事は、獣医師監修のもと掲載しております※
●記事監修
drogura__large  コジマ動物病院 獣医師

ペットの専門店コジマに併設する動物病院。全国に15医院を展開。内科、外科、整形外科、外科手術、アニマルドッグ(健康診断)など、幅広くペットの診療を行っている。

動物病院事業本部長である小椋功獣医師は、麻布大学獣医学部獣医学科卒で、現在は株式会社コジマ常務取締役も務める。小児内科、外科に関しては30年以上の経歴を持ち、幼齢動物の予防医療や店舗内での管理も自らの経験で手掛けている。
https://pets-kojima.com/hospital/

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壱子

壱子

子供の頃から犬が大好きです。現在はキャバリア4匹と賑やかな生活をしています。愛犬家の皆さんに役立つ情報を紹介しつつ、私自身も更に知識を深めていけたら思っています。よろしくお願いいたします!

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